2015年5月20日水曜日

Aujourd'hui

フランス人の母親と、
セネガル人の父親を持つという、アラン・ゴミ監督。
彼の、長篇としては第3作目にあたる、

Aujourd'hui

を見てみました。
結論から言うなら、素晴らしかったです。

https://www.youtube.com/watch?v=GbR-5FiVCQg

舞台はダカール。
主人公のサシェ(演じるのは、アメリカのラッパー、ソウル・ウイリアムズ)は、
明日、死ぬことになっています。
彼は、彼が属する共同体で、
選ばれてしまったのです。
理由は本人にも、誰にもわかりませんし、
映画内で説明もありません。
とにかく、彼は選ばれ、
明日、いわば「生贄」のように、
死ぬことになっているのです。
二人の幼い子供と、奥さんもいるのにです。
親戚たちも友人たちも、
市役所のお偉方も、
みんなサシェを称えます。
あなたは勇者だ、偉い、というわけです。

これがセネガルの現実なのか、
それともフィクションなのか、
それさえもわかりません。が、
おそらくは、今は廃れた習慣かなにかなんでしょう。
でも見ていると、
(これはずいぶん勝手な読みかもしれませんが)
「不条理」というものの表現にも見えます。
まあ考えてみれば、
病気だって、事故だって、さらに言えば才能だって、
それは不条理なものです。
サシェはここで、「不条理」によって選ばれているのです。

彼は友人と、
ダカールの色々な場所を歩き、
色んな人に会います。
その中には、かつての愛人だったらしい、
美しいアーティストもいます。
(アイサ・マイガが演じています。
彼女が、アフリカの民族衣装を着ているのを、
初めて見ました。
いつもと違う貌の彼女も、印象的です。)

そして、これ以上は特に事件が起こるわけでもないこの映画の、
どこに惹かれるのかと言えば、
それはなんというか、画面の静謐さです。
意味ありげに長回しするわけではなく、
でも、それぞれの事物を見つめるその映像が、
とてもいい感じ。
物語と相まって、
世界への愛おしさ、
のようなものが伝わってくるのです。

そして実はこの感じは、
DVD におまけで入っていた短編映画にも、
共通していました。
アラン・ゴミ、
残る2本も探すことにします。