2024年4月28日日曜日

 『我らの生涯最良の年』

大学院の1年生に、
GW中の課題として、

『映画分析入門』(マイケル・ライアン他)

を読んできてもらうことにしました。
この本、教科書的で、
すべてに賛成なわけじゃないんですが、
画像が多くてすぐ読めるので、
まあ、1年生にはいいかな。

この本の中には、
おもしろい(=分析しがいのある)映画が多く出てきますが、
そのうちの1本が、

『我らの生涯最良の年』(1946)
(The Best Years of Our Lives)

です。
久しぶりに見てみました。(アマプラ無料)


制作年からも分かる通り、
戦後すぐに公開されたアメリカ映画で、
主な登場人物は三人の帰還兵です。
数年の従軍ののち故郷に戻った彼らには、
それぞれの事情があります。
なかなか良くできた、しかもおもしろい映画です。

そして見終わって思うのは、
登場人物それぞれにとって、
人生における the best years はいつだったのか、
いつなのか、いつになるのか、ということです。
それに答えるのは、簡単ではありません。
ワイラー監督は、
男性のファンタスムも描きこんでいますが、
それは現実ではなく、願望にしか見えません。

一番説得力のあるシーンは、
妻ともうまくいかず、やっと見つけた「つまらない」仕事も失い、
行くあてもなくなった帰還兵の1人が、
軍の、解体を待つ夥しい戦闘機が並ぶ飛行場を歩くところです。
この飛行機たちは、明らかにこの帰還兵、
そして多くの帰還兵たちの運命のメタファーに見えます。
ただその解体された飛行機は、
くず鉄になるわけではないというのが、
未来への可能性に開けているわけですが。
ただこれはあくまで可能性でしかありません。

広島も、Japも、出てきます。
当然ながらアメリカにも、戦後はあったわけです。



2024年4月27日土曜日

新しい人

野球の話です。

今年、ベイスターズのドラフト1位選手は、
オープン戦ずっと好調で、
新人ながら開幕スタメンを勝ち取り、
さらに、開幕1、2戦では、
とても印象的で華やかな活躍を見せました。
その後も、一度くらい? 活躍した試合がありましたが、
それ以外は結果が出ず、
厳しいインコース攻めに対応することもできず、
素人目にも、
体重が踵に乗っているように見えて、
打てそうな感じがありませんでした。
派手に活躍したシーズン初め、
パフォーマンスもまた派手だったため、
相手チームの反感を買ったんじゃないかというコメントも、
多く見られました。
まあ、たしかにたしかにそういうこともあったのでしょう。

そして今日、彼は打順が1番から8番に下げられました。
とはいえスタメンですから、やはり期待されている選手なのでしょう。
彼は2本ヒットを打ち、
(体もブレてないように見えました)
2アウト満塁で回ってきた第4打席、
大観衆が総立ちになるようなホームランを放ちました。
(わたしも見ていて、声が出ました!)
彼は小さくガッツポーズをして、
慌ててそれをやめて、
ほとんどニコリともせずダイヤモンドを一周しました。

その後彼がライトの守備につくと、
彼の名を叫ぶ大合唱が起こりました。
彼は、目を潤ませ、外野席にお辞儀をし、
それでもすごいコールは鳴り止まず、
先輩に促された彼は、
再び深々と、スタンドに向かってお辞儀をしました。

ヒーローインタヴューでも、
はしゃいだところはまったくなくて、
一昨日の、チャンスを潰した反省を述べ、
今日はやっと「ちょっと」だけ打ててよかった、
応援のおかげだと言って、
また目を潤ませていました。

打てなくて、辛かったんですね。
ファンたちは、気楽にああだこうだと言っていますが、
とてつもないプレッシャーだったんでしょう。
応援しないのは、ムリになってしまいました。
ガンバレ、ワカゾー!

大学院ゼミ

ゼミも始まって、初回は

『ピアノ・レッスン』

2回目は同じカンピオン監督の最新作、

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

を見て、色々話し合いました。

この2本、構造が似ています。
女性1人と男性2人のいわゆる三角関係が基本にあり、
さらに女性には子供がいて、
さらに男性二人は、それぞれ違う「世界」の属していて、
ピアノと繋がりのある女性は、
男性たちの2つの世界両方と関わり、
彼女の子供もまた、2つの世界と関わっていくのですが、
この母親と子供の、
2つの世界に対する関わり方は同じではない……
これらはみんな、2作に共通することです。

わたしは、『ピアノ・レッスン』の方がデキがいいと思いました。
何と言っても、ヒロインの魅力に差があるからです。
ただしこの作品、
ラストに置かれたシークエンスがいかにも蛇足で、
そこが勿体無いと思っています。
その、ヒロインが言葉を学ぶシークエンスがなければ、
ヒロインと一体化しているピアノの「音」は、
最終的には、言葉やその代用ではなく、
「沈黙」そのものに向かっていくものであることが、
きれいに描出されると思うからです。
でもそれにしても、いい映画だと思ってはいますけれど。

2024年4月22日月曜日

吉本隆明全集34

今、晶文社から刊行が続いている

『吉本隆明全集』

ですが、来週、34巻が出ます。
で、その巻の、月報を書かせてもらいました。


とても光栄です!

3年生たち

今日の「フランス語」の授業は、
主に3年生が履修してい流のですが、
人数も少ないので、
彼ら自身の興味と、
フランス関連の事柄を結びつけるようにして、
「雑談」の時間を長めにとりました。

まずはサッカー好きの学生。
これはもうたくさんありますね。
ジダンからアルジェリア、植民地主義、
ベルベル人、マルセイユ……
おもしろかったのは、
ムバッペはフランス人だけど、
両親は何人だと思う?
とこちらが訊いた時、
学生が皆、両親のどちらかはフランス人で……
と答え始めた事です。
そう、国籍=血統主義、という前提に知らず知らず立っているので、
そんな答えになるのでしょうね。
もちろん、出生地主義について話しました。
(日本の閉鎖性も。)

それから自転車部の学生。
彼はツール・ド北海道にも出たことがあって、
これは当然、Tout de Franceの話になります。

建築の学生は、最近瀬戸内海の豊島に行ってきたと。
アートの島ですね。
これは、数年前にワークショップをやった小豆島の思い出を。

アルペン・スキーのをやってる学生もいました。
で、往年のあの選手の話をしようと思って、
名前を思い出せなかったんですが、
なぜでしょう、
今はすぐに思い出せました、
ジャン=クロード・キリー、ですね。

学生たちは、ただ座っているとわからないけれど、
話してみると、
それぞれにいろんな活動をしています。
聞いていて楽しいです!

2024年4月19日金曜日

イラン

ウクライナもガザも、
まだまだ「解決」にはほど遠いのに、
イランとイスラエルの対立が、
2つの侵略を目立たなくさせつつあります。
これはある程度は、
イスラエルの意図でもあるのでしょうか。

イランは、ペルシャ語を話すペルシャ系で、
アラビア語を話すアラブ系ではありません。
(このことは、どうもよく誤解されているようです。)
また世界で、イスラム教<シーア派>を国教としている国家は、
イランだけです。

「イラン映画」は、いい作品がたくさんあります。
例えば、






近くて遠いのか、遠くて近いのか。
ペルシャ語が専門の知り合いは1人しかいませんが、
彼女の意見を聞いてみたいです。

2024年4月18日木曜日

Merci(s)


 なんだか裏表紙だけあげるっているのも品がない気もしますが、

『フラ語入門』を宣伝してくださってる白水社に Mille mercis を込めて。


(さて、Mille mercis ? それとも複数の s はいらない??

https://www.lalanguefrancaise.com/orthographe/mille-mercis-ou-mille-merci )

2024年4月16日火曜日

一回り

今日で、
今年度の担当クラス、一巡りしました。
まあ、例年通りの滑り出しと言っていいと思います。
いつもと違ったのは、
大学院の授業「映画と都市」の履修者が多かったことくらい。
(まあ、来週は少し減っていると思いますが。)

そして今日、
5年ほど前に退職された先生がたまたま大学にいらしていて、
久しぶりに、
以前よく一緒に行った蕎麦屋さんでランチしました。
26日に締め切りが!
と言っているあたり、
昔通りで嬉しかったです。

2024年4月12日金曜日

授業開始

学部の「フランス語」の授業と、
大学院のゼミ、
ともに水曜日から始まりました。

フランス語のほうは50人ほどで、
通常よりほんの少し少ないです。
でまあ、
最初の授業はいるもそうですが、
みんな緊張してるので、
ちゃんと聞いてくれてます。
少し発音練習もしましたが、
ちゃんと声も出ていて、
しかもわりと上手くて、
ひとまず安心です。

ただこのクラス、
一番前の2,3列はほとんど座っていなくて、
後ろの方は満杯です。
こういう座り方をしているクラス、
時に見かけますが、わたしのクラスでは珍しいです。
今後どうなるんでしょう?

でもとにかく、
職業病というか、
授業をやるとテンションが上がって元気になります。
1年生は1コマだけなので、
楽しみな授業です!

2024年4月7日日曜日

「ウザイ」はどこから

まあ、5分ほどで調べただけで、
間違ってるかもなんですが……

ウザイ、という語はよく耳にするし、
考えてみたら自分でもけっこう使ってる気もしますが、
今日、ふと、
語源は何?
と思って、検索してみました。
その結果は;

擬態語 うじゃうじゃ(こまかいものがたくさん)
  ☟
うざうざ
  ☟
うざっこい
(こまかいものが集まっていて煩わしい)
  ☟
うざったい
(昭和40年代、東京多摩地区の若者言葉)
  ☟
ウザイ

のようです。
大元が、うじゃうじゃ、だったとは!
そしてわたしたちは、
昭和40年代から50年代にかけて高校生だったので、
「うざったい」はめちゃめちゃ日常語でした。
それがいつか全国に広まり、
今のウザイにまで辿り着いたんですね。

なんだか、少し歴史に参加した気分です!

2024年4月6日土曜日

辞書

新学期に、学生に辞書について説明するときは、
薄っぺらいのじゃなければなんでもいいけど、
ただ、
古いのはダメ、
と言っています。
ママが使ってた、みたいな辞書を持ってくる学生が時々いるんですが、
もう、まったく使い物になりません。

もちろん今は、
ネット上にも辞書的なものはあるし、
わたしもよく使っています。
「ふらんす」4月号でも、いろいろ紹介されてましたね。

ただそれはそれとして、
ふつうの仏和辞典も確認したいので、

(というのも、例えばCNRTL

新語には強い wiktionnaire

なんかと仏和の比較もおもしろいです。
かなり違うことも少なくありません。)

わたしは電子辞書も持ち歩いているんですが、
やっぱりエアに入れた方が使いやすいので、
仏和辞典  for mac で探して、2つ買ってみました。
新学期で安くなっているみたいだったし。

でも、仏和辞典の新しいのを買うのは久しぶりで、
なんかフレッシュになった感じで、嬉しいです!
(紙の辞書は、わたしたち教員は、
献本してもらえることが多いので、「買う」機会はあまりありません。
ただこの頃は、あまりないかな。)

ぜんぜん回し者じゃないですが、
買ったのは、ここです。



2024年4月3日水曜日

まじめに

ここしばらく、
自分で言うのもなんですが、
とてもちゃんと仕事しています。
実は来年の初めに、
レナさんと一緒に参考書を出すつもりで、
早くもその準備を進めているのです。
レナさんもわたしも、
授業が本格化するとなかなか時間が取れないので、
春休みのうちにある程度進めておこう!
ということで気が合ったのでした。
去年の暮れあたりから、
メインのPCがマック・エアーになり、
勢いカフェでの仕事のしやすさも増したので、
長居しておかわりしたり、
夜行って閉店の時間までいたりしています。
閉店は、10時の店と、11時の店があります。

これくらい仕事をしていると、
ちょっとNHKの仕事をしていた時期を思い出します。
中でも、2010年の番組は、月〜木だったので、
あの時は人生で一番忙しかったと思います。
もちろんその時ほどじゃありませんが、
なんというか、集中の度合いが、って感じでしょうか。
でも、一度すごく忙しい時期を経験していると、
あのくらいまでは大丈夫、というのがわかっていいですね。

まだ10か月ほどありますが、
新刊を期待していただければ嬉しです!

2024年4月2日火曜日

新学期開始!

4月1日は、
恒例の大学院ガイダンスがありました。
今年の総合芸術系への入学者は7名。
私の研究室にも一人入りました。
一緒に頑張っていきましょう!

そしてわたしの研究室には、
博士課程の学生もいて、
今年彼は、博士論文を提出する予定です。
彼に博士号をとってもらうことは、
わたしにとっても、
今年度の大きな目標の1つです。

授業は10日からですが、
気分はもう「始まった」感じです。