2020年3月30日月曜日

3本

落ち着かない日々が続いています。
コロナのニュース、
つい見てしまうという方も多いと思います。
わたしもそうです。
でもそうすると、
落ち着かないんですよね。

で、
バシッと向き合うような映画は、
今はもったいなくて見られない感じ。
で、軽いものを選んで、
昨日今日で3本見ました。

『アトミック・ブロンド』
『シャザム』
『バーレスク』

『アトミック・ブロンド』は、
シャーリーズ・セロン主演のスパイ映画で、
1989年のベルリンという、
特別な場所・時を舞台としています。
彼女はかっこいいので、見ていられました。

『シャザム』は、DCコミックスのスーパーヒーロー。
楽しめました。
そして主人公を里子として迎える「家」には、
白人である彼の外にも、
アジア系、アフリカ系、ヒスパニック系、
の里子たちもいて、
また、その「家」を運営する夫婦の夫のほうは、
ネイティブ・アメリカン風、という、
ちゃんと多方面に気を遣っている配置になっていました。

『バーレスク』はチェコ映画で、
主人公は小学校の先生。
彼女は、「肥満」しているがゆえに、
母親(=勤め先の校長でもある)からず~っと、
大人しくしてろ、目立つな、
ハンサムな男が寄ってきたら注意しろ来るはずがないんだから、
と言われ続けてきました。が、
それがどうしてもいやになり、
好きだったダンスを始めるのですが、
それが、「ストリップ」的なものなのです。
でもそれは必然性があって、つまり、
自分の体を受け入れ、それを愛する、
という意味を持っているわけです。
見始めてすぐ、
どういう結末になるのかは
(そのつもりがなくても)察しがついてしまうのですが、
それでも、それなりに楽しめました。

2020年3月29日日曜日

『あゝ、荒野』(再)

書かないと忘れてしまうので、
備忘録として、
追加の感想を書くことにします。

もちろん<ネタバレ>します。

まず、ラストについて。
ここでは、一人死んでいます。
ふつうに見ていれば、
それはバリカン健二以外ではありません。
死亡診断書が映し出され、そこに
「二木健……」
とまで書かかれたところで、
カメラは切り替わります。
これが、「健二」となるなら、バリカンのこと。
ただし、「健太」となると、
それはバリカンの父親のことであり、
そういえば彼は、ボクシング会場で、
試合を見ている最中に死んだのでした。
(原作小説では、「健太」となっているようです。)

この死んだのはどちらか、というのは、
当然映画の意味に大きな違いを生みます。
もしそれが健二だったら……
健二は、明らかにゲイに見えます。
自分のノートに、眠っている新次の顔を丹念に書いているし、
きれいな女性に迫られても
「あなたとはつながれない」
と言って逃げ出すし、
30歳を過ぎて、まだ女性経験がないし。
(健二を可愛がる「二代目」もまた、ゲイなのでしょう。)
そして健二は、韓国と日本の両親を持っていて、
つまり彼は、二重の意味でマイノリティーだと言えるでしょう。
となると、
死んだのが彼であるなら、
2022年の新宿(つまり日本の臍)において、
マイノリティーは排除される、という意味を持ってしまうでしょう。
ただそうではなく、
死んだのが父・健太だったのだとすれば、
彼は、国家、そして暴力的権威主義・家父長制の象徴だと言えるでしょうから、
そうしたものの終わり、
という意味付けが可能になるのでしょう。
もちろん彼は、そうでなくても死んだようには見えるわけで、
これはダメ押し的です。

では新次は?
彼は、一貫して憎しみと暴力に彩られています。
彼は、非愛の象徴ではあり得ても、
決して愛の象徴ではありません。
彼は、時代が生んだ怪物であり、鬼っ子であると言えそうです。
その彼が生き残る、勝ち残ってしまうというのは、
かなり悲観的な未来を予感させるようです。
そして彼の母親は、
試合中の息子に向かって、
「殺せ!」
と叫ぶのであり、
そこに「愛」はなく、
あるのは暴力と力への賛意なのでしょう。
ただこう書くと、
健二の父と新次の母は同じような原理を生きているように聞こえますが、
大きな違いもあります。
それは、健二の父が「国家」に同一化するのに対し、
新次の母は、近代的な「個人」として生きようとしている点です。
彼女は、「自分の人生」=自己実現を最優先にする人間なのです。

被災した美子とその母はどうでしょう?
美子が過去を捨てようとしているのは明白です。
彼女は、過去を象る靴を捨てますが、
靴は、まるでワザとのように戻ってきます。が、
彼女は再び、この靴/過去を置き去りにすることで、
また愛なき男・新次をも置き去りにすることで、
未来へと踏み出します。
ただここでもまた、彼女は過去に追いつかれてしまうのですが。
一方彼女の母は、「片目」との幸福そうな未来を、
あっさり拒否していしまいます。
彼女が求めているのは過去であり、
未来ではありません。
ここには、3.11 後の、
2つの態度が集約されているということなのでしょうか?

2020年3月28日土曜日

『ベテラン』

今年の韓国映画の43本目、

『ベテラン』(2015)

を見てみました。
韓国では、大ヒットした映画だそうです。

https://www.youtube.com/watch?v=45vhUoW2Hpw

物語はわりと単純。
ファン・ジョンミン演じる熱血刑事が、
独裁的で暴力的な財閥の御曹司の犯罪を立証する、
というストーリーです。
ファン・ジョンミンの上司をオ・ダルスが演じ、
これは『国際市場で逢いましょう』と同じコンビですね。
またファン・ジョンミンの妻役がチン・ギョン。
ほかにチョン・マンシク、
それからチョイ役でマ・ドンソクの顔も見えました。
そうそう、ユ・ヘジンも、
御曹司のお目付け役で出ているのですが、
今回に限っては、彼のよさが出ていない気がしました。

エンタメだし、
深いというわけでもありません。
にもかかわらず大ヒットした背景には、
韓国における財閥のスキャンダルがあったということですが、
まあそういうこともあるかも。

一人、若い女性刑事がいるのですが、
彼女は、それなりに楽しそうに仕事をしています。が、
やはり、「男性的」な仕事の流儀であるようは感じました。
まあそれでも、
言いたいことを言ってるのは感じがよかったです。

『さよなら歌舞伎町』

新宿、そして歌舞伎町繋がりで、
(無料だったし)見てみたのは、

『さよなら歌舞伎町』(2015)

です。
舞台は歌舞伎町のラブホテル、なんですが、
この形式・設定なら、誰でも思いつくようなエピソードの羅列。
社会性を出そうと、
リストラされたサラリーマンや、
ヘイト・スピーチする集団や、
3.11 で被災したAV女優、
などを登場させていましたが、どれも表面的。
「社会」はゼンゼン見えてきません。
もっと深さが欲しい、という印象でした。

2020年3月27日金曜日

まいにちフランス語・応用編、終了!

おかげさまで、
まいにちフランス語・応用編、全48課、
ぶじ(?)終了しました。
聞いていただいた方は、
ありがとうございました!
で……

4月からすぐに再放送で、
またお耳にかかります!

COVID-19

今、大学は春休み。
この時期教員たちは、
ここぞとばかり研究に集中しようとするものの、
実際はなかなかはかどらないまま新学期を迎えてしまう、
ということが繰り返される(←それじゃダメじゃん!)のですが、
この春は、それどころではありません。
もちろん、COVID-19 が原因です。

勤め先の明治大学では、
新学期の始業を2週間遅らせる決定をしました。
他の多くの大学も、
それぞれ2~3週間遅らせています。
ただ、どこの大学もそうでしょうが、
ほんとに2週間程度でいいのかどうか、
わからないわけです。
なにしろ、
来週の状況さえ誰にも分からないわけですから。
で今は、
いくつものシナリオが検討されているようです。
わたしも末端教員として、
今日は会議に行ってきました。
(少人数で、窓を開けてやりました!)
結論は出ませんが、
とりあえず、
問題点を共有することはできました。

この週末は、
よく行くテニス場も閉鎖になり、
さっき友人から、
四ツ谷のイグナチオ教会でも、
聖堂が閉鎖されたと聞きました。
今でさえかなり混乱していますが、
これ以上の事態にならないことを、
強く願っています。

2020年3月26日木曜日

『あゝ、荒野』

前・後編、
合わせて5時間を超える大作、

『あゝ、荒野』(2017)

を見てみました。
(Amazon Prime で無料でしたが、
この無料期間は、「4/4 まで」と表示されています。
御覧になる場合は、お早めに。)

https://www.youtube.com/watch?v=kGpz_ry9EeI

舞台は新宿。
2021~22年という、近未来です。
たくさんのサブストーリーが張り巡らされていますが、
メインになるのは、
二人のワカモノの軌跡です。
一人は、新次。
この新次がまだ子供だった頃、
自衛隊員だった彼の父親は、
中東での任務の後精神を病み、自殺します。
その後母親は、新次を教会に預けたまま、
行方知れずに。
新次はもちろん、捨てられた、と感じます。
やがてワカモノに成長した新次は、
新宿の取り立て屋として肩で風を切っていますが、
ある暴力事件をきっかけに少年院へ。
そして今、3年経って出てきたところです。
もう一人は、健二。
韓国人の母と日本人の父。
韓国で母親が亡くなった時、
父親は、いやがる健二を連れて日本に向かいます。
けれども父親は暴力的で、
吃音症が強く、コミュニケーションをとるのが苦手な健二は、
苦しい生活が続きました。
そして今、彼は新宿で理髪店に勤めています。
この二人が、
それぞれの思いの中で、
ボクサーを目指すことになるのです……

5時間ですが、
あっという間でした。
すべてのセリフ、
すべての行為の意味が明らかなわけではありません。
それは時に「文学的」だったり、
「感傷的」だったりもします。
が、それを差し引いても、
魅力ある作品でした。

二人のワカモノの共通点は、
愛を知らないこと。
愛し方も、愛され方も、知らない。
そして一人は、その代償として憎しみを育て、
一人は、どうしようもなく「愛」を求める……
映画は最後に、
かなりシニカルな「意味」を湛えて終わります。

新次のリングネームは「新宿新次」であり、
この映画、新宿を描こうとしていることは明らかです。
多くの人同様、わたしにも、
自分なりの「新宿」がありますが、
この映画には、
わたしの知らない新宿もたくさん出てきて、
それもおもしろかったです。
ただもちろん、
新宿を全体としてとらえるなんてことは不可能なわけですが。
1つ、
百人町1丁目歩道橋をロードワークするシーンでは、
ここを記録したのか、
という感慨がありました。
この映画は、新宿を舞台にした群像劇であるとも、
新宿の持つ「呪縛力」(磯田光一)を描いているとも言えるでしょう。

新宿に興味があるなら、見逃せません。

2020年3月25日水曜日

『息もできない』

2009年に公開され、
数々の映画賞を攫っていった、

『息もできない』(2009)

を見てみました。
約10年前ですが、
古い感じはまったくしません。

https://www.youtube.com/watch?v=UwVmV6-N2mU

主人公サンフンは、
高利貸しの暴力的な取り立て屋で、
絵にかいたような「チンピラ」。
ただ彼は、DVの父親を持ち、
その父の暴力が原因で、
母も妹も失くしています。
その父は、15年の刑期を終えて、
出所したばかりです。
そして、女子高校生ヨニがいます。
彼女の父親もまたDV男で、
母親はすでに亡くなり、
同じく高校生の弟と3人暮らしです。
ただ、父親は病んでおり、
終日テレビの前に座り、
自分の妻が亡くなったことを信じようとせず、
他の男と遊びまわっていると固く信じています。
また、ヴェトナム戦争帰りである彼は、
そのときもらった金の入った通帳に執着してやみません。
この二人、
サンフンとヨニが出会い、
そこに、ある心の繋がりが生まれ、
それがとりわけサンフンの再生の契機になるのではないかと、
観客は思うのですが……

印象に残ったシークエンスは、
サンフンが取り立てに行ったある家庭でのこと。
その家では、父親が母親を殴っている最中でした。
幼い二人のこどもは泣いていて……。
サンフンは、もちろんフラッシュバックがあり、
その父親、金を返せない父親を激しく殴打します。
そして、言うのです、

「韓国の父親は最低だ。
このザマなのに、
家族の前ではキム・イルソン気取りだ
おまえはキム・イルソンなのか!」

このセリフは、
サンフンやヨニの父親のような具体的な父親ばかりではなく、
韓国の家父長制度そのものを射抜いているのでしょう。
(むろん、韓国に限ったことではありません。)

サンフンの「兄貴」役を、
『傷だらけのふたり』
『哀しき獣』
『インサイダーズ』
などに出ていた、
チョン・マンシクが演じています。
落ち着いた演技で、映画が締まります。

<以下ネタバレ>

1つ、やや解釈に迷うシークエンスがありました。
それは、
ヨニの母親がまだ生きていたころ、
母親が切り盛りするらしい簡素な屋台が、
暴力団風の男たちに破壊されるシークエンスです。
母親は駆け寄り、
彼らを制止しようとし、
その勢いで包丁を振り回したところ、
それが一人の男の二の腕を傷つけるます。
母親はすぐに殴り倒され、
ヨニは、その一部始終を見ている、という流れです。
実は、この時きり付けられたのは、
サンフンなのです。
ここで顔ははっきり見えない(見せない)のですが、
集団のなかにサンフンの「兄貴」がおり、
また、これとは別のシークエンスで、
サンフンが着替えるとき、
彼の左の二の腕には、
たしかに切られた傷跡が残っているのです。
で、気になるのは、
ヨニはいつ、
それがサンフンだったと知ったのか、という点です。
結論としては、
ラストシーンで、ということなのだと思います。
というのも、そのラストでは、
偶然にもサンフンの下で働いていた彼女の弟が、
あることをきっかけにサンフンを殴り殺してしまった後、
暴力的取り立て屋になり、
仲間たちと駅前の屋台を破壊しているのですが、
その弟の姿をみとめたヨニには、
弟が、サンフンにも見えてくるのです。
2つの、父から息子へという暴力の連鎖が、
ここではっきり重なるわけです。
そして、屋台を壊す弟の姿の向こうに、
ヨニはサンフンを幻視し、
あの時のことに思い至るわけです。
このシークエンスでは、
過酷な連環が描写されているのですが、
それは、この幻視、そして気づきをこそ通して、
より強化されてゆくのでしょう。

2020年3月24日火曜日

『レッド・ファミリー』

キム・ギドクが、
製作・脚本・演出した、という

『レッド・ファミリー』

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=-XlOOX4uW30

話は単純で、
北朝鮮の工作員4人が、
偽装家族として韓国に住み着き、
党からの指令を果たす一方で、
隣の家族と仲良くなる中で、
自分たちの置かれた立場、
自分たちの行為の意味について、
考え始める、という物語です。

工作員家族の隣の家族、
これは破綻しかかっている家族で、
当初は「腐った資本主義の恥部」というような見方だったのですが、
自分たちはといえば、
こうして命令されて生きるだけで、
家族に会うことさえ叶わない、
というかむしろ、
家族は人質としてとられているようなものなわけです。
それは、疑念も抱くはずです。
そして偽装家族は、
むしろ疑似家族になっていきます。

コメディ的でありながら、
実際はかなりまじめです。
ラストの運びも、
単なるコメディではありません。

あきずに、あっという間に見てしまいましたが、
そしてそれなりにおもしろかったのですが、
「家族」というものの位置が、
無条件にヒューマニスティック過ぎた気もします。

2020年3月23日月曜日

『サスペクト 哀しき容疑者』、100点!

脱北者がらみのアクション映画、

『サスペクト 哀しき容疑者』(2014)

を見てみました。
これは、アクション映画としては、
100点! を付けていいと思いました。

https://www.youtube.com/watch?v=zlNr0aoPVeU

主人公のチ・ドンチョルは、
かつて北朝鮮のスパイであり、
今は脱北者として韓国にいます。
ただ彼は、妻と幼い娘を、
脱北者であり韓国のスパイになった元同僚に殺されており、
(が実は、娘はまだ……)
その復讐を心に誓っています。
で、それを果たそうと活動する中で、
実は、元同僚の背後には、
別の企みを持った組織があることを知る……
という物語です。

やや込み入った物語ながら、
説明の仕方がうまく、
またタイミングもよくて、
ほとんど混乱しません。
セリフは全体的に少な目で、
ハードボイルドなところも、わたしは好感を持ちました。
まあ、「アクション」映画ですからね。
そしてその派手なアクションの背後に、
深く錯綜した縺れが横たわっているわけです。
また、アクション映画であることはまちがいないとして、
物語が始まる時点で、
「あらかじめ失われたもの」
が配置されており、
その意味では、
「フィルム・ノワール」的だとも言えます。
映画の核は、
むしろこちらにあるのかもしれません。

先日書いた通り、
現在脱北者は3.4万人ほどいて、
韓国での生活にかなり苦労している、ということですが、
この映画(2014)の中では、
2万人とされていて、
これが正確であるなら、
この5年間に、かなり増えていることになります。

アクション、ないしスパイ映画の場合、
なんらかの対立があったほうが物語を作りやすいのは当然で、
かつては東西冷戦が、
その後は、IRA やモザド対敵対勢力、
あるいは CIA対テロリスト、
みたいな構図も多く見かけました。
で今回は、
北朝鮮と韓国の対立が中心にあるわけですが、
これは、
単に物語のために取り入れられているというわけではなく、
そこにはやはり、ある程度のリアリティーがあるわけです。
これに関連して、
非現実的な事柄が出てくるのですが、
これは、なかなか人間的な(&希望のある)非現実で、
わたしはこれも、好感を持ちました。

主演は『暗殺』でも活躍したコン・ユ。
瞬きの少ない、抑えた演技で、
よかったです。
今までわたしが見たアクション映画の中でも、
出色のデキでした。

2020年3月22日日曜日

パリは

大好きな本、
『パリのすてきなおじさん』で、
金井真紀さんと一緒に取材に当たっていらした広岡裕児さんが、
パリの事情を伝えています。

https://www.msn.com/ja-jp/news/controversies/コロナ“外出禁止令”直前も「ハグとキス」……感染者1万人超フランスの「咳エチケット」事情/ar-BB11wcIr?ocid=spartanntp

「市民的態度」というのが、
日本ではめったに見かけない表現で、
(というか、そもそも「市民」という語自体見かけませんが)
フランスらしいと感じますね。

メルケルの演説より

訳してくださっている方がいらっしゃいました。 https://www.mikako-deutschservice.com/post/コロナウイルス対策についてのメルケル独首相の演説全文 ******************************** 今でもすでに制限が劇的であることは承知しています。 イベント、見本市、コンサートは中止、 とりあえず学校も大学も保育所も閉鎖され、 遊び場でのお遊びも禁止です。
連邦政府と各州が合意した閉鎖措置が、 私たちの生活に、 そして民主主義的な自己認識にどれだけ厳しく介入するか、 私は承知しています。 わが連邦共和国ではこうした制限はいまだかつてありませんでした。
私は保証します。 旅行および移動の自由が 苦労して勝ち取った権利であるという私のようなものにとっては、 このような制限は絶対的に必要な場合のみ正当化されるものです。 そうしたことは民主主義社会において決して軽々しく、 一時的であっても決められるべきではありません。 しかし、それは今、 命を救うために不可欠なのです。 ************************** 言葉を語れる首相、 うらやましいです。

2020年3月21日土曜日

「津波避難階段完成半年遅れ」

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/404142

復興五輪、になってませんね。

いったい誰のための……

『ベルリン・ファイル』

『哀しき獣』『1987』などのハ・ジョンウと、
『暗殺』のチョン・ジヒョンが、
駐ベルリンの北朝鮮スパイと通訳官、
そして夫婦として登場する映画、

『ベルリン・ファイル』(2013)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=XUKTyRMGGCQ

韓国側の役人として、
クァク・ドウォンが登場し、
また北朝鮮の保安観察員として、
『The Net』のリュ・スンボムも登場します。

アクション娯楽映画、なんでしょう。
話は、モサドやアラブのテロシストやロシアの武器ブローカー、
なども関わってきますが、
まあ、それはそれほど重要ではない感じ。
見せたいのは、アクションなのでしょう。
それ自体は、成功していると思います。が、
あんまり深みは感じません。
もちろん俳優たちはいい感じです。
特にチョン・ジヒョンは、清潔な印象。
トータルでは、
ハリウッド的な作品、
と言ってもいいかもしれません。

『流れる』

幸田文原作、
成瀬巳喜男監督による、

『流れる』(1956)

を、何十年かぶりで見てみました。

田中絹代、
山田五十鈴、
高峰秀子、
杉村春子、
岡田茉莉子、
など、キャスティングは豪華です。

https://www.amazon.co.jp/流れる-田中絹代/dp/B01MRRMSF4/ref=sr_1_4?dchild=1&keywords=%22%E6%88%90%E7%80%AC%E5%B7%B3%E5%96%9C%E7%94%B7%22&qid=1584777505&s=instant-video&sr=1-4

舞台は、浅草(柳橋2丁目1)の芸者置屋。
女将の、つた奴、
その妹のシングルマザーと幼い娘、不二子、
二十歳過ぎの娘、
そしてそこで働く芸者たち、
住み込みで働く「女中」、
さらにはつた奴が「姉さん」と呼ぶ芸者組織の理事、
鬼子母神の義理の姉、
と、
ここまで全員が女性です。
男性はわずかに、理事の息子と、
すでに辞めた芸者の叔父、
それからほんの一瞬、
女将の妹の別れた夫が登場するだけです。

この映画の中で、
誰に注目すればいいのか?
まずは、つた奴の娘である勝代(高峰秀子)でしょう。
彼女は高校を卒業して3年目ですから、
21歳ほどで、無職。
結婚について問われた時は、
「わたしの半分は玄人で、半分は素人」であり、
これでは結婚などできない、と答えます。
彼女自身は、芸者という職業がイヤで、
かといって何ができるというわけでもなく、
職業相談所に行き、
ミシン縫いの下働きを始めることになります。
新しい社会へ踏み出したいけれど、
半身は旧時代に浸かっており、
もがいているように見えます。
そしてその旧世界の象徴である置屋は、
経営不振から売られることになるのです。
1956年というのは、まさに、
「もはや戦後ではない」とされた年であり、
映画と世相は、ややニュアンスを異にしながらも、
ぴったり重なっていると言えるでしょう。

また、「女中」(←と言う言葉が使われています)である梨花。
この名前に対して、女将は、
とても新しく珍しいもので覚えられない、
「お春さん、と呼んでいいわね?」
と、落ち着いて考えるとかなり無茶なことを言いだします。
梨花は、夫と息子を戦争で失くしています。
(戦争で、と言いはしないのです。
失くしてから10年一人だ、と言うと、
誰もそれ以上聞きません。
それは、敗戦後10年、という意味でしょう。)
つまり古い時代の傷を負っているわけですが、
一方で、田舎のしがらみがイヤで、
都会に飛び出してきた人間でもあるのです。
彼女の根は旧時代、旧世界にあり、
ただし彼女の中には、
未来に向かう芽が感じられます。
だから、
まさに未来そのものである幼い不二子に対して、
もっとも親しくふるまうのでしょう。
梨花は、不二子/未来を育てるのです。

おもしろい映画でした。

4.3回

よく知られている通り、
映画の観客数は、
今、こんな感じのようです。
(ネット記事・文春オンラインから)

*************************

2017年の観客数が多い国を順に並べると、
アメリカ、カナダ、韓国、フランス、日本、イギリス、ドイツ、オーストラリア
となるのだが、
観客数を人口で割った国民1人当たりの映画館での年間鑑賞本数は、
韓国の4.3回が最も多く、
日本は最下位の1.4回である。

************************

「観客数」だけ見ても、
人口で韓国を上回っているフランスでさえ、
韓国より下位に来ています。
(もちろん入場料の違いもあるのでしょうが。)

また、韓国の文化予算は2600億円で、
人口が倍以上いる日本のそれは、1000億。
一人当たりに換算すれば、
日本は韓国の1/5以下、だそうです。

映画は、「産業」であることが宿命づけられています。
韓国映画は、
いい循環を達成できているということなんでしょう。

2020年3月20日金曜日

『傷だらけのふたり』

ファン・ジョンミン主演の映画、

『傷だらけのふたり』(2014)

を見てみました。
(これもまた、Amazon Prime 無料版です。)

https://www.youtube.com/watch?v=RDm_r1rszmI

高利貸しの取り立て屋、ハン・テイル。
彼がある日、
昏睡状態にある男の取り立てに向かった時、
そこでその男の娘と出会い、
一目ぼれしてしまいます。
実はハン・テイルは、
そんな仕事をしているものの、
根はやさしい人間です。
この娘が無理やり書かされた覚書を、
ボスに言って、
自分のボーナスの代わりにもらい受けることにします。
で、それを娘に返すのですが、
その条件に、
ある回数一緒に一時間過ごすことを要求します。
彼女が好きだからです……
ここまでで、物語の1/4くらい。
この後、この二人の関係は予想外の方向に滑ってゆきます。

この映画のコメントとして、
「純愛映画」という表現が見られましたが、
たしかにそうも言えるでしょう。
まあ、涙なしに見るのは不可能な感じ。
ファン・ジョンミンは、
もちろんたくさんの作品で主演しているわけですが、
今回は中でも特によかったと感じます。
少し「おセンチ」ではありますが、
引き込まれました。

それにしても、
なぜ「おセンチ」なのに引き込まれるのかと言えば、それは、
ハン・テイルと家族の関係がかなり細かく描きこまれ、
そこには韓国の世相や、
兄弟間の感情の機微、
微妙な嫉妬や静かな葛藤まで、
観客に伝わってくるからでしょう。

また彼が好きになる女性(ハン・ヘジン)はクリスチャンで、
借金を取り立てられる司祭(神父?)も、
劇中で朗読される物語に登場する司祭もいます。
ハン・ヘジンは、
実生活でもクリスチャンであることが知られているようなので、
そのことと関係あるのでしょう。

ハン・テイル(ファン・ジョンミン)の兄に、クァク・ドウォン、
取り立て屋のボスに、チョン・マンシク、
チョイ役のやくざに、パク・ソンウン、
と、脇役も締まっています。
特に、クァク・ドウォンは、
小市民の持つさまざまな面を多様に演じていて、
感心しました。
鉄仮面的な役が多い気がしますが、
こんな演技もできるんですね。

2020年3月19日木曜日

『82年生まれ、キム・ジョン』

一昨年の暮れに出版され、
今なお売れ続けている
『82年生まれ、キム・ジョン』
を読んでみました。
かなりゆるく組んであって、170ページほどです。

82年生まれの女性の半生を描く「小説」です。
彼女の人生をたどることが、
その背景となった時代の様子も活写してゆきます。
もっといえば、
その時代、「女性」がどれだけ尊厳を奪われていたのか、
主人公がそれに気づく、という形で描写されてゆきます。

読んでいて、
何度か胸が詰まりました。
男たちこそ読むべきだ、
という感想があるようですが、
同感です。
これはフェミニズム小説です。
韓国映画を見ながら、
「女性」の視線を探していたのですが、
これがなかなか見つからず、
この小説を手にしたわけですが、
読んでよかったです。

(ただ、「情報」としては新鮮で面白かったのですが、
「文学作品」としてどうかと言われると、
語りの構造や、描写の濃度などに、
少し「?」も残りました。)

脱北者

昨日見た『工作』の中では、
韓国の右派が「敵」としての北朝鮮を必要とし、
北朝鮮はまた、必ずしも親北派の大統領を望まない、
というような状況が描かれていました。
1990年代のことです。

今朝の朝日新聞には、
韓国にいる、3.4万人の脱北者が、
まともな仕事にも就けず孤立している、
という記事が出ていました。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14408165.html

ここで紹介されていた一人は、
脱北して中国に渡り、
でもブローカーに騙され、
韓国系中国人に嫁として売られてしまい、
子どもをもうけ、
その後韓国に渡り、
やがて夫も合流し、二人目のこどももできたけれど、
いい仕事がないので夫が長男を連れて中国に戻ったあと、
次男と一緒に飢え死にした、
とのことでした。
ひどいです。

中国、と書いてありましたが、
これは延辺たりのことで、
韓国系中国人とは、いわゆる朝鮮族のことなんでしょう。

そして、こうした脱北者を韓国は支援しない。
それは、文大統領が、
北との関係をこじらせたくないこと、
支援を目当てに、
朝鮮族の移民が増えると困ること、
などが挙げられていました。
人々の間にも、
脱北者/朝鮮族への偏見があるようだし。

南北統一を願う人ももちろんいるでしょうが、
そうでない人もいて、
不思議なのは、
どちらも、大統領の対応を支持し得るという点です。
もちろん別々の理由からですが。

ただ、
いろいろあるでしょうが、
韓国のような豊かな国で、
飢え死にはまずい。
そこは、政治以前の問題なので、
やはり対応すべきだとわたしは思います。

『工作 黒金星と呼ばれた男』

今日見てみたのは、

『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)

です。

https://www.youtube.com/watch?v=9nUADUQccA0

1990年代、北朝鮮の核疑惑に関連して、
コードネーム「黒金星」である韓国のスパイが、
事業者を装って北朝鮮に入り込み、
核開発の情報を得ようとする、という物語です。
実話に基づいているそうです。

ただこれは、
娯楽的なスパイ映画であるというよりも、
「祖国愛」や「二人の人間の間の深い連帯」を描いていて、
秀逸でした。

スパイを演じるのは、ファン・ジョンミン。
そして北朝鮮側の窓口である高官が、イ・ソンミンです。
ファン・ジョンミンは、
ここでも何度か触れた通り、
安定した演技で安心して見ていられます。
そしてイ・ソンミンのほうですが、
彼は、わたしが見ただけでも、
『華麗なるリベンジ』、
『凍える牙』
『弁護人』
『生き残るための三つの取引』
などに出ていましたが、
今回の『工作』の彼が N.1 でした。
彼の代表作になるのでしょう。

物語の中で、
愛する「国家」のためと思って活動してきたスパイが、
ふと気づくのです、
自分がやってきたことは、
「国歌/祖国」のためではなく、
単に「政府・与党」に利用されていただけなのではないか、と。
単純なことなのですが、
国家 ≠ 政府、というのは、
見過ごされがちなことでもあるでしょう。

かなりよかったです。

2020年3月17日火曜日

『凍える牙』

Amazon Primeを「散歩」していて、
ふとソン・ガンホの顔が見えたので、
(しかも無料のものなので)
ちょっと覗いてみたら、
またもや、おもしろいのでした。
それは、

『凍える牙』(2012)

https://www.youtube.com/watch?v=hw07UUl8F3w

です。
あとから知ったのですが、
これは乃南アサの同名小説の映画化なのでした。
(だから、映画はたしかによかったのですが、
それがどの程度まで原作に負っているのか、
わたしは小説は未読なのでそれはわかりません。)

Amazon の作品紹介によれば、
ある男の体が、突如発火、炎上。
しかもその体には、獣の噛み跡があった。
この事件の捜査に、
昇進を逃し続けてきた男性刑事と、
新人女性刑事が当たることになる……
というような説明がなされていて、
この「発火」だの「炎上」だのに注意が行きますが、
それはごくごくささいな発端に過ぎず、
捜査の過程で浮上する物語の肝は、
狼犬と人間の交流であり、
また、その物語を駆動するホモソーシャルな世界と、
新人女性刑事の軋轢なのでした。

<ネタバレします>

犬が出てくる、
しかも人を襲う犬が出てくる映画といえば、
『ホワイト・ドッグ』や  Les Chiens がすぐに思い浮かびます。

http://tomo-524.blogspot.com/2016/08/blog-post_25.html

今回の映画は、この2作とは違って、
犬(正確には狼犬)の象徴性が多層的です。
単純に言ってしまえば、
それは「愛」と「憎しみ」、なのでしょう。
その「疾風」と名づけられた犬は、
子どものころから
「家族のように」(←というのも別の問題に発展しますが)
可愛がられ、
少女は、深い心の交流を果たしてきました。
が、その少女は、
家出したのをきっかけに、
悪者の毒牙にかかり、
ジャンキーにされ、売春を強要され、病気をうつされ、
精神を病んでしまうのです。
優秀な犬のトレーナーであった少女の父親は、
疾風を可愛がりながら、
同時に、殺人マシンとして育ててしまうのです。
それは娘を食い物にしたものたちへの復讐のためですが、
やはりトレーナー自身も、
そんなことをさせることへの苦しみを抱えています。

一方、新人刑事のウニョンは、
コンビであるサンギル(ソン・ガンホ←さすが)からも、
チーム全体からも、
「女は雑用でもやって後ろにいればいい」
という態度で迎えられます。
ただこの映画は、ウニョンや周りの男たちの表情から、
これが旧弊な男性中心主義であるを、
はっきり示していて、
そこらへんが無自覚な作品とは違っています。
ウニョンも、
「男性」性を内面化することではなく、
自分なりのやり方で捜査を切り開いてゆきます。
そして物語において、
彼女は異動させられ、
巡査に戻ることになりますが、
それは必ずしも「女性」の敗北には見えません。
ラストシーンが、
ウニョンと少女がバイクで疾走する場面であることが、
その証明だと言えるのでしょう。

なんの予備知識もなく、
予告編さえ見ずに、
ふらっと見始めた映画が、
こんなにおもしろいなんて……
韓国映画を見続けるわけです。

『監視者たち』

今年見た35本目の韓国映画は、

『監視者たち』(2013)

です。

https://www.youtube.com/watch?v=LWsgMznJSvc

警察内の、
「監視室」と呼ばれる部署を舞台として、
そのチーム、
及びそこに新規に配属された若い女性刑事「子豚」と、
優秀なリーダー「影」に率いられる犯罪集団との、
「息詰まる」駆け引きの物語です。
「影」を演じるのは、
『アシュラ』で悪にまみれたチョン・ウソン。
(『アシュラ』の時より、少し貫禄が付いている感じ。)
そして「子豚」(というあだ名に問題を感じますが)
を演じるのは、ハン・ヒョジュです。
緊迫感があり、
エンタメとしては良質だと思って見ていたんですが、
終盤になって、
さすがにこれはないでしょ、
という「ご都合」がいくつか連続して、
そこはちょっと今日を削がれました。
でもまあ全体としては、わりといいんじゃないでしょうか。

この映画は、基本的には、
「子豚」と呼ばれるハン・ヒョジュの成長物語です。
ただ、たしかにある「成長」は見せていますが、
それは
(ちょっと意地悪く言えば)
男性的ホモソーシャル内のルールを内面化する過程だ、
とも言えるようです。
実は映画内には、
もう一人目立つ女性がいて、
彼女はこの監視チームの室長です。
この女性は、
『Master』でキムママ役だったチン・ギョンが演じていて、
たしかに颯爽としていてかっこいいのですが、
やはり「男性」的ではあります。
ハン・ヒョジュにはボーイッシュな可憐さがあり、
チン・ギョンには「女性」的な美しさがあることは間違いないので、
そこに目が行ってしまいそうですが、
彼女らの内面は「男性」的だと感じます。

女性にとって、
男性中心的な集団の中で「成長」することが、
その集団の規範を内面化するということでしかあり得ないなら、
女性の成長物語というのは、
結局男性中心主義を強化する方向に行ってしまうわけですね。

2020年3月16日月曜日

イタリア

フランスもですが、
とりわけイタリアが困難に直面しているようです。
1月まで大学院の授業に来ていたイタリア出身のCさん、
彼女は2月にヴェネチアに帰るといっていましたが、
大丈夫かなと気にかかっています。
また、
今イタリアに住んでいる同級生からの、
2日ほど前のラインの一節に、
印象的な部分がありました。

*******************

外出移動禁止なので、
症状が出ると救急車がお迎えに……
一日に何度かサイレンが聞こえています😥

******************

「一日に何度か」!
リアルです。

そしてこちらも、
もう一人の同級生が書いた記事です。
彼もイタリア在住です。

https://comemo.nikkei.com/n/n29b492a0e2d2

心配しています……

2020年3月15日日曜日

『Master/マスター』

オム・ジウォンの出演作ということで、

『Master/マスター』(2016)

を見てみました。


きわめて大掛かりなマルチ商法で大金を稼いだ稀代の詐欺師。
彼の手下の一人であるハッカー。
そして彼を追う敏腕刑事とそのチーム。
この三角形が物語の骨組みです。
(オム・ジウォンは刑事です。)
イ・ビョンホンとカン・ドンウォンというスターが出ていて、
この二人を見せようというところが少なからずあるので、
韓国映画としては、
ややゆるい&浅い印象でした。

詐欺師のパートナーとして、
キムママと呼ばれる女性が登場します。
演じるのはキム・ギョンで、
彼女は『暗殺』において、
親日家の富豪の妻であり、
同時に独立運動を支援する女性という役を演じていました。
(出番は多くないのですが。)

この映画を見たのは、
もともとオム・ジウォンが演じる役の意味を知りたかったから、
なんですが、
これは何のことはない、
男性上司をよく補佐し、
ある種のハニートラップを成功させるという、
旧来型のモデル通りでした。
むしろ女性としては、キムママのほうが目立っていたのですが、
彼女は、ボスを出し抜こうとし、
けれどもあっさり見破られ、
ためらいなく射殺されるという、
(厳しく言えば)浅知恵で惜しくもない、
という存在として描かれていました。
もちろん、本質的にホモソーシャルな世界を描いているわけですが、
ちょっと期待しただけに残念でした。

2020年3月14日土曜日

『女は冷たい嘘をつく』

『女は冷たい嘘をつく』、
というタイトルに邪魔されて見るのが遅れたのですが、
原題は
『ミッシング:消えた女』
くらいの意味だと知って、見てみました。

『女は冷たい嘘をつく』(2016)

https://www.youtube.com/watch?v=VYkw92J6U9k

とてもよかったです。

医者と離婚したライターの女性、イ・ジソン。
幼い娘を引き取り、
シングルマザーとして奮闘しています。
(ただ、夫側から、娘をよこせと裁判を仕掛けられています。)
そんな中で、ジソンは、
新たなベビーシッターを雇います。
彼女、ハンメは、とてもよく仕事をしてくれますが、
ジソンが仕事にかまけているある日、
ハンメが、娘と一緒に姿を消してしまいます。
二人の行方を探すうち、
ハンメが背負ってきた「重荷」と、
そこから来る行為の「意味」が、
しだいに明らかになってゆきます……。

これはたしかに「ドラマ」、
しかもよくできた「ドラマ」にちがいないのですが、
やっぱりちゃんとしてると感じるのは、
背後に「社会(問題)」が感じられる点です。
エリートで医者で遊び人の男、
おそらくは彼を甘やかしダメにしてしまった母親、
働くシングルマザーに辛く当たる職場、
そして一番強く印象に残るのは、
やはりハンメのプロフィールです。
彼女は、「祖父が中国人」で、
彼女自身も「中国人」、という風に描かれます。
そして、韓国語も不十分なまま、農家の嫁にやってきた、
そこで期待されているのは、
とにかく子供を産むこと……、なのです。
(近所の農家もまた、同じように外国人の女性と結婚していました。)
つまり彼女は朝鮮族で、
祖父の時代に韓国を出て行ったのだろう、と考えられるわけです。
ドラマの背後に、
こうしたさまざまな社会問題を自然に配置しているのが、
一般に韓国映画の美点なのだと感じています。
そしてそうした社会問題は、
往々にして歴史的でもあるわけです。

主演のオム・ジウォンもよかったので、
別の彼女の出演作を見てみようと思います。
ここまで、
たくさんの魅力ある男性俳優を見てきたので、
今度は女優も、もっと知りたいところです。

「五輪の木材」

これからは、
国立競技場を見るたびに、
このことを思い出すかもしれません。

https://www.msn.com/ja-jp/sports/tokyogorin-2020/五輪の木材、説明なく伐採と反発-アイヌ団体、国立競技場に使用/ar-BB11avne?ocid=spartanntp

Bientôt Trump ?

トルドー首相夫人が、
感染してしまいました。

https://www.lci.fr/international/coronavirus-la-femme-de-justin-trudeau-contaminee-par-le-covid-19-le-premier-ministre-canadien-a-l-isolement-2147884.html

そして、トランプ大統領と会食したブラジルの高官が、
今日になって、
実は感染していたとことが判明しました。

https://www.parismatch.com/Actu/International/Coronavirus-le-chef-du-service-de-presse-de-Bolsonaro-qui-a-vu-Trump-diagnostique-positif-1678621

アーセナルのアルテタ監督もまた。

https://rmcsport.bfmtv.com/football/arsenal-annonce-la-contamination-d-arteta-au-coronavirus-1874087.html

株は、日本でもアメリカでも暴落していて、
今現在、
NY市場は上がっていますが、
カラ売りの買戻しや、
公的資金の下支えや、
投機的な動きもあるので、
上がる日ももちろんあるのでしょう。
が、それでも、
前日の下げの分を取り返しておつりがくる、
という展開にはぜんぜんなってないので、
これこそまさに、
「下げ相場」と呼ばれるのもなのでしょう。
結果的にどこが「底」になるのかなんて、
まだ誰にもわからないでしょう。
(相変わらず、
証券会社関連の分析コメントは、
「半値戻しでも儲かる(から今買っとこう)」
的なものが多いように感じますが。)

明治大学も、
残念ながら、
卒業式や入学式の中止を決めました。

そしてドイツ銀行のこのニュースは、
わたしにはその「意味」が、
よくわかりません。

https://jp.reuters.com/article/deutsche-bank-bonds-idJPKBN20Z050

デフォルトではない、
ということらしいんですが。

そしてブルームバーグに出ていたこの表、


これを見ると、
本格的なリセッションは、
この後、ということになるわけですが……。


2020年3月13日金曜日

Stromae fête ses 35 ans

「まいにちフランス語」のオープニングで流れるストロマエ。
ああ、自殺まで考えたんですね。
思いとどまってくれて、
ほんとによかった。

https://fr.style.yahoo.com/stromae-fete-ses-35-ans-13-choses-que-vous-ne-saviez-pas-sur-lui-103045637/photo-f-111441349.html

2020年3月12日木曜日

『見えない太陽』

フランスの若ものが、
ある日、
家族を捨てて、
シリアに旅立とうとする。
IS に加わり、
欧米文明を打倒するつもりで。

それは現実世界で数多く起きていることであり、
ここでも、
それにかかわる3本の映画を見てきました。

http://tomo-524.blogspot.com/2017/09/la-route-distanbul.html

これらはどれもいい映画で、
強い印象を残しています。
で、
今日見たのは、
同じテーマを扱った、

『見えない太陽』(2019)

です。
Amazon Prime にあったので、
日本語字幕版で見ました。

アンドレ・テシネ&カトリーヌ・ドヌーヴとくると、
わたしなどは、
『海辺のホテル』(1981)
を思い出してしまいます。
学生時代に見たわけですが、
約40年後に、
このコンビでこんな映画が出てくるなんて、
0.001mm も思いませんでした。

また、アンドレ・テシネと言えば、これがありました。

http://tomo-524.blogspot.com/2013/11/la-fille-du-rer.html

これは日本では未公開でしたが、
ここしばらくの、
テシネ監督の問題意識の傾向が現れているのでしょう。

さて、『見えない太陽』ですが、
これは原題は、
L'Adieu à la nuit で、
字幕の訳を当てはめるなら、「夜への決別」です。
「ジハード」に向かうときの、決意の言葉です。

フランスとスペインの国境近くの田園。
ドヌーヴ演じる女性は、
centre équestre(乗馬学校)を共同運営しています。
そこに、久しぶりに孫息子が帰ってくるのですが、
彼は実は、アラブ系の恋人と(やアフリカ系の勧誘員と)ともに、
シリアに向かう決意をしています。
それに気づいたドヌーヴは、
なんとか引き留めようとするのですが……

2016年に撮られた3本と比べると、
フランス社会も、
テロ活動にかかわる法律も変わり、
その変化が映画にも影響しています。
難しいのは、
ドヌーヴをキャスティングした功罪でしょう。
彼女は「大女優」であり、
フランスの象徴としての「アリアンヌ」足りえる存在です。
きっとそこが、
起用のポイントなのでしょう。
ただ、やはりどこか、
彼女を捉えるカメラには遠慮が感じられて、
「きれいに」撮るざるを得ないのかな、
と思えてしまいます。
それは、弱点でしょう。

どちらかといえばいい映画だと思いますが、
例の3本に比べると、
若者の内面への迫り方も、
彼らがISの思想にはまっていく過程の表現も、
やや劣っていると感じました。

2020年3月11日水曜日

『インサイダーズ/内部者たち』

今年に入ってから見た、
32本目(←数えてみました)の韓国映画は、

『インサイダーズ/内部者たち』(2015)

です。

https://www.youtube.com/watch?v=84mUza5yQuo

登場人物も多く、
やや込み入った話であるにもかかわらず、
引き込む力がとても強い映画で、
感心してしまいました。
エンタメ、と言えばそうなんでしょうが、
わたしが見た範囲のエンタメ系韓国映画は、
ハリウッド的な軽薄なスリルで満足することなく、
もっと(いい意味で)がつがつした、
より人間の「業」に近い部分にまで手を突っ込んでいる作品が多い気がします。
だから、ある「迫力」が生まれ、
それが見るものを引っ張ってゆく力になるのでしょう。
(ただし、繰り返し書いている通り、
それがしばしば、
男性中心的なホモソーシャルな世界を舞台にしている点が、
片肺飛行的な印象を与えもするのですが。)

今回の映画も、
大統領を狙う政治家、建設会社社長、新聞社の主幹、
がつるみ、
そのサークルは検察の上層部とも通じている、
という構図の中で起きます。
そしてこのサークルの背後には、
より抽象的ではありますが、
学歴主義的で、ネポティズムが跋扈する韓国、
というものが横たわっています。
物語は、一人の若い「コネなし検事」と、
あのサークルの下っ端に位置する「ゴロツキ」を中心に展開します。
検事は、コネがなくとも這い上がろうともがき、
ゴロツキは、陥れられ、復讐を期しています。
そしてこの二人の道行きが重なったところで、
スパークが起きるわけです。

何も知らずに見始めたのですが、
韓国では、大きな賞を2つも獲得している作品でした。
わたしは韓国映画の「にわかファン」なので知りませんでしたが、
きっと有名な映画なんでしょうね。

映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~

アンスティテュで始まります。

https://www.institutfrancais.jp/tokyo/agenda/cinema200312/


2020年3月10日火曜日

『ライフ・オブ・パイ』

インド独立前後のポンディシェリが出てくるというので、
ためしに、

『ライフ・オブ・パイ』

を見たのですが、
数十年前の体験を、
訪ねて来た見知らぬ小説家に主人公が語る、
という形式そのものからして、
のれませんでした。
3つの宗教を信じ、
動物たちに心寄せる主人公、
というのは、魅力的なはずなんですけど……。


『悪のクロニクル』

『ありふれた悪事』のソン・ヒョンジュが主演の、
エンタメ系サスペンス、

『悪のクロニクル』(2015)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=SMWu7xc3s2g

昇進を間近に控えた警察のチェ係長が、
その前祝いの帰り道、
突如、タクシーの運転手に襲われます。
けれども、もつれあいの中で、
暴漢は死んでしまいます。
チェは、昇進のために、
この「事件」をもみ消してします。が、
すぐに、彼が犯人だと気づく部下がいて……
というお話なんですが、
実は、これはほんの導入で、
この「事件」の背後に、
その何倍も大きなからくりがあるのです。

エンタメだし、
Amazon Prime 無料だしで、
つまらなかったら止めるつもりで見始めたんですが、
とてもちゃんと作られていて、
ちょっとびっくりしました。
「男たち」のホモソーシャルな世界で、
そういう意味での狭さはたしかにあるのですが、
今回は、その狭さをうまく使ってもいた気がします。

ただこれは、
復讐の物語であり、
失われた父権を回復しようとする物語でもあるわけです。
それをどう見るかという問題は、
もちろんありますね。

la journée des droits des femmes

<女性の権利の日>(国際女性デー)のデモに対する、
暴力的な対応。
フランスで、メキシコで、パキスタンで……。

https://twitter.com/BFMTV/status/1237020313864400898

そういえば、
とりわけ女性たちに問い詰められると、
たとえテレビ中継中でも、
逆上してめちゃめちゃなことを口走る人がいますが、
あれは、
そうした女性たちの優秀さに対する、
深いコンプレックスなんでしょうか?

とにかく、
クォータ制、わたしは賛成です。

コロナ、フランスでも


フランスでも……。

2020年3月9日月曜日

『ラスト・プリンセス  大韓帝国最後の皇女』

日本による韓国併合が1910年。
その当時、たとえば東洋拓殖などに土地を奪われ、
中国領に移民した人たちもいたわけですが、
(そしてそれが、現在、
韓国映画における朝鮮族の登場の背景の一つでもあるわけですが)
そうした庶民の動向とは別に、
朝鮮王家の人たちが余儀なくされた人生というものも、
当然あったわけです。
それを描いたのが、

『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』(2016)

です。
この映画は、史実に基づきながら、
そこに大胆なフィクションを組み込んで作られています。

https://www.youtube.com/watch?v=UntBSHuNBG0

主人公は、徳恵翁主、王の側室の娘です。
彼女の人生が、この映画の「物語」を形成しています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/徳恵翁主

彼女が生きたのは、1912~1989 ですから、
日本によって植民地化されていた時代、
世界大戦、そして独立、
朝鮮戦争、
軍事独裁、
民主化、
まで、韓国の近代を身をもって生きたわけですが、
王族だけに、
それぞれへのかかわり方が、
やはりきわめて特異です。

まず、植民地時代、
12歳になっていた1925年、
彼女は日本に留学させられます。
これはいわば、「人質」であり、
朝鮮王室が、天皇家に、日本政府に、
逆らえないようにするのが目的でした。
ただ日本において、表面上は、
皇族並みの厚遇を受けてはいました。

徳恵翁主が住んだのは、赤プリの旧館。
大学卒業の時の謝恩会は、そこでやりました。
今思うと、不思議な気がします。)

1931年には、日本の皇族と結婚し、
子どもももうけ、
そして終戦。
韓国は独立します。
彼女は、夢にまで見た帰国を果たそうとしますが、
イ・スンマン政権は、
旧王族の帰国を拒否。
彼女は日本に留まらざるを得なくなります。

戦後、離婚した彼女は、
精神を病み入院。
その後1962年、
つまり終戦後17年も経って、
やっと帰国することができましたが、
その時には、
彼女の病は深く進行していました……

J'avoue que ...
わたしは、貴族だの王室だの皇族だのが登場するフィクションには、
基本、あまり感情移入できません。
彼らの考え方も、悩みも、喜びも、
サイズの合わないジャケットのような感じ。
で、
今回も、そういう感じで見続けていたのですが、
終戦後に帰国を拒否されたあたりから、
人間的な苦しみが画面に溢れ始めました。
わたしとは違う価値観の人ですが、
やはり、その苦しみには、ただならぬ気配がありました。
いい映画だと言うつもりはないのですが、
人間・徳恵翁主には、
惻隠の情を禁じえませんでした

twitter

3月になり、
まいにちフランス語も最終月に入りました。
で、これからは、
前のほうの課で出てきた表現や文法事項のうち特に大事なものが、
いろんな形で再登場します。

で、twitter には、すぐに、

「この半年間の総まとめが始まっているようで、なんだかさみしい」

という書き込みがありました。
楽しみにしてくれているようで、
うれしいです。
Merci beaucoup !

それから、
先日の放送では、
考えて、というよりは、
ごく自然に、
「勉強って楽しいですよね!」
という一言が入ってしまったのですが、
それに共感してくださるコメントもありました。
通じた感じがしてうれしいです!
Merci beaucoup !

さらに、
今話題の映画、『レ・ミゼラブル』について、
これを見てイメージが広がったのは、
まいフラと、堀江さんの『郊外へ』のおかげ、
という書き込みもあり、
これも、少しはお役に立っていると思えて、
ありがたかったです。
Merci beaucoup !

もちろん、
そもそもは、
放送を聞いてくださっている方みなさんに、
Merci beaucoup !
ですけどね!

2020年3月7日土曜日

『暗殺』

今日は、近美の工芸館に、
移転前の最後の展示を見に行くつもりだったのですが、
このご時世だし、
と思って確認してい見ると、
やっぱり閉館していました。
そういえば、ちょっと前に、
国立の博物館などが閉館になるというニュースがありましたが、
そのときはなぜか、
今日の予定のことと結びつかず……
見たかったんですが、残念です。

で、
仕方ないので(?)、
ゆっくり見られる時に取っておこうと思って残してあった、

『暗殺』

を見てみました。
これも、いわゆる『抗日映画』の1本です。

https://www.youtube.com/watch?v=uHl-OKNgSik

結論から言うなら、
とてもよかったです。
ストーリーの中で、
人物たちの考えや行動が変化し、深まり、
それが、各人物が背負う象徴性の重さに結実してゆくのです。

物語は複雑です。
(で、二度見ました。)
時間的舞台は3つあり、
まずは、1911年、
つまり日本が韓国を併合した翌年。
そしてメインとなる、1933年。
最後が、戦後の1948年、
反民族行為処罰法の時代です。
登場人物も多く、
韓国の解放を目指す闘士たち、
日本におもねり、金儲けと爵位を欲する韓国人ブルジョワ、
韓国を支配する軍人、警察官たち、
つまり総督府の総督である、あの寺内正毅や、
韓国駐留軍の司令官、
そして流れ者の殺し屋(ハ・ジョンウ)、などです。
また空間的な舞台も、
京城、杭州、上海(フランス租界)、延辺付近、満州、
など多様です。
特に、中国領である延辺付近は、
韓国独立運動派の拠点があった場所であり、
青山里戦闘の報復として、
日本軍による朝鮮人虐殺のあった場所です。
物語には、この虐殺によって家族を失った美しい闘士も登場します。

<ネタバレします>あ

物語の中心にいるのは、
イ・ジョンジェ演じるヨムでしょう。
彼は、1911年、独立を目指す闘士として、
あるブルジョワの暗殺を試みます。
しかしこれは失敗。
日本の憲兵に捕らえられた彼は、
拷問の末、日本のスパイとなることで釈放されます。
そして1933年、
司令官とそのブルジョワを暗殺する計画が持ち上がり、
彼はこの計画も日本側に密告します。
ただ彼はこの時、革命軍のボスによって、
スパイであることを見破られます。
彼は独立運動組織を離れ、
今度は、直接ブルジョワなどに情報を提供したり、
表立って日本軍に協力する道を選びます。
それは、金稼ぎの道でもあります。
そして時は流れ、
日本は敗戦。韓国は独立を果たします。
48年には、反民法によって裁判を受けますが、
証人が謎の死を遂げ、
彼は証拠不十分で釈放されます。
が、かつて彼に裏切られたものたちは、
忘れていませんでした……

新興(シヌン)武官学校、というのが登場するんですが、
これは、独立派の、
闘士の養成のための学校です。
暗殺のために呼ばれた3人の中に、
この学校の出身者、チュ・サンオクがいました。
学校の所在地は中国領で、つまり、闘う時は、
「鴨緑江を越えてゆく」のです。

この人物と、ヨムは、似ています。
当初、独立の夢を熱く抱いていましたが、
ヨムは投獄・拷問によって転向、
日本軍の協力者となり、
戦後、それを隠して警察組織の上位にとどまります。
一方チュ・サンオクは、
やはり若い頃独立を熱望し、
その後投獄を経て「現実主義者」に変貌しましたが、
それでも、一旦暗殺の任務にコミットすると、
昔の魂を取り戻したかのように、
命を懸けて戦います。
そして、死んでゆきます。
またここに、請負の殺し屋を並べてもいいかもしれません。
彼は、ハワイ帰りの朝鮮人で、
金のためしか動かなかったのですが、
何の罪もない朝鮮人の少女が、
目の前で日本軍人に殺されるのを見て、
態度が急変するのです。

この「ハワイ・ピストル」と、ヨムの一騎打ちのシークエンスは、
とてもよかった。
対日協力者であるヨムは、
拳銃で相手を撃つのですが、
民族意識に目覚めた「ハワイ・ピストル」は、
最後の力をふりしぼって、
ヨムの胸に、ナイフを突き立てるのです。
この、撃たれても、武器がなくても、抵抗を止めない姿こそ、
韓国の「建国神話」の本質であるように見えました。

小さなことですが、
この映画には、韓国独立運動に協力する日本人も登場します。
こういう人物が一人いるだけで、
映画に奥行きが生まれると思います。

また、日本占領下にあった京城ですが、
ここにあったカフェでは、
音楽が流れ、ダンスを踊り、酒を飲む庶民の姿がありました。
とにかく暗いだけ、つらいだけの生活だったわけではない、
ということなんでしょう。
(もちろんこれは、侵略を正当化するものではありませんが。)
こういう描写もまた、
単純な図式から逃れるのに有効でしょう。

ここでは触れなかった、
重要なサブストーリーもいくつかあります。
もちろんフィクションですから、
そんなうまくはいかないでしょ?
と感じるところもあります。
でも、全体としては、かなりいいと思いました。

2020年3月5日木曜日

『教授とわたし、そして映画』

ホン・サンス監督の作品、

『教授とわたし、そして映画』(2010)

を見てみました。
4部構成で、
1,2は、同じ男性の現在と過去、
3は、彼の教授、
4はオッキという女性、
の視点で撮られています。
4のタイトルが「オッキの映画」で、
映画全体のオリジナル・タイトルも、
それと同じです。

三角関係の話です。
オッキは映画学科の女子大学生で、
彼女は、明らかに50代に見える教授のことが好きで、
一度だけ、ベッドをともにしたこともあります。
そしてもう一人の男性は、
オッキの同級生です。
つまり、男性教授と、
男女二人の教え子の間の三角関係です。

教授は、なんというか、
むだにロマンチックで、実は狭量な人。
まあ、年齢も行っているし、
映画監督でもあるということなので、
経験からくる知識はあるのでしょうが。
そして男子学生は、
女に目がないいいかげんな奴。
短期的には、「女を手に入れる」ために、
やみくもに一途になりますが、
そこにも、自己欺瞞の匂いがします。
そしてオッキ。
教授への接近は彼女の意思だったわけですが、
同級生との付き合いは、
必死で求められて、
その必死さにシンクロするように、
(相手の欲望そのものを欲望するように)
始まったものに見えます。

多くの人が指摘しているように、
ロメールやトリュフォーの雰囲気が思い出されます。
そうした「タッチ」が好きなら、
好きになれるのでしょう。
わたしの場合は、
終始苦笑いをしながら見ているような感じでした。
以前にも書きましたが、
小説家が出てくる小説、
演出家が出てくる芝居、
映画監督が出てくる映画、
こうしたものは、
基本的にわたしは苦手です。
今回も例外ではありませんでした。

『ラッキー』

今調べてみたら、
『パリ・テキサス』の日本公開は1985年。
ちょうど院生の頃で、
試写会に行って、
プレス用の写真がもらえて嬉しかったのを覚えています。

で、
その『パリ・テキサス』の主演は
ハリー・ディーン・スタントンだったわけですが、
彼は2017年、91歳で亡くなりました。
そして翌年、遺作として公開されたのが、

『ラッキー』(2018)

でした。

https://www.uplink.co.jp/lucky/#intro

わたしは今日初めて見ましたが、
よかったです。
静かで、決然としていて。

印象深いシークエンスがいくつかあって、
それはたとえば、
主人公の老人が、
知り合いのガーデン・パーティーで、
スペイン語の歌を歌うところ、
あるいは、
たまたまダイナーで出会った海兵隊の退役軍人と、
海軍にいた主人公が、
第二次世界大戦について、
まさに昨日のことのように語り合うところとか。

で、実はこの映画もまた、
Amazon Primeで無料の作品でした。
家にいても、いろんな空間を体験できて、
映画はいいですね。

2020年3月4日水曜日

「緊急事態条項の実態は『内閣独裁権条項』である」

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2016030100008.html?page=1&fbclid=IwAR2oTyRvG62JRAZlLFPNlJgoo6esPHF2GXf3NfNf3l9RK9jLSXFoaHFOgmQ

それで、
根拠なく暴走されたら……
いつか来た道、になると感じます。

『グエムル -漢江の怪物』

ポン・ジュノ監督の、

『グエルム ―漢江の怪物』(2006)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=pfrrcpTzpio

ストーリーは単純。
アメリカ軍が漢江に捨てた劇薬のせいで、
その6年後の2006年、
漢江から怪物が現れます。
そしてその怪物は、未知のウイルスさえ持っています。
多くの犠牲者とともに、
漢江の近くで小さな売店を営んでいた三世代家族も襲われ、
小学生の女の子がさらわれてしまいます。
彼女の父親や叔父伯母たちは、
危険を省みず、救出に向かいます……

表面だけ見れば、
怪物が出てくる恐怖映画、なのでしょう。
ただ、この怪物が、
(現実に行われた)アメリカ軍の不始末から生まれたことなどを考えると、
一般に言われている通り、
「反米映画」的な側面はあるのでしょう。
あの「枯葉剤」を揶揄した呼称も使われますし、
特にラスト近くでは、
今回の事件を総括するアメリカについてのニュース番組に対して、
メシがまずくなるからテレビを消す、
しかも足で、
という演出がなされていて、
この場面はなかなかよかったです。

なるほど、と思ったのは、
攫われた少女の若い叔父が、
大卒でフリーターで、
(おそらく学生運動を通して)韓国の民主化に貢献した、
とされていること。
その彼が、怪物との戦いにおいて出してくるのが、
なんと火炎瓶!
これはナイスでした。

ただ、
映画のデキとしてどうかと言われると、
わたしは、可もなし不可もなし、という感じ。
それは、監督自身も「反米映画」と言いながら、
最も大事な、
怪物そのものの象徴性がよく見えないからなのでしょう。
一応、アメリカの傲慢がもたらした韓国の不幸、
ということにはなるんでしょうが、
もしそうなら、
ちょっと単純すぎる気が……。

そこが、たとえばゴジラとの、
決定的な差なのではないかと感じました。

2020年3月3日火曜日

『華麗なるリベンジ』

今年に入ってから見た韓国映画の、
26本目にあたるのは、

『華麗なるリベンジ』(2016)

です。

https://www.youtube.com/watch?v=yP4G_tLRUQM

ファン・ジョンミンとカン・ドンウォン。
このコンビなら、
まあエンタメとして、
80点は固いだろうと思っていましたが、
明らかに90点以上でした。

この現代にあって、
暴力的な取り調べを続けている若手検事。
でもある時、
そんな風にして調べた容疑者(←明らかにワル)が死んでしまい、
検事はその罪を擦り付けられ、だまされ、
懲役刑を受けます。
ここから、彼のリベンジが始まります……

頭脳的復讐モノであり、
法廷モノであり、
さらに、カン・ドンウォンが、
イケメン詐欺師としてコミカルな要素を注入し、
脇はパク・ソンウンやイ・ソンミンが固め、
(「男性」の物語であることは否めませんが、
ミソジニーということもなく)
それはまあ、エンタメとしてはおもしろくなりますね。

2020年3月2日月曜日

『密偵』

韓国映画には、戦後、
「抗日映画」or「光復映画」と呼ばれる一群の作品が作られました。
今日見た

『密偵』(2016)

https://www.youtube.com/watch?v=6f171NPNRIs

は、そうした流れの中に置くこともできるものでした。
主演のソン・ガンホはさすがでした。

舞台は、1920年代、
日本占領下の京城(現ソウル)です。
ソン・ガンホが演じるのは、
通訳としての語学力と経験を活かし、
日本の警察の一員となり、
密偵として働いているイ・ジョンチュルです。
彼が、独立運動を行っている組織に潜入し、
ただ、その組織のボスは、
イ・ジョンチュルの民族の誇りに賭け、
彼に二重スパイになるように説得するのです……

カタルシスを狙った部分があり、
実際それは達成されて気持ちいいのですが、
その分、少しエンターテイメントに寄ってしまったかもしれません。
またこれは、ある種の「建国神話」なのでしょう。
そのためか、やや制作者と映画の距離が近い気もしました。
とはいえ、
見ていてかなり引き込まれる映画でした。
またソン・ガンホの演技は、
わたしが見た中でも指折りのもので、
素晴らしかったです。

2020年3月1日日曜日

『コインロッカーの女』

朝鮮族が描かれているということ、
女性が主人公だということ、
この2点で見始めたのが、

『コインロッカーの女』(2015)

です。
コインロッカーに捨てられた女の子が、
臓器売買を手掛ける朝鮮族マフィアの女性ボスに買い取られ、
育てられ、
マフィアの一員として働く、
けれどもその過程で出会い、
人間の心を取り戻しかかるも、
それは彼女にとって「お母さん」となったボスにより、
あっさり殺される、
そして彼女も殺されかかるけれど……
というお話。

まあ、結論から言えば、
イマイチでした。
韓国でたくさんの映画賞を獲ったようなんですが、
深刻さが仇になっているように感じました。
そして、またもやミソジニー。
ボスの女性と拾われた娘、
映画の終末近く、
この二人が交わすのは、
わたしたち以外みんな死んだ……
という言葉です。
そう、
主人公にやさしくした若者も、
彼女のことが好きだった男たちも、
彼女の「兄」も、
死んでゆきます。
この二人は、もう「死神」級です。
ホモソーシャルであるのが「ふつう」の世界において、
女性ボスを戴いたせいで、
男たちは破滅するのです。
もう、ミソジニー以外の何物でもありません。

この映画に対するわたしの評価は、
かなり低いです。

3000 nuits

パレスチナ映画、

『ラヤルの三千夜』(2015)

を見てみました。
(わたしが見たのは、
フランス語字幕版の 3000 nuits です。)

https://www.youtube.com/watch?v=i7j3cYat4Fk

見ようかどうか迷っていたところ、
ふとジャケットを見ると、
そこにあったケン・ローチのこの言葉、

Voyez ce film, voyez-le maintenant !

が目に飛び込んできて、
じゃあ見るしかないなと。
で、
たしかに、
とてもいい映画でした。

舞台は、1980年のナーブルス。
(ここは、『シリアの花嫁』に登場するイスラエル係官の息子が、
兵士として派遣されていた場所です。)
爆弾テロ事件に関して、
何も関係なかったにもかかわらず逮捕されたラヤルは、
8年(=3000夜)の懲役刑を受け、
刑務所に入れられます。
(拘置所も兼ねています。)
そこは、イスラエルの「通常」の犯罪者たちと、
パレスチナの政治犯たちが一緒に入れられているのですが、
その待遇の差は歴然としており、
イスラエル人の女性看守たちも、
ラヤルたちには厳しく当たります。
当初、強い政治的意思があるわけでもなく、
ただ早く出たいと思っていたラヤルですが、
刑務所内で出産し、
夫には逃げられ、
「囚人」仲間たちとの関係を築く中で、
次第にパレスチナの政治状況について意識的になってゆき……

注意すべきは、やはり1980という年号です。
実は映画内で、
「サブラー・シャティーラ事件」
(レバノンにおける、パレスチナ難民大量虐殺事件)
のニュースが流れるのですが、
これが1982年です。
そして83年には、PLOがイスラエル人兵士6人を捕虜にし、
捕虜交換の形で、
収監されていた4000人以上のパレスチナ人が解放されます。
(とはいえ、1948以降、
のべ70万人のパレスチナ人が収監されて、
ひどい扱いを受けているのですが。)

映画はほぼ全編刑務所内で進行し、
たしかに重くもあるのですが、
いい映画であることは間違いないと思います。

『ザ・メイヤー 特別市民』

クァク・ドウォン出演の政治ドラマ、

『ザ・メイヤー 特別市民』(2017)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=Kb2bfA1VqyE

これは、ソウル市長選挙を舞台に、
各陣営同士の駆け引き、
そして陣営内の軋轢などを描いています。
見ていて飽きず、
最後まで観客を引っ張ってゆく力は十分にある作品でした。
ある種のオープン・エンドであり、
見終わった直後は、もう少し見せて、
という気もしたのですが、
まあ、全部の筋にオチを付けるのがいいわけでもないので、
今は、これでいいのかなという気もしています。

なにかこう、
すごく深さがあるというわけでもなく、
日本でもよく見られる「現実主義」
(いつまでも青いこと言ってんじゃねえぞ的なもの)
が中心にあります。
そういう意味ではエンタメの範疇に入ると思います。

ただ、日本映画で、
たとえば都知事選を舞台にしたフィクションはないようです。
あってもよかったはずですが、
これはもう端的に、
作る側も見る側も、
そうした映画を望んでこなかったということなのでしょう……