2015年7月9日木曜日

Mayrig / 588 rue Paradis

マルセイユ繋がりで何か、
と思って探していて、
そういえばこの2作をまだ見てなかったことを思い出しました。

Mayrig (1991)

と、その続編である

588 rue Paradis (1992)

です。
アンリ・ヴェルヌイユ監督の自伝的要素も強いこの連作は、
それぞれ2時間を超える長尺です。
第一次大戦中(だけではありませんが)にオスマン帝国で発生した、
いわゆる「アルメニア人虐殺」。
これをかろうじて生き延びたアルメニア人家族が、
1921年、マルセイユにたどり着き、
そこから新生活を築いていくという、
まさに移民映画そのものです。

物語は、一家の子供であるアザッドの目を通して語られます。
(監督自身なんでしょう。)
俳優陣は豪華で、
少年の父がオマー・シャリフ、
母がクラウディア・カルディナーレ。
(なんて響きのいい名前なんでしょう。)
成長する少年は、何人かによって演じ分けられますが、
大人になってからは、リシャール・ベリが、
いつもの厚みのある演技を見せてくれます。
ちなみに、Mayrig というのは、
アルメニア語で「母」のこと。
少年の名の「アザッド」は、「自由」のことです。

Mayrig のほうでは、
マルセイユの名所的なところがいくつも映し出されますが、
印象的なのは、
初めてマルセイユに着いたときの背景に見える、
大聖堂でしょう。

そして映画の「場所」について言うなら、その
中心はもちろん rue Paradis(天国通り)です。

トータル4時間を超える大河的物語の中で、
まず一家が最初に住みつくのが、
この通りの109番地。
小さな仕立て屋を出すのが、168番地。
金持ちの同級生は412番地の豪邸に住み、
最後、アザッドが母にプレゼントする家が、588番地にあるのです。
一家の物語は、
この通りでの移動のそれであり、
また、
この通りの変化そのものでもあります。
現代のマルセイユを描く作品とは、
ずいぶん雰囲気が違いますが、
それは、部分的には、
移民一世と、二世・三世の違いでもあるのでしょう。

両作品は、YouTube で見ました。
これ、DVD は品薄で各1万円以上するので、
とても助かりました。

https://www.youtube.com/watch?v=kaVc_XVDk18

https://www.youtube.com/watch?v=5ZaJ5oHADIY (英語字幕付き)