2016年8月13日土曜日

『ぜんぶ、フィデルのせい』

ギリシャ系フランス人監督として知られるコスタ・ガヴラス。
彼の娘であるジュリー・ガヴラスも監督なんですが、
彼女の撮った

『ぜんぶ、フィデルのせい』(La Faute à Fidel !

を(タイトルに惹かれて)見てみました。
(「フィデル」とは、カストロのことで、実際キューバでは、親しみを込めて、
またラウルと区別するためもあり、
フィデルと呼ばれているそうです。)

https://www.youtube.com/watch?v=mrdolzPS3zo

1970年。
主人公は9歳の女の子アンナ。
弁護士の父と雑誌(「マリ・クレール」)の編集者の母、
庭付き一戸建てのパリの家、
キューバ出身の家政婦、
カトリック系私立小学校、
に囲まれてブルジョワ生活を満喫していた彼女ですが、
スペイン系の父親の妹が、
フランコ政権を逃れてパリにやってきたことで、
事態は一変します。
父親は、今まで妹たちを助けなかったことに罪悪感を感じ、
また、妻とのチリ訪問をきっかけに、「コミュニスト」に変身。
ブルジョワ的環境をすべて捨て去り、
チリ移民らの支援に乗り出します。
妻もまた、(ヴェイユ法以前なので)中絶の権利獲得に奔走します。
そんな中、ブルジョワ的生活が恋しいアンナは、
なかなか変化を受け入れられないのですが……
というお話。
(すべての変化は、だから、フィデルの(革命思想の)せい、
となるわけです。
もちろん、「ヴォルテールのせい」という表現を、
踏まえているのでしょう。
こんな映画もありました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/01/la-faute-voltaire.html

時事的エポックは2か所あって、

・ド・ゴールの死(le 22, 11, 1970)
・チリ・クーデタ(le 11, 09, 1973) ←もう一つの 9.11

です。
70年代のフランスの左派にとって、
このチリの問題が大きかったことは、
『戦争より愛のカンケイ』でも描かれていました。

父コスタが、チリのクーデターを描いた『ミッシング』をとった時、
ジュリーは11歳だったと言います。
アンナの造形には、監督本人の経験が使われているのでしょう。

映画としては、やや単調&単純だと言えなくもないですが、
こうした作品も、日本映画ではお目にかかりません。
アンナは、かわいかったです。