2025年11月28日金曜日

Cyberpunk

この18分のインタヴューは、
今の、トランプはもちろん、
マスクやティールやザッカーバーグが「活躍」する時代を、
かつての「サイバーパンク」の延長上に捉えようとする試み、です。
ちょっとおもしろかったのが、
途中唐突に、
ボウイとロマン・ガリーの名前が出てきたところ。
(13分あたり)


ゲストであるAsma Mhalla 先生は、
1984年生まれで、フランスとチュニジアの二重国籍を持っているようです。
彼女が教えているシアンス・ポとポリテクは、
理系の名門中の名門。
話ぶりも、魅力がありますね。



2025年11月27日木曜日

Masculinistes : des mâles, des maux ?

『俺たちに明日はない』についてのポストで、
マスキュリニテについて触れましたが、
たまたまこんなヴィデオがアップされました;


こういうのが授業で使えると、
いろいろ変化もつけられておもしろいんでしょうけど、
まあ、仏文科の上級生〜修士、くらいでしょうか。
もちろん今なら、学部一年生とだってできますが、
1回の授業で数分しか進まない可能性も……
一年生で出てこない単語ばかりだしね。

そして!
「ふらんす」12月号の巻頭の、
小川公代先生(英文学)と、
小倉孝誠先生(もちろん仏文学!)の対談でも、
このことが話題に上ります。


Maison Gatti

パリ(だけじゃありませんが)のカフェやビストロの椅子の定番、
と言えば、
これですね;


家の近所に、
こんな椅子のあるオープン・カフェ、
できないかな〜

『俺たちに明日はない』

1968年に公開されたこの映画、
中学生の時にテレビで放送していたのを見ました。
翌日、クラスメートと話したり。

あれから半世紀(!)、
昨日、大学院のゼミで見てみました。
いわゆる有名映画は、おもしろいかどうかはともかく、
院生としては見ておかないと、という意図です。
で、見てみたら……

おもしろいし、何か言おうとすると、
けっこう難しい。
舞台は、世界恐慌真っ只中の1931年です。

ボニーとクライド。
特にクライドは、性的に不能で、
銃を持って暴れ回ることは、
その不能性の代償行為にも見えます。
(刑務所にいる時、自分で足の指の先を切った、という話は、
当然「去勢」に通じているのでしょう。)
マッチョであることを、
彼は(どういう経緯からかはわかりませんが)背負っているようです。
(一見、彼の行為の動機そのものが曖昧にも見えますが、
本当に曖昧なのはこちらの方かもしれません。)
そしてラスト近く、
性的な能力を取り戻した彼は、射殺されます。
これは、2度目の、マスキュリニテの否定に見えます。
それは、大雑把に言って「過去」に属するものなんでしょうか?
権力側は圧倒的な銃撃能力(≒マスキュリニテ)を持ち続けていますが、
クライド(新しい世代/世界恐慌で虐げられた人間)は、
それが持てない。
(そして映画が作られたのがヴェトナム戦争中ですから、
例えばその帰還兵なども、重ねられているのでしょうか。)

彼に比べるとその兄は、
分かりやすく「男性的」。
彼が物語中で2度繰り返す冗談は、
「牛乳」に混ぜた「ウイスキー」を、
酒など飲んだことのなかった母親が好きになるという話。
ビミョーな話です。
「女好き」に見えて、ライフルを手に取る彼は、
ただ最後、死に至ります。
(そう言ってよければ、「ふつうの死」で、
クライドの死に方とは違いますが。)

ボニーと母親の関係も、解釈が難しい。
この母親が登場するシークエンスでは、
映像がフォギーになるんですが、これは?
母親(の価値観)が、ボニーにはすでに遠いのに、
愛は残っているという、
言ってしまえば母娘によく見られる葛藤にも見えるし。

そしてなんと言っても一番気になったのは、
脇役2人の親が、福音派であること。
(バプテストの牧師と、抑圧的な使徒派の父親)
アメリカの福音派は、イギリスに遅れること約150年、
1920年代に勃興してきますから、
この映画の舞台である31年は、
そうした運動が広がってゆく過程にあったでしょう。
こんな風に福音派が差し込まれているとは思ってもいませんでした。
そして、脇役の1人モスは、
父親のコネを使って、短い刑期で済むことになり、
もう1人の女性は、おそらくは視力を失い、
(=「盲目」になって、道に迷い)
でも生き続けることができます。
そう、この2人は、処罰されながらも、生き残るのです。
蜂の巣になったボニーとクライドとは、まったく違います。
で、
これはどういう意味なのか?
宗教性、あるいは父権性は、
まだ力を持っているのは間違いないでしょう。
それらは、抑圧装置として、温存されており、
今後も生き続けるように見えます。
(実際福音派は、今やアメリカ人の25%に膨れ上がり、
トランプとの関係を深めています。)
そしてそもそも、福音派は父権的だと言えるでしょう。
(そしてボニーの母親や親戚たちもクリスチャンですが、
福音派なのかそれ以外のプロテスタントなのかカソリックなのか、
それはわたしには判断できませんでした。)

それにしても、
こんなに多層的にできているなんて、
まったく思ってませんでした。
銀行強盗のロードムーヴィー、
なんて、簡単な映画じゃないですね。

(アメリカで、ある集団が「福音派」を名乗り始めたのは、
1940年代と言いますから、
この1931年時点では、そういう自己意識はなかったわけです。
ただ彼らを「現代」から見ると、
「福音派」の蕾に見えるわけです。
そして、福音派の大統領として名高いカーターが当選するのは、1974年。
つまりそれさえ、映画が作られる前です。
アメリカの福音派については、
この1974年が、歴史的な年ですね。)

2025年11月25日火曜日

ある少人数クラス

マックでマネージャーをやっている学生。
小中高一貫校出身で、フランス留学経験もある学生。
大学院進学が決まっている学生。
べイスターズ・ファンの学生。
去年もいた学生。
ケーキは好きじゃないという学生。
口数は多くないけどレポートはしっかりしている学生。
今年の春、イギリスに語学留学していた学生。

彼らについては、
名前を顔をある程度の個性が一致しています。

『女刑事マーチェラ』『彼女のかけら』

『女刑事マーチェラ』
いくつかのエピソードまで見たんですが、
ヒロインであるマーチェラに記憶障害があるなど、
サスペンスの作り方が好きではなく、途中で脱落しました。

『彼女のかけら』
こちらも3エピソードほど見たんですが、
展開が遅すぎる。
また、そもそも謎がなんなのか示すのが遅すぎる、
というわけで、
こちらもあえなく脱落。

ドラマの場合、長いので、
とにかくある程度のスピード感と、
適度な謎の提示が、
視聴者を引っ張っていくには必要かな、と感じました。
もちろん、それに代わる強烈な個性とか、
味わい深いセリフとか、
そういうものがあれば別ですが。

2025年11月21日金曜日

『アブセンシア』

CIA や FBI ものは、基本好きです。
(もちろん、デキのいいものもそうでないものもありますが。)
で、
ネトフリに来た『アブセンシア』を見始めましたが……

6年間行方不明で、死んだと思われていたFBI 捜査官が救出されます。
ただこの6年間に状況は変わり、
やはり捜査官である夫は再婚し、
幼かった息子は彼女のことを覚えていませんでした。
しかも、
彼女を誘拐したと見られていた人物の死体が見つかり、
その爪の間からは彼女のDNAが見つかり、
一転、彼女に殺人の嫌疑がかけられ……

というところまで見て、やめました!
ちょっと重すぎる。
で、ネット上でその先の物語だけ確認したんですが……、
やめてよかった!
ここから、もっともっと重くなります。
FBI ものでも、こんなに苦手なものもありました。

« accepter de perdre ses enfants »

フランス軍の参謀総長(=トップ)が、
ロシアとの戦争を念頭に、

le pays doit « accepter de perdre ses enfants »

と発言しました。


もちろん、メランションをはじめ野党は反発していますが、
一昔前に比べて、
戦線の拡大の危険が高まっているのは事実でしょう。
あっちでもこっちでも。

2025年11月20日木曜日

en / y

フラ語の授業では、
中性代名詞が終わったところです。
で、終わった後、
これを見せました;


いかにもネイティヴ風の説明で、
わたしたちが授業で整理する仕方とは違っていますが、
これもおもしろいです。
(もちろん学生には、
説明の仕方の違いまでは説明していません。
かえって混乱しそうだし!)
ただ短い動画なので、
間接目的語と強勢形の使い分けとか、
あるいは分類的にやや無理があるかなとわたしは感じる点もありますが。
でも!
学生にとっては、違う風が感じられて、いいんじゃないかと思いました。

◆先日、同僚にこのヴィデオを紹介した時、
一緒に書いておいたことを、ちょっとコピペしておきます。

授業範囲を微妙に超える内容が2点含まれています。
まずは、<parler de 生物>=<parler de 強勢形>、というルールです。
これは授業では触れていません。
Il m'a beaucoup parlé de toi. なんて、よく見ますけどね。
そして2番目が、<penser à 人>の例です。これは例外的な動詞ですね。
「ふつう」の動詞、

parler à 人/ téléphoner à 人/ demander à 人/ répondre à 人/ écrire à 人/ obéir à 人/ dire à 人

などについては、<à 人>の部分が間接目的語代名詞に代わるわけですが、

penser à 人((や、songer à 人/rêver à 人/ réfléchir à 人/ s’intéresser à 人 など)

の場合は、<à 人>の部分が、<à +強勢形>になるわけです。
これはどうも、<à 〜>の部分が「間接目的」的な対象に向かう「方向性」が薄く、
「考えている」こと自体に主眼がある表現で、<à 〜>は修飾語的だ、
という説明がなされているようです。
もちろん、こんなことは授業では説明せず、
ただ、「ネリーさんが扱っている<penser à 〜>は例外的」で、
「ふつう」の動詞は間接目的語代名詞で受ける、と説明しています。

【脳は‟美”をどう認識しているのか】

そう、これもおもしろかったです。


「神経美学」という分野、
初めて知りました。
興味あります!

「意識を機械に移植することは可能か」

これ、おもしろかったです。


別にマスク氏にはあまり興味はないんですが、
最先端の研究者が考えていることの一端が分かって、
刺激的でした。
こういう、一般向けの理系の話って、
おもしろいですよね。


『ハウス・オブ・ダイナマイト』

アメリカ映画、

『ハウス・オブ・ダイナマイト』

を見てみました。
北朝鮮と思われる国から発射されたミサイルが、
最初は、実験でありやがて日本海に落ちるもの、
と考えられていましたが、
突如そのミサイルが水平軌道に入り、
なんと19分後にアメリカ本土に着弾すると……。
これがわかった時点で、
映画はまだ始まって間もなかったので、
その着弾だけではなく、それ以降も描かれるのかと思っていたら、
なんとこの映画はいわゆる反復もので、
着弾直前、また時間は、映画の始まり時点に巻き戻され、
今度はさっきと違う人たちの反応が描かれてゆきます。
そして反復は、2回では終わりません。

面白くないわけではないし、
あっという間に見終わってしまうのですが、
やはり、何か不完全燃焼感は残ります。
監督が、あえてこういう作りにして、
この19分を描こう、
これこそ現代というものの脆弱性を表す数字なんだ、
と言いたいのは分かりますが、
映画としては、どうかなと。

『ナイト・エージェント』の主役、
ガブリエル・パッソも出ています。


そしてちょっと思ったのは、音響が、
この映画に似ていること。


今聞いてもまだ、新しい感じはしました。



『FAKE/身分偽装』

デンマーク発のドラマ、

『FAKE/身分偽装』

を見てみました。
いわゆる「北欧ノワール」に入るのでしょうが、
主人公ティアは新人女性警官(正確に言えば、インターンのような状態)で、
身分を偽ってマフィアのボスの妻に近づき、
彼女から情報を引き出すという作戦に駆り出されます。

第1話はおもしろくて、緊張感もあったんですが、
その後、ややペースダウンしましたが、
とりあえず最後までは見られました。

人物の掘り下げが、全体的にやや浅いことが弱点ですが、
おもしろいのは、
途中から、テーマがフィーメイル・ボンディングに移ってゆくこと。
マフィアものなのに、これは意外でした。
ただ、これもまたやや掘り下げ切れてなくて、
目の付け所はおもしろかったのに、という感じ。

惜しかったです!





2025年11月11日火曜日

『ザ・ディプロマット』シーズン3

『ザ・ディプロマット』シーズン3、
見終わりました。
このドラマ、
なにしろ舞台として使われたパリのカフェを見に行くほど気に入っているし、
セリフの洗練度は、この上なく高いと思っています。
このシリーズ3も、
事件というほどのことは起きていないんですが、
やはりおもしろいのはおもしろかったです。
ただ、
これはシーズン一や2の時もそうだったんですが、
終わり方がとても中途半端で、
それがストレスです。
ここからまた、1年かそれ以上待たされるのかと思うと、
ちょっと……
まあ、できたところからところから公開していくのは当然なんでしょうけど、
シーズンとしてのある程度の「オチ」もないまま、
宙吊りで長く待たせるのはどうかなと。

なので、すごくおもしろいんですが、
そんな感じの終わりです。
(英語の勉強にもあるなあ、と思いました。)

2025年11月8日土曜日

Shein、BHVに実店舗

ファスト・ファッションの巨人、
中国発の Shein の実店舗が、
あのBHVに入りました。


初日は、長い行列ができ、
その隣では、抗議する人々が。
搾取的な労働でできた製品だ、
毒性のある素材が含まれている、
素材が粗悪だ、
フランス文化を壊す、
というのが彼らの主張です。
(ただ、素材の質が良くないことは、
購買者も分かっているでしょう。)
また以前、小児性愛的な人形を売った、
という指摘もありました。


これはちょっと、判断が難しいですが。
(アニメ関係のフィギュアと比べると……)

そして、これに関する débat がこれ。
なかなかおもしろいです。


agnès b もオンラインで出演。
BHV から退店を決めたそうです。

2025年11月2日日曜日

「ライン・オブ・デューティー 汚職特捜班」終了

「ライン・オブ・デューティー 汚職特捜班」、
シリーズ6まで、すべて見終わりました。
これは、とてもレベルの高い、いいドラマでした。
なんと言っても、長いのに、
緊迫感が落ちないところがすごい。

ラスト近く、
主人公たちがエレヴェーターに乗っているショットが、
とても印象的。
このシリーズの、冷めた着地の仕方と、
そのショットはピッタリ合っていました。

もしもわたしがこのドラマ・シリーズを作り上げたんだとしたら、
もう、地上での仕事はこれで十分、
と思っただろうと想像しています。
それくらい緊密な、
完成度の高いドラマでした。

アポカリプスの後に残るのは、
ゴキブリと刑事ドラマだというセリフを、
ちょっと前に引用しましたが、
それを思い出させるドラマでした。

MVP Yoshi

ワールド・シリーズ第7戦、
ドジャースのビハインドが続く流れだったので、
ずっとストレスを感じながら見ていたんですが、
ロハスの同点ホームランには、
本当にびっくりしました。
ヒットはともかく、
ホームランなんて考えてもいなかったし。
でそのロハスは、9回裏のバックホームでもナイス・プレーで、
地味だけど本当にいい選手です。
そしてスミスのホームランで、
これはいける!
となって、でも裏の攻撃で1アウト1、3塁になって、
延長12回も覚悟して、
そうなるとRoki が出てきて大丈夫なのか……
なんて気を揉んでいると、
Yoshi が当たっているカークをダブル・プレーに。
昨日に続いてゲッツーで終わるとは!
もちろんゲッツー取れればサイコーとは思ってましたが、
一方で同点は覚悟してたので、
もう椅子から立ち上がってしまいました。
Yoshiの、いつも通り鋭いスプリットでした。
忘れられないワールド・シリーズとなりました。

(わたしが一番肝を冷やしたのは、
9回裏、パペスがギリで追いついた大飛球です。
ヴィデオで見ても、キュッとなります。)

浪花節になりますが、
ゲレロJr. が、父親に優勝リングをはめさせたい、
父親は優勝できなかったら、
と言っていたのを知っているので、
Jr. の涙には、ちょっと感傷的になりました。
そしてブルー・ジェイズは、やっぱり本当に強かった。
ロハスに打たれたクローザーのホフマンは、
今日は眠れないでしょうけど……。
あと2人で優勝でしたから。

ジーターは、昨日言ってました、
野球で一番難しいのは、
ワールド・シリーズの第7戦で勝つことだと。
ドジャースは、それをやってのけたんですね。
Super fantastic !

第7戦へ

今日は午前中から出かけなければならなかったんですが、
スマホでNHK ONE の MLB中継をずっと見ていて、
見たことがないような幕切れでしたが、
それでもなんでも、
ドジャースが勝って嬉しかったです。
これで、
まさに泣いても笑っても、
明日優勝が決まります。
ドキドキします!

誰でも予想できることですが、
明日は両チーム継投が鍵になり、
それなりに点が入る気がします。
3点では勝てない。
5点以上。
できれば7点くらい取って、
勝って欲しいです。
そして勝てば、山本がMVPでしょう。
でも誰かさんがまたやらかして、
MVPを「盗んで」いくかもしれませんが、
それならそれも素晴らしいです。

ただ、Roki が投げると、審判が辛いような気がするのは、
わたいだけでしょうか?
ゲレロ Jr への4球目は、明らかにストライク(で三振)だったし。
スプリンガーへの初級も……。

とはいえ、ジェイズも強い。
比較しない方がいいんでしょうけど、
NPB とは、やっぱりレベルが違います。
(NPB も好きですけど。)

とにかく、明日は、
9時に正座して待つ事にします!