2017年1月26日木曜日

『サマー・フィーリング』

MFFFからまた一本。
ポスターには、
(申し訳ないけれど)
まったく興味を感じなかった、

『サマー・フィーリング』(Ce sentiment de l'été)

を見てみました。
結論から言うなら、とてもいい映画でした。
(もっといい日本語タイトル、あるはずだと思います。
単純に、『夏の思い』でも、これよりマシでは?)

https://www.youtube.com/watch?v=3N23H7Q-Img

<以下、ラストまでのあらすじです。
ただし、表面的には、「ドラマ」はほとんど起きないのです。>

最初の舞台はベルリン。
アメリカ人で翻訳家のロレンスは、
フランス人でアーティストのサシャと暮らしています。
が、ある日、何の前触れもなく、サシャが急死。
フランスから駆け付けたのは、サシャの両親、姉のゾエとその夫。
彼らはロレンスに、
二人で使っていたものは、全部君のものだ、サシャの貯金も、
と言います。
そして舞台は、観光地として名高いアヌシー湖に。
両親は、この湖畔に住んでいるのです。
ゾエは子供と、この美しい場所に、遊びに来ています。
そしてパリ。
ゾエと夫との間には、かわいい男の子がいます。
夫婦は別居中なんですが、
けっしてとげとげしい関係ではありません。
夫と子供が住んでいるのは、
レピュブリック広場の近く。
フォーブール=デュ=タンプル通りから少し入った
(13年のテロで襲われたピザ屋さんの隣の)建物です。
ゾエはと言えば、ナシオン広場近くの安ホテルで、
住み込みで働いています。
その後、一年ほどたち、また夏が来て、
ロレンスがパリにやってきます。
彼はゾエに、サシャの面影を見ます。
次の舞台は、さらに一年後、夏のニューヨーク。
ロレンスは、時に姉が経営するアンティーク・ショップを手伝いながら、
なんとか笑顔で暮らしています。
そんなころ、夫と別れたゾエがニューヨークに。
テネシーの友人を訪ねる途中に立ち寄ったのです。
一方ロレンスは、
姉の店で働く移民の女性と仲良くなり、
その関係を深めてゆきます……

前回見た『モカ色のクルマ』に少し似て、
全編を「不在」が覆っています。
そして抒情的で、静謐で、
かといって重すぎない、
見ていていい感じがする映画でした。
景色もきれいだし。

印象に残ったのは、ゾエを演じたジュディット・シュムラ。
「ジュディット」(=「ユダヤ人女性」)という名前ですから、
おそらくはユダヤ人なのでしょう。
そうそう、以前この映画でも、
ユダヤ人3姉妹の次女を演じていました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2016/10/rendez-vous-atlit.html

父親がチュニジア系フランス人で、
母親はヨーロッパ系フランス人のようです。

構図は大きくて、描写は繊細。
女性監督の作品に多く感じられる、
細やかな表現に、驚かされたり。
Mikhael Hers監督は1975年生まれですから、
今後の作品が楽しみです。