2023年2月17日金曜日

『セトウツミ』

院生セレクションによる大学院ゼミで、
大森立嗣監督の

『セトウツミ』(2016)

を見ました。


原作は同名のマンガなんですが、
これを選んできた院生は、
映画は好きだけど原作は……とのことでした。
(今ちょっと確認したら、
マンガと小説、
設定は同じでも、
物語はかなり違うので驚きました。
マンガのキャッチコピーは、

「この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうか」

だそうですが、
これはむしろ、映画の方がピッタリくるようです。

で、このコピー、
それはその通りなのでしょう。
そしてその中で、
金持ちの家に育った成績優秀なウツミと、
なかなか厳しい環境に育った、もとサッカー部のセトが、
放課後の川辺(といっても、都会の、です)で、
1時間半ほどをだべって過ごす様子が描かれます。
そしてその過程で、
いわば intouchables な二人の間に、
なにか感応し合うものが生まれてくるわけです。

深刻なものはすべて、
ずらされ、あるいは笑われ、
つまり悲劇にはなってゆきません。
また二人の高校生の会話は、
ほぼ完全に大阪漫才のようで、
それはおもしろくもあり、
脚本家の手が露骨に見えるようでもあります。
(そもそも、高校生にしては大人過ぎる。)

ひとり、美少女も登場します。
セトは彼女が好きなんですが、
彼女はウツミが好き。
で、ウツミは……
このへん、ホモソーシャルな物語になるのを、
避けている感じもあります。
(ただこの少女の、二人にとっての「価値」が、
どこかマザコンの匂いもしますが。)

全体としては、
物語は「ない」のにスピーディーであり、
あっという間に見終わりました。
もちろん、
菅田将暉の存在は、とっても大きいです。
(彼が出てれば、ほぼおもしろい!)