2009年5月2日土曜日

百聞は


なんとなんと、昨日新国立で見たのと同じ演出のものが、いくつも You Tube にありました。百聞は一見に、ということで。

まずこれは、ヒロイン(カテリーナ)が、はじめて下男(セルゲイ)と通じる、劇中最も激しい場面の一つ。


昨今の露出型に比べれば、ずいぶん押さえた表現ともいえるのに、このいかがわしさ!「わたしの夫はあなただけ!」

次は、カテリーナの部屋から出てきたセルゲイを舅が見つけ、捕えて鞭打つ場面。


この舅、終始銃を離しません。もちろんそれは旧い男性原理なのでしょうが、実は一人になると、自分への懐疑を歌ったりもします。彼はいわばカラッポで、銃を支えにやっと立っている感もあります。こうした感触は、このオペラが作られた1930年代においても、封建的な資本家側へ批判として、意識されたことかもしれません。「鞭打つ」という行為は、この場面を、奴隷制度時代とオーバーラップさせるようです。

そしてこれは見所の一つ。舅も夫も殺したあと、カテリーナはセルゲイと結婚式を挙げようとしています。でも、酒飲みが酒を探すうち、夫の死体を見つけてしまい、これは警察だ! という場面……。それにしてもこの音楽と演出。面白いです。


最後は、これはかなり暗いですが、流刑地へ赴く途上、新しい女とセルゲイが、捨てられたカテリーナをからかう場面。そして最終的には…… 暗いんですが、なんというか、ここはいい暗さでした。

というわけで、当たり前ですが、オペラはストーリーだけでなく、音楽や歌や演技や、全部が相俟ってナニカになるんですね。特に音楽は、百聞は一聴にしかず。

長らくお付き合いいただき、多謝!
                                               ※画像は、カテリーナとセルゲイが「チチクリアッテ」いる部屋のテレビに、殺したはずの舅が現れる場面。(原作の舞台は19世紀なんですが。)舅はこの場面以外にも、亡霊として登場したり、カテリーナの心の奥深くから顔をのぞかせます。(舅=スターリン主義、という解釈もあるようです。)