2015年2月22日日曜日

『昭和残侠伝 死んで貰います』

高倉健の代表作の1つとされ、
また同時に、
『昭和残侠伝』シリーズ中最高傑作とも言われるこの作品、
随分昔に見た記憶がありますが、
今回、BSで放送されたものを、見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=O31EWmOa4_c

公開は1970年ですが、
主な時間的舞台は1927年、
バリバリの戦前です。
場所は深川で、
長くそこをシマとする寺田組に対し、
新興やくざの駒井組が、
そのシマを乗っ取ろうと画策します。
健さん演じる秀次郎は、
もちろん前者の、古い、経済的な論理とは別の価値で動く、
その意味ではきわめて誠実な人間です。
一方後者は、つまるところ、グローバリスト。
金を儲けることが至上命題で、
その論理の前に、義理も人情も伝統も文化もあったものじゃありません。
つまりこの映画は、
こうした2つの論理のせめぎ合いの中で、
古い側に立つ健さんが、
観客の屈託をも、ぶったぎってくれるわけです。
封建的な世界なんてまっぴらですが、
その中にある良質な部分、
その後の世界で失われつつあった部分が、
観客の目の前に提示されるわけです。

それにしても、1970年と言えば、
オイルショックの3年前です。
この時点ですでに、人々は、
資本の論理の凶暴さに、
感づいていたのでしょう。
わたしは中1でしたが、
当時唐獅子牡丹の歌が歌われていたのは、
はっきり覚えています。
なかなかいい映画だと思いました。

(健さんのセリフは、タイトルとは違い、
「死んで貰うぜ」でした。
そして池辺良の名セリフ、
「ご一緒、ねがいます」
も、たしかによかった。)