2024年5月9日木曜日

The Birds

大学院のゼミで、ヒッチコックの

『鳥』(1963)

を見てみました。(アマプラ無料)


この映画は、
わたしがこどものころは、
割と頻繁にテレビで放映されていて、
三回くらいはみた記憶があります。
ただもちろん、今は、違って見えます。
(当たり前!)

この映画は、
サンフランシスコ近郊のある海沿いの街で、
鳥たちが人間に襲いかかる様を描いています。
だたそこにはとてもはっきりしたきっかけがあるのですが、
それは、メラニーをいう女性の訪問でした。
彼女は若く、美しく、セクシー
(金髪で、真っ赤なマニキュアをして、比較的短いスカートを履き、
その身のこなしは、スカートから伸びた脚を強調する印象があります)で、
古い価値観など気にかけず、
どこでもタバコをふかし(1960年代です)、
気に入った男性がいれば自分から追いかけ、
単独行動を厭わない自立した人間です。
そんなメラニーが、
保守的で旧弊な街を訪れた時、
鳥たちは彼女を襲い、
さらには、彼女がいる街そのものを襲うのです。
1人の場合を除いては、
鳥たちが襲ってくる時、そこには必ずメラニーの姿があります。
(その例が的なケースは、
映画的な要請、
つまりパニック映画としての雰囲気の醸成のためたど考えられます。)
そしてクライマックスは、
メラニーの部屋のベッド(←もちろん記号でしょう)を占拠していた鳥たちが、
一斉に彼女に襲いかかるシーンです。
このシーンは、1分ほど続くでしょうか。
彼女が攻撃され、血を流して傷つく様子が、
延々と映し出されます。
明らかに彼女は「処罰」されています。

そしてラスト、
メラニーは、好きな男性の母親
(彼女は旧い価値観の擬人化です)
の肩にもたれかかります。
つまり彼女は、
旧い秩序に敗北したわけです……

この映画でのヒッチコック(←カトリックです)は、
陰惨なほど保守的です。
とてもよくできた映画ですが、
作品を貫く価値観は、そんな感じでした。