2009年9月10日木曜日

シリアの花嫁



春に(東京では)岩波ホールで上映していて、行きたいと思いつつ果たせなかった映画、「シリアの花嫁」を、地元の小さな映画館で見ることができました。

結論から言うと、素晴らしい映画でした。公式サイトはここ。


このサイトの紹介をコピペすると……「イスラエル占領下のゴラン高原。若き娘モナがシリア側へ嫁いでゆく一日の物語。一度境界を越えてしまうと、もう二度と愛する家族のもとへは帰れない。それでも、女たちは未来を信じ、決意と希望を胸に生きてゆく。」となります。

この映画、本当に色んな切り口から感想が出てくるんだと思います。政治、国、宗教、民族、ナショナリスム、そして家族、父、母、男、女…… もっとあるでしょう。

でここでは、敢えて(ちょっと無理して)「フランス」に的要素について触れると(というのも、あわよくばフランス映画ゼミで見せられないかな、と思ってしまうからなんですが)…… 映画中に一人、フランス人の若い女性が登場しています。

ジャンヌという役名の彼女(Julie-Anne Roth という女優さんです。)は、ゴラン高原の国連事務所で働く国際赤十字委員会のスタッフです。モナの結婚式が行われる「今日」は、ジャンヌにとっては最後の勤務日、そしてモナをシリア側に移動させる仲介をするのが、ジャンヌの最後の仕事になるのですが……

またジャンヌは、結婚するモナの次兄であるマルワンのex-copine (モトカノ)でもあります。気まじめで、清潔な感じのジャンヌが、絵にかいたような遊び人であるマルワンにどうして引っかかっちゃたのか、そのへんのことは一切描かれていませんが、2人を見ていると、なんだか切ない気もします。

映画の中で、なぜジャンヌがフランス人だと分かるかというと、折に触れ、彼女がフランス語で話すからです。たとえば、電話している時、分からず屋の役人に怒るとき、そして、もう一人の英語話者の女性スタッフと話している時も、ふとした時にフランス語が混じります。

映画全体は、アラブ語とヘブライ語でできているそうです。(わたしには区別がつきませんでしたが。)そこに英語とフランス語が混じってくるのは、とても単純ですが、映画で描かれていることの背後に、厳然と世界がある、あるいは、この映画と世界は切り離せない、というヒントである気がしました。

どうやら、10月にDVDにもなるようです。ぜひ!