2010年11月19日金曜日

Lemon Tree


今日は、文化祭のために授業はお休み。
で、楽しみにしていた映画、『Lemon Tree』を見ました。

この映画、監督は『シリアの花嫁』の Eran Riklis。
残念ながらまだ日本未公開なので、フランス語版DVDで見ることにしました。
舞台は、ヨルダン川西岸地区。
主人公は、そこでもう50年以上続くレモン園の世話をしている女性です。
彼女の子供たちは既に独立し、息子は合衆国にいます。

物語の発端は、このレモン園の隣に、イスラエルの防衛大臣が越してきたこと。
大臣夫妻の警備のために、2000本のレモンの木、
すべてを根こそぎにせよ、という通達が出ます。
美しく勇気あるレモン園主は、断固これを拒否。
つてをたどって弁護士を探し、法廷闘争に持ち込むのですが……

このあと、やはり美しい大臣夫人と、このレモン園主の間に、
なんともいえない感情が通い合い、それがそれぞれの運命に影響を与えます。
夜になると、狼たちの遠吠えが聞こえる西岸地区での、
小さくて大きな物語……

主役のヒアム・アッバスは、『シリアの花嫁』でも主役でした。
すごくいい女優だと思います。わたしは好きです。
(『シリアの花嫁』の父親役の男優も、ちらりと顔を見せています。)


『シリアの花嫁』の舞台はゴラン高原でしたから、
これは一応イスラエル領ですが、シリアとの国境地帯。
西岸地区ももちろん、国境問題で揺れる地区。
つまり両作品とも、「境界」がテーマであるといえそうです。
そしてどちらの場合も、勝者はいない、というか、
両方が敗者に見えます。
もちろん、それでも日常は続くわけですが。

このRiklis 監督は、ありきたりなおさめどころに決して近寄りません。
やっぱり人間はバカだ、とか、
やっぱり平和に暮らしたいよね、とか、
やっぱり話せばわかるよね、とか、
やっぱり「日常」って、国家や宗教を超えるよね、とかいう、
すべての「やっぱり」を、つまりすべての予断を拒否する感じ。
 作品自体は柔らかいのに、こんな作品が作れるんですね。

この監督には、もっともっと撮って欲しいです。
1954年生まれと言いますから、まだまだ行けますね!