2016年9月1日木曜日

『どん底』

<古典>パート3は、これ。

『どん底』(1936)

ルノワール&スパークのコンビで、
先日の『大いなる幻影』(1937)の前の前の作品です。

https://www.youtube.com/watch?v=6ab8ZUUaEP4

この映画は、何度か見ていて、
特に、ルイ・ジューベがカード賭博に負けたところは、
わたしの父親も気に入っていて、
よく話に出ました。

舞台は、時間も場所も特定できません。
ある最下層のスラム。
経営しているのは、強欲な老人とその比較的若い妻。
そして妻の妹も、メイドとして住み込んでいます。
住民は、もうここよりほかに行くところもない男女。
その中に、泥棒家業のペペル(ジャン・ギャバン)がいます。
彼は家主の妻と良い仲ですが、
本当はその妹に惚れています。
そこに、一人の男爵が現れます。
賭博に入れ込み、自分の財産も、公金も使い果たし、
すべてを失ってここに来たのです。
実は彼は、彼の家に泥棒に入ったペペルと意気投合したことがありました……

男爵を演じるルイ・ジューヴェは、
たしかに印象的ですが、
問題は、このフィルムにおいて、
「貴族」がどんな位置に置かれているかでしょう。
もちろんそれは、「没落」するのですが、
それでも、スラムの住民たちとは一味違います。
(『大いなる幻影』にも、貴族の大尉がいました。)
この男爵に、アナーキーなタナトス(の美学)を見るのは簡単ですが、
それでは、不十分でしょう。

ペペルはワーキング・クラスに入るのでしょうが、
その中でも底辺にいると言えるでしょう。

また、太って汗かきの小役人も登場しますが、
彼はプチ・ブルと言えそうです。
彼もまた、妹に言い寄るのです。

そして強欲な家主は、一応、ブルジョワ側ということになるのでしょう。
といっても、決して金持ちではないのですが。

そして物語の最後、
家主は死に、
ペペルはあの妹を伴って旅立ちます。
この旅は、希望と同じくらい不安もありますが。
一応、労働者の勝利にも見えますが、
それはまだきわめて不安定です。

<古典>の復習は、
いろいろ勉強になります。