2017年4月8日土曜日

Americano ~I'm so tired of you, America.

アニエス・ヴァルダを母に、
ジャック・ドゥミを父に持つ、
マチュー・ドゥミ。
彼にとって唯一の監督(&主演)映画である、

Americano (2011)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=Y5dMvHrnhbY

パリで恋人と暮らすマルタン。
ある夜更け、カリフォルニアから電話があります、
彼の母親が亡くなったというのです。
彼は、幼いころに3年間、アメリカで母と暮らし、
その後フランスから父親が迎えに来た時、
母はあっさりと、彼を父親に託しました。
だから彼は、自分は母に愛されていない、と思って育ちました。
でも、
いざカリフォルニアに着くと、
当時の記憶の断片がいろいろ浮かび上がってきます。
そんな中、
自分も子供時代に遊んだことがあり、
その後もずっと母親と仲良くしていた女性、
ローラの存在を知ります。
母は彼女にこそ、
小さな家を相続させるつもりだったのです。
ただしローラは不法移民(メキシコ人)であるため、
今はメキシコの、ティフアナにいるといいます。
で、
マルタンはローラを探しに、その国境の街に出かけてゆきます。

ローラは、そうとうヤバイ地区の、
それもどん詰まりのキャバレーで、
ダンサーとして働いていました。
でも彼女は、
彼の母親の話を一切したがりません。
そしてやがて、その理由が判明し……

とこの後の展開が、
おもしろいと言えばおもしろい、
でも、
かなりあざとい感じがあるのは否めません。
この辺りが、
監督として作品を発表し続けていない理由なのでしょうか。

この作品は、全体としては監督の手が見えすぎるのですが、
グッと引き込まれる個所もいくつかあります。
その一つが、
ローラがキャバレーで歌う場面。

https://www.youtube.com/watch?v=YoOr6okPJ0U

おお、これは、
モントリオール育ちのルーファス・ウェインライの、
Going to a town
です。

https://www.youtube.com/watch?v=o2wKv-c53vQ

この歌には、印象的なフレーズが。

I'm going to a town that has already been burnt down
I'm going to a place that has already been disgraced
I'm gonna see some folks who have already been let down
I'm so tired of America

(……)

I'm so tired of you, America.

Tell me, do you really think you go to hell for having loved ?
Tell me, enough of thinking everything that you've done is good
I really need to know, after soaking the body of Jesus Christ in blood
I'm so tired of America.

I really need to know
I may just never see you again, or might as well
You took advantage of a world that loved you well
I'm going to a town that has already been burnt down
I'm so tired of you, America

これを、
アメリカから追われ、
夢をあきらめ、
でも息子だけはアメリカに送り出そうと懸命に働く女性が、
キャバレーのステージで歌うのです。

この曲は、
最近では、リリー・アレンが、
ロンドンで行われた女性の権利のための行進のときに、歌いました。

https://www.youtube.com/watch?v=5NeqyLBHkCQ

でも、ふと、
America を、
別の国名で置き換えたくなる瞬間もあります。
(でも、そうは言いませんけど。)