2008年11月12日水曜日

鮪の刺身が


東京は今日も曇り&小雨。さえない天気が続いていますが、明日はやっと晴れそうですね。

さて今日は、『山之口貘詩集』を読みました。

わたしが山之口貘の詩と出会ったのは、あれは高校の頃でしょうか、あるフォークソングがきっかけでした。高田渡作曲の「鮪と鰯」です。

鮪の刺身が食いたくなったと
人間みたいなことを女房が言った
言われてみるとつい僕も人間めいて
鮪の刺身を夢見かけるのだが

死んでも良ければ勝手に食えと
僕は腹立ちまぎれに言ったのだ
女房はプイと横に向いてしまったのだが
女房も亭主もお互いに鮪なのであって

地球の上はみんな鮪なのだ
鮪は原爆を憎みまた水爆には脅かされて
腹立ちまぎれに腹立ちまぎれに
腹立ちまぎれに現代を生きているのだ

ある日僕は食膳を覗いて
ビキニの灰を被っていると言った
女房は箸を逆さに 逆さに持ちかえると
焦げた鰯のその頭 その頭こづいて
火鉢の灰だとつぶやいたのだ。

冒頭だけのつもりだったのに、つい全部書いちゃいました。(すみません、記憶なので、行分けの具合など、マチガイがあるかも。)こんな歌、歌いましたねえ。ロックに目覚めるまでは、陽水やかぐや姫をよく歌っていたのですが、フォーク雑誌にたまたま出ていたこの歌は、歌詞の特殊さが際立っていました。もちろん、誰でも気づく特殊さですね。

で今日読んでいて、ああこれは親が「面白いよ!」と読んでくれた詩だ、と思い出したのは、「自己紹介」という詩です。

ここに寄り集まった諸氏よ
先ほどから諸氏の位置について考へてゐるうちに
考へてゐる僕の姿に僕は気がついたのであります

僕ですか?
これはまことに自惚れるようですが
びんぼうなのであります。

たしかに面白いです! これは今日読んだ詩集(1940年発行)に入っていました。「びんぼう」といっても、今とは違います。彼は詩を書きながら、汲取り屋までやっていたそうです。(にもかかわらず、「面白い」なんて書いて、それでいいんだとこちらが思えるところが、この詩の強さなんでしょうか?)

彼は沖縄出身で、琉球語で育ったそうです。琉球と言えばH先生です。今度何か聞き出しましょ!