2020年2月16日日曜日

『新しき世界』

パク・フンジョン監督の、
2014年のヒット作、

『新しき世界』

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=2A_ubbE0xxM

大枠としては「ヤクザ映画」の形を取っていますが、
そこで描かれるさまざまな人間たちの「選択」は、
葛藤の末の重みがあり、
見応えがありました。
一般的な評価も高いようですが、頷けます。

イ・ジャソンは、もう8年間、
スパイ捜査官としてマフィア組織に食い込んでいます。
とりわけ、有力組織を率いるチョン・チョンとは、
「兄弟」と言えるほどの信頼関係を築いています。
そんな時、韓国最大のマフィアの会長が亡くなります。
(殺されたのでしょう。)
そして当然跡目争いが起きるわけですが、
候補者の一人はチョン・チョンです。
警察は、この状況を利用し、
チョン・チョンとライバルを共倒れさせようと企みます。
そしてその後、
傀儡の会長を立て、
その補佐にイ・ジャソンを就かせることで、
組織を警察の監視下に置こうというわけです。
が、それではイ・ジャソンはたまりません。
もうこの仕事から降ろしてくれと何度も頼むのですが、
警察は彼の利用価値を手放す気はないのです。
彼はもう警察にとって、使えるコマでしかないのです。
そして事態が複雑に展開する中、
イ・ジャソンの連絡係が組織に捕らえられます。
彼の正体も、実は知られいるのかもしれません……

この映画で興味深かったのは、
先日見た『犯罪都市』と同様、
イ・ジャソンとチョン・チョン、そしてその手下たちが、
朝鮮族であるという設定の下にあることです。
(映画の中では、
「中国人」とか、「華僑」とか呼ばれていました。)
しかもチョン・チョンは、
延辺朝鮮族自治州から、
「延辺の乞食」と呼ばれる殺し屋たちを呼び寄せもします。
(殺し屋、といっても、
彼らの身なりは明らかに貧しく、
韓国を「南朝鮮」と呼んでいます。
おそらくは、「朝僑」と呼ばれる、
北朝鮮からの亡命者なのでしょう。)
ここにもまた、
ラベリングの感じはあるのですが、
ただ、警察官も朝鮮族であり、
つまり<朝鮮族=ワル>という単純な構図にはなっていないので、
それは大きな違いになっていると思います。
(物語の展開もまた、そうです。)

イ・ジャソンの連絡係を、
ソン・ジヒョが演じていました。
彼女は、『無双の鉄拳』で、
主人公の誘拐される妻を演じていました。
(厳しく言えば、今回の映画も『無双の鉄拳』も、
かすかにミソジニーの感触があります。)
また、チョン・チョンを演じたのは、ファン・ジョンミンで、
彼はもちろん、
『国際市場で逢いましょう』の主役でした。
(というか、有名俳優なわけですが。)

この映画は、
『インファナル・アフェア』や『ゴッドファーザー』と
比較されることが多いようです。
たしかに、『ゴッドファーザー』の雰囲気は感じました。
ジャンル映画としては、
かなりいいデキだと思いました。