『パイン・ギャップ』(2018)
を見てみました。
全6エピソードで、あっと言うまでしたが、
なかなかおもしろかったです。
オーストラリアの中部、
アリス・スプリングにある米豪共同の軍事施設、
パイン・ギャップを舞台にしたドラマです。
1つ知っておく必要があるのは、
このアリスという土地は、
アボリジニの1グループである、
Arunta people が「6万年前から」(←ドラマ内のセリフ)居住していた土地だ、
ということです。
(英語版の wiki には、「少なくとも3万年前から」とありました。)
パイン・ギャップ、
米豪共同施設なので、当然、
オーストラリア人も、アメリカ人もいます。
アメニカについて言えば、
CIAも、NSA(安全保障局)なども関わっています。
米豪は「同盟国」としてやってきたわけですが、
21世に入り、
オーストラリアと中国の関係が密接になり、
オースロアリアは、アメリカとの同盟を重視しながらも、
中国ともうまくやっていく必要があります。
エネルギー輸入の95%を中国に頼り、
小麦等の輸出先としても中国が1位なのです。
戦争などせずとも、中国はオーストリアを潰せるの、
と、パイン・ギャップのオーストラリア人女性副司令官は言うのです。
そんなパイン・ギャップのものすごいコンピュータ・システムの一部に、
マルウェアが見つかります。
内部の犯行です。
この犯人探しが、ドラマの縦糸です。
(もう1つ、アフリカ系アメリカ人男性と、
セルビア系オーストラリア人女性の関係もまた。
彼女は、コソボ解放軍に両親を殺されているのですが、
この軍をトレーニングしたのはアメリカなのです。)
そして横糸は、容疑者となった6人と、
犯人探しをする上司たちとその家族の人生です。
(米豪の間で起こる小競り合いもまた。)
犯人探しの中で、こんなセリフがありました。
裏切る動機は4つ。
M is for money.
I is for ideology.
C is for compromise「妥協」 or coertion「強制」
E is for ego.
これはその場にいた3人が、
変わるがわる発言して、
1つの流れをなすように脚本されています。
なかなか巧み。
そして6人はそれぞれ、
このどれかに該当しているようなのです。
ドラマも映画も、人物が魅力的なら、
それは作品の魅力にもつながると思いますが、
このドラマを見終わって、
特に印象に残ったのは二人、
まずはさっきも触れた、オーストラリア人女性副司令官キャシー。
若い研修生と浮気した夫を捨て、
厳しく堂々と、しかも理知的に仕事を遂行しています。
ただもちろんある種の空虚も抱えていて、
それは彼女が可愛がっている猫のブルースによって象徴されているようです。
(実は同僚である元夫は、
この猫の所有権を主張して裁判を起こしています。
家はいらない、猫をよこせ、というのです。
でもキャシーは、ゼッタイに、ブルーシーを渡そうとはしません。
それは彼女の精神の、最も柔らかい部分なのでしょう。
もう一人は、物語の発火点を作る人物で、
アメリカ人のPC&ゲーム・オタクの男性です。
彼は、ごく少数の人と以外、
同じチームのメンバーとも会話もしないようなタイプです。
(悪意を持って、彼を
bog-standard single guy nerd 「ごくありふれた独身のオタク男」
と呼ぶのは、キャシーの元夫です。)
そんな彼に、とても意外な出会いがあります。
この淡く、感情的な出会いとその帰結は、とても印象的でした。
というわけで、
こうして色々書いていると、
自分がおもしろかったと思ってるんだなと気づかされます。
ただ、
終わってないんですよね。
謎が残ってるし、
サスペンデッドな状況が複数あります。
シーズン2の話はあるようですが、
ぜひお願いしたいです。
とにかく、アメリカとオーストラリアの関係という、
ふだん考えたことのない視点が感じられて、
それだけでも新鮮でした。