2023年11月4日土曜日

『1917 命をかけた伝令』

見よう見ようと思いつつ3年(!)も経ってしまった、

『1917  命をかけた伝令』(2020)

を、やっと(アマプラで)で見てみました。
なかなかよかったです。


WW1の最中のフランス。
ドイツ軍は後退しますが、
実はそれは罠でした。
それに気づいた将軍が、
ドイツ軍を追おうとしていた部隊に作戦中止命令を出します。が、
連絡方法はなく、
ドイツ軍が占領していた地区を突っ切って行くしかありません。
その役に指名されたのは、
二人の若い兵士でした……

この映画は、
「全編1カット」であることが喧伝されていました、
もちろんこれは「そのように見える」ということ。
そして実際、
ほとんど編集点は分からないので、
たしかに「全編1カット」のようにも見えます。

この試みは、
たしかに緊迫感を生み、
伝令が届かないと1600人もの兵士が罠にかかるため、
見ている方もハラハラします。

わたしなどがこの映画を見て感じるのは、
戦争の虚しさです。
なんと巨大なムダなのか、と。
兵士たちは必死だし、
命をかける姿は美しくさえありますが、
どうしようもなくムダです。
なぜならそれが戦争だから。
この命とエネルギーを、
なぜ人類は「まともな」ことに使えないのか。
悲惨な戦いを見て思うのはそういうことです。

監督のサム・メンデスは、

自分よりずっと大きいなにかのため、
会ったこともない誰かのために自分を犠牲にするというのは
どのような意味があるのだろうか?
だから戦争の物語を語るんだ。

と言っていますが、
それが「国家」であるなら、
虚しいことだとわたしはいつも思ってきました。
人間が、その幸福のために導入した「国家」というシステム。
なのになぜ、
人間がそのシステムのために死ななければならないのか。
そんなはずはないと感じます。
なので、
メンデス監督の言っていることと、
作品からわたしがうけとったことは、
まったく違います。
(監督は、兵士たちが賭けているのは「国家」でさえない、
それは故郷であり、家族だ、
みたいなことも言っていますが、
これって、
国家がワカモノを動員するときの、
典型的な詐術です。
国家は、故郷や家族を守れ、と言いながら、
実質的には、想像の共同体を守らせているわけです。
監督は、それに気づいていないことになります。)

主演は、
『パレードへようこそ』のジョージ・マッケイ。
ほかに、
アンドリュー・スコット、
コリン・ファース、
ベネディクト・カンバーバッチ、
リチャード・マッデンなど、
有名俳優がいいポイントで出ています。
アンドリュー・スコットは、
歩く姿勢自体が演技になっていて、すごいと思いました。