2023年11月24日金曜日

先輩と

一昨日の水曜日、
5年前に退職なさった、
ハプスブルク関連の第一人者である菊池先生と、
同僚一人と、わたしと、
3人で飲む機会がありました。
菊池先生と飲むのは、
退職なさってから初めてです。
なんというか、このままお目にかかれなくなるのはとても残念だったので、
同僚に頼んでセッティングしてもらいました。
(彼は菊池先生の「お弟子さん」筋です。)

5年経っても、
お話のおもしろさはまったく衰えていなくて、
とても嬉しかったです。

「お弟子さん」筋のM先生が、
まだ博士課程の学生だった頃、
ある学会で発表をしました。
そこにいらしたのが菊池先生で、
発表終了後の懇親会で、
M先生は菊池先生からキツイダメ出しをされたんだそうです。
「おまえの発表なあ…… ちょっとなあ……」
(←やや柔らかく表現してあります!)
ガ~ンときたM先生。でも、
それに続けて菊池さんは、いろいろ書いてある紙を取りだし、
「いいか? あそこはこう直して、
ここはこう直して、
それからこんなことも付け加えれば、
ぐっとよくなるだろう?」
そう言って、細かい指示の書いてある紙をくれたそうです。
当時学会の「プリンス」と呼ばれていたM先生は、
菊池先生のアドヴァイスがあまりに的確だったことに感動し、
以来、菊池派になったそうです。
そもそも、発表をちゃんと聞いてもらえただけでもありがたいのに、
的確なアドヴァイスまでくれる人。
それが菊池先生です。
若い院生なら、感動するでしょう。
(教育の本質はおせっかいだ、
と内田樹先生も喝破していました。
こちらもさすが。)

わたしが以前、
雑誌「ふらんす」で、
パリ映画を紹介する連載を1年間やったことがあります。
そのときも、菊池先生は毎回読んでくださって、
今回はイマイチ、今回はよかった、
と言ってくれるのです。
そして、
これは自分でもわりと上手く書けたんじゃ?
と密かに思っていたときは、
今まで一番いいじゃん!
と言ってもらえて、
わたしもとてもうれしいというか、安心した覚えがあります。

わたし自身、
なんというか、いつのまにか「年長者」になってしまったんですが、
まだまだ先輩たちに教えて欲しいことだらけです。