今日そのニュースを知ったのですが、
先週、哲学者の今道友信先生が亡くなりました。
学生時代、印象に残った先生たちが何人かいらっしゃいますが、
今道先生はそのお一人です。
授業は確か、「芸術哲学」を1年、「美学」を1年、だったでしょうか。
先生は東大から非常勤でいらしていたのですが、
わたしの出ていた授業の中では、ダントツに緊張のみなぎる授業でした。
私語なんてもってのほか、というか、
とてもそんなことができる雰囲気ではありません。
先生の語り口、語る内容、眼光、
どれをとっても、ほとんど畏怖の念を起させるものでした。
もちろん、遅刻などは問題外です。
ある芝居の幕開きの場面、
最初に発せられる言葉は、
「門を開け!」
なのですが、これはオリジナルはフランス語で、
Ouvrez la porte !
そしてこの最初の [ u ] の音が、
門が開いていくゆっくりした動きと一致し、
それはまた物語を扉を開く動きでもある……
空間芸術と、時間芸術の出会い、
というような話の流れだったと思います。
そうそう、ヨーロッパに暮らしていらっしゃった折、
友人だったアラブの王子様が、
これ誕生日に、と、
小象(!)をくれた話にも驚かされました。
あわてて返した、とおっしゃっていましたが。
そして先生は、芸術には、超越的なものへの怖れが必要だ、
とも繰り返されました。
(ただし、「芸術」は誤りで、「藝術」と書かなければ
意味が通じないのだ、ともおっしゃっておられました。)
それにしても、今気づいたのは、
この今道先生だけでなく、
村上陽一郎先生、阿部良雄先生、
印象に残った先生は、
東大から出講してくださった非常勤の先生たちが多かったことです。
やはりさすがと言うべきなのでしょうか。
今道先生の、ご冥福をお祈りいたします。