2012年11月14日水曜日

到達点

この時期になると、
いくつかの版元から、
来年度用の教科書見本が送られてきます。
わたしは、こうした教科書を眺めるのが嫌いではないので、
とりあえず他の先生方の試みを拝読します。

ただ、今回の新刊見本の中には、同業者として、
「?」という思いを抱かざるを得ない記述もありました。
たとえば、ある文法用テキストでは、
リエゾンとアンシェヌマンを扱う個所で、

ア:~単語末の発音される子音字の……
リ:~単語末のふつうは発音されない子音字の……

と説明があるのですが、これはどうでしょう。
アンシェヌマンで問題になるのは、「子音字」ではなく「子音」です。
ここを混同しちゃダメダメ! と、
授業で言っているところです。
(elle a はアンシェヌマンですが、「発音される子音字」どころが、
母音字で終わっています。
ここは、「子音」で終わっている、と説明すべきところでしょう。)

これは、決して重箱の隅ではなく、
多くのテキストではクリアされているところです。
編集者が気づいてもよかったかもしれません。

そうかと思うと、素晴らしいデキの新刊もありました。
これは、大学の授業で使うことを想定して作られているので、
独習には向きませんが、
一応その書名を挙げるなら、

http://www.sanshusha.co.jp/text/isbn/9784384210439/

この本、『ディアグラム』は、
日本で出版されたフランス語文法の教科書としては、
1つの到達点だと言えると思います。
生意気なことを言うようで申し訳ありませんが、
この教科書の良さがわかるには、
教員としての経験が、10年くらいは必要だと思います。
この教科書の中心著者が、たとえばラジオ講座でも担当すれば、
相当充実したものを作ってくださる気がします。
以前、大阪市立大学の福島先生が作った番組を聞いてみたいと書きましたが、
この渡辺先生の番組も、ぜひ聞いてみたいです。

というわけで、
改良の余地があると思われるものもあれば、
素晴らしいものもある、
見本教科書の秋です。