2018年10月20日土曜日

Une saison en France

サンドリーヌ・ボネールは、
いわゆる「フランス映画」への出演も多いですが、
一方で、

https://tomo-524.blogspot.com/2018/08/prendre-le-large.html

のような映画にも出ていて、
その出演作をもう一度たどってみるのも、
なにか発見があるのではと思っています。
で、
今回は、彼女が大きな役で出ている、

Une saison en France(2018 1月)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=SQVUYZRIp2U

パリ郊外に住む、アフリカ系の親子3人。
かつて中央アフリカで高校の先生をしていた、
父親のアバス。
そして小学生の兄と妹です。
彼らは、中央アフリカでの内戦を避け、
旧宗主国フランスでやり直すため、
パリまでやってきました。
ただ子供たちの母親は、
その厳しい旅の途中で、殺されてしまいました。
アバスは今、
難民申請中の結果を待ちながら、
マルシェで働いています。
そして、同じマルシェで働くキャロル(S. ボネール)とは、
恋人関係です。
(キャロルもまた移民であり、
かつでパスポートの更新を拒まれかけた経験があります。)
けれど、申請は却下。
アバスには、OQTF が言い渡されます。

*OQTF :https://www.service-public.fr/particuliers/vosdroits/F18362
     「フランス領土退去命令」

難民収容所を追い出され、
その後に借りたごく小さなアパルトも家賃が払えず、
結局3人はキャロルのところに。
けれどもやがてそこにも警察が現れ、
キャロルまで警察に呼び出されてしまいます。
(OQTFの人を手助けすることは、犯罪なのです。)
アバスは、キャロルに迷惑がかかることを恐れ、
子供二人と出て行くのですが……

まず、中央アフリカ、が1つのポイントでしょう。
フランスの移民映画に、
中央アフリカ出身者が出てくることは稀です。
公用語はフランス語だし、
かつての植民地だったのに、です。
1つには、中央アフリカ内戦による難民は、
チャドなど周辺国に移動するケースが多く、
ヨーロッパまで来る人は少ない、ということもあるでしょう。
ただ、もっと根深いというか、
状況に根差した無関心というものもあると感じられます。

これはとても参考になる記事でした。
https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20170710-00073097/

劇中にはもう一人、
アバスの友人である中央アフリカ出身者が登場します。
彼エティエンヌもまたかつての先生で、
二人は本の貸し借りをしているのです。
そしてエティエンヌは、
おそらくはヴィレット運河あたりの橋のたもとの空き地に、
自分でごく小さなバラックを建て、そこに住んでいます。
机には本が並んでいます。
けれどある日、彼が仕事から帰ってみると、
誰かのいたずらか、
彼の家は全焼していました。
しかも彼もまた難民申請を却下され、
行き場を失った彼は、難民センター内で、
焼身自殺を図るのです……

必死に生きようとする人たちの情熱と、
それをするための前提が失われたときの無力感が、
よく伝わってくる映画でした。

*OQTF といえば、『サンバ』です。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=hssfranse-012-17030001