2023年1月9日月曜日

『文化財返還 ヨーロッパの最前線』

NHK・BS1スペシャルで、

『文化財返還 ヨーロッパの最前線』

という番組を見ました。


ヨーロッパの有名美術館、
特にケ・ブランリのような「民族博物館」を名乗っているような場所には、
多くの「盗品」が展示されていることは、
もうわたしが学生の頃から常識でした。
その「最前線」を取材した番組だったのですが、
とてもおもしろかったです。

話は、単に「それは植民地時代の盗品でしょ」
というような単純な話ではありませんでした。
ここ5年ほど、
フランスやドイツ、イギリスなどでは、
(マクロンの発言をきっかけにして)
返還競争のような事態さえ生まれています。
ただ、問題も多い。
まず、返還するにしても、
返還後の保存の問題もあるし、
そもそも誰に? という問題があります。
たとえば、ベナンからヨーロッパに持ち込まれた金属製の像、
これは、
ナイジェリア政府、
ベナン王国がかつてあった土地の自治体、
ベナン王家の子孫、
などが所有権を主張しているのですが、
驚くのは、
この像が、そもそも、
奴隷を売却したときに、
当時の支配層(王家)に対して支払われた金属を溶かして作られたものだ、
ということです。
1体の像の背後には、1~2人+α の奴隷の存在があるのだと。
この点を踏まえて、
だからこそ、これは、その後奴隷たちが旅立った、
アメリカやヨーロッパにあったほうがいいのだ、
という主張もあるのです。

難しいです。
その分、番組としてはおもしろかったです。