2013年12月24日火曜日

『狭小邸宅』

先日、「すばる」に掲載されていた、
「すばる文学賞受賞第一作」を読んだと書きました。
そして、高橋陽子の受賞作も、遡って読んだのですが、
今度は、もう一人の、新庄耕の受賞作、『狭小邸宅』も読んでみました。

世田谷あたりをテリトリーとする不動産会社の営業部、
そこで働くごく若いサラリーマンが主人公です。
「一流大学」を出たらしい彼は、この地獄のような職場で、
それでも辞めずに、這いつくばるようにして、
いつか成績を伸ばしたりもします。
女性たちとの出会い、再会。
けれど、このまま順調にいくのか……
というお話です。

とても力のこもった作品だと感じました。
この方は、小説家になるしかなかったんじゃないか、と思うほど。
もちろん現代のお話なんですが、
どこか、(いい意味で)私小説のにおいもします。
一番グッとくるのは、
主人公が、自分を半ば実験台にしてしまうところ。
その迫力。
ちょっとランボーを思い出しもしました。
(そういう意味では、この作家は、
ある日ぷっつり書かなくなる可能性もあるように思います。)
勝手で気楽なことを言って申し訳ないですが、
こういう小説って、書くのはとても苦しいんじゃないでしょうか。
でも果実は、ちゃんと実っていると思います。
次の作品も、必ず読むでしょう。