2024年1月1日月曜日

『パックス・マッシリア:抗争の街』

というわけで、

『パックス・マッシリア:抗争の街』(2023)


を見終わりました。
全6話なので、
しかも上手くできてるので、
あっという間でした。

マルセイユを舞台にした映画は、
それなりに見てきました。
(万が一「マルセイユ映画」に興味があれば、
右側にある「サイト内検索」で「マルセイユ」と入れていただければ、ヒットします。)

先日も書いた通り、
このドラマは、物語の「量」と、
6話という時間の長さが、とてもちょうどいい感じだと思いました。
遅くないし、急いでもない。
物語も、複雑すぎず、単純すぎない。

主人公は、Tewfik Jalab(テウフィック・ジャラブ)演じる
リエス・ベルマール刑事。
そして彼が率いるチームには4人のメンバーがいます。
若いタトゥーは、地元育ちの雰囲気全開で、
アフリカ系の少年の世話をしています。
無骨で頑健なアルノは、
妻と小さな子供が二人いるのですが、
アフリカ系(カリブ系?)の妻は、
ガンが再発しており、今は髪を失っています。
(ただ彼女は堂々としていて、帽子を被りさえしません。)
そしてアフリカ系女性のオドレー。
彼女はレスビアンですが、かつてはリエスと付き合ったこともあるみたい。
で最後が、パリからマルセイユを希望してやってきたアリス。
実は彼女、父親を殺したマフィア、ミュリロへの復讐を狙っています。

ワルの方はというと、大物が3人います。
まず、ミュリロ(ニコラ・デュボーシェル)。
彼は仲間の手引きで脱獄し、
再びマルセイユを支配しようとしています。
そして彼と手を組んでいるのがタレク(ムーサ・マサクリ)。
麻薬の売買を取り仕切り、マルセイユを手中にするために、
ミュリロと手を組む、ないしミュリロを利用することを考えています。
最後が、リエス刑事の幼馴染で、
貧困から抜け出した今はドバイに住み、
大物との繋がりも増えているアリ。

基本的には、ミュリロとタレクが1つのグループをなし、
それがアリのグループと対立し、
そこに、警察が介入するという構図です。
(リエスたちは、内部監査にも対応しなければなりません。)
ただ、アリスはミュリロに個人的な恨みを抱き、
またミュリロは、息子をアリに殺されたと信じているため、
単なる勢力争いというわけでもありません。
また、ミュリロの愛人とその娘が、実は……
という展開もあります。

フランス語の俗語も、そういう言い方するのね、
ということろが何箇所もあり、おもしろかったです。
たとえば、
女性が友人に、自分を迎えにきた男について尋ねます、
Il s'imagine quoi ?
あの人何を企んでるの?
もちろん、下心があるのか、というニュアンスです。

ジャンル映画として、
今まで見た様々な要素を、もれなく詰め込んだ感じ。
もちろん、ドラマという長尺素材だからこそ、それが可能だったのでしょう。
オリヴィエ・マレシャルの代表作になるんじゃないでしょうか。
とてもよくできていると思いました。

(一点、ちょっと「?」だったのはタイトルです。
Pax Massilia は、「マルセイユの平和」ですが、
これはパックス=ロマーナとか、パックス=ブリタニカ、
みたいな使い方。
だとしたら、それは「マルセイユが支配した地域の平和」
というニュアンスなので、ちょっと違うかなと。)