2020年3月23日月曜日

『サスペクト 哀しき容疑者』、100点!

脱北者がらみのアクション映画、

『サスペクト 哀しき容疑者』(2014)

を見てみました。
これは、アクション映画としては、
100点! を付けていいと思いました。

https://www.youtube.com/watch?v=zlNr0aoPVeU

主人公のチ・ドンチョルは、
かつて北朝鮮のスパイであり、
今は脱北者として韓国にいます。
ただ彼は、妻と幼い娘を、
脱北者であり韓国のスパイになった元同僚に殺されており、
(が実は、娘はまだ……)
その復讐を心に誓っています。
で、それを果たそうと活動する中で、
実は、元同僚の背後には、
別の企みを持った組織があることを知る……
という物語です。

やや込み入った物語ながら、
説明の仕方がうまく、
またタイミングもよくて、
ほとんど混乱しません。
セリフは全体的に少な目で、
ハードボイルドなところも、わたしは好感を持ちました。
まあ、「アクション」映画ですからね。
そしてその派手なアクションの背後に、
深く錯綜した縺れが横たわっているわけです。
また、アクション映画であることはまちがいないとして、
物語が始まる時点で、
「あらかじめ失われたもの」
が配置されており、
その意味では、
「フィルム・ノワール」的だとも言えます。
映画の核は、
むしろこちらにあるのかもしれません。

先日書いた通り、
現在脱北者は3.4万人ほどいて、
韓国での生活にかなり苦労している、ということですが、
この映画(2014)の中では、
2万人とされていて、
これが正確であるなら、
この5年間に、かなり増えていることになります。

アクション、ないしスパイ映画の場合、
なんらかの対立があったほうが物語を作りやすいのは当然で、
かつては東西冷戦が、
その後は、IRA やモザド対敵対勢力、
あるいは CIA対テロリスト、
みたいな構図も多く見かけました。
で今回は、
北朝鮮と韓国の対立が中心にあるわけですが、
これは、
単に物語のために取り入れられているというわけではなく、
そこにはやはり、ある程度のリアリティーがあるわけです。
これに関連して、
非現実的な事柄が出てくるのですが、
これは、なかなか人間的な(&希望のある)非現実で、
わたしはこれも、好感を持ちました。

主演は『暗殺』でも活躍したコン・ユ。
瞬きの少ない、抑えた演技で、
よかったです。
今までわたしが見たアクション映画の中でも、
出色のデキでした。