2020年3月12日木曜日

『見えない太陽』

フランスの若ものが、
ある日、
家族を捨てて、
シリアに旅立とうとする。
IS に加わり、
欧米文明を打倒するつもりで。

それは現実世界で数多く起きていることであり、
ここでも、
それにかかわる3本の映画を見てきました。

http://tomo-524.blogspot.com/2017/09/la-route-distanbul.html

これらはどれもいい映画で、
強い印象を残しています。
で、
今日見たのは、
同じテーマを扱った、

『見えない太陽』(2019)

です。
Amazon Prime にあったので、
日本語字幕版で見ました。

アンドレ・テシネ&カトリーヌ・ドヌーヴとくると、
わたしなどは、
『海辺のホテル』(1981)
を思い出してしまいます。
学生時代に見たわけですが、
約40年後に、
このコンビでこんな映画が出てくるなんて、
0.001mm も思いませんでした。

また、アンドレ・テシネと言えば、これがありました。

http://tomo-524.blogspot.com/2013/11/la-fille-du-rer.html

これは日本では未公開でしたが、
ここしばらくの、
テシネ監督の問題意識の傾向が現れているのでしょう。

さて、『見えない太陽』ですが、
これは原題は、
L'Adieu à la nuit で、
字幕の訳を当てはめるなら、「夜への決別」です。
「ジハード」に向かうときの、決意の言葉です。

フランスとスペインの国境近くの田園。
ドヌーヴ演じる女性は、
centre équestre(乗馬学校)を共同運営しています。
そこに、久しぶりに孫息子が帰ってくるのですが、
彼は実は、アラブ系の恋人と(やアフリカ系の勧誘員と)ともに、
シリアに向かう決意をしています。
それに気づいたドヌーヴは、
なんとか引き留めようとするのですが……

2016年に撮られた3本と比べると、
フランス社会も、
テロ活動にかかわる法律も変わり、
その変化が映画にも影響しています。
難しいのは、
ドヌーヴをキャスティングした功罪でしょう。
彼女は「大女優」であり、
フランスの象徴としての「アリアンヌ」足りえる存在です。
きっとそこが、
起用のポイントなのでしょう。
ただ、やはりどこか、
彼女を捉えるカメラには遠慮が感じられて、
「きれいに」撮るざるを得ないのかな、
と思えてしまいます。
それは、弱点でしょう。

どちらかといえばいい映画だと思いますが、
例の3本に比べると、
若者の内面への迫り方も、
彼らがISの思想にはまっていく過程の表現も、
やや劣っていると感じました。