2011年7月13日水曜日

Focus


最近、ある授業のあるレポートで、
原発反対デモについて触れているものがありました。
もちろんそれはレポートのテーマではなく、
書いた学生が例として言及した、ということなんですが。

ただ、それを読んでちょっと気になりました。
その学生は、こんなことを書いていました。

「デモに参加している人の中には、
たんに盛り上がりたいだけの人がいる。
だから原発デモはいやだ」

そしてこれとよく似た展開が、他の個所にもあるのです。
明らかにピントがずれています。

そして先週、ちょうどその学生が研究室に来たので、
訊いてみました。

「で君自身は、原発は反対なの賛成なの?」
「それは……よく分かりません」
「あのね、それはもちろんどっちでもいいんだよ、君の意見なら。
でもね、大切なのは、それなんだよ、君はどう思うのかってこと」

学生は、何を言われているのか分からない表情。
まあそうかな。

「たとえば原発デモに関してなら、
1番重要なのは、原発の是非そのものでしょ?
デモに参加してる人の中に、盛り上がりたいだけの人いるって、
そんなの当たり前、み~~んな分かってる。
だけどそんなこと、重要度はすごく低い、でしょ?」

学生は、自分の書いたレポートを思いだそうとしている様子。

「問題があったら、その中心に切りこんで欲しいんだな、
周辺がどうのじゃなくて。
移民問題でも、騒ぐやつがいるからいやだ、で終わるんじゃなくて、
どうして彼らは騒ぐのか、騒ぐしかないんだとしたら、
それはどうしてなのか、どういう背景があるのか、って考えて欲しいの」

学生はやっと何を言われているのか分かってきた様子。
まあ役に立たないかもしれないけど、
たまたまレポートを通じて出会った仲ですから、
伝えられることは伝えとかないと、と思ったわけです、わたしとしては。

これが先週。
そして今週になって、学生は再び研究室にやってきました。

「もう1回自分のレポート読んでみて、分かりました……
で、ちゃんとした考えを持ちたいんですけど、
それは本を読めばいいんですか?」

本? それはサイコーだよ!
週2冊で、年100冊読めるんだよ。
想像してみて、今目の前に読みたい本が100冊並んでるとして、
それを全部読み終わった状態の自分を。
4年間やったら、400冊だよ。
夏休みにちょっと増やしたら、もっともっといけるよ。

「そうか、引き出しを増やせばいいんですね!」

引き出し……
ちがうとは言わないけど、というか、最初はそれでいいと思うけど、
いつかは、並んだ引き出しが、裏で繋がってくるつもりでね。
箇条書きじゃなくて、ネットワークになるように。
でもそれには、たしかにまずは引き出しだけど。

これは以前となりの研究室にいらした遠山先生の受け売りだけど、
「考え」を進めるときのピースは「概念」だから、
やっぱりたくさんの「概念」を知っておくと、
「考え」を進めやすくなるよね。
語彙が多ければ、文章が書きやすいように。

それから、その学生の好きな写真の話、
(もちろん『スナップショット』を勧めました。)
街の話などして、学生は帰ってゆきました。

ちょっとしゃべり過ぎたかもしれません。
(そこが教員根性のイヤなとこですね、我ながら。)
少しでも役に立てばいいけど。
ガンバレ、ワカゾー、ガンバレ!