2012年9月9日日曜日

Et maintenant on va où ?


ベイルートの美容室を舞台にした『キャラメル』は、
繰り返し見てもあきない魅力的な作品でしたが、
その監督・主演を努めた美しきナディヌ・ラバキの新作が、これ、
『で、どこに行く?』です。

http://www.youtube.com/watch?v=OoV84m9qXdM&feature=player_detailpage

架空の場所、架空の時代の、
地雷に囲まれた小さな村。
そこにはクリスチャンとムスリムが、仲良く住んでいます。
けれども村の、その両者による戦争は、
村にも薄暗い雲を生み始めます。
そこが物語の出発点です。

活躍するのは女たちです。
息子を、夫を、兄弟を、「他所」の戦争で失った彼女らは、
この村が戦いに巻き込まれるのだけは、
何に変えても避けようとします。
たとえ息子の死であっても、
それが村での戦闘の引き金になりそうなら、
誰にも言いはしないのです。
たとえ自分の息子であっても、
武器を持ち出そうとしたなら、
銃で撃ってでも止めるのです。

『キャラメル』でも、背後には、
2つの宗教世界がはっきりありました。
今回の作品では、そのテーマがより前面にせり出しているわけです。
ただそこはラバキらしく、
「お楽しみ」な要素も取り入れています。


おとぎ話のようなところもある、いい映画だと思います。
音楽もいいし。
ただ作品の構成とか、複数あるストーリー・ラインの交わり具合とか、
人物たちの立ち上がり具合とか、
個人的にはまだ未完成な部分もある気もしましたが。
いずれにせよ、注目の監督であるのは間違いないので、
今後も見ていくことにしましょう。