2012年9月11日火曜日
Intouchables
『最強のふたり』、
フランスで大ヒットしたこの作品、日本でもまたヒット中のようですね。
とても面白い映画ですから、当然でしょう。
まったく飽きないし、
スピードも明暗も遊びも深みもあって、
ここまで緻密な作品は少ないだろうという気がします。
ただいつものことながら、この日本語タイトルって??
原題は Intouchables ですから、
言うまでもなく、in toucher able 「不 触る できる」、
つまり「触れない」ですね。
わたしたちの世代だと、
アル・カポネと戦った「アンタッチャブル」を思い出します。
こちらも本当は複数形でしたが、
(誰も手を出せないほど恐ろしい)捜査チームの人たち、ということだったんでしょう。
「不可触民」と意味でも使われますね。
じゃあ今回はというと、やはりポイントは複数形でしょうか。
このタイトルについては、こんな解説があります。
http://pepecastor.blogspot.jp/2011/11/blog-post_10.html
なるほど。
触れない者たち、が複数になって、お互いに、というニュアンスが生まれるのでしょう。
だからこんなパロディもあったわけですね。
ということは、このタイトル、
どこか逆説めいた感じになりますね。
実際にはあんなに深く触れ合っているのに、
このタイトルなんですから。
たとえばWelcome(『君を想って海をゆく』)の場合も、
全然welcome じゃないのにこのタイトル。
肯定と否定の方向は逆ですが、
こういうタイトルのつけ方なんですね。
Intouchables を日本語にするのはたしかに難しそうですが……
わたしはDVDで見たので、
どんな字幕が付いているのか知らないのですが、
(だからトンチンカンなことを書くかもしれないのですが)
会話に登場したいくつかの固有名詞は、どんな風に扱われていたのでしょうか。
思い出すままに挙げるなら、
終盤、ドリスが就職の面接を受けているシークエンスで、
画家の「ゴヤ」を Chantal Goya に取り違えてみせる ところ。
彼女のヒット曲がオチのポイントでした。
http://www.youtube.com/watch?v=SrBQSFMA-Sw
それから、ドリスがオバマに似てると言われるあたりなどで、
何人かフランスの政治家の名が挙がりました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%94%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%A9%E3%83%B3
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%BC%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%B4%E3%82%A7
日本ではそれほど知られていない人たちでしょうから、
字幕が気になります。
(そして実際似てる! ので、
きっとフランスでは受けたのでしょう。)
また「受けた」という点では、
ポップスもクラシックも絵も文学者の名前も、
それぞれの世界では有名なものでしたね。
これはきっと、観客に疎外感を味わわせないための工夫なんでしょう。
ああいう場面でひねった選曲をするのは、プロっぽくないというか。
またドリスの語彙には、chelou やら pecho やら chier やら、
郊外言葉(?)が満載で、これも親しみが湧きます。
ただ敢えて言うなら、いわゆる「郊外問題」の解決にはつながらない、
むしろそういう問題を隠してしまいかねない、
という危惧もあります。
こんなパロディもありました。
とてもよくできた映画だけに、かえって、そうなるわけです。
とはいえ、おもしろくて好きな作品であるのは、
まちがいありません。