2012年9月10日月曜日

Inch'Allah Dimanche


シリーズ4作目のDVDが出た『アイシャ』シリーズ。
その監督であるヤミナ・ベンギギは、
それ以前社会派的なドキュメンタリーなどを中心に撮っていましたが、
フィクションも1本だけ発表していました。
それがこの『インシャラー・ディマンシュ』です。

http://www.youtube.com/watch?v=OWaJpEs4sWg

1976年、フランスはそれまで働く男性のみに限っていた移民たちに、
家族の呼び寄せを認めました。
物語は、この呼び寄せに応じてフランスに向かう、
母、妻、子供たちが、
アルジェリアの港を出発するところから始まります。
主人公である妻、ズイナは、
年老いた実母一人を置いてゆくことに、
心が引き裂かれる思いです。
でも知り合いたちから、子供のためにフランスへ、と諭され、
船に乗り込むわけです。

着いたのは、パリの北百数十キロ、サン・カンタンです。
彼女はここで、意地悪な姑、冷たいDV夫と一緒に、
しかも誰一人の知り合いもいない街で、
声も立てずに暮らします。が、いろいろ経験が積み重なるうち、
彼女の中の何かが、おずおずと目を覚ますのです。

思うのは、なんといっても『アイシャ』との落差です。
もちろん『アイシャ』にも、さまざまな宗教的、家族的、文化的束縛がありました。
が、それが比較にならないくらい、すさまじい状況なのです。
子供たちは父親から、
ここは他人の国だ、だからおとなしく、目立たないようにしていろ、
と命じられたり。
また妻も、口紅を持っていたというだけで、殴られたり。
一人で外出することさえままならないのです。
フランスでは「68年」より後ですから、
これはずいぶん差があるでしょう。

そして作品として見ると、
やっぱりきちんとしていると思います。
つらい話なのに、やめたくなるようなことは全然ないし。
さすがベンギギ、というところでしょうか。

最後に俳優たちですが、
母=『アイシャ』でのアイシャの母親
夫=『戦争より愛のカンケイ』でのヒロインの父親
妻=『きらきらしてる』での、リラの母親
です。
なじみの人ばかりです!