2013年1月13日日曜日

感謝!!

今朝の毎日新聞、
詩人で翻訳家のくぼたのぞみさんが、
こんな書評を書いてくださいました。
書評欄の名物コーナー、「この3 冊」。
切り口は「いま行ってみたいパリ」(!)です。

http://mainichi.jp/feature/news/20130113ddm015070040000c.html

こうして紹介してもらえるのは、本当に嬉しい&ありがたいこと。
しかも書いてくださったのが、尊敬するくぼたさんなのですから、
嬉しさもひとしおです。
くぼたさんのブログからも、色々教わっています。

http://esperanzasroom.blogspot.jp/2013/01/1133.html

そして2冊目にあがっている『郊外少年マリク』は、
以前著者のトークイヴェントの模様をお伝えしましたね。

http://tomo-524.blogspot.jp/2012/11/blog-post_22.html

著者であるラシュディさんと中島京子さんの対談が、
先週発売の「文学界」に掲載されています。
昨日読みましたが、ああそうなのか、と思う点が2,3ありました。
これもおもしろいです。

    
          ◆

(毎日新聞の書評、いつの日かネット上から消えてしまうでしょうから、
保存のため、ここにコピペしておきますね。)

今週の本棚・この3冊:いま行ってみたいパリ=くぼたのぞみ・選

毎日新聞 2013年01月13日 東京朝刊
 
 <1>エキゾチック・パリ案内(清岡智比古著/平凡社新書/882円)
 <2>郊外少年マリク(マブルーク・ラシュディ著、中島さおり訳/集英社/1890円)
 <3>浦からマグノリアの庭へ(小野正嗣著/白水社/2310円)

 ついに出た! と膝を叩(たた)きたくなるガイドブック、それが清岡智比古著『エキゾチック・パリ案内』だ。パリといえば長い間、美術、文学、建築、映画などの中心地、「華(はな)の都」と歌われた憧れの都市だった。しかしこの街の知られざる素顔に分け入り、ここまで平易に、味わい深く伝えてくれる本があっただろうか。

 まずは八世紀のノルマン人到来から歴史を紐解(ひもと)き、エッフェル塔、ルーブル美術館などおなじみの場所をピンポイントで押さえながら、最新の映画や音楽情報をちりばめて、読者をリアルなパリの町並みへ連れて行ってくれるのだから、まるでストリートビューでも見ているよう。読みすすむうちに見えてくるのは、この街には以前から多くの非白人系の人たちが住んでいること、彼らの生活が作り出す食文化や市場などがパリに多彩な魅力を与えていることだ。

 フランスという国がかつて植民地支配したアフリカ、アジア、カリブから職を求めてやってきた者、生き延びるために亡命した者とその家族など、フランスに生まれて代を重ねる人たちの存在は、いってみればアジア・アフリカ・カリブの近現代を「乱反射するプリズム」である。そこから私たちは、たぶん、目を背けてきた。それは一七八九年のフランス革命記念日を「パリ祭」と言い換えてきた姿勢にも繋(つな)がる。そんな色眼鏡をはずせば視界はぐんと広く深くなる。

 『郊外少年マリク』はアルジェリア系移民二世としてパリ郊外に生まれた作家マブルーク・ラシュディの小説。五歳から二十六歳までの年齢が章タイトルとなるこの作品が「会ったこともない、出会うはずもない世界に住んでいる男の子の話が、まるで親しい友達の物語」のように読めるのは、まさに翻訳の妙だ。パリ郊外に住む人たちの息づかいが聞こえてきそうな、これまたディープなガイドブックにちがいない。

 『浦からマグノリアの庭へ』は大分の浦のある土地に生まれ、フランス文学を学び、作家となった小野正嗣のさまざまな文章が集められた本。タイトルとなり、書評やエッセイをブックエンドのように挟み込む四つの章に誘われて、オルレアンのマグノリアの匂う庭へ迷い込むと、難民を受け入れてきたカップルとの親交からこの作家が出会った人びとの姿があざやかに像を結ぶ。その手さばきが見事。

 ああ、もう一度「いまのパリ」へ行ってみたい! そう思わせる三冊である。