2017年11月1日水曜日

『日本の夜と霧』

今日の大学院ゼミでは、
大島渚監督の『日本の夜と霧』(1960)を見ました。

https://www.youtube.com/watch?v=FyHUnzwZo4Y

有名な作品なので、
調べればいろいろ出て来るに違いありませんが、
今回、大島監督作品はあくまで「補助線」なので、
まずは、ほとんど周辺知識なしで見てみました。

1960年制作で、その年の安保運動を扱っているのですが、
事実は、そのもう一つ上の世代こそが、
ほんとうの主役のようです。
つまり、安保デモをする現役大学生たちの、
10歳ほど上の活動家たちです。

先日見た、同じ大島監督の、
同じ年に撮られた作品、『青春残酷物語』と、
この構図はパラレルになっています。
『残酷」では、
「上の世代」が渡辺文雄と久我良子、
「現役世代」が川津祐介と桑名真由美、
でしたが、
『日本の』では、
「上の世代」が渡辺文雄と小山明子、
「現役世代」が津川雅彦と桑名真由美、
となっています。
(実際には、彼ら以外にも多数います。)
そして、どちらの作品のどちらの世代のカップルも、破綻します。
また、『日本の』は、
渡辺文雄と桑名真由美の結婚式を舞台としているのですが、
この二人は、実は別々の世代に属していて、
この二人もまた、今後の幸せを予感させはしません。
二つの作品は、ともにペシミスティックで、
ほとんど虚無的でさえあります。(ただ、その虚無が煮えたぎっているところが、
大島の個性なのでしょう。)

そして大島は、『日本の』を撮ったすぐ後に、
小山明子と結婚します。
彼に中の虚無は、
このとき、現実とある種の和解を果たしたのでしょう。