2018年9月16日日曜日

Le Fils de Jean

『君を想って海をゆく』のフィリップ・リオレ。
今回見たのは、彼の2016年の作品、

Le Fils de Jean (『ジャンの息子』)

です。
設定自体は既視感があるものの、
とても丁寧に作られていて、
いい映画だと思いました。

https://www.youtube.com/watch?v=a8gN1yP62dI

33歳のマチューはバツ1で、
隔週末は息子のヴァランタンと過ごしています。
元妻との関係も、悪くはありません。
ドッグフードの販売会社に勤めてながら、
サスペンス小説も書いていて、
1冊だけは本になっています。
ある日、そんなマチューのもとに、一本の電話が。
あなたの父親(ジャン)がなくなり、その父親から預かったものを渡したい、
と言うのです。
実はマチューは、父親を知りません。
母も、ほとんど何も教えてくれないまま、
3年前に他界しました。
そして訊いてみると、
マチューには兄弟もおり、
彼らはみんなモントリオールに住んでいることがわかります。
父親の葬儀に出るために、
そして兄弟たちに合うために、
マチューはモントリオールに飛びます。
空港では、
知らせをくれたピエールという人物、
父親の友人だったという老人が迎えてくれます。
そして、マチューのルーツが、
次第に明らかになってゆくのです。
父親は、ほんとうにマチューの父親なのか……?
それとも……?

<以下ネタバレ>

わりと多くの人物が登場します。
まずは、マチューの兄弟とされる二人。
つまりジャンの息子たちです。
兄はモトクロスのチャンピオンで「飲んだくれ」、
弟は弁護士で金に執着しています。
(二人はユダヤ系ですが、
実質的にはまったく無宗教的です。)
また、ピエールと、
その妻、娘も重要です。
実はピエールこそ、
マチューの父親なのです。
がんを患ったピエールは、死期を悟り、
友人の話をでっちあげてマチューに連絡したのです。
遺品として、
かなり高価な絵をプレゼントするつもりで。
これを売って、会社を辞めて、
小説を書くことに専念するんだ、
好きなことをする、それが人生だ、
と、ピエールはマチューに言うのです。

ピエールの妻は、当初作り話を信じますが、
すぐに、自分の夫こそが、
マチューの父だと気づきます。
そしてマチューに、西洋医学の治療を拒むピエールを説得して、
治療を始めるように説得してくれと懇願するのです。
30年前の1度の裏切りより、
今目の前にいる夫が大事です……。
また、かつて「飲んだくれ」と付き合っていたピエールの娘は、
今は双子の娘を抱えた心理療法士ですが、
彼女の心は、(そしてマチューもまた)
完全に大人になり切ってはいません。
またピエールには、もう一人娘がいるのですが、
彼女はオーストラリアにいて、音信不通です。
(理由は語られません。)

映画のラスト近くなり、
ピエールがマチューの父親だと判明するあたりから、
画面はとても張り詰めてきます。
けれど、マチューがピエール一家をパリに招き、
行く、と返事するあたりから、
その緊張はほどけ、暖かい和解が見えてきます。
空港でマチューを見送るラストは、
記憶に残るものでした。

フィリップ・リオレ、
さすがです。