2018年7月22日日曜日

Djam

フランス人の父と、
アンダルシア系ロマ人の母を持ち、
アルジェリア生まれの監督、トニー・ガトリフ。
彼の作品は、
いつも音楽が重要な役目を果たしているんですが、
今回見た

Djam (2017)

もまた、「レベティコ」が大活躍していました。
このレベティコとは、1920~30年代に登場した、
ギリシャの大衆音楽なんですが、
当初その演じ手の中心にいたのは、
トルコから移民してきたギリシャ系の人たちだったようです。
で、映画の中でも、
「ギリシャとトルコがミックスしてできた音楽」
と説明されています。

https://www.youtube.com/watch?v=nUsguCbEAng

若きギリシャ人女性ジャムは、
叔父さん(シモン・アブカリアン)と暮らしていたレスボス島から、
イスタンブールに行くことになります。
実は、叔父さんの持っている古い船の修理のためには、
ある特殊な部品が必要なんですが、
それは、イスタンブールの知り合いの鍛冶屋に作ってもらうしかないのです。
で、ジャムが、そのお使いに行くわけです。
そしてそこで、パリ南郊、
シャントネー・マラビーのシテ出身の少女、
アヴリルと知り合い、
そこから、二人の無軌道な旅が始まります。
(いや、本当は旅なんかしていないで、
さっさとレスボスに帰らなければならないんですが。)

ジャムは、ギリシャ語とフランス語(と英語)が話せます。
かつて、パリの、義父のレストランで働いていたからです。
でこの少女が、明らかに「変わり者」なんですが、
それがまさに彼女の魅力でもあります。
彼女は踊り、歌い、
嫌いだった祖父の墓には pisser します。
アヴリルのほうは、なにやら訳ありなんですが、
印象的なのは、
ジャムと一緒にレスボスに渡った時、
アヴリルがショックを受ける光景です。
海辺には、何隻もの小型ボートが、
そしてその脇には、
数えられないほどの救命胴衣が捨てられていたのです。
それらはみな、
ヨーロッパを目指した移民たちが捨てていったものなのでしょう……

ジャムのおじさんの船は、また動き始めます。が、
彼の家は、銀行に差し押さえられてしまいます。
緊縮財政のギリシャが、
そういう形で描きこまれるわけです。

風変わりな主人公と、
やや風変わりな物語。
でも、おもしろい映画でした。