鮮烈な女優デビューを果たしたシベル・ケキリ。
彼女が2010年に主演したドイツ映画、
L'Étrangère (Die Fremde)
を見てみました。
とてもよかったです。
(『そして、わたしたちは愛に帰る』の第1部で、
トルコ系の娼婦を演じた Nursel Köse が、
レストランのマネージャーとして登場します。)
https://www.youtube.com/watch?v=D3NkwryRdLE
シベル演じるヒロイン、ウマイは、
トルコ系ドイツ人で、結婚して、
イスタンブールに嫁いた女性です。
(DVDのパッケージでは「ドイツ系トルコ人」、
wiki では「トルコ系ドイツ人」となっており、
見る前は「?」でしたが、
結局、どちらも間違ってはいないわけですね。)
で、そういうウマイでしたが、
夫の暴力(彼女に対して、そして最愛の息子ジェムに対して)に
耐え切れず、
意を決して、
ドイツの実家に戻ります。が、
両親は彼女が期待していた対応はしてくれません。
おまえを愛しているが、
おまえは夫に属している、
何回か殴られるくらいなんだ、
というわけです。
イスラムを核とするトルコ系コミュニティに属する両親、
およびその家族にとって、
子連れで出戻った娘など「恥」でしかありません。
家族が、ジェムを「誘拐」して、
イスタンブールに連れ帰る計画を知ったウマイは、
ある未明、息子を捨てて実家を出ようとしますが、
玄関ドアには鍵がかかっています。
ウマイは、警察に連絡し、保護を求めます……
話しは、まだこの後、
二転三転するのですが、
語られるエピソード自体は、
「初耳」のものはありませんでした。が、
それを表現するシベルが素晴らしい。
演出は、過度なのか抑制されたものなのか、
メディアでは見方が分かれていますが、
わたしは過度だとは思いませんでした。
(ただ一か所、ラスト・シークエンスのラスト・シーンだけ、
少し疑問が残ったのですが。)
図式的に言うなら、
両親と家族が属する伝統的な価値観と、
ウマイが生きようとする価値観の対立ということになりますが、
こういう場合のセオリー通り、
ウマイは、両親を愛しているのです。
そこに苦しさの根源があります。
そもそもウマイが個人主義的な道を選ぼうとしているのは、
思想的な選択ではなく、
DVな夫から逃れるためでした。
もしもやさしい夫だったら、
ウマイもまた、イスラムのコミュニティにとどまっていたでしょう。
そして彼女の父親も、
娘への愛を抑圧しているのです。
映画のラストでは、
悲惨な事件が起こります。
これを避けるためにしなければいけないこと、
それを探すことを、
この映画はうながすようです。
この映画、
実は『婚礼』という作品と大きな共通点があります。
http://tomo-524.blogspot.com/2018/01/blog-post_78.html
この映画、
実は『婚礼』という作品と大きな共通点があります。
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