2020年2月24日月曜日

『アシュラ』

キム・ソンス監督のクライム映画、

『アシュラ』(2017)

を見てみました。


映画の冒頭にある主人公の独白、
この街には「人の面をかぶった獣」ばかりというのが、
中心モチーフと言えるでしょう。
おもしろかったです。

これは偶然なんでしょうが、
『生き残るための3つの取引』と構図が似ています。
つまり、
刑事、
検事、
ワル、
の三角形が中心にあるのです。
で、違うのは、
今回のワルは市長で、
刑事の部分が二人、
つまり、重なり合う2つの輪のようになっている点です。
そして『生き残る~』のほうでは、
3人ともがゲスだったんですが、
今回は、
はっきりゲスなのは市長で、
刑事Aは日和見的傾向があり、
刑事Bは、Aを兄貴と慕うゆえに、
Aに導かれ、そしてAより深く堕ちて行ってしまいます。
そして検事は、
今回は「善」なのですが、
どこかで「獣」に飲み込まれるようです。
(もちろん、ほんとうの獣は、
こんなんじゃないでしょうから、
獣には失礼な比喩です。)

韓国のクライム映画には、
どこかこの、
「結局人間なんて」的なニヒリズムがあるようです。
ある作品はそれに対抗し、
別のものはそれを(結果的に)肯定します。
ではこの『アシュラ』はどうか?
これはまた別の意味でニヒルなのです。
(あえて言えば、無常、とも通じているかも。)

一番のゲスである市長を演じるのは、
ファン・ジョンミンです。
彼の演技はさすがです。

暴力的なシーンもわりとありますが、
「猟奇的」ではありません。
で、お馴染みのミソジニーはと言えば、
これはやっぱり感じられるのでした。

『チェイサー』

『哀しき獣』の監督ナ・ホンジンが、
それに先立って制作していた作品、

『チェイサー』(2008)

を見てみました。
主演の二人もまた、
『哀しき獣』と同じです。
が……

いわゆる「猟奇的連続女性殺人事件」も、
ここまで陰惨な場面が多いと、
わたしはもう見たくないです。
実話がどうのなんているのは、言い訳だし。
深くミソジニーだと感じます……



『生き残るための3つの取引』

ファン・ジョンミンと、
へ・ユジンが激突する刑事もの、

『生き残るための3つの取引』(2011)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=0fSM7tiZH8M

ファン・ジョンミンが演じるのは、たたき上げの刑事。
彼は、同じたたき上げ組の精神的リーダーですが、
軟弱な高学歴の刑事が先に出世していくのには、
我慢なりません。
へ・ユジンが演じるのは、ゼネコンの社長。
とはいっても、彼が率いる組織は実質やくざです。
この二人に、
若く、コネがあり、ジコチューな検事が加わり、
駆け引きと武闘が繰り広げられてゆきます。

ジョンミンもユジンも、
さすがの存在感で、
これはとてもよかったです。
特にユジンは、そのオーヴァーで、
どこか自己批評的な演技に惹かれます。

この映画の特徴は、
「勧善懲悪」とはかけ離れていること。
というのも、上記の3人が、
3人ともクズなんです!
で、クズ同士の戦いに勝利したかに見えるのは、検事です。

見終わった直後は、
クズばかりだしなあ……、
とも思ったのですが、
こういう利己的な「現実感覚」みたいなものが、
韓国社会にわりと広がっているのかな、とも想像しました。
あるいは、そうした広がりが批判されている、
ということもあるのかもしれません。
また、ストーリーとして、
勝ち残ったのが検事だというのは、
これは悪くないかも。
曲がりなりにも、
検察が機能してるってことですからね。
そうです、
検事長の定年延長などと言う茶番が目の前で展開してる国の人間としては、
特にね。

というわけで、
この映画を見ての感想は、
三権分立は壊さないでね、
ということでした(!?)

2020年2月23日日曜日

Le Flic de Belleville

ラシッド・ブーシャレブ監督、
そして主演がオマール・シーで、
共演にビウーナとくれば、
これは期待しないほうが無理というもの。
しかも!
タイトルが

Le Flic de Belleville (2018)

『ベルヴィルの警官』ですから、
これは期待しないのがむりというもの。
この作品、今日、やっと見ることができました。

https://www.youtube.com/watch?v=3yxUy3DemOc

で、残念な報告があります。
なんと、わりとどっちでもいい映画でした!
まあ、完全なB級映画で、
麻薬取引や、殺人事件も起きるのですが、
全体は軽い「お話」で、
ベルヴィルからアメリカのマイアミへ、
そして架空のアフリカの国へ、
と移動はするのですが、
別にどうということはありません。
アクション場面も、
韓国映画に慣れている今、
お遊びにしか見えません。

あえて言えば、
オマール・シーの恋人がアジア系の女性で、
母親が、アラビア語を使うアラブ女性(もちろんビウーナ)という設定が、
奇妙なおもしろさです。
ビウーナが、ブラック・アフリカ系男性との間に、
子どもをもうけたということでしょうか。
まあ、そうなんでしょう。
その点では、彼はここでも
(『最強のふたり』や『サンバ』の時と同様に)
セネガルの徴をまとっています。
潜入捜査をするシークエンスで、
彼が名乗るのは「セネガル・エクスプレス」なのです。

ブーシャレブ監督、
どうしちゃったんでしょう?
彼の作品は好きでほとんど見てますが、
今回のが、一番内容がなかったです。
残念!

*1つだけ。
内容と関係ないですが、
すぐに使える今風のフレーズがありました。

Je peux faire un petit selfie avec vous ? 「一緒に自撮りしてもらっていいですか?」

旅先で、誰かと一緒に自撮りしたいとき、
このフレーズで訊けばいいですね。

『哀しき獣』

このところ、
朝鮮族が登場する韓国映画を何本か見ましたが、
今回、

『哀しき獣』(2010)

を見て、
まず最初にこれを見るべきだったな、
と感じました。


朝鮮族自治州の延辺。
タクシー運転手で、
博打好きのグナム。
彼の妻は、韓国に出稼ぎに行き、
幼い娘は、彼の母親が育てています。
ただ、妻の出発のためにした借金と、
博打の負けによる借金で、
グナムはもう首が回りません。
しかも妻は、男でもできたらしく、
一切送金してい来ないのです。
そんなとき、金貸しのボスが仕事を持ちかけてきます。
韓国に行き、ある男を殺してくれば、
借金はチャラにしてやる、
奥さんにも会ってこい、と。
グナムには、もう選択肢はありません。
彼は、手配された韓国への密航船に乗り込みます……

140分という長めの映画で、
4部構成です。
わたしは特に、1部と2部がいいと感じました。
アクションが多くなる後半は、
心理の深まりはやや控えめで、
もちろんアクションそのものと、
謎ときに重点が置かれていくようでした。
その分、やや説明的な場面が増えてゆきます。
前半を終わったところでは、
これは今まで見た韓国映画ではトップクラス、
と思っていたのですが……。
とはいえもちろん、全体としてもなかなかよかったです。

朝鮮族については、
当たり前ですが、
大きな経済格差が背景にあるわけです。
映画はそれを、
たとえば街並みを映すだけで、
きわめて明瞭に語ってしまうわけですね。
もちろん、この映画の物語全体が、
そうした背景の下にあります。

主演のハ・ジョンウは、
『1987』で公安部長を、
また、
朝鮮族のワルのボスを演じていたキム・ユンソクは、
やっぱり『1987』で強面の警察官を、
それぞれ演じていました。
二人ともよかったです。

「出ていけ!」

今朝テレビで、これが(一瞬)紹介されていました。


Dégage !

出ていけ、というよりは、
(この場所から)どけ! どっか行け!
というニュアンスですね。
差別したくてウズウズしていた人たちにとっては、
格好の理由ができたというわけなんでしょう。

まあ、同じではないですが、
日本国内でも、
日本人同士で、
似たようなことが起きているわけです。
もちろん、問題外。

2020年2月21日金曜日

『愛人』(マンガ)

さっき、クルマで France Culture を聞いていたら、
日本人のマンガ家、
高浜寛さんのインタヴューが始まり、
おもしろかったです。
これです。

https://www.franceculture.fr/emissions/le-reveil-culturel/kan-takahama

読んでみようと思います。

(インタヴュー中、
ポルノ映画の「ぼかし」が話題になる場面があり、
通訳の方はなんて訳すのかと思って待っていたら、

 ( petit ) nuage

と言っていました。
なるほどね。)

" C'est horrible. "

岩田健太郎先生へのインタヴューです。






(つい先日、ある人から、
あの岩田先生が、twitter で、
「まいにちフランス語・応用編」についてコメント(2/11)してるよ!
と教えらました。
見てみると、とてもありがたいコメントで、
もちろん嬉しかったのですが、
ただ、こんなに重要なお仕事があって、
申し訳ないような……)

2020年2月20日木曜日

これは!

おお、ありがとうございます!

https://twitter.com/MNO_shogi/status/1229600550892625920

ちなみに、
わたしは元将棋部です!

2020年2月19日水曜日

乃木坂方面へ

今日は六本木で、
写真集の詰めの打ち合わせをしました。
版元のトランジスター・プレスの編集者と、
アート・ディレクション全般を担当してくれた弟の秀哉と。
順調に行ってますので、4月にはできる予定です!
(トランジスター・プレスは、もちろん、
『敷石のパリ』の版元です。
書店で一緒に並ぶといいなあ!)
で、その後、
以前イヴェントをさせてもらった、
乃木坂の Books & Modern に移動して、
今後の「作戦」について相談もしました。

トランジスター・プレスや 、
Books & Modern の方と話していて感じるのは、
彼らが、
読者といい出会いを作っていくには、
どうすればいいのか、を
ほんとに真剣に考えていることです。
これは、
(もちろん大手も考えているでしょうが)
特に心ある小さな出版社、
そして小さな書店が、
みんな考えていることなんでしょう。
大げさに言えば、
そこに「文化」がかかってもいるわけですね。

2020年2月16日日曜日

『新しき世界』

パク・フンジョン監督の、
2014年のヒット作、

『新しき世界』

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=2A_ubbE0xxM

大枠としては「ヤクザ映画」の形を取っていますが、
そこで描かれるさまざまな人間たちの「選択」は、
葛藤の末の重みがあり、
見応えがありました。
一般的な評価も高いようですが、頷けます。

イ・ジャソンは、もう8年間、
スパイ捜査官としてマフィア組織に食い込んでいます。
とりわけ、有力組織を率いるチョン・チョンとは、
「兄弟」と言えるほどの信頼関係を築いています。
そんな時、韓国最大のマフィアの会長が亡くなります。
(殺されたのでしょう。)
そして当然跡目争いが起きるわけですが、
候補者の一人はチョン・チョンです。
警察は、この状況を利用し、
チョン・チョンとライバルを共倒れさせようと企みます。
そしてその後、
傀儡の会長を立て、
その補佐にイ・ジャソンを就かせることで、
組織を警察の監視下に置こうというわけです。
が、それではイ・ジャソンはたまりません。
もうこの仕事から降ろしてくれと何度も頼むのですが、
警察は彼の利用価値を手放す気はないのです。
彼はもう警察にとって、使えるコマでしかないのです。
そして事態が複雑に展開する中、
イ・ジャソンの連絡係が組織に捕らえられます。
彼の正体も、実は知られいるのかもしれません……

この映画で興味深かったのは、
先日見た『犯罪都市』と同様、
イ・ジャソンとチョン・チョン、そしてその手下たちが、
朝鮮族であるという設定の下にあることです。
(映画の中では、
「中国人」とか、「華僑」とか呼ばれていました。)
しかもチョン・チョンは、
延辺朝鮮族自治州から、
「延辺の乞食」と呼ばれる殺し屋たちを呼び寄せもします。
(殺し屋、といっても、
彼らの身なりは明らかに貧しく、
韓国を「南朝鮮」と呼んでいます。
おそらくは、「朝僑」と呼ばれる、
北朝鮮からの亡命者なのでしょう。)
ここにもまた、
ラベリングの感じはあるのですが、
ただ、警察官も朝鮮族であり、
つまり<朝鮮族=ワル>という単純な構図にはなっていないので、
それは大きな違いになっていると思います。
(物語の展開もまた、そうです。)

イ・ジャソンの連絡係を、
ソン・ジヒョが演じていました。
彼女は、『無双の鉄拳』で、
主人公の誘拐される妻を演じていました。
(厳しく言えば、今回の映画も『無双の鉄拳』も、
かすかにミソジニーの感触があります。)
また、チョン・チョンを演じたのは、ファン・ジョンミンで、
彼はもちろん、
『国際市場で逢いましょう』の主役でした。
(というか、有名俳優なわけですが。)

この映画は、
『インファナル・アフェア』や『ゴッドファーザー』と
比較されることが多いようです。
たしかに、『ゴッドファーザー』の雰囲気は感じました。
ジャンル映画としては、
かなりいいデキだと思いました。

2020年2月15日土曜日

「『五輪買収』疑惑」

この国は、どこへ行こうとしているのか?
そんな疑問が湧いてくる、
今日この頃(というかここ数年)です。

https://www.dailyshincho.jp/article/2020/02121700/?all=1


『殺人の追憶』

今を時めくポン・ジュノ監督の、
2003年の映画、

『殺人の追憶』

を(AmazonPrimeで)見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=VqstXpk4K1s

物語の型としては、古典的なものが使われています。
つまり、
ある村(=都会じゃない)で連続殺人事件が起こる、
捜査は難航し、
そこに都会(=ソウル)から優秀な刑事がやってくる。
地元の刑事と都会の刑事の間に、
考え方や捜査方法の違いがあり、衝突する。
ただ、しだいに互いが互いを理解し始め、
事件は解決に向かう……というものです。
1カ所だけ、この型をずらしている部分もありますが。

舞台が1986~87なので、
たしかに社会変動が背景に(少し)あります。
デモもあります。
また、警察による拷問の問題などは、
たしかにこの時期クロースアップされていたことなんでしょう。
ただそれも、
1987に対する真摯なアプローチというよりは、
その状況を物語に利用している感もあります。

ちょっと興味を持ったのは、
都会から来た刑事が4年制大学卒で、
村の刑事が、2年制大学卒と、高校卒だったこと。
そしてこの最後の刑事が、
もっとも拷問を得意としており、
その彼が、学生と喧嘩する場面もあることです。
この刑事は、「民主化」の対極にいたことになります。
その意味では、ラスト近く、
彼が破傷風で足を切断せざるを得なくなるのは、
ある時代の終わりの象徴にも見えます。
(ただ、映像として拷問は描出されていますから、
この設定は、描出することそのものの言い訳にも見えます。)
また、重要な容疑者の一人が、
軍務を終えたばかりであるというのも、
軍の体質を遠回しに指差しているのかもしれません。
(ただ彼には、「足の切断」的なことは起こりません。)

1つ強烈に感じたのは、
映画に流れるミソジニーです。
猟奇的に殺されるのは、みんな若くて美しい女性たち、
という設定は珍しくありませんが、
それを映像で(これでもかと)やると、
そうした嗜虐的な映像そのものを客寄せに使っている感じがして、
やや引きます。

『スノーピアサー』は、わたしにはゼンゼンでした。
今回は、エンタメとして「おもしろい」のは認めざるを得ませんが、
ちょっと、高く評価することはできない感じでした。

Mon frère

最近、Made in China というコメディ映画のことを書きましたが、
その監督である Julien Abraham の、
打って変わったシリアスな作品、

Mon frère (2019)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=h_up54KfOY4

脇役として、
わたしの好きなアイサ・マイガやヒアム・アッバスの名前が見えます。
また、この映画

http://tomo-524.blogspot.com/search?q=lieutenant

で、主人公アントワーヌを演じていた Jalil Lespert も登場しています。

バカロレアを控えた、アフリカ系の高校生テディ―。
彼は弟や両親と暮らしていたのですが、
この父親が恐ろしくDVで、
そのために母親は出てゆき、
(子供を連れて行こうとしたのですが見つかって失敗)
その後のある日、
やはり荒れ狂った父親がテディ―の首を絞めると、
思い余った弟が銃を構え……
で、テディーは弟の罪をかぶり、
教育的施設に入るのですが、
そこのメンバー札付きのワルたちで……

悪い映画ではないんですが、
かなり重苦しい。
施設にいるのは、
まさに『嘆きのピエタ』の主人公のような子どもたちが多く、
バカロレアが控えていたテディーはむしろ例外。
そんな環境の中で、
テディーは、母親がいるアムステルダムに行くことを夢見、
実際物語の後半で、
彼はそれを実行することになります。
そしてここでは、
母親と子どもというサブテーマが浮き上がってきます。

この監督は、
Made in China と同じ年にこの作品も発表していて、
ずいぶん雰囲気の違う作品を作ったものだなと感じます。
そしてどちらかと言えば、
こちらの、ヘヴィーな作品のほうがデキがいいと思いました。

「4時間で、日給4000元(約6万3000円)」

時給、15.000 円以上ですが、
中国での実感は、その何十倍ものはずです。

https://www.epochtimes.jp/p/2020/02/51759.html

でも今回の「おばけ」は、
かなりこわいです。

ささやかな願い

他者や弱者への深い想像力がなきゃだめだとか、
きわめて長いスパンでものを考えられなきゃだめだとか、
謙虚さと大胆さをもってなきゃだめだとか、
高い言語能力がないと物足りないとか、
行動力も必要だとか、
そうしたものがぜんぶ、
しなやかな歴史意識や教養に裏打ちされてなきゃだめだとか、
そんなことは言いません。
でも、
ある程度の知性、
ある程度の謙虚さ、
ある程度の他者への想像力、
嘘はつかない誠実さ、
そして平均的な言語能力、
くらいは持っていて欲しいと思います。

湖北省2地区、戦時管理

これは……

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020021401075&g=int

こういう予想もありましたが、
ほんとになるとは。

そしてアメリカも?

https://www.epochtimes.jp/p/2020/02/51717.html

一連のコロナ関係のニュース、
とても気になります。



2020年2月14日金曜日

『嘆きのピエタ』

キム・ギドク監督の代表作の1つ、

『嘆きのピエタ』(2012)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=sSyVsVStrqc

かなり「残忍な」若き借金取り、ガンド。
途方もない利子を、
障碍者になってその保険金で払え、
と相手に迫り、それを実行させます。
サイコパスにしか見えません。
ただ彼は彼で、
生まれてすぐ母に捨てられ、
家族というものを持ったことがありません。
愛される、という経験と、彼は30年間無縁なのです。
そんなある日、突如彼の前に、
母親を名乗る女性が現れます。
ごめんね、と言って、彼女は泣くのでした……

ここまでで、映画全体の20%くらいでしょうか。
結末は、誰にも予想できないようなものです。
それも含めて(それだけじゃないですが)、
迫ってくるいい映画だと思いました。
(突っ込みどころがないわけじゃないけれど、
それは言わないことにしましょう。)
ソウルの、清渓川周辺の「スラム」が登場し、
経済的に追い込まれた零細の町工場が描かれます。
物語の背景にあるのは、もちろんこの貧困です。

ピエタ、ですね。
これはいいタイトルだと思いました。

『ソール・ライター展』

今日は、暖かさに誘われて、
文化村の『ソール・ライター展』に行ってきました。

https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_saulleiter/

ニューヨークに暮らしたユダヤ人である彼は、
生活者として、
その巨大な都市を撮っています。
彼は、いわば子供みたいに、
カメラを楽しんでいる印象があります。
フレーミングには特徴があって、
ちょっと真似したくなりました。
会場は、平日なのに、けっこう混んでいました。
まあ、見ていて楽しいから、
当然かもしれません。

でそのあとは、
久しぶりにあの店のクスクスが食べたい!
と思って、
下北沢のクスクス・ルージールへ。
今日は、大学の業務が一段落したので、
ちょっと豪華に。
名物のエビパン、
モロッコ風サラダ、
気仙沼の生ガキ、
仔羊のクスクス、
そしてデザートに、
マンゴーとパッションフルーツの(冷たい)グラタン
まで。
なんと、ぜんぶおいしい!!
コルシカ産のピノ・ノワールも、とても好きな味でした。
渋谷から移動して行った甲斐がありました!

2020年2月11日火曜日

『The Net 網に囚われた男』

キム・ギドク監督の、
これも院生に勧められた作品、

『The Net    網に囚われた男』 (2017)

を見てみました。
結論から言うなら、
これは傑作だと感じました。

https://www.youtube.com/watch?v=G1-F0ohiOlY

北朝鮮で漁師をしているナムは、
きわめて貧しいながらも、
妻と幼い娘と、小さな幸福を生きています。
そしてある日、漁に出たナムは、
ボートについたエンジンが故障したため、
韓国領に流されてしまいます。
韓国で拘束されたナムは、
ただ家族のものに帰して欲しいだけなのに、
スパイ容疑の元、
過酷な取り調べに耐えなければならず……

題材も興味深いし、
展開もおもしろいし、
挿入されるエピソードも印象的だし、
主人公の苦悩もよく伝わってくる。
ただ、敢えていえば、
韓国側の人物が、
みな単層的な感じで、
なんというか、グレーゾーンを抱え込んだような人物が、
見当たりませんでした。
そこが、(わずかな)弱点かもしれません。
でも、やっぱり傑作だと思います。

Otez-moi d'un doute

セシル・ドゥ・フランスとフランソワ・ダミアンが共演し、
ミッシェル・ルクレールが脚本に参加している映画、

Otez-moi d'un doute (2017)

見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=vXsUR462Rnw

ブルターニュ地方のエテル。
エルワンは、地雷などの爆発物処理を仕事とする中年寡夫。
(第2次大戦で使われた地雷が、まだ残っているのです。)
彼には父親のバスティアンと、
娘のジュリエットがいます。
彼女は妊娠中ですが、
赤ん坊の父親は「誰だか分からない」と言い張っています。

アンナ・レヴキンは医者で、シングルの中年女性。
彼女の父親ジョゼフはロシア出身で、
かつてはボルシェビキのメンバーでした。
彼は自分が飼っていた歴代の犬たちを、
ポル・ポト、チャウチェスク、ピノチェト、などと名付け、
彼らにあれこれ命じる中で、
独裁者をからかっています。
(もちろん犬は可愛がっています。)
アルジェリア戦争に反対して、
サルトル率いるデモにも参加した経験があります。
アンナのは母は、
アンナが10歳の時パレスチナに行ってしまいました。
「世界の悲惨すべてを相手にするつもりで。
でも、自分の娘の相手はしないわけ」
とアンナは言います。

出産日が近づき、
ジュリエットのお腹の子どもの遺伝病の検査があったのですが、
そこでなんと、
エルワンとバスティアンに血の繋がりがないことが判明。
エルワンは迷いますが、結局、
私立探偵を使って父親を捜します。
それが、隣町に住むジョゼフでした。
そしてエルワンはまた、
まったく別の小さな事件を通してアンナを知り、
彼女にほとんど一目惚れしてしまいます……

というわけで、
こんな「ベタ」なストーリーです。
紹介の文章を読み、
だいだいこういうことはわかっていて、
正直に言えば期待はしていませんでした。
「ヒューマン」なクサイやつかもしれないし。
ところが!
これが、驚くほどよくできた映画でした。
激しいんですが、しっとりしてるというか。
そうなった一番の理由は、
やはりキャスティングがよかったということでしょう。
フランソワ・ダミアンもセシル・ドゥ・フランスも、
そして父親役の二人も、
みなよかった。
クロースアップと引きの切り替えもよかったし、
セリフも少ないながらピリッとしていたと思います。

ただ、わたしから見てやや弱いと思ったのは、音楽。
クラシックの曲が何曲か使われているのですが、
これが、あまり映画と合っていないと感じました。
もちろん、たとえば「魔笛」の「パパパの二重唱」などは、
子どもを持つ喜びが語られてもいるわけですから、
これがかかれば、
そういうことが起こるのだろうと予想はできます。
でも……
「魔笛」の解釈は一様じゃないし、
時代も場所もかけ離れ過ぎていて、
ちょっと居心地が悪い気がしました。
あるいはまた、こんな曲。

https://www.youtube.com/watch?v=bmvvaBmpVdk

いい曲ですが、
そのまんま、というか……

ちなみに、ジュリエット役を演じて居たAlice de Lencquesaing は、
『パリ警視庁未成年者保護特別部隊』の中で、
暴行されて妊娠し、
その子を中絶するというハードな役を演じていました。
今回は、無事生めて、ほっとしました。

2020年2月9日日曜日

実数は……?

中国内部の状況についての情報は、
かなり限られています。
知り合いの中国人の女性と先日会ったのですが、
話しを聞く限り、
想像していた以上に危機的な状況でした。
(彼女の親戚も一人、亡くなったそうです。
そしてもう一人は入院中。)

心配です。

https://www.epochtimes.jp/p/2020/02/51563.html

2020年2月7日金曜日

「地盤強度データが存在していた」

これ、広く報道されてるんでしょうか?

https://twitter.com/nitiyoutwitt/status/1224948894716637184

『お嬢さん』

2016年の韓国映画、

『お嬢さん』

を見てみました。
これは、学生から推薦されたものです。

https://www.youtube.com/watch?v=oeMQxa5qxA0

1939年、日本占領下の韓国が最初の舞台です。
その後、日本に移動します。

物語はやや風変わり。
日本人になりたかった韓国人が、
日本人と結婚する。
そしてその女性が亡くなった後、
幼い姪を引き取るのですが、
彼女は没落貴族の「お嬢さん」で、
相当な財産を相続している。
で、この財産を狙って、
ある種の結婚詐欺が計画されるんですが、
その詐欺が裏をかかれ、さらにまた……
というお話です。

耽美的なサスペンス、と言えばいいのでしょうか。
それなりに最後まで見られましたし、
ストーリーは巧みに仕込まれていると言えるのでしょう
ただ、時間の処理の仕方については、
こういうやり方は初めてではないし、
レズビアンのベッドシーンは、
もっと鮮烈なものがあったし、
エロスの表現については、
たとえばブニュエルのような深さには達していない気がしました。

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』

ハリウッド・テンの一人で、
証言を拒み投獄を経験し、
その後偽名を使って、
『ローマの休日』などを世に送った脚本家、
ドナルド・トランボ。
彼と、彼の家族、彼の仲間たちにとって、
「赤狩り」が何であったのか、
を描く映画、

『トランボ ハリウッドで最も嫌われた男』 (2016)

を見てみました。
(副題は蛇足な気がしますが。)

https://www.youtube.com/watch?v=3OqZSbyxctI

今の時点から見れば、
「赤狩り」は理不尽そのもの。
(治安維持法がそうであったように。)
でも、事実として、
その理不尽なものに翻弄されてしまうこともあるわけです。
失業、離婚、自殺……。

そして形を変えた「赤狩り」は、
たった今も、いろんな場所で進行しているわけです。
だからこそ、
この映画は作られたんでしょう。

ただもちろん、
2時間ちょっとの映画では、
いわゆる史実が、
正確に十分表現されているとは言えないのでしょう。
マッカーシーの登場する部分も少ないし、
トランボ以外のハリウッド・テンへの言及も少ない。
それでも、
ジョン・ウエインやカーク・ダクラスは実名で登場していて、
ある程度の現実感は備えているように思いました。

本筋から離れますが、
トランボの妻役を演じたダイアン・レインは、
やわらかくていい感じ。
彼女は、
『アウトサイダー』(1983)の頃から見てますが、
すごく大人になったんですね。

2020年2月5日水曜日

Yao

オマール・シー主演の

Yao  (2018)

を見てみました。
これも、ずいぶん前から気になっていた一本です。

https://www.youtube.com/watch?v=10of8Hu_U3Y

トール・セイドゥーは、フランスの人気俳優。
個人生活では、
パートナーの女性とうまくいっておらず、
幼い息子も両親の家を一週おきに行き来する生活です。
でも、彼の仕事生活は充実していて、
本も出版しました。
で、その刊行記念講演会が、
彼の故郷、セネガルで行われ、
セイドゥーは初めて祖先の地アフリカに足を踏み入れます。
一方、セネガルでは、
彼の大ファンである少年ヤオが、
自分の村カネルから、講演会のあるダカールを目指します。
(387km離れている、と彼は言います。)
そして二人は出会い、
しだいに仲良くなり、
セイドゥーは、遠い村から一人でやってきたヤオを、
彼の家まで送り届けることにします。
そしてここから、
この映画の見どころであるセネガル縦断の旅が始まります……

ヤオの家までちゃんとたどり着けるか、
というサスペンスがないわけではないですが、
それは大したことはありません。
この映画で印象に残るのは、
土埃の道、
点在する巨木、
村々のマルシェのにぎわい、
道を埋めつくる祈る人々、
ごったがえすバスターミナル……
などです。
そうしたものは、これまでも目にしてきましたが、
この映画では、なんというか、
より「接写」されていて、
明らかにそれを見せたいんだろうというのが伝わってきます。
そしてそれは、
現実にスターであるオマール・シーの故郷でもあり、
ルーツでもあるわけです。
「フランス」の、一つのルーツがここにあるわけです。

だから、この映画は、
オマール・シーと、監督であるフィリップ・ゴドー、
二人の父親に捧げられています。
こんなニュースもありました。
オマール・シーが、セネガルの父親と会ったわけですね。

http://www.non-stop-people.com/actu/cinema/omar-sy-au-senegal-son-tendre-message-son-pere-164154

そして、
旅の途中でセイドゥーが仲良くなる女性歌手がいるのですが、
演じているのは、Fatoumata Diawara でした!
これは新曲です。

https://www.youtube.com/watch?v=2sBqMBEehIs

いいですね!

この映画は、フランスではヒットしなかったようです。
日本でも、公開されないでしょう。
でも、好感が持てる、いい感じの映画でした。

『ありふれた悪事』

韓国映画小特集の続きです。
つらつら物色していたら、
「舞台が1987年」
という説明が目に飛び込んできたこの映画、

『ありふれた悪事』 (2017)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=m42RCKVOxqg

もしかして、「1987」が、
違った視点から見られるかな、
と思ったわけですが、
まさにそうでした。
これは、『1987』とセットにして見るといいですね。

主人公は刑事ソンジン。
暮らし向きはかなり苦しいようで、
聴覚障害のある妻は袋張りの内職をしています。
小学生の一人息子は、足が不自由です。
ソンジンには、新聞記者の友人、ジェジンがいます。
ジェジンは独裁政権にきわめて批判的ですが、
そういう記事は書かせてもらえない状況が続いています。
そんな中、連続殺人事件が起きるのですが、
権力の側は、おそらくは発達障害である一人の男性を、
その犯人にでっちあげ、
自分たちの能力を示すことを望みます。
そこで声がかかったのがソンジン。
言うことを訊くなら、
金もやろう、クルマもやろう、
子どもの足も、最高の病院で手術を受けさせてやろう、
と持ち掛けられます。
大きな両親の呵責を感じながらも、
人の親として、夫として、
ソンジンはこの申し出を断れません……

87年以前の韓国の、
拷問がまかり通るような社会が描かれますが、
その社会とはまた、
「普通の人々(←原題)」が、
「普通」に生きられることを求めている社会でもあります。
そして貧困。
ソンジンはヴェトナム帰りであり、
彼の暮らしはとても厳しいものです。
刑事という職を持っていてこれですから、
今の韓国とは比較にならない状況です。

なかなか苦い映画で、
それはつまりいい映画であることです。
白黒はっきりさせる、という、
能天気な(ハリウッド的)勧善懲悪ではなく、
その中間にあって、
どうあがいても苦くしかならない選択を引き受けた人たちの物語です。

この10日間で7本の韓国映画を見ましたが、
1本(『スノーピアサー』)を除いて、
みんな見どころがありました。
韓国映画は日本映画を越えている、
という指摘はよく耳にしますが、
ここまでのところ、なるほどと思わせる見応えです。

Pete / Bernie

アイオワの結果が、やっとでましたね。

https://www.afpbb.com/articles/-/3266759

1位は、7つの言語が使えると言われているピート。

ただ彼は、富裕層からの献金を拒まない、
と発言していて、
(勝つために、ということなんでしょうが)
やっぱり中道寄りなんでしょう。

2位はおなじみのバーニー。
授業で、アメリカの(政治)状況について考えよう!
みたいなことをするときに、
このヴィデオを素材にすることがあります。

https://www.youtube.com/watch?v=XSRUmRYrRLY

そしてバーニーから、
J-L.メランション、
ジェレミー・コービン、
パブロ・イグレシアス、
アレクシス・ツィプラス、
へと話を繋げて、
新自由主義的な問題の広がりを検討するわけです。

2020年2月3日月曜日

Rebelles

セシル・ドゥ・フランスは好きな女優の一人ですが、
彼女が主演し、
オドレ・ラミーとヨランダ・モローとトリオを組む物語、

Rebelles  (2019)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=R4aZh0VNI2g

『反抗する女たち』の、痛快な物語です。
B級なんでしょうけど、
なかなかブラックで、
皮肉な笑いもあり、
なによりジャンル映画をからかう感じが、
おもしろかったです。

パ=ド=カレの、3人の中年女性たち。
サンドラは、15年前の「ミス・北パ=ド=カレ」ですが、
南仏で食い詰めて、
トレーラーで暮らす母親の元に戻ってきます。
お金も仕事もなく、でも妊娠しているのです。
で、面接を受け、
魚の缶詰工場で働き始めます。
そしてその職場で、二人の女性と知り合います。
まずはナディーヌ。
シングル・マザーで、
ちょっとした麻薬が手放せず、
クルマの修理代もない状態です。
(彼女は、実は昔のサンドラを知っています。)
そしてマリリン。
夫も息子二人も働かず、
彼女が一家の家計を支えていますが、
家賃をずいぶん滞納しています。
要は、3人ともお金がない。

ある日、終業後の工場の掃除を言いつけられた3人。
でもそれは主任が、
サンドラをレイプするためでした。
「反抗的な」サンドラは、もちろんそんなことはさせません。
で、まあイロイロあって、
結局主任は死んでしまいます、バッグに大金を残して。
3人は、この金を山分けして、
主任の死体を始末します。
工場の機械にかけて、50個の缶詰にして!

……これはまだ話の発端で、
ココから、麻薬組織だのイケメン悪徳刑事だのが入り乱れてゆきます。
でも、
映画そのものは落ち着いていて、
それやっぱり、
セシル・ドゥ・フランスの、
堂々とした振る舞いが大きいのでしょう。
今フランス語映画で「強い女」と言ったら、
おそらく彼女が一番でしょうね。

『新感染』

韓国映画です。
まさに今のテーマです。
見てみたのは、

『新感染』 (2017)

(原題は、wikiによれば「釜山行き」。)

https://www.youtube.com/watch?v=k3829dsZyzY

おもな舞台は、
ソウルからプサンに向かう高速列車の中です。
(ロードムーヴィーだとも言えそうです。)
バイオ系の会社のなんらかの失敗によって、
あるウイルスが広がってゆきます。
その描写は、ゾンビ映画そのもので、
前半は、やややり過ぎ感もあるゾンビ映画だなあ、
と思って見ていました。
が、
後半に入ると、様相が変わってきます。
取り残された人たちを救出し、
もとの集団が集まっている車両に戻ろうとすると、
なんと彼らは拒否されてしまうのです。
おまえたちは感染してるかもしれないから、いれない、
というわけです。
後ろから追ってくる血塗れのゾンビたちと、
前で扉を閉ざす人間たちと、
どちらが怖いのか……
もちろんその後も物語は続き、
思わぬ展開を見せてゆきます……

ゾンビ映画は、基本的には苦手なんですが、
ゾンビ映画である必然性もあったし、
これはかなりよかったです。

「嫌悪は『普通』」

UCLA が……

https://www.msn.com/ja-jp/news/world/アジア人嫌悪「普通」米大学投稿-インスタグラム、批判受け謝罪/ar-BBZA6YD?ocid=spartanntp

お馴染みのあの日本の政治家たちが言うなら驚きませんが、
アメリカの「大学」が発信したのにはびっくり。

***********************************

新型ウイルスがもたらす最初の症状は、
発熱や咳ではない。
何より物騒なのは、伝染病への嫌悪が、
百年前からこの国に根付いている古い差別意識を暴走させることだ。
差別は、危機意識にかこつけて顕在化する。
ぜひ、予防に努めたい。
(小田嶋隆)

**********************************

おっしゃる通り。
そしてそれは、日本だけじゃないですね。
ペストも、スペイン風邪も……

そしてフランスでは、

According to the French Ministry of Health, 
one is encouraged to wear a mask 
only when showing coronavirus symptoms. 
Wearing a mask by the non-sick population 
to avoid catching the disease 
is NOT recommended.

なので、メトロでマスクをしていようものなら、
奇異な視線にさらされることになる、ようです。

https://www.instagram.com/p/B73UOJ7CAX-/

『無双の鉄拳』

個人開催中の、韓国映画小特集の一本として、
マ・ドンソク主演のアクション映画、

『無双の鉄拳』 (2019)

を見てみました。
エンターテイメント映画です。


物語の型としては、見慣れたものと言えるでしょう。
かつて「ワル」だった男が、
その後何らかの理由(たいていは、愛する女性、とか)で堅気になり、
でも、
またもや何らかの理由で、
そちらの世界へ戻ってゆく、戻らざるを得ない……
というやつです。

少しメタで、物語から逸脱しかかるギャグ、
というのが、
韓国映画の特徴なんでしょうか?
今回もそれが見られました。
エンタメとしては十分楽しめるし、
拝金的人間への冷笑もあって、
韓国映画のレベルの高さを感じました。
(かなりハリウッド的ではありますが。)

マ・ドンソクは、
なぜかいるだけで面白く感じます。
妻役のソン・ジヒョという女優は初めて見ましたが、
なかなかよかったです。
彼女が、
セシル・ドゥ・フランス的な役を演じたら、
すごくいいんじゃないかと思いました。

『犯罪都市』

3年ほど前、
韓国で大ヒットしたという映画、

『犯罪都市』(2017)

を見てみました。
たまたま予告編を見て、
主人公マ・ドンソクのキャラに惹かれました。

http://www.finefilms.co.jp/outlaws/

ギャング映画で、
ギャングA とB が対立していて、
主人公である刑事がそれを和解させたのも束の間、
ギャングC が現れ、
Aを乗っ取り、B と「戦争」に発展する、というお話。
ところどころギャグも入り、これもなかなかおもしろいです。
興味を引かれたのは、
ギャングC の位置づけです。
金に執着し、殺しをためらわず、
しかもかなり残虐な彼らは、
中国朝鮮族なのです。
(若いボスの出身はハルビン。)

90年代以降に増えた中国朝鮮族ですが、
彼らは、一旦韓国に住み着けば、
「韓国系中国人」ということになります。
韓国の人にとって見れば、
「同胞」でありながら、言葉も価値観も違うわけです。

で、実際に見て確認したわけではないのですが、
この中国朝鮮族が映画に出てくる場合、
ギャングや犯罪者であることが多いようです。
しかもそれは、現実とはちがう。
韓国のメイン・ストリームの社会/映画が、
朝鮮族をある種のスケープゴートにしているわけです。
だとするならこれは、
フランス映画のメインストリームにおけるアラブ系などと、
パラレルだと言えそうです。
(時代は少しずれていますが。)

エンタメとしてはかなりおもしろいんですが、
(『タクシー運転手』の、強面の私服刑事が、
今度は小心者の中間管理職だったりもして)
根本的な移民の描き方については、
ラベリング的で安易だとは言えるのでしょう。

2020年2月1日土曜日

La Lutte des classes

ずっと注目している監督の一人、ミッシェル・ルクレール。
ここしばらくの彼の作品は、

2006    J'invente rien
http://tomo-524.blogspot.com/search?q=J%27invente+rien

2010    『戦争より愛のカンケイ』
http://tomo-524.blogspot.com/2012/05/blog-post_26.html

2012    Télé Gaucho
http://tomo-524.blogspot.com/search?q=Gaucho

2015    La Vie très privée de Monsieur Slim
http://tomo-524.blogspot.com/search?q=%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%82%88%E3%82%8A%E6%84%9B%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%82%A4

2019    La Lutte des classes

この中で、唯一見てなかった最新作、

La Lutte des classes   (2019)

を、ついに見ました。

https://www.youtube.com/watch?v=n_DJtZ3qKi0

レイラ・ベクティとルクレール監督の組み合わせで、
脚本もバヤ・カスミだし、
しかもタイトルが『階級闘争』ですから、
これはかなり期待していたんですが……

舞台はルクレール監督お馴染みのバニョレ。
(主人公たちの家、見つけました。
11 rue Thérèse です。
近くに Bonzini もあります。)
中心にいるのは四人家族。
女性はソフィア・ベルカセム。
アラブ系の弁護士です。
(もちろん誰もが、
ナジャット・ヴァロー=ベルカセムを思い出すでしょう。)
Pacs のパートナーは、ポール・クレマン。
もとパンク・ロック・グループでドラマーでしたが、
今はフリーターのようです。
二人の長女がマノン。
そして息子のココ(コランタン)は小学生です。

もっとも大きなストーリーを形成するのは、
ココと同級生たちの関係です。
喧嘩、仲間外れ、いじめ……。
ココは公立のジャン・ジョレス小学校に通っているのですが、
両親の友人たちはみんな、
その教育の質の低さを嫌って
(移民が多いから、とは決して言わず)
子どもを私立に通わせます。が、
バニョレ育ちのソフィアは、
公立で問題ない、
私立は共和国の理念に反する、と思っているし、
無神論者でパンクで左翼のポールは、
金持ちの白人は好きじゃないのです。
でも、そこは人の親。
ココがいじめられると、考えないわけにはいきません……

まだ見終わったばかりでよくわからないのですが、
見始めてすぐに、
なんとなく乗れない感じがありました。
多分、時代遅れのパンクロッカーがピンとこないのと、
彼と弁護士というカップルの不自然さが、
その理由なのでしょう。

もちろん、小ネタやちょっとしたセリフには、
気の利いたものもいくつかありました。
でもやはり、散漫な印象はぬぐえませんでした。
ちょっと、題材を広げ過ぎたように思います。
次に期待しましょう。

2020年1月31日金曜日

『真昼の決闘』

Amazon Prime で、

『真昼の決闘』(1952)

を見ました。
もう、4、5回目なので、
さすがにストーリーはよく覚えていました。

その日保安官は、
結婚式を挙げ、
美しい新妻と町を離れようとしていました。
けれどもそこに、
かつて彼が逮捕し、絞首刑になったはずのワルたちが、
減刑されて出所し、
保安官に復讐にやってきます。
妻は早く逃げようといいますが、
保安官は、彼の信条として、
留まることを選択します。
彼は、「正義」や「法」を象徴する人物なわけです。
ただ、彼の予想とは違い、
町の住民は誰一人、彼に協力しようとはしません。
それどころか、
隠れて彼のための棺を作り始めさえするのです……

で、なぜまたこの映画を見たかといえば、
これもまた、川本三郎さんの文章を確認したかったからです。
この映画は、
「正義に手を貸さない町の人間」
「善良な人間のいかがわしさ」
を描いており、そこには
「当時の赤狩り体験が反映されている」
というのです。
たしかに、
この映画の中の「大衆」は、
傲慢で、身勝手で、陰湿。
教会に集まっているものたちもまた、
保安官に恩義を感じながらも、
結局、事なかれ主義に陥ってしまいます。
「宗教」も頼りにならないわけです。
つまりここでは、リベラルな正義が良しとされているわけです。
保安官は、セルフ・メイド・マンであろうとはしません。
民主的な協力のもと、
「悪」と戦おうをするのです。

さらに言えば、
新妻は、最後の最後に彼のもとに戻って来はしますが、
彼女もまた、
彼を残して町を出ようとします。
銃撃のシークエンスでは、
役にも立ちますが、
彼の足を引っ張りもするのです。
「愛」もまた、
無効なのでしょうか?

こうした「大衆」のイメージ、
それは、東部のインテリたちが思い描く「大衆」そのもので、
赤狩りにおいてインテリを攻撃した(もう一つの)「大衆」の、
ちょうど裏返しだというわけです。

『真昼の決闘』が描く「大衆」を、
こうした文脈に置いて眺めてみると、
そのイメージのアメリカにおける位置が、
想像しやすいわけですね。

(それにしても、
新婚を演じたゲーリー・クーパーとグレース・ケリーは、
今調べたら、
実際には、28歳の年の差があるようです。
たしかに、そのくらいの差に見えました。)

2020年1月30日木曜日

『ペイド・バック』

原題が The Debt なので、
内容に合わせてふつうに訳せば、
『遂行義務』
くらいだと思うんですが、
今日見た映画の邦題は、

『ペイド・バック』

という、カタカナでした。
(「借りを返された」かな?)

https://www.youtube.com/watch?v=ZXFXoXomoxk

モサドを描いているということ、
ジェシカ・チャステインが出ているということ、
が見た理由です。

映画の冒頭、
やや時間の処理が込み入っていて、
というかあまりうまくなくて、
戸惑いましたが、
全体としては混乱しませんでした。

物語は、かつて「ビルケナウの外科医」と呼ばれた、
ナチ所属の医師を中心に回ります。
彼は、ナチ的優生思想を信奉しており、
それは逃げ回っている今(1966)も変わりません。
モサドは、なんとか彼を逮捕し、
裁判にかけようと思っています。
そしてついに、東ドイツで医者をしていた彼を発見するのです。
モサドは、3人のメンバーを送り込みます。
その作戦は、成功したかに見えました……

ジェシカ・チャステインはユダヤ人なのかと思ってちょっと調べたら、
あるユダヤ系雑誌のインタヴューで、
こんなやり取りをしていました。

ーFor a non-Jew, you’re very steeped in our culture.
JC: I’m an honorary.

名誉ユダヤ人(?)、
なんですね!

でも彼女については、結局、
『女神の見えざる手』
が一番好きです。
ただこの邦題もイマイチ。
アダム・スミスかと思っちゃうし。
こちらの原題は

Miss Sloane

このほうが、
まさにヒロインそのものを描いてるんだ、
という感じが伝わると思うんですが。

表参道、原宿、新宿

今日の東京はとても暖かく、
表参道に出かけたついでに、
原宿まで歩いてみました。
都会的散歩道としては、
東京屈指ということになるんでしょうか。

表参道はもちろん「参道」ですから、
その先にある明治神宮を少し意識しながら歩くと、
そういう道を歩いているという気がしないでもありません。
でも今、
表参道は Omotesando となり、
むしろ「面」として展開しているようです。

ここを歩くために最初に訪れたのは、高校の頃。
それは1974年だったはずなので、
なんと46年前! です。
でもその頃と、
基本的な雰囲気に変わりはないようです。
店も、歩いている人たちも変わったけれど、
街の骨格も、
坂道の勾配も、
変わりません。
もちろん、その勾配の感覚を、
「足が覚えている」というほどには、
通いつめてはいませんが。

そして新宿駅につくと、
なぜか、少しほっとしました。
やはりわたしには、
こちらのほうが「ホームグラウンド」のようです。

#JeNeSuisPasUnVirus

まずはこのハッシュタグ、

#JeNeSuisPasUnVirus

https://twitter.com/hashtag/JeNeSuisPasUnVirus?src=hashtag_click&f=live

これに関するニュースがこれ。
フランスで、「アジア人」が避けられている、と。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200130-00000060-jij-eurp

https://www.francetvinfo.fr/sante/maladie/jenesuispasunvirus-la-communaute-asiatique-denonce-une-vague-de-racisme-a-son-encontre_3804293.html

天声人語でも、
中国人観光客を見ると……
みたいな書き方がされていて、
違和感を感じましたが、
そういう反応は、
どこにもあるのでしょうね。

『イージー・ライダー』

アメリカン・ニュー・シネマの代表作とされる、

『イージー・ライダー』 (1969)

を見ました。
学生時代以来なので、
40年ぶり? くらいです。

麻薬の取引で大金を得た二人の若者が、
その金で買った最新型のハーレーで、
ロサンジェルスからニューオリンズを目指すという、
ロード・ムーヴィーです。
その旅の途中で、
さまざまな人や事件と出会うわけですが、
やっぱりこの映画といえば、
悲惨な結末で記憶されているのでしょう。

これを久しぶりに見る気になったのも、
川本三郎さんの文章を読んだからです。

********************************

『イージー・ライダー』の南へ南への旅は、だから、
自虐的な旅である。
彼らは南部で自分たちが親にかわって撃たれるであろうことは
十分に知り尽くしたうえで自滅してゆく。
彼らは、南部でも東部でももはや生きていくことはできない。

*********************************

そして文中の「だから」の部分には、
赤狩り以来の、
東部(やロス)のインテリ層と、
南部の「大衆」との間の対立、
そして「インテリ」の代表ケネディが起こしたヴェトナム戦争というカオスなどが、
一連の文脈として語られています。
「親」については、
ピーター・フォンダにとってみれば、
まさに、『12人の怒れる男』で「インテリ」を演じた、
父ヘンリー・フォンダが象徴的です。
彼はまさにそういうものとして、
陪審員となった「大衆」を「導いた」わけです。
そこでは、「インテリ」の勝利が描かれ、
「大衆」は頑迷な存在として描かれてしまいました。

アメリカがヴェトナムから撤退するのは、
この映画が公開された4年後のことでした。

2020年1月29日水曜日

Made in China

『最高の花婿』、

http://tomo-524.blogspot.com/2015/07/quest-ce-quon-fait-au-bon-dieu.html

この中で、
中国系の夫の役だったフレデリック・ショー、
アラブ系の夫の役だったメディ・サドゥーンが共演している、

Made in China    (2019)

を見てみました。
こんなタイトルですが、フランス映画です。

https://www.youtube.com/watch?v=9wRvIYYc_W8

舞台は、予想通りパリ13区の中華街。
『エキゾチック・パリ案内』で詳しく書いた地域で、
主人公の父親は、潮州系の寺院に通っていて、
しかもヴェトナム戦争をボートで逃れてきたと言っているので、
つまり、1970年代に、
ボート・ピープルとなってフランスに渡ってきた、
華僑の家族ということなのでしょう。
20代後半の主人公は第三世代で、
最後、第4世代にあたる赤ちゃんも生まれます。

物語自体は単純です。
10年前、進路を巡って父親と言い争いになり家出した主人公。
彼は、自分の意思を通し、写真家になっています。
で、ブルターニュ出身の彼女との間に、
赤ちゃんができたことをきっかけに、
自分のルーツについても考えるようになり、
恋人の強い勧めもあって、
父親との和解を試みます。が、
この父親がおそろしいほどの石頭。
ほんとは仲良くしたいのに、
息子を許すことができません。
ただそれでも、中国系の親戚たちや幼馴染が協力し、
最後は、関係が修復されていく、というお話です。

小ネタで面白いものはあったし、
パリ(おそらく郊外)の中国人墓地というものを初めて見たし、
おなじみの Steve Tran の顔も見られたし、
もちろんよく知っている場所でもあったので、
まあ楽しくは見ましたが、
あまり深さや屈折みたいなものは感じませんでした。

監督のジュリアン・アブラアムは、
La Cité rose と撮った人ですが、
作品としては、
そっちの方がよかった、かな。

2020年1月28日火曜日

『タクシー運転手  約束は海を越えて』

『1987』を見たら、
その中でも言及されていた光州事件を扱った映画もまた、
見るつもりでいました。
(比較的近い時期に公開されたので、
そういう見方もきっと多かったと思います。)
これです。

『タクシー運転手』 (2018)

https://www.youtube.com/watch?v=uDy9Bd08CH4

光州事件の全容は、
未だに分かっていないと言います。
軍隊の恐ろしさとは、
その銃口が国民に向かうこともある、
というところにあるのでしょう。
それが、一番悲惨な形。
そしてそういうことは、
歴史上繰り返されてきました。

多くのハリウッド的戦争映画とは違って、
戦闘の場面が、
まったく娯楽になっていないところが、
いいと思いました。
やっぱり、『1987』と合わせて見てよかったです。
『国際市場で逢いましょう』もいい映画ですが、
この韓国における民主化の苦闘がすっぽり抜けているで、
それを(ほかの映画などで)補う必要はありますね。
授業では、時間が足りないのですが……。