2015年7月27日月曜日

Qu’est-ce qu’on a fait au bon Dieu ?

今日見たのは、
まあ軽めのコメディと言っていいフィルムです。

Qu’est-ce qu’on a fait au bon Dieu ?
(「わたしたちが神様に何したっていうの?」)
 
 
田舎のブルジョワ夫婦、
彼らの4人の娘たちは、
(親のブルジョワ的&保守的な願いとは遠く)
ユダヤ人(ヴェンチャー志向、家族はテル・アヴィヴ)、
アラブ人(ボビニーで公選弁護人、家族はアルジェ)、
アジア人(金融、家族は北京)、
と結婚してしまいます。
そして最後に残った末娘まで、
アフリカ系(舞台俳優、家族はアビジャン)、
と結婚したいと言い出すのです。
物語は、
この両親と、
婿たちの相克が中心ですが、
婿たち同士のそれもまた重要で、
さらに後半では、
両親と、
アフリカ系婿の両親との関係が、
中心的に扱われます。
コメディなのでハッピー・エンドですが、
さまざまなレベルでの「差別感情」を描き、
それをPC的に弾劾するわけではなく、
指摘しつつ、意識しつつ、
それでも手を取り合う道を探る、という、
好感が持てる演出です。
4人の娘たちは、婿たちよりも背景よりですが、
とはいえ彼女らも、ジェンダー問題には敏感です。
 
印象に残ったエピソードは、
たとえば両親が、バルベスを通りかかった時の話として、
「パスポートを持っててよかったよ、
だってフランス人なんて一人もいないんだから!」
と語ったのに対して、アラブ系婿が
「全員のパスポートを確認したんですか?」と応じた場面。
あるいは、
中国系は愛想が悪いけど、アラブ系は商才がある、
と言われたアジア系婿が、
「じゃあなんで、ユダヤ人はサンティエを、
アラブ系はベルヴィルを取り返さない?」
と言い返す場面、などなど。
 
それから、小さなことですが、
上に挙げたトレーラーの38秒あたりからの英語字幕、
奇妙に面白いです。
ここは、ヴァカンスに妻の実家に招かれた婿たちが、
あいつらも来るのか?
と訊く場面なんですが、
その「あいつら」の表し方が、コメディ的で、
まずユダヤ人婿は、
「ジャッキー・チェンとアラファトも来るのか?」
と言い、
次に中国系婿は、
「カダフィとエンリコ・マシアスも来るのか?」
そしてアラブ系婿は、
「ブルース・リーとポペックも来るのか?」
と訊いています。
でも英語字幕は、
エンリコ・マシアスは「ネタニアウ」になり、
ポペックは「ウディ・アレン」になっています。
ユダヤ人ユモリスト・ポペックは、
日本同様、英語圏でもあまり知られていないのでしょう。
で、有名なユダヤ系、W・アレンで置き換えたわけですね。
 
ポペックは、
以前書いた気もしますが、
あの『憎しみ』に登場する男、
トイレで、奇妙な話を長々とする男のモデルではないか、
とも指摘される人です。
強烈なイディッシュ訛りのフランス語、
それが彼の特徴です。
 
 
ついでに言えば、
ユダヤ人婿のスマホの着信音は、
この映画の主題歌です。

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/04/les-aventures-de-rabbi-jacob.html

ただしルイ・ド・フュネス自身がユダヤ人でないことは、
ユダヤ人婿を交えた会話の中で明らかにされます。

また、アフリカ婿を演じたNoom Diawara は、
この映画でも主演の一人でした。

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/06/amour-sur-place-ou-emporter.html

劇中で彼は、ジョルジュ・フェイドーのDindon に出演しています。
アフリカ系の俳優がこの芝居に出演するのは、
珍しいことのようです。