2023年9月6日水曜日

『ロング・ロード・ホーム』

で、マイケル・ケリーの出演作を探してみたところ、

『ロング・ロード・ホーム』

というドラマが見つかりました。
さっそく見てみました。


事実に基づいたドラマですが、
その事実というのが、
2004年4月4日、イラクのバグダッド郊外のサドル・シティーで起きた、
「ブラック・サンデー事件」
です。
独裁を敷いていたフセインを倒した後、
けれども、アメリカがその存在を主張していた大量破壊兵器は見つからず、
米軍が、イラクの治安維持活動へと舵を切ってゆく頃です。

イラクという国は、そもそも
イギリスが自分たちの都合で勝手につくりあげたもの。
人口構成比を見ると、
北部のクルド人が2割、
中部のスンニ派のアラブ人が2割、
南部のシーア派のアラブ人が6割となっていて、
そのようなまとまりのないところを
1980年代からサダム・フセインが力で抑えてきた(高橋和夫)」
わけです。

なので、独裁者を倒してくれたアメリカは恩人でもあるけれど、
だからといって、
今の横暴なアメリカの言いなりになる気はない……
という人も多かったのでしょう。
(特にシーア派は。)
もちろん、
スンニ派であるフセインの残党などもいただろうし。

こうした状況の中で、
復興支援のつもりでイラクに向かった兵士たちは、
いきなり奇襲に遭い、
戦闘のまっただ中に投げ込まれることになります。

過酷な戦闘と、
アメリカで待つ家族、恋人……
どういう展開になるのかも、
何が描かれてゆくのかも、
当然予想できます。が、
それでもこのドラマには、
引きつけられました。
多くの人生が踏みにじられ、
蹂躙され、
希望はかすかです。

ある読書好きな兵士は、
アラン・シーガーの詩集をポケットにれていて、
あるとき、仲間から、
1つ教えてくれと請われ、
この詩を朗読します;

「ぼくは死に神と待ちあわせる」
I have a rendezvous with Death

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I have a rendezvous with Death
At some disputed barricade,
When Spring comes back with rustling shade
And apple-blossoms fill the air—
I have a rendezvous with Death
When Spring brings back blue days and fair.

It may be he shall take my hand
And lead me into his dark land
And close my eyes and quench my breath—
It may be I shall pass him still.
I have a rendezvous with Death
On some scarred slope of battered hill,
When Spring comes round again this year
And the first meadow-flowers appear.

God knows ’twere better to be deep
Pillowed in silk and scented down,
Where love throbs out in blissful sleep,
Pulse nigh to pulse, and breath to breath,
Where hushed awakenings are dear...
But I’ve a rendezvous with Death
At midnight in some flaming town,
When Spring trips north again this year,
And I to my pledged word am true,
I shall not fail that rendezvous.


戦場にいる兵士が読むと、
胸に迫るものがあります。
ぼくは死に神と待ちあわせる……
もちろんヒロイズムでもあるでしょうが、
死を覚悟しながら、
戦いに赴く兵士の思いが辛いです。

それにしても、
戦争はダメです。
いいことなんか何もありません。
でも、イラク戦争も、
ウクライナ戦争も、
なんと、21世紀の出来事です……