そもそも、
なぜこの映画を見る気になったのかが思い出せないのですが、
とりあえず今日見たのは、
ダニーブーン監督・主演の
Raid dingue (『イカレタRAID』2017)
です。
Raid とは、「フランス国家警察特別介入部隊」と訳される組織で、
まあ、警察のエリート部隊で、
Recherche, assistance, intervention, dissuasion
を任務としています。
(この頭文字が、名称になってます。)
https://www.youtube.com/watch?v=jJzZ5idFxxY
これ、おもしろかったです。
というのも、ベタな恋物語ではなく、
物語の中心に「ミソジニー」が置かれていたからです。
ヒロインのジョアンナは、
使命感に燃えた警察官。
そして彼女の夢は、Raid に入ること。なんですが、
いつも失敗ばかりの彼女は、
まったくRaidの選考にひっかかりません。
それでも、婚約者がとめても、
両親がとめても、
彼女の気持ちは変わりません。
で、内務大臣である彼女の父親は、
Raid のチーフに頼むのです、
研修生として参加させ、
うんざりさせて、自分から辞めるように仕向けてくれと。
でも、そこはコメディー、
ケガの功名がジョアンナをさらに勇気づけ……
というお話。
ダニ・ブーンは、
弟が奥さんに駆け落ちされ、
いわば二重に人間不信。
特に女性不信はひどく、ほとんどミソジニー状態です。
で、そんな彼が、
ジョアンナの教育係に指名され、
そこから騒動が始まるわけです。
マッチョで女性蔑視の表現としては、
たとえば「女性」と言うときに、
femme ではなく、gonzesse と言ってみたり。
フランス語について言うと、
ダニー・ブーンの役名は Froissard なんですが、
奥さんに逃げられた彼のことを、
陰ではみんな poissard と呼んでいます。
この poissard 、wiktionnaire によれば、
https://fr.wiktionary.org/wiki/poissard
つまり、
Malchanceux, poursuivi par la déveine, la poisse.
で、「ツキのないやつ、不運に見舞われる人」
くらいの意味もあり、
ここはまさしくそれなんですが、
この用法が、ロワイヤル中辞典にも、ロベール大辞典にも、
出てないんですね。
それからもう1つ。
これはまあ、日本でもまあまあ知られた用法だと思いますが、
たとえば、
Elle est bonne.
というと、
これはほぼ完全に、
性的な視線で女性を見ているときの表現になるようです。
英語なら、
She is hot.
なんでしょう。
ダニー・ブーンはジョアンナに、
意図せず
Tu es bonne.
と言ってしまい、彼女は、
Ah bon ? Je suis bonne ?
と訊き返します。
あなた、セクハラですよ、という感じで。
もちろん彼は、
あわてて否定するわけですが。
この映画は、
ミソジニーをはっきり(否定的に)意識しているので、
まずそれが安心。
そしてヒロインが元気で、好感が持てる。
さらにセリフが、気取らず、おかしみもあり、
飽きがこない。
というわけで、
B級コメディーに見えますが、
なかなかおもしろかったのでした。