見ようかなと思ってなかなか手が出なかった作品、
先日ジャンヌ・モローが亡くなったというニュースを見て、
ここはやはり見ておこうと手に取りました。
それは、
Une Estonienne à Paris (『パリのエストニア人女性』・2012)
です。
この映画の邦題は、なんと
『クロワッサンで朝食を』。
邦題についてとやかくいうのはやめておこうと思うのですが、
これはあまりといえばあんまり。
配給会社は、一人でも多くの人に届くように、
的なことを言うのでしょうけれど、
内容を裏切ってはまずいでしょう。
せめて、『パリ16区、故郷(ルビで「エストニア」)を捨てた女』
くらいでいいんじゃないでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=tZ0K42OTYtQ
(邦題はひどいですが、
この予告編はちゃんとしてますね。)
映画自体は、清潔で、初々しくて、よかったです。
話自体はシンプルで、
2人の子供を育て上げ、
12年前に離婚し、
最近介護していた母親を亡くしたエストニアの女性アンヌが、
やはりエストニア出身で、
もうずっとパリで暮らしている老女フリーダのもとに、
家政婦としてやってくる、という設定です。
(監督はエストニア人です。)
ここには、へそ曲がりの老女とやさしく強い女性の和解、
という物語以上のものがあります。
それは、性にまつわることなんですが、
その表現がとても抑制的で、
それが清潔な印象をもたらすのでしょう。
アンヌが、短めのスカートにハイヒールで現れたとき、
とても勘のいい観客なら、
なにかを予感するのかもしれません。
(わたしはその時は気づきませんでした。)
そうそう、
わたしはDVD で見たのですが、
特典映像の中の「美術」担当の人の話がおもしろかったです。
décor は、音楽の休符と一緒で、
沈黙で(観客に)語りかける、というのです。
そして、観客が室内の見取り図を思い描ければ成功だと。
ああ、そんなことを思っているんですね。