2012年3月29日木曜日

『二流小説家』


先日、近所の駅前本屋さんでフラフラしていて、たまたま、
最近はだいぶ御無沙汰しているミステリーのコーナーの前を通りました。
ミステリーを多く読んだ時期もあったので、
棚にはまだ見知った名前が。

その中に、「史上初、三冠達成!」と帯に描かれたポケ・ミスがありました。
(三冠=ミス読み、このミス、文春、オール1位。)
去年の早い時期から、相当に評判のよかった『二流小説家』です。
何の気なしに手に取ると、主人公の名前がハリー・ブロックだと……

ああ、これは参りました。
ミステリー・ファンなら、この名前からおそらく、
マイクル・コナリーの生んだハリウッド署の「ハリー」・ボッシュ、
そして言わずと知れた大御所、
マット・スカダーでおなじみローレンス・「ブロック」を思い出すでしょう。
そしてこの2人は、わたしにとっても大好きな3人のミステリー作家の内の2人なんです。
しかも三冠、しかも(ぱらぱらめくると)読みやすそう。
というわけで、ずいぶん久しぶりにミステリーを読んでみました。

まあこの本は、なにしろ「三冠」ですから、
今さらわたしなどがとやかく言いこともないと思いますが、
それしにてもこの小説、ものすごくうまい。
アマゾンの紹介文は、以下の通り;

ハリーは冴えない中年作家。
シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で何とか食いつないできたが、
ガールフレンドには愛想を尽かされ、
家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末。
だがそんなハリーに大逆転のチャンスが。
かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より
告白本の執筆を依頼されたのだ。
ベストセラー作家になり周囲を見返すために、
殺人鬼が服役中の刑務所に面会に向かうのだが……。

すごく知的で、構成も巧みすぎるほど巧みで、
読者を引っ張ってゆくテクニックがすさまじく、
誠実なためらいや、小心な冒険もある。
そして特筆すべきは、ミステリー小説への愛があることです。

ただし!
ある特定の章は、相当にグロテスク。
過度にエロチックではないけれど、
生理的にグロテスクが苦手な方には、どうかな?

英語は見ていないのですが、
翻訳の日本語はテンポがよく軽快。
二段組み450ページなんですが、あっというまに読めました。

2012年3月26日月曜日

「そりゃおまえだろ!」


先日、Tout ce qui brille. をシナリオと見比べた、と書きましたが、
なんだかこの映画に対する思い入れがより強くなった気がします。
もともと好きだったんですけどね。

シナリオの巻末に監督へのインタヴューがあり、
色々興味深い発言があるのですが、
中で、『憎しみ』が大好き、という個所もありました。
やっぱりなあ。

やっぱり、というのは、見かけはまったく違うのに、
実はけっこう共通点があるからです。
「パリ郊外」、「友情」、「ユダヤ」、「アラブ」、そして「若さ」。
で、ネットで適当に調べていると、
こんなことを書いている研究者がいました;

... Tout ce qui brille recycle clairement le verbe kassovitzien.
Lila taxe Ely de « meuf en carton ! »,
comme en écho au « juif en carton » de Saïd à son copain Vinz dans La Haine.
Mais au-delà du simple clin d’œil,
l’écriture des dialogues recherche une même vivacité de langage.
Ainsi les filles recourent au running gag verbal
qui consiste à ajouter « c’est toi » au dernier mot prononcé par son interlocuteur,
un tic langagier caractéristique de l’humour du deuxième film de Kassovitz :

La Haine – Dans la cité

Vinz : T’as vu la vache ?
Saïd : C’est toi la vache !

Tout ce qui brille – Sur un pont parisien

Ely : Tu sais même pas qui c’est Fanny Ardant !
Lila : C’est toi Fanny Ardant !

なるほど。
相手の言葉に対して、「そりゃおまえだろ!」(C'est toi, ~.)と切り返す、
その感じが、『憎しみ』風、カソヴィッツ風だ、というわけです。
それはつまり、「郊外風」といってもいいのかもしれません。

それにしてもこの2 作、まじめに比較研究したら、
何か書けるかも!?

2012年3月25日日曜日

Mali: coup d'Etat militaire

気になるマリでのクーデター。
画像がありました。

http://www.47news.jp/movie/international_politics_economy/post_2768/

そして驚きの早さで wiki が。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E8%BB%8D%E4%BA%8B%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%BF%E3%83%BC_(2012%E5%B9%B4)

気になります。

増刷中


プチ連絡です。
『ハートにビビッとフランス語』が、今アマゾン等で品切れ中です。が、
大急ぎで増刷していて、4月の頭には出来上がるそうです。
もしもお探しの場合は、あとちょっとだけお待ちいただければ幸いです。

ちなみにこの書名を付けてくださったNHK出版の編集長は、
「フランス語テキスト」の編集長であるばかりでなく、
アラビア語等合計4つの言語のテキストの編集長でもあります。
忙しそう~!

2012年3月23日金曜日

「1番心配なのは4 号機」

「フクシマの嘘」。ドイツZDF制作。
この惨状。
しかも日本のマスコミではなく……

http://www.dailymotion.com/video/xpisys_yyyzdf-yyyyyyy_news

新企画でGO !


昨日は久しぶりに都心まで出かけ、
新しい本の企画の打ち合わせをしてきました。
企画は2つ。
1 つはフランス語関連のもので、秋の刊行を目指しています。
(なぜこんなに早いのかというと、
気心の知れたあの人と共著だからです。
しかもコンセプトや骨組は決定済み。)
もう1つは、まだ刊行時期の話をするところまでいっていないのですが、
ぜひとも実現したい企画です。

今回伺った編集部は、広くてウォームな雰囲気。
実際には、1人1人がとてもたくさんの仕事を抱えているはずで、
決してのんびりなどしていられないのでしょうけど。

帰り道は、週間文春を読みながら。
今週号は、おもしろいコラムが少なくとも3つあり、お得でした。
タックス・ヘイブンと花粉症とアメリカの男女差別。
こうして並べてみると、雑誌らしいですね。

2012年3月21日水曜日

千夜千冊

まああんまり悪口は言いたくないんですけど、
東電という組織には、あきれるばかりです。
あの組織が、今まで原発を管理してきたのかと思うと……

それにしても、原発をやめるということは、
どういうことなんでしょうか?
(理念を現実にするとは?)
それがエネルギー問題であるのは当たり前ですが、
そればかりではなく、
日本という国の安全保障や、外交や、
その他いわば何にでも、関連があることです。
まず思いつくのは、日米安保のこと。
アメリカの核の傘に入った、よりひ弱な存在となる道を選ぶのか、
それとも、それ以外に道を示せるのか。
中国の脅威はすでに在るわけだし。
ただ間違いないことは、
「チェルノブイリ」が広がってゆくのを、
指をくわえて見ているわけにはいかない、ということです。

反原発にせよ反・反原発にせよ、
考えることはたくさんあります。
その参考になるのが、これです;

http://1000ya.isis.ne.jp/file_path/table_list.html

1432夜以降、これに関する重要な本が並びます。
(それ以前にも関連本はあります。)

この問題は、昨日今日始まったものではありません。
多くのマスコミの取り上げ方には、
そうした歴史観が足りないようにも感じます。
大震災以前と以降で、状況が激変しているとも言えるのでしょうが、
実は変わっていない部分も多々あるわけです。
(それに気づいたことが、変わった点だということでしょうか。)
重い課題ですね。

2012年3月20日火曜日

明日、最終回


さて明日、半年続いた「ナミの恋する東京日記」も、
ついに最終回を迎えます。
(ただ、本放送の時は、木曜日の放送があったので、
さよならの御挨拶はしないまま終わることになるのかも。
この幻のほんとの最終回では、
ケンタやナオコも登場してくれて、とても記憶に残る放送だったのですが。)

そういえば数日前、
「ナミ恋」が終わってしまうので悲しい、というつぶやきがあり、
嬉しく思いました、
やっぱり聞いてくださる人がいるからこそ、
楽しい番組にしようという気持ちになれます。
聞いてくださったみなさん、
ありがとうございました!

*画像は最終収録日、le 11, juillet, 2010 の様子です。
  この日に収録したのでした。

「フランス体験講座」受付中

明治大学が一般向けに開講している「リバティー・アカデミー」。
この春、わたしも少しだけお手伝いさせていただくことになってます。
これです。

https://academy.meiji.jp/course/detail/530/

全6回で、フランスのいくつかの顔を知ろう、という企画です。
第1回のわたしの担当は、パリ13区の中華街です。
まあ90分なので、どれだけお話しできるか心もとないですが、
なんとか楽しくやりたいところです。
でも6回続けて出れば、きっとフランス理解に新しさが加わるでしょう。
よろしければ!

NHKテキスト4月号


今日は3月20日、春分の日。
もうすぐ4月ですね。つまりまた、NHKでは新講座が始まります。

「テレビでフランス語」は、川竹英克先生とナビゲーターには村治佳織さん。
ラジオ「まいにちフランス語」初級編は、
藤田裕二先生とシルヴィ・ジレ先生の名コンビ復活。新作です。
(なんと、「アンコール・まいにちフランス語」もやっぱり、
藤田先生コンビの番組を再放送。
本放送と同じ講師というのは、初めての試みでしょうか?
人気なんですねえ!)
そして応用編は、澤田先生の番組の再放送です。

そしてテキストですが、これもすでに発売になりました。
「テレビでフランス語」には、
「パリは燃えているか?」の第13回を書かせてもらいました。
今月からは、13区の中華街を歩きます。

春ですね!

2012年3月19日月曜日

シナリオと


ちょうど1年くらい前、『きらきらしてる』という映画のことを書きました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2011/02/blog-post_21.html

そしてやや時間のできた今日、
買っておいたシナリオを片手に(というのは比喩ですが)、
もう1度この作品を見てみました。
(もう1度とは言っても、合計では5回目くらい?)

シナリオと見比べると、時に、
こちらが漫然と見ていた個所が、
実は相当意図的に作りこまれていた事実が分かることがあります。
それはたとえば2秒くらだったりするので、
10回くらいは見ないと気づかないかも。
(シナリオなしで見ていると、
何回見ても新しい発見があるのはこのため?)

そしてシナリオを比べて、
細かなセリフ回しに変化が付いているのは、
まあ当然なのでしょう。
俳優さん達の言い易さを考慮したり、スピーチレベルを微調整したりして、
その場で変えることもあるでしょう。
なんとなく、みんなで集まって変更している様子が目に浮かびます。
もちろん勝手な想像ですが。

またそれとは別に、
編集段階で切られたのでは、と思われる個所もあります。
時には、シークエンスの半分くらいが落ちていることも。
今はあまり長いと、配給会社から嫌がられるそうなので、
そうした実際上の必要もあるのかもしれません。
でもたしかに、ここは要らないかも、と思うところが切られている気もします。

ただシナリオって、手に入りにくいですね。
今回はたまたまフツーに(アマゾン・フランスで)フツーに売られていますが、
こんなことはめったにありません。
(そういう意味でも、雑誌「ふらんす」巻末に毎月付いているシナリオ抄録は、
なかなか貴重なものです。)

こういうの、授業でもできると楽しいんだけどなあ……

2012年3月18日日曜日

フライブルク・バロック・オーケストラ


バッハの中でも、「管弦楽組曲」は、
すでに何枚か愛聴版があります。
ちょっと古いですが、Max Pommer 版とか。

でも最近買ったコレは、驚異的でした。
フライブルク・バロック・オーケストラです。

http://www.amazon.co.jp/J-S-%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F-Ouverturen-Orchestral-Freiburger-Barockorchester/dp/B005IQXTVS/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1332048723&sr=8-3

清新で繊細、艶があって深みもある。
古楽器ならではの音で、
CD をかけ始めて10秒くらいで引きこまれました。
素晴らしいと思います。

*ほんのちょっとですが、試聴できます。
http://www.amazon.fr/Suite-No-Major-BWV-1068/dp/B005QZR5YI/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1332049869&sr=8-2

2012年3月17日土曜日

左右社のつぶやき


左右社の社長、小柳さんのつぶやきです。
引用します;

清岡智比古さんの『東京詩』に吉本隆明さんのオビ文をいただきました。
玄関待ちをしていた見ず知らずの編集者を家にあげ
少年のような目で話を聞いていただいたことが忘れられません。
ときどきその時間を思い出すことが、
自分への励みとなっています。
吉本さんのご冥福をお祈りします。

2012年3月16日金曜日

吉本さん逝く


吉本隆明さんが、亡くなりました。

これから、色んな雑誌などで、吉本さんの追悼号が企画されるでしょう。
個人的には、『東京詩』の帯を書いて頂いたこと、
吉本さんの『父の像』の、文庫版解説を書かせて頂いたこと、
この2つが宝物です。
吉本さんの仕事全体からすれば、
それはまったく0.0001%程度のことであるのは、重々承知していますが。

実はつい最近も、 『吉本隆明 50度の講演 』(CD)の中の、
「現在について」を聞き直したばかりでした。
そこでは、「重層的な非決定」の重要さが語られています。
聞きながら、この考え方に影響を受けているなあ、と思っていたのでした。
つまり、
「現在」というものを捉えようとしたら、
どこか1つの地点にとどまって全体を眺めるだけでは不十分で、
さまざまな「層」に身を置き、
「重層的」に捉えるしかない……
自分にそれができているとはまったく言えませんが、
そのようにありたいとは思っていた気がします。

それ以外にも、『言語にとって美とはないか』をはじめ、
影響を受けた本は少なくありません。
吉本さんの、御冥福をお祈りいたします。

               ◆

異数の世界へおりてゆく      吉本隆明


異数の世界へおりてゆく かれは名残り
おしげである
のこされた世界の少女と
ささいな生活の秘密をわかちあわなかったこと
なお欲望のひとかけらが
ゆたかなパンの香りや 他人の
へりくだった敬礼
にかわるときの快感をしらなかったことに
けれど
その世界と世界との袂れは
簡単だった くらい魂が焼けただれた
首都の瓦礫のうえで支配者にむかって
いやいやをし
ぼろぼろな戦災少年が
すばやくかれの財布をかすめとって逃げた
そのときかれの世界もかすめとられたのである
無関係にたてられたビルディングと
ビルディングのあいだ
をあみめのようにわたる風も たのしげな
群衆 そのなかのあかるい少女
も かれの
こころを掻き鳴らすことはできない
生きた肉体 ふりそそぐような愛撫
もかれの魂を決定することができない
生きる理由をなくしたとき
生き 死にちかく
死ぬ理由をもとめてえられない
かれのこころは
いちはやく異数の世界へおりていったが
かれの肉体は 十年
派手な群衆のなかを歩いたのである

秘事にかこまれて胸を ながれる
のは なしとげられないかもしれない夢
飢えてうらうちのない情事
消されてゆく愛
かれは紙のうえに書かれるものを恥じてのち
未来へ出で立つ

2012年3月14日水曜日

このマンガを


朝日出版社は、わたしが初めて教科書を作らせてもらった、
いわば恩ある出版社ですが、
そこから、とてもいいマンガが出版されています。

『チェルノブイリ、家族の帰る場所』

です。
表4の帯には、こうあります;

チェルノブイリに住んだのは、きみの「家族」でもあったのだ

まさに。
そしてわたしたちの「家族」がいるのは、もちろん、
チェルノブイリばかりではありません。

絵は、木版画的、といっていいのでしょうか?

そして、カット割りというか、“カメラ”割りというか、
行間というか、
コマとコマとの“間”に、時間やさまざまな感情が満ちている気がします。


それにしても、
「数日で戻れるからといわれつつ、
自分たちの家を去らなくてはならなかった」この家族の物語は、
今も続いているのですね。

2012年3月11日日曜日

3月11日



                   ◆

小さなKに

      
あとどれくらい 地上(ここ)いておまえを
小さなおまえを抱いていられるのか
あと何度 朝陽のなか なかば眠たげなおまえのオハヨウを
新鮮な炎のように
聞くことができるのか
あと何度 おまえの靴が窮屈になるたび
手をつなぎ
一緒に買いに行くことができるのか

おまえが五十歳になるとき
わたしは地上にはいない いや それどころか
おまえが二十歳になる日さえ あまりに遠い
おまえはその日 生まれたての 
あの血まみれの赤ん坊とは 似ていないだろうけれど

おまえが死ぬ日
それがもし 老いのもたらす結果であるなら
わたしは喜ぶだろう 
おまえの命が 残らず燃え尽きたことを
そしてそれがもし
不慮の事故や災害がもたらしたものであったとしても
やはりわたしは 
いつかは
喜ばねばならないだろう
おまえが地上を駆け抜けたことを

そしてわたしはいとおしむだろう
おまえの瞳に映るはずだったすべてを
おまえが呼吸するはずだったすべてを

手をつないで歩いたときの
小さな小さな手の柔らかさを
消えない炎として
いつまでもいとおしむように

2012年3月10日土曜日

ユリイカ・3月号


ユリイカ・3月号、特集は「辞書の世界」です。
我らが林先生(今、中国に出張中。インタヴュー予定ぎっしり!)も、
「赤いリュックと中国語辞典」を寄稿されています。
語学好きのみなさんは、間違いなく楽しめます!

で、この3月号の表4(=裏表紙) には、杉山利恵子先生が登場!
このコーナーは、1年ほど前(?)から、
明治大学の先生たちが、順に紹介されるコーナーになっているそうです。
(第1回が、神聖ローマ帝国の専門家で、
隣の隣の研究室にいらっしゃる、菊池良生先生でした。)
どうぞ本屋でご覧になってみてください。

2012年3月9日金曜日

フランス語教育実情調査報告書


フランス語教育学会、という組織があります。
その学会が、最近、ある調査結果を発表しました。
今の学生や先生たちの「生活と意見」が聞きとれます。
1番上の項目の、「こちらから」をクリックします。

http://sjdf.org/

25ページに、先生たちが今の教科書についてどう思っているか、
というアンケートがあります。
この中に、
「やさしく幼稚過ぎる」(15.4%)
「内容が簡略的過ぎる」(23.4%)
「説明の仕方が不十分」(16.0%)
とあります。

これらを選んだ先生たちは、おそらく、
教科書をお作りになった経験
(つまり、作るという視点で、教科書のことをマジで考えた経験)
がないんじゃないかな? と感じます。
幼稚でなく、簡略的でなく、十分な説明をすることが、
いい教科書の条件ではないと、わたしは思っています。
教科書は、あくまで授業で使うもの。
授業は「ライブ」ですから、教科書が完結していてはいけないのです。
いい素材で、土台をしっかりさせ、
あとは授業で組み上げてください、仕上げてください、
と、現場の先生に差しだされているものが、そこに阿吽の呼吸があればなおさら、
いい教科書なのだと思います。

もうだいぶ前のことですが、
仲良しの先輩同僚が、
「史上最低の教科書を作るぞ!」と言って、
あるテキストを作りました。
「史上最低」とは、彼らしい照れで、
つまり今までにない思い切った簡略化を行ったテキスト、のことです。
(彼自身は、とてもフランス語ができる人で、バルトの授業にも出てたそうです。)

この教科書、でもほんとに「史上最低」でした!
だから、よく売れました。
つまり、阿吽の呼吸を理解してくれる先生たちもたくさんいる、
ということなんでしょう。

2012年3月8日木曜日

タハール・ベン=ジェルーン、池澤夏樹

3月17日、誰が考えても混みそうです。

http://institut.jp/ja/evenements/11441

ほんとに、2度とない組み合わせですねえ。

国際女性デー


今日は、懸案事項のうち、おそらく2つは潜り抜けた感があり、
少しだけほっとしています。
(その内1つの結果は多分◎。もう1つは△なんですが、
その△はいわば「織り込み済み」なので、それはそれでいいんです。)

さて今日3月8日は、「国際女性デー」なんですね。
それを知ったのは、この記事から;

http://www.msf.or.jp/

ナイジェリアから、コートジボワールから、パキスタンから、
「国際女性デー」の報告があります。

以前『暴力とアイデンティティー』という本のことに触れた、
アマルティア・セン。
彼が10年前ほどに出した新書、『貧困の克服』という本があるのですが、
それによると……
 
今もソマリアが苦しんでいる大飢饉。でも、
飢饉では、人口の5%以上が死ぬことはほとんどないそうです。
逆に言うと、1部の人に飢餓が集中している。
そして今や飢饉は、民主国家では起こらない。
なぜなら民主主義的選挙では、
候補者が多様な意見を取り込もうとし、その結果、
不利益が1部に集中しないから、というのです。
わたしは納得しました。

(だから、
「中国のような大国を食べさせるには、民主主義より独裁」
という主張は成り立たないのだと言います。
そもそも、独裁国家のほうがいいなんて、誰一人証明していない、と。)

そしてさらに言うなら……

たとえばある国でGNPが5%下がる、という事態が起こったとして、
そのマイナス分を、全国民で背負うなら、
(ごく単純化すれば)
全員の給料がマイナス5%、ということになります。
下がるのは痛いにしても、耐えられる範囲でしょう。
でもこのマイナス分が、もし1部の人たちに集中したらどうなるのか。
もし10%の人たちに集中したら、彼らの給料は1/2に。
もし5%の人たちに集中したら、彼らの給料はゼロに!
なるわけです。

ここで必要になるのは、いわゆる安全ネットです。
あらかじめ(←ここが肝心)、そういうシステムを作っておけば、
落ちかかっても、また復帰できる。
以前の韓国での金融危機の時、
韓国にはまだ安全ネットがなくて、1部の人だけが、
どこまでも落ちて行ってしまった。
彼らにしわ寄せがいった……
たしかに、儲かってるときはみんな仲良しだけど、
下り坂では「ババ抜き」っていうんじゃねえ。

(東北には、長いスパンでしわよせがいってたことが、
はっきり分かったわけですが。)

安全ネットを作る前提になるもの、
それは民主主義でしょう。でも、
その場合の民主主義には、
教育とか、情報の公開とか、その辺まで含まれるのでしょうね。
(もちろん、その先にも必要なものがあるでしょうけど。)

そういえば、アメリカの選挙が進んでますが、
共和党の有力候補の1人は、
「わたしは政教分離には反対だ」と言い切っています。
なんとね!

2012年3月6日火曜日

親戚


今夜、多分30年振りくらいで、
親戚の女性から電話をもらいました。
彼女は音楽をやっていて、長くドイツにいたのですが、
なぜかフランス語を勉強する気になって、ラジオを聞いてみたら……
あれ? これってあの小さかった……?
で、そろそろ放送も終わりに近づいたので、ちょっと連絡してみたの、
というわけです。

そういえばレナさんは、よく親戚から連絡をもらった話をしてましたが、
わたしはほぼ初めてです。
レナさんの場合は、フランス人の親戚もいるわけですから、
ほとんど日本人であるわたしの周りとは違いますね。

そういえば、1人だけ、
ニュー・カレドニアの男性と結婚した従姉妹がいます。
国籍は、フランスになるわけですね。
彼女の子供2人は、とっても可愛いです。
ただ小学生のお姉ちゃんはものすごく早口で、
聞き取りにくいのが困ります!

いつか遊びに行きたいと思いつつ、
もう10年以上経っちゃいました。
いついけるかな~

2012年3月5日月曜日

ポトラック vol. 8


今日は、なんだか寒い啓蟄でしたね。
サスペンデッドな感じの仕事がいくつかあって、
なんとなく落ち着かない日々です。
(でもまあたいていそうなんですけど。)

そんな中、
わたしも1度だけ参加させてもらったことのある「言葉のポトラック」、
vol.8 のお知らせが届きました。
コピペしますね。

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「詩と散文のあいだ」


4月8日(日)12時開場/13時開演    3月8日予約開始 

会場:サラヴァ東京
企画:堀江敏幸・大竹昭子
出演:保坂和志/角田光代/スズキコージ/間村俊一/Ayuo/長
    島有里枝/堀江敏幸/大竹昭子

http://kotobanopotoluck.blogspot.com/

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これは、すぐに予約が埋まりそうですね。

そしてこの日には、
ポトラックvol. 1 ~ vol. 8 を集めたアンソロジーも出来上がるそうです。

2012年3月4日日曜日

春は


一昨日、今年度の打ち上げをして、
ちょっとお休みモードに入るのかと思いきや、
同僚の1人は昨日、夏の集中講座の打ち合わせに明大前に出かけ、
わたし(ともう1人)も今日、緊急業務で大学に行きました。
(ほぼ間違いなく、他の同僚たちも、
それぞれに業務を遂行しているはずです。)
しかも今回は、自宅で仕上げるべき宿題つきです。

ただこの宿題には、論文読みも含まれていて、
それは勉強にもなるし、イヤではありません。
特にそれが、若くて優秀な人のものである今回のような場合は。

それにしても、もう3月。
あと1ヶ月で新学期!
春は目の前ですねえ

(画像は昔のLa Défense です。)

2012年3月3日土曜日

IZU PHOTO MUSIUM


IZU PHOTO MUSIUM での、

「荒木経惟写真集展 アラーキー」・オープニング対談

に、我らが倉石さんが登場します。

http://www.izuphoto-museum.jp/event/74899260.html

伊豆方面のみなさん、おもしろそうですよ!

2012年3月2日金曜日

ノミホー付き


昨日の午前から午後にかけては、
年に1度の外国語教員の全体会議があり、
馴染みのメンバーと久々に顔を合わせました。
レナさんも元気でしたよ。
(スキーに行ってきた、と言ってました。)

そして夕刻からは、
照合文化教室のメンバー全員(1人欠席)で、
大学近くのイタリア料理店に行き、
今年度の打ち上げと、倉石さん、波戸岡さんの壮行会と、
オーストリアから帰国した菊池先生の帰朝お祝いをみ~んな兼ねた会を、
執り行いました。
かつて総文のメンバーだった黒田龍之助さんも緊急参戦です!

ノミホー付きなので、料理はあまり期待してなかったのですが、
意外に(というのも失礼ですが)おいしかったです。
アボカドのタルタル風に粒コショウを混ぜたのを、ディップみたいに使ったり、
サラダにパクチーを入れてみたり。
ま、イタリア? ではありますが、悪くなかったです。

こんな風に、総合文化教室の全員が揃って飲みに行くなんて、
この4年で…… なんと初めて!
いつもの打ち上げは、学内の会議室でジミ~にやるからです。
たまにはこんなのもいいです。
高級ではないワインも、こうして飲むとおいしいです。
(こういうカジュアルな店って、冷えた赤を出してくることがあるんですが、
今回は室温で、それもよかったです。)

それにしても、倉石さんと波戸岡さん、
在外研究を経たあと、どれほど成長して帰ってくるのか、
恐ろしいほどです。
元気で、楽しく行ってらして欲しいです!

訂正!


Mmm... 昨日の記事に訂正があります。
「ひかがみ」は、『フラ語ボキャブラ』でも採用した単語でした!
でそれは、jerret です。
レナさんにも、Batayam にも「やったでしょ!」と言われました、
トシャアトリタクネエナア!

そしてchute ですが、これはまあ「主観的な」言葉なので、
どこを指すかは個人差があるそうですが、
レナさんは「おしりかな。」ということでした。そして、

フランス人は、おしりを横から見るんですよ。
だから、おしりの上半分が、「落下」して見えるんですね。

とのこと。
横から見る、というのが、面白いですね。