2018年12月31日月曜日

『敷石のパリ』


大晦日の今日、
ついに見本が届きました。

『敷石のパリ』

です。
小さな、愛らしい本です。
(文庫より、かすかに大きいくらい。
黄色いのは万年筆です。)

詩人にしてミュージシャンにして翻訳家にして思想家にして……でもある、
管啓次郎さんや、
詩人にして神戸でパン屋さんもやってらっしゃるミシマショウジさんや、
詩人にしてこの本の発行人である佐藤由美子さんとの、共著です。

佐藤さんがおっしゃっていた通り、
いま全体を読んでみると、
4人の言葉がいろいろに響き合っているようで、
(自画自賛で恐縮ですが)
なかなかステキだと思いました!

では、どうぞよいお年をお迎えください💛

2018年12月30日日曜日

Cheval magazine

競馬はともかく、
今までに乗馬はしたことがありません。
(乗馬が趣味だと言っていた人にも、
一度しか会ったことがありません。
フランス語講座で一緒に仕事をさせてもらった、
黒谷友香さんです。)

馬、なんですが……。

映画『サンバ』の中には、
何度か馬に関わるシーンが出てきます。
その内の一つが、
メトロの中でサンバが読んでいる雑誌です。
それは、Cheval magazine なんですが、
今探してみたら、わりとあっさり見つかりました。
2012年の7月号でした。

http://www.chevalmag.com/chevalmag/Magazines/Sommaires/Cheval-Magazine/2012/n-488-juillet

まあ、
これは不法移民だと思われないための偽装なので、
雑誌の内容までは関係ないと思いますが。

でも、主人公が持っている雑誌が突き止められるってのは、
ネット時代ならではですね。

2018年12月29日土曜日

冬休み

冬休みに入って、
いくつかやらなければならない仕事を後回しにして、
あてもなく、
書きたかったことを書き始めてみました。
映画『サンバ』についてです。
この映画のことは、
以前少し書いたこともあるのですが、
全然書き足りなくて……。
今日で5日目?くらいですが、
今25枚くらい。
他の映画も見たりしてるので、
まあちょうどいいペースでしょうか。
『サンバ』については、あと5枚程度で終わりそうですが、
あと何本かについて書いて、
できればまとめたいと思っています。
とはいえ、注文で書いているわけではないので、
日の目を見る保証は全然ないのですが……。
ま、書けるうちに書いておきましょ!


2018年12月26日水曜日

2018年12月25日火曜日

「マクロンの謀略を……」

今日は、東京マーケットで1000円以上下げ、
多くの「評論家」が予想していた25,000円到達は、
ほぼ不可能な感じになってきました。

ただ、
NHKの7時のニュースのトップは、
この暴落の話題ではなく、
ケリー氏の保釈の話でした。

で、
これは1か月前の記事ですが、
ちょっとおもしろかったです。

http://tanakanews.com/181122nissan.htm

この書き手は、
「アメリカは覇権主義をやめて、多極化を容認し始めた」
という立場から書いていて、
そこがおもしろいです。
上の記事も、
陰謀論的な香りも少ししますが、
一定の説得力はあると感じました。
「国」って、そういうものですしね。

2018年12月23日日曜日

Noël


夕方散歩に出たら、
たまたまやってました。
中学生くらい?
上手でした!

なおも Gilets jaunes

もう1か月以上になりますが、
そしてやや勢いが衰えつつあるようですが、
それでもまだ、
Gilets jaunes 運動は続いています。
直近のパリでのデモについては、
「反ユダヤ的」な色彩があったと、
フィリップ首相は指摘しています。

https://www.capital.fr/economie-politique/gilets-jaunes-macron-appelle-a-lordre-philippe-denonce-des-gestes-antisemites-1321078

まあ、なにか意図があるようにも感じますが。

この運動については、
たとえば堀茂樹先生は、「階級闘争」なのだと言っています。
なるほど。
これはブレイディみかこさんに倣って言えば、
左右ではなく、上下の闘争だ、ということなのでしょう。

マクロンは、バリバリのグローバリスト。
そして資本家寄りで、企業家寄りで、投資家寄り。
つまり、peuple(ピープル)の利益からはかなり遠い政治家だと感じます。
たとえマクロンが、文化的にリベラルで、
多文化主義や共生に積極的であっても、
今はそのことは関係ない。
多文化主義に賛成の人も、そうじゃない人も、
グローバリズム的&ネオリベ的姿勢に反対ならば、
今はその一点で「反マクロン」の立場を取るわけなんでしょう。
左右はではない、というのは、
このことを指しているわけです。

翻って日本では、
こんなデモは起きません。
なぜなんでしょうか? と学生に訊かれます。
よくは分かりませんが、
ふつうに考えれば、やはり、
日本人は革命を経験していないから、というのが理由なのでしょう。
フランスで、peuple(ピープル)が、
自分は「フランス人」だと言うとき、
そこにはほぼ必ず、
フランス革命の子孫だ、という含意があるように思います。
彼らのそうしたアイデンティティーの一部は、
フランス革命における成功体験によってできているのです。
だから、
「フランス人」がデモをするのは、
いわば自己確認だとさえいえるのかもしれません。
(もちろん、フランス革命が客観的に「成功」だったかどうかは、
議論の分かれるところです。
もっとソフト・ランディングできたはずだ、
そうすれば、あんなに犠牲者は出なかったし、
王政復古もしなかった…… かもしれません。)

アメリカが銃を手放せないのは、
その建国神話の中に、「銃」が組み込まれているからだ、
という指摘があります。
「銃」をやめるなら、
あらたな建国神話が必要なんだと。

「国」を形作る幻想は、
いろんな現実を招来するのですね。

2018年12月21日金曜日

増刷

ここにきて、
増刷のお話が5件ありました。
うち3件は白水社の教科書、
2件はNHK出版の問題集などです。

この「増刷(ゾウサツ)」とか、
「増し刷り(マシズリ)」とか、
「重版」とかいうお知らせは、
ほんとに嬉しい&ありがたいものです。
(もちろん、どの知らせも、実質同じことです。)

そしてこれは、
読者の支えは言うまでもありませんが、
やはり、出版社の支えがあってのこと。
わたしの場合は、
白水社やNHK出版など、
優秀な編集者のいるいい出版社に出してもらえて、
とっても運がよかったです。
感謝……

2018年12月20日木曜日

後期授業&リバティー・アカデミー終了

というわけで、
昨日、年内の後期授業と、
リバティー・アカデミーの講座が終わりました。
後期は、
(ほかにいろいろ気にしなければならないこともあり)
なんだかあっという間でした。

リバティー・アカデミーの授業後は、
恒例のポトラック(持ち寄りランチ)です。
まあいつもながら、
とても充実した料理が並び、
驚くやら嬉しいやら。
おそらく、これほど充実したポトラックは、
そうはないだろうと確信しています。
生徒さんたち、すごいです!

さて、今年もあと10にちほど。
ただ、まだやることが結構あります。
その中には、かなり重要な事柄も含まれているので、
「休み」という感覚はほとんどありません。
なんとか、いい年を迎えたいです!

そうそう、
少し気が早いですが、
来年の3/26に、フランス語関連のトークイベントに参加しそうです。
ちゃんと決まったら、
またご報告します。

2018年12月16日日曜日

なお70%が

5週目に入った gilets jaunes ですが、
今もなお、約70%ほどのフランス人が支持しています。

彼らの声明です。

https://www.youtube.com/watch?time_continue=19&v=7GMkWDN__B8

それにしても、
最近も気になるニュースが多いです。
中でも、このgilets jaunes 以外では、やっぱり Brexit。
このタイミングでの信任投票自体にも、驚かされましたが、
保守党側は、
コービンが首相になるくらいなら、
合意なき離脱でも構わないという議員も多いようです。
そしていま一つ分からないのが、
コービンが Brexit を、本当はどう思っているのかということ。
彼の、社会民主的な政策はわかるし、いいと思うのですが、
そのあたりをもっと鮮明にしてほしい気がします。



2018年12月15日土曜日

軍事要塞化

だけじゃない、わけですね。

http://www.qab.co.jp/news/20181212109397.html


2018年12月14日金曜日

「『フラ語入門、わかりやすいにもホドがある!』の感想と使い方」

……というタイトルの、ブログの記事がありました。
とても丁寧に紹介してくださっています。
Merci beaucoup !

https://onyvablog.com/frago-review

ああ、3周、やっていただいたんですね。
この本が、少しはお役立ったようで、
よかったです!

(ところで、以前作った参考書の中に、
今「品切れ中」の、
つまり、
アマゾンでは中古品しか出ていないものがあるんですが、
これらが、近く増刷される可能性が出てきました。
やっぱり、わたしにとっては子どもみたいなものですから、
再デビューさせてもらえるのは、
とても嬉しいです。
参考書は、
出て、
使っていただいて、
役に立ってナンボ、ですからね。)

2018年12月13日木曜日

マイペース

今年もあと2週間ちょっとになりました。
師走、ではありますが、
彼女はいつもマイペース。
今日は珍しくこんなところに。


爪研ぎはダメよ!


2018年12月10日月曜日

アルヴォ・ペルト/ムローヴァ

今日、明日の授業の予習をしている間、
ずっとこれを聞いていました。

https://www.youtube.com/watch?v=bB1aqy2YicI&list=PLvpK8LPnZg5JLNJvqbChvr5usBsUlKeOi

5つ続けて聞くと、
1時間以上あります。
素晴らしいです。

2018年12月9日日曜日

X-MENシリーズ

X-MENシリーズ、
空いた時間にぽつぽつ見ていたら、
結局全部見てしまいました。
(青字はスピン・オフ。)

1.X-メン』(2000年)
2.X-MEN2』(2003年)
3.X-MEN: ファイナル ディシジョン』(2006年)

4.『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』(2009年)

5.X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(2011年)

6.『ウルヴァリン: SAMURAI』(2013年)

7.X-MEN: フューチャー&パスト』(2014年)
8.X-MEN:アポカリプス』(2016年)

9. 『デッドプール』(2016年)
10. LOGAN/ローガン』 2017年)
11. 『デッドプール2 2018年)

以前見たものも含めて、
なるべく発表順に見たわけですが、
やはり、<7>で過去が変わり、
その後、未来が2通り現れる点が、
大河的ストーリーを理解するハードルを上げているようです。
(ただ、その分<7>はおもしろいんですが。)

この中で異質なのは、明らかに『ローガン』でしょう。
これは、ハリウッド的エンターテインメントになってるのか、
微妙なところでしょう。
ローガン/ウルヴァリンやチャールズのことを、
知っているのが前提だし。

6月に公開予定の『ダーク・フェニックス』は、
物語としては、<8>の後に来るようです。
楽しみです。

2018年12月7日金曜日

「黄色いベスト」運動はどこに向かうのか?

緊急討論会が行われるそうです。

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Paris Calling!

緊急討論・フランス「黄色いベスト」運動はどこに向かうのか?

先月からフランス全土で展開されている「黄色いベスト」の叛乱は、
マクロン政府が燃料税値上げの6ヶ月凍結を発表した後も
拡大・深化を続けています。
しかし、この無定形の運動の起源・性格・帰趨をめぐっては
いまだ不明な点が多いのも事実です。
進行中のこの重大な出来事をめぐって、
日本滞在中のフランスの作家・批評家
セルジュ・カドリュッパニ氏に語ってもらう機会を緊急に準備しました。
自由な意見交換の場にしたいと思います。
(司会/通訳・鵜飼哲)

セルジュ・カドリュッパニ(1952〜)
政治的モチーフの推理小説作家、批評家、翻訳家として活躍。
アナキスト系ブログ「月曜の朝(Lundi matin)」主宰。
最新刊は『巨大プロジェクトの世界とその敵たち』(2018)。

12月8日土曜日 19時〜

セルジュ・カドリュッパニ

鵜飼哲/平井玄

場所:attac JAPAN
千代田区神田淡路町1-21-7
静和ビル1A

2018年12月6日木曜日

2018年12月5日水曜日

『我的第一本法語語法書』

『フラ語入門』、
以前、この本の香港ヴァージョンがでましたが、
今回、大陸版も出版されました。
これです。

https://www.books.com.tw/products/CN11564430

中国大陸でも使ってくれる方がいるのかと思うと、
とても不思議な、
そしてうれしい気持ちになります。

2018年12月2日日曜日

『バスターのバラード』は……

コーエン兄弟の新作、
『バスターのバラード』
は、劇場では見ることができません。
ネット公開のみ! だからです。

https://www.netflix.com/jp/title/80200267

で、
Netflix には入っていないので、
予告編しか見ることができません……

今はちょっと忙しい時期なので、
すぐには入りませんが、
いずれ入らないわけにもいかない気がしています。
ローマを舞台にした、
イタリアのテレビドラマなどもあり、
たしかにおもしろそうだし。

早く3月になって欲しいです!

よきシンポジウム

今日(というかもう昨日ですが)は、
午後に生田キャンパスで大学の業務があり、
その後、
中野キャンパスに移動し、
シンポジウム(の終わりのほう)に参加しました。
終わりのほうだけとはいえ、
成功したシンポジウムの独特の匂いが立ちこめ、
会場はどてもいい雰囲気。
登壇者を始め、
設営から受付から、
関わったすべての人に……、お疲れさまでした!

2018年11月28日水曜日

Cavani は……いらない?

字幕付きです。

https://fr.yahoo.com/sports/video/cavani-doit-il-débuter-face-085802993.html

なぜ? と訊かれて、
Parce que.
とだけ言えば、
(子供みたいに)なぜでも、
と答えている感じなんですね。

polyvalent という形容詞も使われています。
色々こなせる、ということなんでしょう。
(ディズニーランドで、polyvalent で働いている、と言えば、
プーさんをやったりバズに入ったりしている、という感じです。

Persona Grata

今パリにいるなら、
100%出かけていきます。

https://ovninavi.com/persona-grata%E3%80%80アートで移民受け入れの態度を問う/

MACVAL と、移民歴史博物館の共催、なんですが、
実は、MACVALから、
この展示のヴェルニサージュの案内が届いていました。
(以前、キム・ソージャについて調べていたとき、
ここの学芸員の方と連絡を取り合ったことがあり、
その後、書いた文章を彼女に送ってい以来、
案内が届くようになっています。)
美術館側にしてみれば、
1人でも多く来てほしいというだけのことなんですが、
パリ郊外から届く案内状は、
あの首都との繋がりが感じられて嬉しかたです。

2018年11月25日日曜日

Gilets jaunes, acte II

Gilets jaunes 運動、
予告通りパリでのデモに入りました。
動画です。

https://actu.orange.fr/monde/videos/gilets-jaunes-des-affrontements-sur-les-champs-elysees-VID0000002IBQp.html

当局は、
デモをするならChamps-de -Mars(←エッフェル塔のふもと)でやれ、
と言っていたのですが、
デモ隊はその言葉を聞き入れなかったわけですね。

シャン・ド・マルスなら、
周りに商店がなくて、
暴動に発展する恐れが少ないし、
政府の重要機関からも距離があり、
なんと言っても監視しやすい、
というのは確かでしょう。が、
それは「彼ら」の都合だということなんでしょう。

どこまで行くのでしょうか。

2018年11月23日金曜日

補講

今日は休日でしたが、
学生の事情で何度か休講した大学院の授業があり、
その補講を 200分しました。

科目は「文学と都市」。
そして今日は、
大正末から大戦前あたりに書かれた詩作品を読みました。
中也とか、中野重治とか、小熊秀雄とか。

昨日『ボヘミアン・ラプソディ』を見て、
映画っていいなあ、
と思いましたが、
詩を読んでいると、
詩はいいなあ、
と思うのでした。

(でも、「作る/書く」ことを考えると、
映画は「産業」であり、
紙と鉛筆があれば書ける詩とは、
根本的にちがっているわけですね。)


2018年11月22日木曜日

『ボヘミアン・ラプソディ』

というわけで、
巷で話題の『ボヘミアン・ラプソディ』、
見てきました。
わたしたちにとっては、
まあ知ってる曲ばかりで、
つい個人的な思い出が重なってしまいました。
特に、

Now I'm here

は、その存在を忘れていたのですが、
これは当時組んでいたバンドでよく歌った曲で、
つい、一緒に歌ってしまいました。
バンドのメンバーとは、
もう40年くらい連絡をとっていませんが、
彼らもどこかで見るのでしょうか?

クイーンは、わたしの高校時代のアイドルだったわけですが、
その後きっちり追っていたわけではないので、
この映画を見て初めて、
フレディーはザンジバル生まれであること、
彼の両親がゾロアスター教徒であったこと、
一家のもともとの出自はペルシャ(イラン)で、
イスラム勢力による迫害を受けてインドに移住し、
その後さらに、
ザンジバルでの生活を経て、
フレディーが18歳の頃にイギリスに渡ったこと、
などを知りました。
そうだったんですね……

途中、
「ボヘミアン・ラプソディ」の歌詞に出てくる、
bismillah
という語が少し話題になります。
今ちょっと見た限りでは、
アラビア語で「神の名において」のことだとありました。
(フランス語版 wikitionnaire)
これもまた、
お気楽な高校生には、
知る由もないことでした。

ではやっぱり、
映画は楽しいですね。

2018年11月21日水曜日

Dadju

Dadju は、半年くらい前のこの曲、Bob Marley

https://www.youtube.com/watch?v=hQU_pgyCL6k

以来、よく聞くようになりました。
リフは、こうです。

Elle veut qu'on s'en aille vivre au pays d'Bob Marley
Vivre une vie de star un peu comme Bob Marley
J'lui ai dit "ralentis, je suis pas Bob Marley"
Quand on sera sûr de nous, on pourra bombarder

カノジョが言うんですね、
ボブ・マーレーの国に行って暮らしたい、
ボブみたいな暮らしがしたい、と。
で、オレは答えるわけです、
ちょっと待って、オレはボブ・マーレーじゃないぜ、
オレたち二人が信じあえれば、楽しくやってけるさ……
でも、カノジョは満足しないわけです。

このごろラジオで流れてるのはこれ。

https://www.youtube.com/watch?v=254EHfv9RvM

これは要するに、
好きな女性に嫉妬してしてしまうオレ、
という歌です。
(その女性は、「バロテッリの元カノより上(!)」なんだそうです。)

2曲並べると、
描かれているオトコがちょっと似てます。
女性に強く出られない、
でも彼女のことが好きな男……

こうした軟弱さが、
マッチョ過ぎなくて、
いいのかもしれません。

2018年11月20日火曜日

Sonia Sieff

ジャンルー・シーフは、
わたしたちが大学生の頃、
とても人気がありました。
(わたしたちの周りだけかもしれませんが。)

彼の娘で、1979年生まれのソニア・シーフ。
アマゾン・フランスの「個人写真集」の部門では、
彼女が出した
Les Françaises 『フランス人女性たち』
という本が、
このところずっと1位です。
(出版は去年の2月。)

なぜか、日本には送れない、というので、
買ってはいないのですが、
彼女のHPに、いくつか作品が上がっていました。

まず表紙はこれ。(開いて置いた状態。)




あとは、これが好きでした。




また、別の写真集では、こんな東京も。



いい感じ!

2018年11月19日月曜日

Hiroshima

Disiz La PesteD の新譜、

Hiroshima

が、ラジオ mouv' では、このところものすごいヘビロテです。



2018年11月18日日曜日

「古い悪魔」

このところ世界を取り巻いている風潮が、
1930年代のそれに似ている、というのは、
少し前から指摘されてきたことではあります。
WW Ⅰ の後、世界恐慌を経て、
ナチが台頭する時代、ですね。
(日本で言えば、15年戦争が始まるわけです。)

先日パリで開かれた、WW Ⅰ の休戦記念式典で、
マクロン大統領もその旨の発言をしました。
暴走するナショナリズムという「古い悪魔 démons anciens」が、
再び現れていると言うのです。

http://www.lefigaro.fr/politique/le-scan/citations/2018/11/11/25002-20181111ARTFIG00055-macron-les-demons-anciens-ressurgissent-cent-ans-apres-la-fin-de-la-grande-guerre.php

これは、誰が見たって、
トランプ大統領の態度を批判している、
ということになるのでしょう。

で……

今朝、たまたまテレビをつけたら、
ちょうどこの話題を扱っていて、
それに対して姜尚中氏が、
――ナショナリズムの興隆の背景にあるのは何か、
それに対する考察がなければ、
いかなる嘆きも表面的だ。
そこにあるのは、グローバリズムの暴走なのだ。
マクロン氏が、自身がグローバリストであることを棚に上げて、
こんな発言をしても……
という内容のことを話されていました。
(言葉遣いはこの通りではありません。)

そうなんですよね。
マクロンは、文化左翼ですが経済右翼であり、
だから彼の発言は、
時に、どうしようもない矛盾を孕むことになります。

マクロンの言う「きれいごと」は、
とても重要な「きれいごと」なので、
彼が目立つ場所でこれを言うことは、
一定の価値があると思いますが、
同時に、
姜尚中氏のような指摘も、
忘れず付け加えたいところです。

gilets jaunes


gilets jaunes=黄色いヴェスト(複数形)、ですね。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181117-00000124-kyodonews-int

http://www.leparisien.fr/faits-divers/gilets-jaunes-un-chauffard-renverse-un-policier-a-grasse-17-11-2018-7945152.php

ここ数日、フランスの国内ニュースは、
これがメインです。

この写真を見ると、

peuple en colère  「人民は怒っている」

と読めます。
フランスでは、
まだまだ「人民」という語が生きているのを感じます。

前期3部作

スタン・リーの話、
今週は何度もしました。
意外な人がファンだったりして、
スタン・リーの浸透の深さに、
改めて感じ入りました。
で、
来週のゼミでは、
追悼の意味を込めて、
なにか見るつもりです。
院生の中にも、
彼を敬愛している学生がいます。
で、
その予習として、とりあえず、

1.X-MEN』  (2000
2.X-MEN 2』(2003
3.X-MEN:ファイナル ディシジョン』(2006
1&2の監督は、ブライアン・シンガー、
3はブレット・ラトナー監督。)

という、前期3部作を続けて見ました。
(こういう時、どうも性格的に、
順序通りに見たい方です。)
明らかに、
複数のジャンルを取り込んだ作品ですが、
それぞれにおもしろかったと言えると思います。

3では、グレイ・ジーンというミュータントの中の、
もう1つの人格が出現します。
彼女は「フェニックス」と呼ばれ、
いわば「最強」の能力を秘めているのですが、
実はそのパワーそのものが、
彼女を支配してしまう可能性もあるのです……

来年6月公開予定の、
『X-MEN:ダーク・フェニックス』
は、このフェニックスの話なのでしょう。
楽しみです!

2018年11月15日木曜日

四季 ヴィヴァルディ

クラシックの曲としては、
おそらく日本でもっとも知られたものの1つである、
「四季」。
ものすごくたくさんの録音がありますが、
わたしがよく聞いてきたのは、
懐かしのパイヤールのものと、
アバド&クレーメルのものです。
で、
久しぶりに「四季」買いました。
これです。

https://www.amazon.co.jp/ヴァイオリン協奏曲集「四季」%EF%BC%9Aレイチェル・ポッジャー-、ブレコン・バロック-180グラム重量盤レコード-Channel-Classics/dp/B07H62P68G/ref=sr_1_fkmr0_1?ie=UTF8&qid=1542280759&sr=8-1-fkmr0&keywords=%E5%9B%9B%E5%AD%A3+%E3%83%93%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%80%80%E3%83%9D%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC

古楽器で、しかもたった8人だけ。
いい意味で鄙びていて、
でもそれがそのまま現代的でもあり、
わたしは気に入りました。
録音がいいのも、聞いていて気持ちいいです。

クラシックついでに書けば、
最近「あたり」だと思ったのは、これです。

https://www.amazon.co.jp/BACH-バッハ-J-S-バッハ-リュート編曲による作品集-トーマス・ダンフォード/dp/B07DKMRMBJ/ref=sr_1_5?ie=UTF8&qid=1542281359&sr=8-5&keywords=%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%88+%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F

彼は、
あの Jonathan Dunford の息子なんですね。
ただ、バッハとリュートの組み合わせは大好きなので、
点数が甘くなってはいると思います。


2018年11月13日火曜日

スタン・リー

今朝、朝の通勤時、
フランスのラジオをザッピングしながら聞いていたとき、
唐突に、スタン・リーの訃報が流れ、驚きました。
アメリカでは、当然、大きなニュースになっているようです。


単なる偶然でしかありませんが、
昨日初めて、
ここでスタン・リーに名前に触れていたのでした。

今日の授業では、
追悼の意を込めて、
X-MENの話をしました。

これから、やっぱり、
X-MEN少しずつ見ていこうかと思います。

2018年11月12日月曜日

X-MEN フューチャー&パスト

先日見た『デッドプール』繋がりで、
X-MEN のなかの1作を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=sIfKHuhhfbo

2023年である「現在」から、
1973年である「過去」へと旅し、
過去を変更することで、
現在を変えようとするお話です。
この、バック・トゥー・ザ・フューチャー的な、
あるいはターミネーター的な構造の中で、
さまざまな超能力(ギフト)をもったミュータントたちが、
彼らのDNAをも利用して作られた強力ロボットとバトルを繰り広げます。
見どころは、
ミュータントたちのギフトの新奇さなんでしょう。
磁場を、金属を操ったり、
瞬間移動できたり、
誰にでも変身できたり。
マンガ的ですが、
もとがマンガですからね、当然です。

ミュータント(突然変異)は、
マイノリティーたちの比喩だと言われています。
マンガ原作のスタン・リーは、ルーマニア系ユダヤ人、
マンガが始まった60年代は、もちろん公民権運動の時代、
今回の映画の監督(ブライアン・シンガー)は、
カミング・アウトしたバイセクシャルでユダヤ人……

X-MEN は、ミュータントたちの「チーム」であるわけですが、
このチームは2つあって、
人間たちとの共生を目指すグループと、
自分たちを差別した人間たちと戦えというグループです。
これって、
公民権運動時代の、
キング牧師とマルコムXに相当する、
という指摘もあります。
そうなんでしょうね。

見る予定のDVDが、
50cm以上積みあがっているのですが、
短時間で、しかも楽に見られるので、
X-MENシリーズも見てしまいそう……

『ゲリラ』

「国家崩壊への三日間」
という副題を持った、
『ゲリラ』(ローラン・オベルトーヌ)
という翻訳小説を読んでみました。

舞台はパリ郊外。
警官が、郊外の荒れ果てた町で「ワル」に取り囲まれ、
殺されそうになり、ついに発砲し、射殺してしまいます。
これが、「国家崩壊」の引き金になります。

小説の前半、
いわゆるフランス的語彙が、
日本語として現れるのが新鮮で、おもしろかったです。
「ファシスト」とか「共同体」とか「多文化主義」とか、
これらは、日本で使ったときとかなりコノテーションが違う言葉です。
もちろん、フィクションですから、
誇張があるでしょうけれど。
翻訳も読みやすかったです。

ただ、後半になると、
なんというか、陰惨な描写が多く、
小説の構造としても、ぎくしゃくしている印象。
また、知的に深いかと言えば、
それは『服従』ほどではありません。
厳しく言えば、B級アメリカ映画的かもしれません。

そしてこういう本は、
パリの地図が付いていると、
もっとわかりやすいと思いました。

2018年11月11日日曜日

会田誠トーク


地元で、「文化祭」がありました。

http://newtown.site/

お目当ては、郊外をテーマにした企画展示と、
その関連イヴェントである会田誠のトークです。

会田誠といえば、
このときの印象があまりに強く、
今もまだ残っています。

http://tomo-524.blogspot.com/search?q=%E4%BC%9A%E7%94%B0%E8%AA%A0

実際のアーティストは、
軽くビールを飲みながらのフレンドリーな話しぶりで、
とてもサンパでした。
とはいえアーティストですから、
そういう表面だけではもちろん推し量れませんが。

郊外に関連した論議では、たとえば、
新潟を出てしまったことについて原罪意識がある、とか、
この地上のどこに住むべきか未だにわからない、とかいうあたりが、
おもしろかったです。
この後者の感覚は、
(ブロンズなどのような)ちゃんとした素材は苦手だ、
という感覚と、通底しているのかもしれません。
あとは、
NYにいる1%の富裕層に支えられているアメリカ現代美術、
のシステムとしての限界、
かたやそうはなっていない日本現代美術、
のいつ果てるともない困難、などについての言葉が、
リアルに感じられました。

そう、住みたいところはわからないけど、
それは「快適なスラム」であって欲しいと、
彼は言うのでした。
計画された都市に押し込められるのではなく、
計算された安全性を前提として、
無秩序にでき上っていく街、
そうしたところに住んでいたい、と。

2018年11月10日土曜日

Belleville Tokyo

このタイトル、

Belleville Tokyo (2011)『ベルヴィル トーキョー』

なら、
ふつうはすぐにも見るところですが、
見るのが今日になってしまったのは、
予告編があまりそそられなかったからです。
で、
やっぱりイマイチでした。



映画館 Grand Action で働くマリと、
映画評論を専門にしているジュリアンのカップルは、
フォーブール・サン・ドニ通りからちょっと入ったアパルトで暮らしています。
ある日ジュリアンは、
映画祭の取材にヴェニスに向かうのですが、
その別れ際の駅で、
別れを切り出します。
その時マリは妊娠中でした。

その後、このジュリアンというダメ男くんは、
二人の女性の間を行ったり来たり。
そして自分が父親になる準備もできていません。
わがままで、自己弁護ばかりのイヤなやつです。
ダメで、しかも魅力がないのが、ね。

一方マリは、誠実で、強くも弱くもあり、
好感が持てます。
こんな男と付き合わなければよかったのに、
と観客は思うのでしょう。

で、これだけの映画です。
ベルヴィルとトーキョーは?
これは、まあ詐欺みたいなもので、
トーキョーに旅行に行くと偽ったジュリアンが、
ベルヴィルからマリに電話するという、
それだけのことです。
別にベルヴィルじゃなくても、トーキョーじゃなくても、
どこでもいいのです。

この映画の監督は、
これも撮っています。

両作の共通点は、
ヒロインは好感が持てるけれど、
男がイマイチ、というところでしょうか。

Manon dessinée



マノン、ついにモデル・デビュー!?

描いてくださったのは、
カリグラフィー・アーティストの、松田圭子さん。

http://stylo-et-papier.fem.jp/

Merci beaucoup !

2018年11月9日金曜日

Les mauvais joueurs 

先日見た『海辺の詩人』は、
イタリアを舞台に、
福州出身の女性と、
ユーゴ出身の男性の交流を描いていました。
これは、
ヨーロッパにおけるアジア、
という視点からも捉えられる作品でしょう。

パリにおけるアジア、
ということなら、
『パリ移民映画』でとりあげた『恋々風塵』もそうだし、
『エキゾチック・パリ案内』でとりあげた、
『パリ・ジュテーム』の中の「ショワジー門」もそうです。
『パリ、ただよう花』も忘れるわけにはいきません。
そして、登場人物たちの中にアジア人がいた、
という程度で言うなら、
これはもう数えきれないほどです。
(Steve Tran はとてもたくさんの映画に出演しています。)

ただこれらの作品は、あくまで
ヨーロッパにおけるアジア、
であり、
アジアから見たヨーロッパ、
ではないわけです。
こういう視点に立つなら、
ジャ・ジャンクーの『世界』などが気になるところです。

今回見たのは、

Les mauvais joueurs (2005)

です。


この映画は、
サンティエのユダヤ人社会を舞台にしているんですが、
主人公の恋人を演じたのは、
リン=ダン・ファン。
彼女は、『インドシナ』、『真夜中のピアニスト』、
そしてTout ce qui brille にも出てました。
ユダヤ人の恋人にアジア系を持ってきたのは、
わたしの知る限り、
この映画だけです。
(アラブ系の男性とユダヤ人女性、
という組み合わせは、
Rengaine にありました。)

サンティエに暮らすチンピラ3兄弟。
長兄(シモン・アブカリアン)と末弟は、
アジア人女性たち
(人身売買的に移民してた女性たちです。
『海辺の詩人』のリーの場合と似ています。)
を使って洋服屋や中華レストランを経営する組織に加担し、
主人公である次兄(パスカル・エルベ)は、
もう首が回らない父親の生地屋を手伝い、
そして時には3人集まって、
路上でイカサマ博打を開いたりもします。

物語は、
リン=ダン・ファンの弟が不法にパリに到着したことで、
動き始めます。
この無鉄砲な少年を庇ううち、
次兄は、組織と対立する羽目になるのです。
ただ……

この作品は、
映画としてのデキはよくありません。
B級、と言っていいのでしょう。
音楽のセンスもイマイチだし、
場面ごとの時間の配分が間違っている感じです。

パリのユダヤ人社会とアジア系シンジケートの関係、
これが扱われている点は(わたしから見れば)◎なだけに、
残念です!

2018年11月8日木曜日

EN GUERRE

アラブ系の好きな俳優といえばロシュディ・ゼム、
そしてヨーロッパ系なら、
やはりヴァンサン・ランドンです。
まあ彼の場合、今や「名優」となってしまいましたが。

彼が主演した最新作、

EN GUERRE (2018)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=qOB9mroJ1zU

なんとこの映画、
プレス用素材として、
インタヴューなどと一緒に、
全シナリオがネット上で見られます。

http://diaphana.fr/wp-content/uploads/2018/04/asc658-en-guerre-diaphana.pdf

ただ、
これはおそらく、後から起こしたものなんでしょう。
というのも、
どうもきっちりしたシナリオはなくて、
ほとんど即興のセリフだったようだからです。
プロの俳優もランドン一人だけです。
(これは、今回と同じブリゼ監督による
『ティエリー・トグルドーの憂鬱』
の時と同じ試みです。
こちらはAmazon Primeも日本版もアリ。)

物語は、単純と言えば単純です。
ドイツに本拠を置くグローバル企業が、
フランスのアジャンにある工場の閉鎖を決めます。が、
実は2年前、
この工場で働く労働者と会社の間で、
ある取り決めが交わされていました。
週40時間働くけれど給料は35時間分、
ボーナスはカット、
その代わり、工場は少なくとも5年存続させる……
けれども今、会社はこの約束を反故にし、
1100人の労働者を解雇しようとしているのです。
労働者たちはこれに激しく抵抗。
本社の社長との話し合いを要求し、ストに入ります。
フランス政府やメディアも巻き込み、
大きな問題に発展しますが、
一方で、ストが長期化するにつれ、
組合内部でも意見の対立があり……
というお話。

世の中に、
ドキュメンタリー風の映画というものは多いですが、
これほどドキュメンタリーを見ているような気持になる作品は、
初めてでした。
テーブルに座っての交渉、
という場面も多いのですが、
その熱気に引き込まれました。

ヴァンサン・ランドンの主演作の中でも、
印象に残るものとなりました。

Le Prix du succès

ラシュディ・ゼム、
タハール・ラヒム、
マイウェン、
この3人が出ているとなれば、
ストーリーなど関係なく、
もう見るしかありません。

Le Prix du succès(2017)『成功の代償』

https://www.youtube.com/watch?v=moGQmedTdkk

アルジェリア系の兄弟、
兄とムラッドと弟ブライム。
ショウビズの世界で、
ユモリスト(ピン芸人?)として成功しているブライムと、
そのサポートをする兄は、
彼らの家族を含め、
強いきずなで結ばれていました。が、
ブライムに恋人ができ、
すると当然それなりのプライヴァシーが欲しくなり、
一方、前科もあるムラッドは、
羽目を外して騒いだり、
あまり発展性のない仕事を取ってきたり、
シャン・ゼリゼにレストランを開きたがったりと、
なかなか面倒な存在になってゆきます。
で、
恋人からの提案を受け入れ、
ブライムは、新たな演出家と組むことを選びます。
おもしろくないのはムラッドです。
彼は、ブライムの恋人にちょっとしたけがを負わせたり、
演出家を襲ったりと、
荒々しさが抜けません。
こうして、兄弟の間に深刻な亀裂が入ってしまい……
というお話。

いわゆる「ハートウォーミング」にも、
「予定調和」にもなっていない点が、
この映画のいいところでしょう。
大げさに言えば、
「成功」と「挫折」の人間的な意味を探っている、
ということなんでしょうけど、
そこには、それほどの深さはなくて、
やはり、「家族」の問題のほうに、
力点があるようです。

いくつかいいセリフがありましたが、
その1つは、マイウェンのものでした。
ブライムに家族を紹介されたんですが、
その時あまり歓迎されなかった。
そのことをブライムが謝ると、
彼女は言うのです、

Ça va. Je suis pas en sucre.  (平気。わたし、か弱くなんかないから。

直訳は「わたしは砂糖でできてるわけじゃない」。
フランスの女性、という感じですね。

そしてロシュディ・ゼム。
やっぱり彼はすごいです。
ダメダメな兄貴を演じて、
ここまで存在感があるっていうのは、
ただものじゃありません。
タハール・ラヒムも好きですが、
まだ、ゼムの域には達していないかな、
という印象でした。

2018年11月7日水曜日

La Petite Venise

以前から気になっていた映画、

La Petite Venise(2011)

をやっと見ることができました。
(日本語版DVD
ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで』
があるのですが、
ずっと品切れ状態で、
中古もだいぶ高価で買えずにいたのですが、
フランス語版はふつうに20€で売っていることに気づき、
そちらを買いました。)

https://www.youtube.com/watch?v=QWtXr0t7i1A

舞台は、ヴェニスの南郊の海辺の街、キオッジャ。
そこに働きに来た中国人女性、リーと、
周囲から「詩人」とあだ名されている老人、ベピとの、
淡く深い関係を描いています。

リーは福州出身。
故郷の実家に、8歳になる息子を預けています。
リーの家は、代々漁師でした。
はっきりとは語られないのですが、
いうまでもなく経済的な困窮から、
リーは出稼ぎを選んだのでしょう。
しかもその際、
仕事を斡旋する組織から前借する形でイタリアに渡り、
働いたお金で返済するという契約をし、
だからその返済が終わるまでは帰れないし、
息子を呼び寄せることもできないし、
仕事を選ぶことすらできないのです。
当初ローマにいたリーは、
ボスの一言で、キオッジャに赴きます。
若い中国人女性

一方ベピは、
ユーゴスラヴィア出身で、
もう30年以上キオッジャに暮らしています。
(ただ、ユーゴといってもプーラ(現クロアチア)であり、
ヴェニスからなら海を隔ててたった80kmくらい。
かつてはヴェニス共和国の支配地だったこともある場所です。
チトー大統領が亡くなった後の混乱の時代に、
イタリアに来たようです。)
息子夫婦は、ヴェニスの西側のメストレにいて、
老いた父親の面倒を見る気はあるのですが、
元漁師のベピは、この海を離れることを望んでいません。
漁師を引退したばかりの友人とつるんで、
ささやかな楽しみの中で暮らしていました。

リーがあてがわれた仕事は、
海辺のバーのホール係でした。
ここは、地元の常連がたむろする店。
そしてその中にベピもいて、
リーはここで彼と出会うのです……

すごく単純に言って、
中国語とイタリア語がまじって聞こえてくること自体、
新鮮でした。
ベピとリーは、言葉は交わさなくても、
移民が背負うものはわかっているのでしょう。
一方、イタリアの叔父さんたちの中にも小賢しい人はいて、
こうして中国人たちがこの街にいるのは、
一種の帝国主義であり、
リーのような女性は中国マフィアの手先なのだと言ったりします。
帝国主義だと言うなら、
まったくそんなことはないとは言えないのでしょう。
ただ、リーを働かせている組織は、
搾取的ではあっても、
マフィアではありません。

ヴェニスですから、
もちろん「水」は大きな役割を果たします。
そしてその象徴性はアンビヴァレントで、
苦みがあります。
わたしはなかなかいい映画だと思いました。
(日本語版をがんばって買って、
授業で見せたい気もします。)