2022年1月31日月曜日

『アンオーソドックス』

ネトフリ初の、イディッシュ語をメインにしたドラマ、

『アンオーソドックス』(2020)

を見てみました。
4話で完結なので、一気に。


ブルックリンの有名なユダヤ人地区であるウイリアムズバーグ。
この街の、超正統派のコミュニティで育ったエスティは、
17歳で、言われるがまま結婚し、
けれどもその生活は息苦しいばかりで耐えられず、
ついに19歳の時、
ある事件をきっかけにコミュニティを離れ、
ベルリンに逃げてゆきます。
そこには、かつてコミュニティから追放された、
彼女の母親が暮らしているのです。
そしてその後エスティは、
ベルリンの音大の学生たちと仲良くなり、
なんとか新たな生活を切り開こうとしますが、
そこにブルックリンから、
夫と、そのやさぐれたいとこが彼女を探しに来て……

とても引き締まったきれいな映像で、
まずは、とても正確に再現されたという(←メイキングも見ました)
超正統派の生活、とりわけ結婚式など、興味深かったです。
いままでにも、
少なくない「ユダヤ映画」を見てきたので、
すべてが初めてというわけではありませんが、
それでも、やはり新鮮でした。

(これもウイリアムズバーグでした。

ドラマの骨格は、
アンオーソドックス(=異端)であるコミュニティと、
その外の世界の対立です。
それはもちろん、価値観の、慣習の、
過去や未来に対する態度の、違いでもあります。
超正統派のラビは、
出エジプトの時代から、ポグロム、ナチスまで、
どれほど自分たちが苦難を生きねばならなかったかを語ります。
明らかにこうした認識が、
彼らのアイデンティティーの根本にあります。

また、このドラマにおける超正統派コミュニティは、
「古い」コミュニティの代表であり、
その意味では比喩的な価値も帯びているでしょう。
「子どもはまだか? ちゃんとセックスはしてるのか?」
としつこく訊いてくる姑は、
韓国ドラマなどでもおなじみのキャラだし、
マザコン男はどこにでもいるでしょう。

で実は、このドラマの2つの世界を股にかけているのは、
モシェという人物です。
ギャンブルや「女遊び」にも精通した彼は、
一方で戒律をきちんと守ろうとする部分もあります。
妻子とは離ればなれで、借金を抱え、
「嘘つき」で、執拗で、銃さえ扱うのですが、
分析対象としては、
一番おもしろい存在かもしれません。

デジタル・デトックス

を敢えてやろうと思ったわけでもないのですが、
今日は、
午前中はリビングのソファで本を読み、
午後はやはりリビングのディスプレイ(=テレビ)でネトフリのドラマを見、
それから近所のカフェに散歩に行って、
午前とは別の本を読み、
ここで少しスマホを使って新聞を読みましたが、
本屋によって帰ってきて、
晩ご飯の後はまたネトフリで続きを見て、
そうだ、
今日はまだPC立ち上げてもなかった!
と気づいたのが午後9時過ぎ。

というわけで、
ナチュラル・デジタル・デトックス、
でした。

2022年1月29日土曜日

『ナディア、バタフライ』


MFFF の4本目、

『ナディア、バタフライ』(2020)

を見てみました。


とてもシンプルなストーリーです。
カナダのオリンピック女性競泳のメンバーであるナディア。
彼女は10歳頃に才能を見出され、
17歳の今、オリンピアンとして東京五輪に臨んでいます。
が、これは彼女の引退試合。
水泳以外何も知らない自分に気づいた彼女は、
医学を学ぶため、
大学に進学することを決めているからです。
ただ、もちろんそこには葛藤もあり……

広く言えば、
将来に迷うワカモノの物語です。
ただそれがオリンピアンであるという点に、
この映画の独自性があるのでしょう。
その迷いの描写も、悪くないと思います。
新鮮か? と問われると、
まあ特別なことはない気もしますが、
好感が持てるのはたしかです。

そしてその好感の核にあるのは、
主演のカトリーヌ・サヴァールでしょう。
わたしは知りませんでしたが、
彼女はリオ五輪のメダリストで、
だから泳ぎの場面とか、
ストレッチの場面とか、
「本物」の雰囲気が漂っています。
速いし。


見終わって思うのは、
監督もまた、
彼女をこそ撮りたかったんだろうな、ということ。
その意味では、
カトリーヌはとてもチャーミングに見えるので、
成功だったと言えるのでしょう。

(ケベックのフランス語です。
人にもよりますが、
全体的に聞き取りにくいです。
中ではかなり聞き取りやすいアナウンサーの場合でも、
「フランスのフランス語」とは、
違う音が混じっています。)

2022年1月28日金曜日

『強い男』

今日は、午前中にテニスに出かけ、
いつものコーチが濃厚接触者になり休んでいることを知り、
別のコーチからバックハンドについてのいいアドヴァイスをもらい、
控え室では、元裁判官のHさんから、
「東名あおり事故」の差し戻しについて解説してもらい、
その後帰宅して昼食(肉まん、あんまん、クラムチャウダー)
を済ませてすぐ大学に向かい、
いくつかの業務を無事こなしてきました。

で……

MFFF で短編を1つ。

『強い男』(2020)

を見てみました。
わたしは好きでした。


雨の夜、ムラッド(アラブ系)とアリソン(アフリカ系)が、
クルマで乗っている。
そして運転しているアリソンも一緒になって動画を見始め、
スピードは出ていないものの、
誰かをはねてしまう。
ムラッドは逃げようと言うけれど、
アリソンにはそれができず、
体を起こした老人の元へ。
結局二人は、ヴェトナム系の老人を乗せ病院に向かう。が、
老人は警察に行けと言い出して……

やさしい映画です。
決してウエットでもセンチメンタルでもありませんが、
いい余韻が残ります。
ただ、敢えて言うなら、
深さは、もっとあってもいい気もしました。

2022年1月27日木曜日

『プレイリスト』

MFFF の3本目、
BD作家として知られるニーヌ・アンティコの、
初めての長編監督作、

『プレイリスト』(2020)

を見てみました。



(←監督インタヴュー。おもしろいです。)

いわゆる「ストーリー」があるわけではなく、
ヒロインの日常の葛藤が、
エピソードの連鎖として描かれてゆきます。
ソフィ(サラ・フォレスティエ)は28歳。
イラストレーター志望ですが、
美術教育は受けておらず、
ホールスタッフとして働く今、
この夢を追い続けていいのかどうか、
深く迷っています。
また一方では、
同じビストロで働くシェフと1年付き合い、
妊娠して別れ、
その後も恋人探しは続きます。
タイトルの「プレイリスト」は、
第一義的には、
彼女が関わった男たちのリストだと言えるでしょう。

MFFFの紹介に、
「ヌーヴェルヴァーグへのオマージュ」とあり、
ちょっとイヤな予感がして、
それは部分的は当たってしまったのですが、
トータルとしては、
すんなり最後まで見られました。
その最大の理由は、
サラ・フォレスティエ魅力です。
わたしはとても好きな俳優です。

ラスト近く、
ソフィがカレシ(?)とPCを見ている場面があります。
どうやら映画のようなんですが、
注意して聞くとそれは日本語で、
さらに注意して聞くと、
この映画でした。


溝口ファンなんでしょうね。

それから1つ、字幕に関して分からないことがありました。
ソフィが男と別れることになるシークエンスです。
ソフィが男に向かって、
「Je t'aime. って言ったでしょ?」
というと、男は、
「おれは J'éteins.(わたしは消します) て言ったんだ。
で、電気を消したんだ。」
と返すのです。
別に問題ないように見えるんですが、
この J'éteins. の部分の字幕が、
「ゴミに虫が」
となってるんです。
これは、なにかモトネタがあるんだと思いますが、
それが分からないので、驚いたわけです。
なんなのでしょう?

そう、字幕についてはもう1点。
ソフィがまた別の男と話すシーン。
ここで、男は言うのです……
codes de la bienséance「礼儀」は大事、
ナディーヌ・ドゥ・ロスチャイルドも言ってるとおり。
ところで、
galanterie はどう?
ドアを開けといてあげる、とか。
女性たちはイヤな顔して、そんなの macho だって言うけど。
これって、misogyne なのかな?……
ここはそれなりに論理的に展開し、
かつてフランス女性に、荷物を持ちますよ、と言った時、
あら、machoなんですね、と、
からかう感じで言われたのを思い出したりしたんですが……。
すごく工夫して訳されてるとは思うんですが、
このへんは特に、フランス語のほうがすっきりしてた気がします
(もちろん、字幕はそもそも限界があるわけですが。)

『9人の翻訳家』

昨日触れたサラ・ジロドーが出ていて、
アマプラ無料というアクセスしやすい作品がありました。
これです。

『9人の翻訳家』(2020)

あるベストセラー小説の翻訳を巡って、
9言語の翻訳者が一箇所に集められ、
缶詰になって翻訳をすることになるのですが、
あれほど厳重に管理していた原稿がネット上に流出し、
そうなれば、当然、
翻訳家たちが疑われ……というお話。

一口で言って、おもしろくない。
いわゆる「どんでん返し」も、
流出の経緯も陳腐だし。
フレデリック・チョーや、
オルガ・キュリレンコなど、
知った顔も出てるんですが、
わたしはぜんぜんダメでした。

あまりにおもしろくないので、
フランスでの評価が気になって確認すると、
まあ、Le Figaro だの Le Parisien だの、
たいていわたしとは合わないメディアは褒めてるんですが、

un ratage complet「完全なる失敗」(Les Inrockuptibles)
un scénario complètement invraisemblable「まったく嘘くさいシナリオ」(Première)

とあって、
それな、という感じ。
なんだか、ハズレが続いてます!

2022年1月25日火曜日

『パリ、夜の医者』

エリ・ワジュマンと言えば、
この2作を見ました。



特に前者はよかったので、
第3作も期待しました。
これです。

『パリ、夜の医者』(2020)


(実はアマプラにもあります。有料ですけど。)

ミカエルは「夜の医者」、
つまり、夜、手当てを必要としている人を訪問診療する医者です。
人道的、と言っていいでしょう。
彼には妻と、とても可愛い幼い娘が二人います。
が、あまりに夜家にいないので、
妻とはギクシャクしています。
ユダヤ人であるミカエルには、
いとこのディミトリがいます。
彼は薬局を経営しながら、
裏では、ジャンキーのためにクスリを流しています。
で、このクスリに必要な処方箋を、
ミカエルに書かせています。
ディミトリの背後には、マフィアがいるようです。
また彼の薬局で働く女性ソフィアは、
ミカエルの愛人でありながら、
ディミトリのプロポーズを受けるのです……

ミカエルは善人で、行動力もある。
ただ、優柔不断で自己チューなせいで災いを招き、
それに苦しむわけです。
ただ、このミカエルに、
感情移入するのは難しかったです。
となると、映画自体に入り込むのが難しくなり……

ワジュマンの作品としては、
イマイチだったということになるでしょう。
ミカエル役のヴァンサン・マケーニュは、
もともとあまり好きな俳優じゃありません。
でも、今回はいいかな、と最初は思ったんですが、
やっぱり……

ただ、ソフィア役のサラ・ジロドーだけは印象的でした。
他の作品も見てみたいです。

****************

追記:
この映画のことを考えていて、
少し評価が変わりました。
さっきふと、
この主人公は「キリスト」がモデルなのかも、と気づきました。
彼の、善人としての側面が、です。
で、
彼の、きわめて俗な側面、
これが「人間」なのだとすると、
ミカエルは、「キリスト」であり「人間」であるという、
二重性を象る人物だということになります。
この解釈は、外れていないように感じます。
ここから、さまざまなシーンの意味づけもできるでしょう。

映画としておもしろいか、と言われるとビミョーですが、
なかなかチャレンジングな作品なのかもしれません。
ラストでは、聖と俗がぶつかり……

『ハニー・シガー 甘い香り』

MFFF 第1弾として、

『ハニー・シガー 甘い香り』(2020)

を選んだのは、
設定に惹かれたからです。
主人公は17歳のセルマ。
パリの高級住宅地ヌイイに生まれ育ち、父親は弁護士。
一家は、ベルベル系の移民です。
そして時代が、なんと1993年。
『パピチャ』と同じ、
アルジェリア内戦を背景にしているのです。
これはおもしろそう、ですよね。


ところが!
結論から言うなら、
ぜんぜんおもしろくありませんでした。
無駄に性的な描写が多く、
それも全体に陳腐で時代遅れな感じ。
アルジェリア内戦という背景も生かし切れず。
最近見た映画の中では、
一番の駄作だと感じました。

2022年1月24日月曜日

DECATHLON x GAËL MONFILS

テニスにおいてはミーハー……

(待てよ、この「ミーハー」って、
差別語の臭いがしますね。
「ミーちゃん」と「ハーちゃん」は、
「みよ」と「はな」という女性の名前からきたはずですから、
仮に今は男女区別なく
「彼(女)はミーハーだ」
というように使うとしても、
語源的には明らかに差別的なわけですから。
というわけで、
もう一度初めから。)

テニスにおいては、
俗なことにも興味を持つわたしは、
モンフィスが着ている見慣れないウェアが気になりました。
まあ、ちょっと調べればすぐに分かるんですが。

新たにモンフィスと契約を結んだデカトロンが、年初に、
こんな tweet をしていました。

On est très fiers de vous annoncer que jouera avec nos produits Artengo pour les 5 prochaines années (raquette, chaussures et textile) ! Bienvenue Gaël Handshake


この marque 、
わたしは知らなかったんですが、
今HPを見たら、
他に比べたら随分値段が安く設定されていました。
モンフィスがいきなり活躍して、
宣伝効果ばっちりでしたね。

2022年1月23日日曜日

モンフィス、ベスト8!

これは驚きました。
アクロバティックなプレーがウリのモンフィス、
35歳にして、
全豪のベスト8に入ってきました。
しかも4回戦は3-0。
積極的だし慌てない。
素晴らしいです。

それはそれとして……

この次の、
ナダル vs. シャポバロフ。
このサウスポー対決は見物です。
わたしはシャポバロフのバックハンドが美しくて好き。
今回はズベレフに勝ってるわけなので、
期待できる、かな?

(でもし、モンフィス vs. シャポバロフなんてのが見られたら、
サイコー!)

それからバーティーは、
やっぱり強いですね。

ジョコがいないけど、
盛り上がってきました。

『パピチャ』

昨日話題にしたシリン・ブーテラが出演している

『パピチャ』(2019)

を見てみました。
これ、授業で使えるかもと思って、
DVD を買ってありました。



日本で公開されるのは珍しい、アルジェリア映画です。
舞台はアルジェ。
ただ、時間的舞台は1990年代。
つまり、アルジェリア内戦のまっただ中で、
それは「内戦」である分、
「アルジェリア独立戦争」よりも陰惨な部分もあります。
監督のムニア・メドゥールは1978年生まれで、
公式サイトによれば、
アルジェリアで育ち、内戦時にフランスへ移住した、
ということのようです。

物語はシンプルです。
ネジュマはファッション・デザインに興味がある大学生で、
寮で暮らしています。が、
夜には、仲間たちと寮を抜け出してクラブに行ったり、
そこで、洋服の注文を受けたりしています。
ただ、内戦のテロルはすぐそこにあって、
ジャーナリストである彼女の姉にも、
危険が迫っています。
そんななか、ネジュマと仲間たちは、
寮でファッション・ショーを開こうとします。
けれどもこれは、もしイスラム過激派に見つかったら、
ただではすまない危険な賭けでした……

女性たちの友情も描かれていますが、
やはり中心にあるのは、
内戦の不気味さと対峙するネジュマの姿なのでしょう。
たかだか20数年前のこととは思えないほど、
現実が歪んでいます。
(でも人間社会は、いつでも、すぐにでも、
こういう社会に変貌しうるのでしょう。)

上に貼り付けたインタヴューで、
「浜辺のシーン」
が挙げられていますが、
ここは、女性の友情映画に特有の
(と言っていいでしょうか?)
何かが弾けるような美しい場面になっています。
(思い出すのは、この映画の「ダイヤモンド」です。

シリン・ブーテラは、
あの特徴ある微笑みをすでに浮かべています。
主演のリナ・クードリともども、
今後の活躍が楽しみです。
ちなみにリナ・クードリは、
この映画にも出ていました。


(それから、
これは実際上仕方ないとは思いますが……
映画内では、フランス語とアラビア語がランダムに、
つまり、二人の会話でも、
2つの言語が交互に使われたりするのですが、
それが、字幕にはまったく表示されません。
あたかも、ずっと1つの言語を使っているかのよう。
まったくちがうんですけどね。)

「音楽する社会」

小川博司先生の最終講義。
明日聞きます。
おもしろそう。


*******************

追記
で、聞きました。
おもしろかったです!

2022年1月22日土曜日

『ヤーラ』

イタリア映画、

『ヤーラ』

を見てみました。
実際にあった誘拐事件に基づいているそうです。


誘拐された13歳の少女ヤーラと、
その事件を担当する女性検事。
シングル・マザーの検事には、
ヤーラよりも幼く、
同じようにダンスを習っている娘がいます。
さまざまな捜査が行き詰まり、
「男性検事」への交代もほのめかされる中、
検事は大胆な捜査に打って出ます……

ことが誘拐だけに、
事実に基づいているとなると、
「楽しむ」のはちょっとためらわれます。
作る側にも、
楽しませていいのかどうかわからないけど、
でもある程度の起伏は必要だし……
というような、迷いがあるように感じました。
難しいですね。

『クリスマス・フロウ』


フランスのドラマ、

『クリスマス・フロウ』

を見てみました。
ドラマと言っても、エピソードが3つあるだけなので、
すぐ見終わります。


主人公リラは、
女友達二人(ともに白人)と、
レ・シモーヌというフェミニスト・グループを結成しています。
これは、Les Simones。
つまり、シモーヌ(・ドゥ・ボーヴォワール)たち、ってことですね。
で、彼女らは、
超有名ラッパーにして、
ミソジニストで女好きというマルキュスを攻撃します。
が、このラッパーとさまざまに出会ううち、
リラとマルキュスが恋に落ち……というお話です。

まあ、おもしろい、かな。
設定自体はおもしろいので、
滑り出しはいい感じで、
その後のエピソードのそれぞれも、
悪くはないんですが、
結局、ストーリーがとても弱い。
物語を作る力がないので、3話で終わってしまった感じです。
厳しく言うと、思いつきで終わった感じ。

むしろ注目すべきなのは、
リラを演じたシリン・ブーテラ(Shirine Boutella)のほうかも。
例の(それほどおもしろくなかったドラマの)『ルパン』で、
女性刑事役を演じていた女優です。
名前からも想像できる通り、
彼女はアラブ系で、
1箇所だけ、アラビア語をしゃべる場面もありました。
彼女が今後、
どんな役柄をどんな風にこなしていくのか、
興味があります。

マイフレンチフィルムフェスティバル

今年もまた、
マイフレンチフィルムフェスティバル(MFFF)
の季節がやってきました。


どんな作品に出会えるか、楽しみです。
また、短編作品は、
自分で映画を撮っているあの院生にも勧めることにしましょう。

2022年1月21日金曜日

『フランス語っぽい日々』のサイン本もあり



「ふらんす」2月号は、あの欧明社の特集です。
学部生として、フランス語を学び始めた頃、
欧明社の名前は、まぶしかった……

で……

その欧明社の、閉店セールが始まっています。


「ふらんす」のバックナンバーって、
ふだんは手に入らないので、
貴重な機会かもしれません。
(わたしが、

「映画の向こうにパリが見える」

を連載させてもらった、
2016年のものもあるそうです。)

もちろん、
「フラ語」の新刊も!

2022年1月20日木曜日

びっくり!

大学院の、
「文学と都市」
という授業では、
「東京詩」を読んで、
たとえばコンビニの詩(「コンビニエンスストア、夜歩ク」川口晴美)
を読んだあとには、
各自「コンビニ詩」を書いてくる、という課題が出ます。
ほかにも、
「感情的な詩」とか、
「タイポグラフィックな詩」とか。
となると、学期末には、
そうして書かれた詩がけっこうたまるわけですが、
なんと!!
院生たちがそれらを本にしてしまいました。
しかも箱入りです。






こんなものが作れるんですね~!

もちろん100%自発的な企画で、
わたしは贈呈されるまでまったく知りませんでした。
ちなみに基調となっているブルーは、
テキストとして使った『東京詩』の装丁を意識しているそうです。

これを見せた同僚の一人は、こう言いました。

「こういう、余計なことやってくる学生大好き」

2022年1月19日水曜日

フランスで1日46万人感染、で……

ということは、
日本に換算すると……
90万人!
まさに、桁が違います。
ただ……

今日、QBハウスの仲良しのお兄さんと話したんですが、
彼によると、
「まあ、わりとみんなナメテルっていうか……」
という感じ。
重症化しづらいからなんでしょうけど、

<この次に来る文として、適当なのはどっち?>

1)そうは言っても苦しくなるので、ちゃんと気をつけましょう。
2)周りにうつさないよう、まずは自分が感染しないようにしないと。

……別に「正解」はないんですが。

(テドロス事務局長は、
軽く見てはいけない
と明言しています。
わたしも、学生からの「飲み会」の誘いを遠慮しました。)

1)は、どちらか言えば「利己的」で、
2)は、どちらか言えば「利他的」です。
ワクチン接種を推進する際、
どんなスローガンが効果的かを調査したところ、
「利他的」な文言のほうが、
より訴求力があったそうです。
(朝日新聞の記事より。以下もその記事を参照しています。)

とりわけ日本は、同調圧力が高いと言われていて、
それは、言葉を換えれば、
「利他性」が高い状態でキープされているということでもあるでしょうから、
だとすると、
それはいいことのようにも見えます。が、
それは逆に言えば、
いわゆる「フリーライダー」、
つまり、他者からの「利」をタダで受け取り、
自分は返さないような人を、
強く排除する集団ともなるわけです。
ただこれは、まったく「多様性」からは遠い集団です。

人間だけが行なう「利他」的行為は素晴らしいと思いますが、
なかなか単純にはいかないようです。

Regarde-moi

大学院ゼミの最終回では、

Regarde-moi(2007)

を見ました。
わたしが好きな、
Audrey Estrougo の作品です。
(院生たちはフランス語未修なので、英語字幕で。)


この映画を初めて見てから、
もう9年経つんですね。


で、
今回見ても、
やっぱりいいと思いました。
彼女の作品が、まだ日本で1本も公開されていないのが、
とても惜しいと思います。
まちがいなく、好きな人がいるはずです。

『ブックスマート』


あるポッドキャストで話題に上がっていたこの映画、

『ブックスマート』

を見てみました。(アマプラです。)
二人の「イケテナイ」女子を中心に、
高校卒業パーティーの1日を描いています。


アリガチな学園ものとの違いは、
まず、主人公二人が「イケテナイ」こと。
そしてその一方が、
同性愛者であることをカムアウトしていること、です。
これがあるので、
ありきたりな設定も、
新鮮に映ります。
多くの性に関わるもろもろが出てきますが、
それも必然的に、
今までとは少し違う表現になってきます。
(リアルなのかどうかは、よく分かりませんが。)

元気があって、テンポもいいです。
問題なく最後まで見られました。
ただ、深いかと言われると、
そうでもない、かな?

2022年1月16日日曜日

『アンダーカバー:秘密捜査官』(シーズン3)

まずは『フェリー』を、
ふつうの映画として見ました。


でその後、
これはシリーズもののスピン・オフであることを知り、
もとのシリーズ、

『アンダーカバー:秘密捜査官』

を見始めました。


これがなかなかおもしろかったんですが、
なんと、シーズン2は期待外れで、
残念でした。が、
1週間ほど前に配信されたシーズン3を見てみたところ、
なんと、今回のシリーズが一番おもしろかったです!



シーズン1では、
捜査官ペーターが、
フェリーの組織の壊滅を狙って潜入する物語でした。
そしてその捜査も終わり、
警察が自己保全のためにペーターを告訴&解雇し、
フェリーはといえば5年の刑期の終わりに仮釈放されている今、
なんと、この二人が組んで、
潜入捜査に当たることになります。
その対象は、トルコ系のマフィアで、
実質的な権力者はボスの妻、レイラなのです。
ペーターたちは、麻薬業者を装い、
マフィアに商売を持ちかけて……

このシリーズのおもしろさは、
まず、フェリーの造形にあると感じます。
その風貌といい、しゃべり方といい、
また歩き方、殴り方まで、
もっと見たくなるキャラです。
ドラマとして、サスペンスの作り方も丁寧だし、
マフィアたちの造形もなかなかです。
かなりレベルが高いドラマだと思いました。

(もしもご覧になるなら、
『フェリー』から始めるのをお勧めします。)

『少年の君』

この前見た『僕らの先の道』がとてもよかったので、
同じチョウ・ドンユイ主演の映画、

『少年の君』(2021)

を見てみました。
アマプラで有料ですが、
公開されたのが昨秋ですから、
まあ仕方ないでしょう。


北京大学を目指す少女、チェン・ニェン。
ただ彼女の父親はおらず、
母親は借金取りを逃れるため、
娘と離れて暮らしています。
そしてチェン・ニェンを出会うことになるのが、
チンピラのシャオベイ。
いわゆる「出会うはずのない二人」が出会い、
そこにスパークが生まれていきます。

後半は「予告編」の印象に近くて、
よかったです。
ただ前半は、高校生のいじめの話で、
見ているのがけっこう辛い。
そしてこの前半と後半で、
テーマが少しズレているようにも感じました。
後半を生かしたいなら、
前半はこれじゃなくてもよかっただろうし、
前半を撮りたいなら、
後半は、いわば遠心力を使った、
こんなに大きな軌跡を描かなくてもいい気がしました。

アジアの多くの映画祭で、たくさんの賞を取っている映画です。
いいシークエンスもあり、
評価するのが難しいですが、
わたしには、
スタンドまで飛んだいい当たりのファウル、
と感じられました。
惜しいです!

2022年1月15日土曜日

「奴隷の韻律」

多くの日本語話者の「DNA」には、
七語調のリズムが深く根付いているのでしょう。
藤村や八十を読む時、
百人一首を読む時&聞く時、
わたしたちはある種の「快感」を感じますが、
それは、もちろんそのリズム故のことでしょう。
なんなら、
このリズムに乗っていれば、
内容は問わないことさえできるかもしれません。

で、
それを「悪用」したのが、
戦時中の日本。
全国各地で、
このリズムに乗せた戦意高揚の詩の朗読会を開き、
ワカモノたちに戦意をすり込んでいったのです。
だからこそ、戦後、
七語調は「奴隷の韻律」と蔑まれ、
多くの詩人たちは、
そこから離れよう、
少なくともそこからズレていよう、
と考えたのでした。

でもしぶといのは七語調、
消費社会の興隆に、
気づかれないまま潜入し、
同情するなら金をくれ、
彼女が水着に着替えたら、
おせちもいいけどカレーもね、
生き延びるための方策は
功を奏していきました。

で……

でも考えてみたら、
実地でそのまま使ったことはないんですよね。
というわけで、
ちょっと書いてみました。

************************

濃い灰色のセーターの

肩の丸みに目を載せて

くるぶし包む木枯らしに

午後の祈りを打ち明ける

 

さざめく声の水紋が

コーヒー豆の渋皮の

サバンナ渡る砂風に

明日の記憶をつぶやけば

 

ビルは背骨をつと伸ばし

一筋もれた夕光は

細い指先あたためて

 

折り重なった時の背の

フォッサマグナの泡立ちに

まだ見ぬ瞳を思い出す


************************

ちょっと楽しいかも!?

2022年1月14日金曜日

L'enfer

帰ってきてくれた Stromae の、話題の新曲。
YouTube に登場しました。


J'suis pas tout seul à être tout seul
Ça fait d'jà ça d'moins dans la tête
Et si j'comptais combien on est
Beaucoup
Tout ce à quoi j'ai d'jà pensé
Dire que plein d'autres y ont d'jà pensé
Mais malgré tout, je m'sens tout seul
Du coup

Oui, j'ai parfois eu des pensées suicidaires
Et j'en suis peu fier
On croit parfois que c'est la seule manière de les faire taire
Ces pensées qui me font vivre un enfer
Ces pensées qui me font vivre un enfer

Est-c'qu'y a que moi qui ai la télé
Et la chaîne culpabilité ?
Mais faut bien s'changer les idées
Pas trop quand même
Sinon ça r'part vite dans la tête
Et c'est trop tard pour qu'ça s'arrête
C'est là qu'j'aimerais tout oublier
Du coup

Oui, j'ai parfois eu des pensées suicidaires
Et j'en suis peu fier
On croit parfois que c'est la seule manière de les faire taire
Ces pensées qui me font vivre un enfer
Ces pensées qui me font vivre un enfer

Tu sais j'ai mûrement réfléchi
Et je sais vraiment pas quoi faire de toi
Justement, réfléchir
C'est bien l'problème avec toi
Tu sais j'ai mûrement réfléchi
Et je sais vraiment pas quoi faire de toi
Justement, réfléchir
C'est bien l'problème avec toi

*******************

Oui, j'ai parfois eu des pensées suicidaires

そう、何度か自殺を考えたこともある……


これを読むと、
休んでいた期間、
肉体的に精神的にも大変だったことが想像されます……

でもあるインタヴューでは、
そうした期間にも、
インスピレーションが絶えたことはなかった、
と言ってました。

Welcome back.

2022年1月12日水曜日

本日発売!

カウント・ダウン(le compte à rebours)も終わり、
ついに今日、2冊同時発売日となりました。



どうぞよろしくお願いします!


『フェアウェル』

北京生まれのアメリカ人女性、
ルル・ワン監督の映画、

『フェアウェル』(2019)

を見てみました。


「アメリカ映画」扱いですが、
映画の90%以上は、中国の長春を舞台としています。

物語はシンプルです。
長春にいるナイナイ(←「祖母」の意)には、
二人の息子がいます。
ただ、長男夫婦と息子は日本に、
次男夫婦と娘はアメリカにいて、
なかなか会う機会はありません。
でナイナイは、居候のおじさんと暮らし、
近所にいる妹とも頻繁に行き来しています。
そんな中、ナイナイが「余命3ヶ月」との診断を受けます。
この知らせは親戚中に衝撃をもたらしますが、
そこは中国の慣例に従い、
ナイナイ本人にはこの知らせを知らせないという選択をします。
ただ、みんなナイナイには会いたいので、
長男の息子の結婚式を長春で行なうことにし、
それを理由に親戚たちが、
日本から、アメリカから、長春に集まってきます……

というような書き方をしましたが、
実は、この映画の主人公は、
次男の娘であるビリーです。
6歳で両親と渡米し、今31歳になった彼女はおばあちゃん子で、
今回のことにひどく心を痛めますが、
そこはアメリカ育ち、
知らせを伝えないなんてありえる?
と考えてしまうわけです。

今日本では、もう、
伝えるか伝えないかなんて、考えもしませんね。
医師も、どんどん説明してきちゃうし。
ただこうした日本の状況は、
一般的な中国人からは、
「薄情」に見えるんだと、
今日、中国語の林先生に教わりました。
そうなんですね。

細かな点にも、興味深いものがありました。
たとえば、結婚式のシークエンス。
始まりはいわゆる中国風で、
食事も大きな蟹が出てたりするんですが、
ビリーと父親は、余興として、
Killing me softly を歌うのです。
また別の女性は、クラシックの歌曲を歌ったり。
なんとなく、
もっと中国的なもので統一されているのかと思っていましたが、
そうでもないんですね。
あと、よくは分からないんですが、
あるホテルの常連客で、
若いビジネス・ガール風の女性たちを連れた男たちを、
ビリーがじっと見据えるシーン。
これも、ここだけで、
故郷に帰ってきた移民の違和感が表現されていて、
上手いと思いました。

静かで、いい映画でした。
来週のゼミでは、これを見せようと思います。

2022年1月11日火曜日

初日

今日は、今年の授業初日。
あいにくの雨で、
しかも、コロナで空調強めとかで教室が寒かったのですが、
まあ、授業自体はふつうに無事終了。
これで当たり前ですが、
微妙にホッとしました。

で、
帰ってきてから、
『フェアウェル』
という映画を見ました。
『シャン・チー』のケイティーが主役です。
詳しくは、また明日。
でも、いい映画だと思いました。

2022年1月10日月曜日

『ふたりの人魚』

昨日に続いてロウ・イエの作品。
彼にとっては第3作に当たる

『ふたりの人魚(2000)

です。


ファンタジーのようでいて、
厳しく現実を捕らえてもいる、
よくできた映画だと思いました。
さすが、有名作品です。

まず、大きな特徴の1つが、
ナレーターでもある「俺」の姿が映し出されることはないこと。
彼は、頼まれれば何でも映す、
日雇い的なヴィデオ・カメラマンで、
この彼のヴィデオ・カメラを通した映像は多用されるんですが、
そうなると、
撮っている彼は映らないわけですね。
で、
「俺」は、あるバーのアトラクションに登場する人魚を撮ることを、
その店の主人から依頼されます。
そしてやがて、この人魚を演じるメイメイと「俺」は、
付き合うようになってゆきます。
そこに、若い男が一人現れます。
彼は、頼まれれば何でも運ぶ
日雇い的な「一人バイク便」のような仕事をしているのですが、
かれはメイメイを見て、
君はムーダンなのに、
どうして知らない振りをするのか、
と問い詰めます。
実はこの運び屋とムーダンなる女性の間には、
ある物語がありました……

メイメイはほんとにムーダンなのか、
というのが、
1つの大きなサスペンスを作ります。
これには、はっきりした答えが用意されていて、
曖昧な雰囲気で終わりはしません。

そして、複数の物語の発端も、
その展開も、結末も、
すべてくすんだ蘇州江(上海)周辺を舞台としています。
(途中、1998、という掲示が見えましたから、その時代です。)
この風景が、
「俺」の撮る揺れる映像とマッチして、
土地と時代の空気を伝えてくるように感じます。

わたしは、
『パリ、ただよう花』を、あまり評価していないのですが、
昨日の『スプリング・フィーバー』といい、
今日の『ふたりの人魚』といい、
予想よりもずっといいデキでちょっと驚きました。
『パリ、ただよう花』、
もう一度見直す必要があるでしょうか?

2022年1月9日日曜日

『すばらしき世界』

という映画をアマプラで見たんですが……、
わたしはピンときませんでした。

ヤクザとして殺人を犯し、
13年の刑期を終えて出所した男が、
様変わりした今の世の中で、
なかなか自分の場所を見つけられない……、
という物語です。
もちろん、
この主人公を通して、
今の社会の、
ふだんは意識しない特殊さも描かれるわけですが、
根本にあるのは優等生的な情緒であり、
浅いんじゃないかと、
わたしは思いました。
(もちろん、現実の問題として、
出所者が社会復帰しやすい環境を作ることは、
とても重要だと思いますが、
それは、作品の評価とは別の事柄でしょう。)

『スプリング・フィーバー』

数日前に見た『薬の神じゃない』で、
白血病の幼い娘を一人で育てるダンサーを演じていた、タン・ジュオ。
強さも、
身を捨てる感じも、
慈しむ面もあり、
なかなかよかったので、
(ま、役そのものの良さもあるんですが)
彼女のデビュー作、

『スプリング・フィーバー』(2010)

を見てみました。


この映画、
実は随分前からアマプラの「マイリスト」に入れていた作品です。
というのも、ロウ・イエ監督が、
『パリ、ただよう花』


と同時期に作った作品なので、
ちょっと気になっていたのでした。
いい機会なので、今日はこれを。

舞台は南京。
人間関係は、少しだけ複雑。
中心にいるのは、ジャン・チョンというハンサムなワカモノです。
旅行会社で働く彼は同性愛者で、
恋人はワン・ピン。
ただこのワン・ピンには、教員の妻がいて、
彼女にとって彼は「理想的な夫」なのでした。
でも、やはり、彼女は夫の「浮気」に感づき、
定職のないワカモノ、ルオに調査を依頼します。
そして結果は……です。
妻はショックを受け、激怒し、
一方ルオはといえば、
恋人リー・ジン(タン・ジュオ)がいるのに、
ジャン・チョンと深い仲になってゆきます。
(ルオはバイなのです。)
とはいえリー・ジンもまた、
別の若い男性とベッドをともにしているばかりか、
勤め先の工場長とも、
単なる仕事上の付き合いではないようなのです……

というわけで、
複数の相手と付き合う人間が多いので、
なんというか、2つの「手」を持つ原子がくっつくみたいに、
関係は滑るように伸びてゆくのです。
で、
これは誰でも抱く印象でしょうけれど、
これらの人物たちはみな、
さまよっているように見えます。
この「彷徨」が、ロウ・イエのテーマであるのは明白でしょう。
南京という地方都市が、
この「彷徨」に現実感を与えています。
なので映画を見ていると、
こちらも滑るように、
彼らの彷徨と同調していきます。
それが、ここで用意されている映画的体験なのでしょう。

というわけで、
なかなかいい作品だと思いました。
むしろ、『パリ、ただよう花』よりも。

2022年1月8日土曜日

読売新聞が大阪府と包括提携

年末の「事件」を伝えるこのニュース、


この提携はどこから見ても「全然ダメ」。

維新は、メディアを利用して選挙戦に勝ってきた党なので、
この戦略で、
今度は「全国」に出ていく気なんでしょう。

メディアは、ダメだダメだ、と言われてきましたが、
それにしても、
ここまでダメになっていたとは。

<資本主義の終焉~働く99%豊かな生活のために>

これ、学生にも見せたいです。



『アナ』

ふと目にとまったリュック・ベッソンの監督・製作の映画、

『アナ』(2019)

を見てみました。
完全にエンタメです。


物語の構図は、『ニキータ』にそっくり。
未来が閉ざされたジャンキーの若い女性が、
鍛えられて超有能なスナイパーとなり、
国家の秘密組織のために働くも、
やがて、その仕事を辞める決意をする……
ということです。
まあ、自己模倣と言われても仕方ないところです。

ただ、おもしろくないのか? と言われれば、
それなりにおもしろいのです。
この『アナ』の場合は、
たしかに一ひねりは加わっているし、
ヒロインはカッコイイし、
見ていて退屈はしません。
ただ今回は、
『ニキータ』にはなかった(と記憶しています)、
時間の操作(フラッシュ・バックやフラッシュ・フォワード)が何度もあり、
それでたしかにエンタメ性は高まっているのですが、
その代わり「映画」は壊れていきます。

リュック・ベッソン、と言っても、
今の若い世代にはピンと来ないかもしれません。
が、わたしたちはベッソンたち、
つまりいわゆる「BBC」とは同世代で、
彼が関わった主要作品はずっと見てきました。
個人的に印象深いのは、まず『ニキータ』(1990)。
これは何度か、シナリオの一部を授業で使いました。
(アンヌ・パリローについては、
『ギャングスター』も記憶に残っています。
『チャオ・パンタン』のリシャール・アンコニナが主演でした。)
それから『ヤマカシ』と『タクシー2』。
これらは、授業の息抜き(?)で見せたことがあります。
(そう、以前は、年に1,2本、授業で映画を見せる余裕がありました。
なぜ今はないんでしょう……?)
特に『タクシー2』は、
主役のサミー・ナセリがベルベル系アルジェリア人(kabyle)で、
その彼の恋人が、
アルジェリア戦争を戦った軍人の娘であるという、
なかなかあざとい設定が好きでした。
ちなみに、彼も彼の兄であるビビ・ナセリも、
眼はきれいなブルーです。

そろそろ授業開始が近づいてきました。
そろそろレポート読み始めないと!

2022年1月7日金曜日

発売まであと5日!


「白水社・語学書編集部」が、
こんな tweet をしてくれています。


どうやら、
カウントダウンが始まるようです。

毎日チェックしちゃいます!

薬物

アメリカでは、90年代中盤から、
高卒者の死亡率が上がり、
今では大卒者の3倍にも達している。
そしてその死因の上位3つは、
薬物過剰摂取、アルコール性肝炎、自殺、
なのだと。
ファイザーやモデルナなどが売ったオピオイド、
実質はヘロインだというこの薬物こそ、
きわめて依存性が高く、
薬物過剰摂取による死亡(2万人)の70%を占めているのだと。

先日の『ストレイ・ドッグ』でも触れましたが、
アメリカは、薬物に苦しんでいます。
たまたま見かけたこの YouTube、


これは……

そしてここに付けられたコメントを読んでいくと、
身内が薬物で亡くなった人、
あるいは今まさにそういう身内を助けようとしている人、
更正プログラムを受けている人など、
とても生々しい声が聞こえてきます。
『薬の神じゃない』もまた、
薬品会社が発端を作った物語でした。

やっぱり、
これ読まなきゃならないようです。

Death to 2021

こういうのなんて呼ぶのかと思ったら、

mocumenntary (←mock + documenntary)

とか、

documomedy

とか言うのだと知りました。
フィクションであるコメディーを、
まるでドキュメンタリーのように提示する作品、
のことです。

今日ネトフリで見た

Death to 2021   

と、1年遡って見た

Death to 2020

の場合は、本物のドキュメンタリー映像がかなり入っているので、
最初、状況がよく分からないで見ていた時は、
(そう、ザッピング中になんとなく見始めたのでした)
出演者の全員が役者だなんて、
思ってもいませんでした。
でも、そう思わせるくらい、
mocumenntary 
なわけですね。


基本のトーンは強烈なブラック。
モンティパイソン的、と言ってもいいかもしれません。
あっちの権威もこっちの権力も、
好き放題にからかいます。
気持ちいいです!

ネットをざっくり見た限りでは、
2020のほうが評判がいいようですが、
わたしは2021のほうがおもしろかったです。
それにしても、自分が負けると、
不正選挙だと主張する大統領ってはやっぱりスゴイ。
とはいえ、裁判を起こされた時、
いきなり金(って税金ですが)を払って裁判自体をやらせないとか、
不良品15%入りの、
ほとんど誰も使わなかった布製マスクに数百億とか、
こちらもネタの豊富さでは負けてませんけどね!

『フリーガイ』

去年の公開時、
院生たちが話題にしていたこの映画、

『フリーガイ』(2021)

を、ディズニー・プラスで見てみました。
『デッドプール』のライアン・レイノルズが主演です。


これ、なかなか話が込み入っているます。
というのも、現実世界と、ゲーム内の世界、
2つの世界が同時に走っており、
何人かは、その両方に登場するからです。
(ゲームの世界では、「キャラ」として、ということですが。)

キーズとミリーは、
協働してあるゲームを作ったのですが、
「スナミ・スタジオ」はそのコードを盗用し、
「フリー・シティー」というゲームを大ヒットさせます。
のんきな(?)キーズはその会社で働いていますが、
ミリーの方は、スナミの盗用を証明すべく、
「フリー・シティー」にキャラとして入り込んでいます。
そしてその調査の過程で、「ガイ」に出会うのです。
で、そのガイとは誰か?
彼はもともと、ゲーム「フリー・シティー」内の背景キャラ(=モブキャラ)で、
その他の多くのモブキャラ同様、
毎日毎日同じ一日を繰り返すように設定されています。
しかも「フリー・シティー」は、
ゲーム参加者が「フリー」に好きなことをし放題、
強盗でも殺人でもし放題というゲームなので、
モブキャラとはつまり、
毎日毎日そのカモになるだけの「人生」なのです。
けれどもその一人であるガイは、
街である女性を見かけ、ほとんど一目惚れした結果、
同じ毎日の繰り返しに疑問を抱き始めます。
そう、自分の意思を持ち始めたのです。
そしてその女性とは、まさにミリーのキャラであり、
ガイは彼女の調査に協力するようになっていきます……

<以下ネタバレします>

この映画は、
いろんな視点で語ることができそうです。
ただ、これはたまたまですが、
先日見た『僕たちの先の道』という、
一見似ても似つかない映画と、
大きな共通点があることに気づきました。
それは、主人公がインディー・ゲームを作っていて、
そのゲームの中に、自分の好きな相手への思いを込めている、
という点です。
そして両作品とも、
(その実現の形はちがうものの、)
ゲームに込められた思いが、
現実に返ってくるのです。
これは、不思議な発見でした。
わたしは、いわゆるゲームはほとんどしませんが、
2つの作品では、
現実とゲーム世界が合わせ鏡のようになっており、
ゲームは意外にも、
こんなに現実とリンクしているんだと思わされました。

「フリー・シティー」は、
横暴なものたちに蹂躙される空間であり、
庶民(=モブキャラ)は、
彼らに利用され捨てられる存在として描かれています。
もちろんこれもまた、
現実の戯画なのでしょう。
ただしゲーム世界なら、
それをある「理想の社会」に変身させることも可能なわけですね。
その生みの親である「現実」のほうは、
そんな気配がほとんど見えないところが、
なんとも言えず皮肉ですけど……

2022年1月6日木曜日

『薬の神じゃない』

昨日に続いて中国映画、
今日はアマプラで、

『薬の神じゃない』(2020)

を見てみました。


舞台は上海。
インドから密輸した強壮剤を売る、
ほとんど「チンピラ」に近い男、チョン・ヨン。
金が底をつき追い詰められた彼は、
白血病の薬をインドから密輸する話を持ちかけられます。
というのも、
中国国内で唯一認可されている、ただし効果は同じであるドイツ製の薬は、
異常に値段が高く、
(インドの卸値の80倍。インドの小売値の20倍。)
庶民はとても買い続けることができないという事情があるからです。
実際、この話を持ちかけた男もまた、
白血病患者でした。
チョン・ヨンは引き受けます。
で、金は入るし、感謝はされるしというわけで、
次第に仲間を増やし、チームとなり、
この仕事を安定させていきます。が、
黙ってないのはドイツの製薬会社です。
警察に働きかけ、
チョン・ヨンたちを追い詰めにかかります……

実話に基づいていて、
結果的に中国の医療体制に影響を与えた事件だといいます。
ただ、そのことは措くとしても、
なかなかいい映画、泣かせる映画でした。
全体の構図がヒューマンで、
特にラストあたりの演出はベタ&やや過剰
(中国政府に気を遣ってる?)
なんですが、
それ以外の部分、
もっと細かな人情の機微みたいなところは、
とてもよかった。
最初の話を持ちかけた患者の奥さんが、
手料理でチョン・ヨンに感謝を表すシークエンスなんて、
単純で素直なだけに、ぐっときました。
そう、
昨日の『僕らの先の道』もそうなんですが、
とても素直で、それがいい感じなのです。
で、
映画が素直なので、
こちらも素直に評価するなら、
トータルとしては、十分おもしろかったです。

中国映画というと、
つい、ジャジャン・クーなど、
評価の高い監督の作品に向かってしまいがちですが、
昨日今日見た2本はどちらもよかったです。
たった2本見ただけですが、
中国映画の印象がよくなりました! 

『僕らの先にある道』

総合文化ゼミナールの「ワールド映画」、
あと授業が2回残っていて、
その内1回は、南アフリカ映画
『ツォツィ』
を見る予定です。
で、
最後の1回は、中国映画にするつもりなのですが、
これがいつも迷います。
まず、中国の近代史がある程度頭に入るものがいいのか、
それとも、
今の中国の雰囲気を伝えるものがいいのか。
もちろん両方いっぺんに伝えてくれる映画があればいいですが、
なかなかそうもいきません。
前者だと、『活きる』が1番学習効果がありそうで、
『妻への旅路』とか、
『初恋のきた道』なんかも使ったことがあります。
そして後者は、
『至福の時』
を使ったこともありますが、
これは、常に更新しておきたいところ。
というわけで今日見たのが、

『僕らの先にある道』(2018)

です。


予告編を見て惹かれて見始めたのですが……

遥江出身で、北京の大学に通うジエンチンは、
友人たちと列車で北京に向かう途中、
同郷の少女、シャオシャオと出会います。
彼女は、高卒後、
自由と独立を求めて北京に出て、
もう4年目です。
二人は次第に近づくものの、
北京の戸籍と安定した生活が欲しいシャオシャオは、
冴えない公務員と付き合ったりします。が、
結局上手くいかず……
そしてやがて、二人は一緒に住むようになり……
というお話です。
ただし、映画の開始からそう時間が経っていない時点で、
実は、この二人が、
出会いから数年後に別れてしまっていることが分かります。
なので、
これはまぎれもなく恋愛映画なんですが、
やがて別れることを観客は知っているので、
なかなか切ない感じになっていきます。
そして……
ああ、これなら、
若い世代の様子も分かるし、
地方と北京の関係もある程度分かるし、
映像もキレイだし、
なかなかいいなあ、
なんて思いながら見ていたんですが、
だんだん物語世界に引き込まれ……

この映画、
とても繊細で、ラスト近くは、
涙なしに見るのは誰にとってもムリ、だと思いました。
DVDも発売されておらず、
ネトフリでしたか見られないんですが、
かなりよかったです。
また、ジエンチンを演じたジン・ポーランは、

『ラヴ O2O』(2016)

の時より、ずっとよかったです。

2022年1月4日火曜日

『ドント・ルック・アップ』

まあお正月だし、
ここはアメリカ映画の大作でしょうということで(?)、
ネトフリの

『ドント・ルック・アップ』

を見てみました。


主演はディカプリオで、
相手役はミスティーク、
じゃなくてジェニファー・ローレンスです。
メリル・ストリープも、大統領役で出ています。
アナウンサー役のケイト・ブランシェットも。
なかなか豪華。

ミンディ博士(ディカプリオ)は天文学者で、
ケイトは彼の研究室のPh.Dです。
ケイトはある研究中に、巨大彗星を発見します。
これはすごい! となって、
博士が地球との距離を計算してみると、
6ヶ月後に、それが 0 になることが分かりました。
0?
そう、地球滅亡です。
で二人は、なんだかんだで大統領に会って危機を訴えるのですが……
という物語です。

結論から言うなら、なかなか面白かったです。
2時間以上あるんですが、
飽きることも緩むこともありませんでした。
とりわけ終わり方が潔くて、
またここまでのさまざまな皮肉などが鬼気を帯びることになり、
よかったです。

<以下、少しだけネタバレします>

なので、トータルとしては十分面白かったんですが、
あえて物足りない点を挙げるなら、
それはまず、ミンディ博士という人が、
深みに欠けるということでしょう。
いい人で、ただ弱さがあり、感情的にも不安定ですが、
それは問題じゃないんです。
そうじゃなくて、なんと言うか、
考えが浅い感じ? でしょうか。
そしてもう1つは、
「神」の扱い方です。
政治も、メディアも、PCも、
エリートも、ワーキング・クラスも、
さまざまな形でからかわれていて、
それは映画のおもしろさでもあるのですが、
ただ1つ、あまりにナイーヴに、
まったく皮肉を伴わずに提示されてるもの、
それが「神」なのです。
世界をマーケットとするアメリカ映画としては、
「神」を揶揄することだけはできなかった、
ということなのでしょうか?
ただわたしからすれば、不徹底にも感じられました。
まあ、「神の死」なんかを持ち出すと、
エンタメとしては重くなっちゃうんでしょうけど。

というわけで1番よかったのは、
ジェニファー・ローレンス、かな?
でも、繰り返しますが、
十分楽しめる映画でした。

2022年1月1日土曜日

初夢

さっき、ふと思い出しました。
初夢、見たんでした。
それも、
吉本隆明さんと話してたんです!
あの独特の声、独特の言い回し……
話の内容はまったく覚えてないんですが、
声だけははっきり覚えています。

(このごろまた、吉本さんの講演の音声などを、
通勤中にクルマで聞き出したからだと思います。)

そういえば、こんなこともありました。
もう、10年以上前なんですね……



「今年の3作」たち

総合芸術系の教員たちによる「今年の3作」が、
発表されています。


Mmm、見て、読んでみたくなりますねえ。
今年はどれくらい見て、読めるかなあ?

2022

年が明けました。
おめでとうございます!

午後に少しだけ、
近所に散歩に出ました。
人はそこそこいるのですが、
店はほとんど閉まっていて、
ただ、2店あるスタバの一方だけは開いていて、
当然大混雑になってました。

で、一昨日ここで触れた『オスロの少女』、
シーズン1を見終わりました。


状況設定などはそこで書いたので繰り返しませんが、
とにかく、
「オスロ合意」を核にしたドラマは初めて見たので、
それだけでも新鮮でした。
そしてその「合意」の破綻の象徴が、
IS の存在であるようにも見えます。
ただドラマの中では、
IS よりもハマスの方が「最悪」だと見なされていて、
それはイスラエル視点だからということはもちろんあるにしても、
知らない見方でした。

というわけで、興味深いドラマであったのは確かなんですが、
「ドラマ」として評価するなら、
あまり高い点はつけられないと感じました。
それはなんといっても、
こちらが感情移入できる、魅力的な人物がいないこと、
が理由です。
人物たちは、苦悩し、行動しますが、
そこに深い屈折は見出せないのです。
これは、人物たちそのものというより、
制作者側の、もろもろの認識の単純さから来るものだと思われます。
そこが、残念なポイントです。

今後、シーズン2が配信される予定のようですが、
見るかどうか迷います!