2012年3月29日木曜日

『二流小説家』


先日、近所の駅前本屋さんでフラフラしていて、たまたま、
最近はだいぶ御無沙汰しているミステリーのコーナーの前を通りました。
ミステリーを多く読んだ時期もあったので、
棚にはまだ見知った名前が。

その中に、「史上初、三冠達成!」と帯に描かれたポケ・ミスがありました。
(三冠=ミス読み、このミス、文春、オール1位。)
去年の早い時期から、相当に評判のよかった『二流小説家』です。
何の気なしに手に取ると、主人公の名前がハリー・ブロックだと……

ああ、これは参りました。
ミステリー・ファンなら、この名前からおそらく、
マイクル・コナリーの生んだハリウッド署の「ハリー」・ボッシュ、
そして言わずと知れた大御所、
マット・スカダーでおなじみローレンス・「ブロック」を思い出すでしょう。
そしてこの2人は、わたしにとっても大好きな3人のミステリー作家の内の2人なんです。
しかも三冠、しかも(ぱらぱらめくると)読みやすそう。
というわけで、ずいぶん久しぶりにミステリーを読んでみました。

まあこの本は、なにしろ「三冠」ですから、
今さらわたしなどがとやかく言いこともないと思いますが、
それしにてもこの小説、ものすごくうまい。
アマゾンの紹介文は、以下の通り;

ハリーは冴えない中年作家。
シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で何とか食いつないできたが、
ガールフレンドには愛想を尽かされ、
家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末。
だがそんなハリーに大逆転のチャンスが。
かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より
告白本の執筆を依頼されたのだ。
ベストセラー作家になり周囲を見返すために、
殺人鬼が服役中の刑務所に面会に向かうのだが……。

すごく知的で、構成も巧みすぎるほど巧みで、
読者を引っ張ってゆくテクニックがすさまじく、
誠実なためらいや、小心な冒険もある。
そして特筆すべきは、ミステリー小説への愛があることです。

ただし!
ある特定の章は、相当にグロテスク。
過度にエロチックではないけれど、
生理的にグロテスクが苦手な方には、どうかな?

英語は見ていないのですが、
翻訳の日本語はテンポがよく軽快。
二段組み450ページなんですが、あっというまに読めました。