2020年11月30日月曜日

『 M Train 』


パティ・スミスと言えば、
70年代にロックに親しんだ人間にとっては、
これはもうカリスマの一人で、
今も時々飲む親友が、
当時、彼女のTシャツをよく着ていたのを思い出します。

そのパティ・スミスが、
『ジャスト・キッズ』で全米図書大賞をとったのは、
今調べてみたら2012年のことで、
(わたしは恥ずかしながらこれはまだ読んでいないんですが)
その3年後の2015年に出版されたのが、
今回翻訳が刊行された

『 M Train 』(パティ・スミス/管啓次郎訳)

です。

読み始めて、まだほんの50頁くらいなんですが、
驚きました。
わたしなんかが言うのはナンなんですが、
すご~くうまい。
読んだ部分は紀行風のエッセイと、
クリスマスのNYなどを描いた文章なんですが、
読み進めると、あっという間に、
彼女の息遣いと自分のそれがシンクロし始め、
彼女を取り巻く風の温度や湿度が肌を上ってくるようなんです。
本を閉じた後も、
束の間、NYにいたような心地がします。

原文と見比べたわけではないので、
はっきりしたことは言えませんが、
まあこれはかなり高い確率で、
訳者である管さんのスゴサでもあるのでしょう。
なんというか、ここにパティがいる、
ここでパティが話している、とした思えないのです。
もう、憑依してる?
さすがです。

本は時空の旅だということを、
あらためて思い出させてくれる本です。
続きが楽しみです。

2020年11月27日金曜日

『ボイス』の終わりの長い一日

時々、「長い」と感じる一日がありますが、
今日はそんな日でした。

午前中に80分テニスをしに行き、
仲良しのカトーさんとバックハンドボレーについて素人談義をし、
ちょっとコーチに褒められ嬉しくなり、
終わると、
ダッシュで帰宅しダッシュでシャワーを浴びダッシュで昼ごはん
(「カラメン」と家庭内で呼びならわしている「辛い麺」。
これは同僚の中国語の林先生に教わったもので、
もう何回作ったか分からないほど)
をすすり上げ、
あわててZoom会議へ。
そのまま会議が1時間ちょっと続き、
終わると今度はその内容を、
「総合文化教室」と「総合芸術系」に伝達。
すぐに返信があり、なんどかメールのやり取り。
で、
やっと一段落したので、
心を落ち着けて『ボイス』の最終回へ。
あ、そうですよね、そうですね……
としみじみした後は、
すぐにパワポ作りを開始。
実はこれ、1か月ほど前にも起きたことですが、
授業で使おうと予定していた映画が、
なんと、AmazonPrimeで配信終了していて、
別の映画に差し替えたため、
急遽新しいパワポが必要になったのでした。
で、終了していたのが『国際市場で逢いましょう』だったので、
差し替えも韓国映画から、
『タクシー運転手 ~約束は海を越えて』
を選びました。
幸い(?)解説しやすい映画だったので、
まあよかったかな。
見たのは二度目ですが、
やっぱり、授業で使うつもりで見ると気合が違うので、
新しい発見もありました。
で、このパワポを作り続け、
(晩ご飯のポーク・ジンジャーを挟んで)
やっとできたので今度は、
今日から始まったアマゾンのセールで、
予想通り値下がりしていたアレとコレを買い、
ついでに「将棋ウォーズ」で1局さし、
二段相手に辛勝し、
それが今です。
あとは風呂であの本を復習し、
元気があれば別の映画かドラマでも……

2020年11月23日月曜日

3連休、の『ボイス』

この3連休、
見事に一歩も外へ出ませんでした。
それはまず、
今日月曜は「休日授業日」で、
通常通りオンラインのコンテンツを用意しなければならなかったこと、
(そして当然レポートをよまなければならなかったこと、)
そしてやっぱり感染が拡大していること、
が理由です。
特に今日は3日目で、ちょっとスタバくらい、とも思いましたが、
休日はどうせ混んでて席もないだろうし、
と考えてる間にどんどん暗くなってくるしで、
諦めました。
明日の午前中のテニスが待ち遠しいです。


で、
韓国ドラマは、『ボイス』を見始めています。
ボイス・プロファイラーで、
特殊な聴力のある女性捜査官と、
街の事情に精通した刑事が、
さまざまな事件と葛藤する物語なのですが、
実はこの2人、
それぞれ父親と妻を殺人事件で失くしています。
そしてその真犯人は、どうやら同一人物のようなのです……

こういう、「声」を分析する物語って、わりと好きです。
(『善き人のためのソナタ』とか。)
そして実際なかなかおもしろいのですが、
ちょっと(韓国映画にありがちな)猟奇的な部分があり、
そこがちょっと……なんですが、
ヒロインはまさに「凛」としていて、ステキです。
これも韓国ものでよく見かける通り、
ホモソーシャルな世界のミソジニーは強烈ですが、
彼女は強いです。
で、
応援したくなるわけですね。

2020年11月20日金曜日

『エミリー、パリへ行く』

ネトフリのドラマ、

『エミリー、パリへ行く』(10話)

を見てみました。


シカゴ出身のエミリーが、
パリのマーケティング会社に派遣され、
フランス語も話せないまま、
イケメンのシェフと仲良くなったり、
実家が超大金持ちの中国人女性や、
実家がワイナリーのパリジェンヌと友達になったり、
シャンペンを飲んだりパンオショコラを食べたり、
既婚者からランジェリーを送られたり、
行きずりの男とベッドインしたりするお話です。

え、なんだそれ?
と思ったでしょうか。
これは、もともとアメリカ国内向けに作られた、
アメリカ人(だけではないでしょうが)の頭の中だけにある、
空想のパリ、伝説の、理想化されたパリが舞台です。
ここには、テロも、デモも、工事も、散乱したごみもありません。
またアラブ系は、一人も登場しません。
つまり、現実のパリではないわけです。

もうあまりに戯画的で、
溢れんばかりの安易さなので、
なんというか、本気で見たりはできません。
ああ、こんなステレオタイプ、まだ描かれてるのね~、
という、渇いた笑い? というのでしょうか?

フランスでの批判も、
半笑いな感じです。


真ん中辺の、Tilo fr という人のtwitter は、

「結局のところ、アンヌ・イダルゴ(パリ市長)は正しかった。
彼女は約束を守ったわけだ;
2020年には清潔なパリになる。
ただ残念なのは、それがドラマの中だってこと。
画像は、パソコンで修正されたのかな?」

それから批評集。評価は低めです。


それからこの日本語の記事は、
分かりやすいです。


シーズン2が作られるようです。
でも配信されれば、
また半笑いで見ちゃうかも。

上の記事の中で言及されている The Eddy については、こちらを;


2020年11月17日火曜日

『バガボンド』

ネトフリ韓国ドラマ、

『バガボンド』

を見てみました。


これ、ネット上での人気は「まあまあ」程度の印象ですが、
わたしは、とってもおもしろかったです。
冒頭、「映画みたい」と思いましたが、
なんとそのテンションが、
最後まで続いたのです。
これは驚きました。
深い、とか、穿ってる、とかいうわけではないんですが、
これほど、
観客を引っ張ってゆく力のあるドラマも珍しいと感じました。
見終わった今、少し「ロス」です。

ドラマが始まって間もなく、
ある「取り返しのつかないこと」が起こります。
この敗北感、ないし負債感が、
通奏低音のように響き続けることになります。
物語は、いわば入子型構造をしていて、
これ、と思ったらそれより大きいこれ、またそれより大きい……
と展開し、これもうまいなあ、とうなってしまいます。

世評の高い『愛の不時着』も、
そして『梨泰院クラス』も、
たしかにおもしろかったですが、
どうでしょう、
わたしは『バガボンド』のほうが上である気もしています。

2020年11月14日土曜日

教科書、2冊

というわけで、
実物が手元に届き、
白水社のHPには書影も出ました。


以前ここで、「シャンパンゴールド」の……
という話を書きましたが、これが完成形です。
ちょっと大げさですが、
わたしは、今までに見たどのフランス語の教科書よりも美しい、
と感じています。
これはもうデザイナーに感謝するしかありません。
ちなみにフォントも、
彼がこの教科書のために作ってくれたものです。

そしてこちらは、レナさんがブレーンで、
わたしはアシスタントです。


前者が文法、
後者は、ネイティヴの先生たちにも使ってもらえるように工夫した、
会話の教科書です。

編集のミドリさんには、
いつものようにとってもお世話になりました。
彼女がいなければ、
とうていできていません。
ありがとうございました!

2020年11月13日金曜日

リアル会議

今日は、今年度に入って初めて、
リアル会議がありました。
午後1時に始まり、4(+α)の会議が続き、
終わったのは6時15分。
長かったです。

長かったですが、
でも、久しぶりに同僚たちの顔が見られて、
来年度のもろもろについてマジな話し合いができて、
じわり、嬉しかったです。
ただ一方では、
おそらくもう今年はこんな機会はないでしょうから、
それに気づくとちょっとさびしい気も。

唐突ですが、
わたしが小学校の頃のヒット曲、「恋」に、
こんな一節がありました。

逢っているときは なんともないが
さよならすると 涙がこぼれちゃう

逢うたびに うれしくて
逢えば 又せつなくて
逢えなけりゃ 悲しくて
逢わずにいられない


子ども心に、
このパッセージは沁みました。
(「恋」ではなく、
その頃ちょうど、
母親が入院してたからなんですけどね……。)

もちろん今日の感じは、
これとは違いますが、
思い出すということは、
少しはかすってるんでしょうかねえ?

2020年11月12日木曜日

Mahler Sym. 5

数日前夕食中に、
なにか音楽でもと思ってYouTube
(テレビで見られるようになってます)
を見回っていると、
ふと、マーラーの5番が目に入りました。
ああ、久しぶり、と思って、
試しに聞き始めたのですが……


結局、食事が終わっても聞き続け、
とうとう最後まで聞いてしまいました。
アバド、素晴らしい。
感動しました。

マーラーの5番と言えば、
交響曲の中では大好きなものの1つで、
テンシュテット、
ショルティ、
バーンスタイン、
インバル、
ラトル、
などを中心に聞いてきて、
特にテンシュテットがお気に入りだったんですが、
Mmm、アバド、なぜかちゃんと聞いていなくて、
あんまり良くてびっくりしました。
(まあ、今のわたしに合っているのかもしれませんが。)

テンシュテットには、
ただ、少し残念な記憶があって、
彼の来日公演の時、
すっごく楽しみにしてチケット買って、
夕方、体調万全でサントリーホールまで行ったのに、
なんと、病気で交替。
彼のライブを聞くことはできませんでした……

それからインバル。
彼のCDは、実は、シリアル番号の入った高音質版で、
当時でも4000円以上したのを、
がんばって買って、
これは今でも時々聞いています。
たしかに音はいいと感じます。

それにしてもアバド。
CDでも聞いてみることにします。

2020年11月10日火曜日

日本学術会議会員任命拒否に関して(声明文)

わたしが所属している、

明治大学大学院理工学研究科 建築・都市学専攻 総合芸術系 

では、先の学術会議会員の任命拒否問題について、
声明を発表しました。


同じ建築・都市学専攻の先生方や、
わたしが「学部」において所属している

理工学部 総合文化教室

の有志の先生方も、賛同人として参加してくださっています。

2020年11月9日月曜日

選挙と宿題

とにかく、バイデン候補が勝ってよかったです。
個人的に注目したいのは、
イスラエルやイランとの関係。
オバマの時のような体制に戻すと言われていますが、
どうなるでしょう?

そして副大統領には、彼女ですね。
演説の全文がありました。


そして、
これは選挙結果が出る前のインタヴュー記事ですが、
フランス語のクラスで宿題にしたのがこれです。

Je crois que Joe Biden gagne, à moins que des batailles judiciaires n’en décident autrement. Pour l’instant en tout cas, je suis optimiste. Mais à vrai dire je me sens comme si on avait évité de justesse un désastre mais qu’il n’y a rien à fêter pour autant. Pour moi, Biden n’est pas le candidat idéal. Il n’est juste pas l’horrible président que nous avons eu. Et à vrai dire je m’interroge : comment est-il possible d’avoir vécu avec un tel président pendant quatre années et d’avoir des résultats encore si serrés ?

例の、RFIの Journal en français facile を、

一部改変したものです。

最後の一文がおもしろかったので、このパッセージを選びました。

2020年11月4日水曜日

ポスト・トゥルース

大阪は、どこかうさんくさい話を蹴散らしました。
よかったと思います。

で、アメリカでも投票が始まりました。
これが先進国? と思わせられたのは、
起こりうる暴動に備えて、
店舗を板などで保護している映像です。
明らかにお金も、手間もかかっています。
それでも、店舗が破壊されたり、
商品が略奪されたりするよりはマシ、
ということなんでしょう。
銃の販売が伸びているというニュースもありましたね。
(アメリカは、建国神話の中に、
銃で自分を守る物語が組み込まれているので、
銃を買うことの持つ意味は、
日本での印象とはずいぶん違うでしょうけれど。)

ポスト・トゥルース、という言い方が目立つようになったのは、
ちょうど前回トランプが勝った頃だったように思います。
たしかに、ポスト・トゥルースと言って真っ先に思い浮かぶのは、
あのイカシタ髪型の大統領でしょう。

でもところで、「トゥルース」は大事なんでしょうか?
それはもちろん、そうでしょう。
自由主義ていうのは、真実を土台にしている(ことになってる)わけですから。
ただ、ユヴァル・ノア・ハラリによれば、
そもそも人類は、「ポスト・トゥルースの種」だということになります。
どういうことか?
いい例は宗教です。
聖書でも、クルアーンでも、アヴェスタでも、
そこに書かれているのはフィクションであり、
「ポスト・トゥルース」以外ではありません。
いや宗教は同じじゃないでしょう? という気もしますが、
10億人が1000年信じれば宗教で、
100万人が1年だけ信じると「ポスト・トゥルース」なのか、
という問題があります。
ただハラリは、
この「ポスト・トゥルース」を作り出し、
それを集団で信じるように持っている力こそが、
人類をドライブさせているのだ、というのです。
人間は、「物語」で、「フィクション」で動くのだと。
たしかに戦争も虐殺もするけど、
橋や病院や学校を作ったりもするわけです、
フィクションを信じた人間は……。

まあそれはともかく、
あのイカシタ髪型は、
もう見たくありません。

2020年11月2日月曜日

免許更新

のタイミングになり、
手続き可能な警察署の「混雑状況」を確認すると、
あらら、
いつも行っていた警察署は、
終日「大変混んでいます」。
どうやら、コロナのせいで、
時間当たりの受付数を制限しているよう。
それじゃあ混むわけです。

で、
いつもとはちがう、
距離的にはさほど変わらない警察署なら、
午後3時以降は「空いています」だったので、
行ったことのない場所だったけれど、
ふと思い立って、
今日行ってきました。
すると、
ラッキー!
空いてます。
どの窓口も、一人くらいしか並んでいません。

ちょっとおもしろかったのは、
わたしの次に窓口に並んでいた男性、
まあ40歳くらい? の男性が、
簡単な視力検査の途中、
「もっと大きな声で。聞こえないから」
と、やや雑な感じで言われた後、急に、
「左」
と声を張り上げ、
その場にいた人たち全員がふり向くという、
なんだか時間が止まったような瞬間があったことです。
その後も彼の声は、
右だの上だの、狭い室内に響き渡ったのでしたが、
その後、はいじゃあこれ持って座ってて、の言葉には、
一転聞こえるか聞こえないかの声で、
「はい」
と答えるのでした。

外に出ると、
なにかありますね。
コロナ飽きた!