2017年3月29日水曜日

500 frères

日本での報道は(わたしは)見かけませんが、
フランスのニュースでは、
仏領ギアナでの大規模デモはかなりの話題です。
もちろん、大統領選挙への影響も。

そのデモで注目されているのが、
「500人の兄弟たち」。

https://www.youtube.com/watch?v=KtyBejE9DYM

本国に比べて、
犯罪は多いし、
失業は多い(若者は54%!)し、
何とかして、
というわけです。

ニュースと言えば、
パリ郊外で、
中国人の男性が、警官に射殺され、
中国系住民のデモが起こっています。
もっと安全を、というわけです。
そしてちょっと目を引いたのが、
中国政府が、
今回の事柄についてフランス政府に苦情を言ったこと。
ラジオを聞いていたら、
パリのアフリカ人の男性が、
オレの国の政府は何一つ言ってくれねえ!
と嘆いていました。
そうなんですね。

2017年3月28日火曜日

『クリムゾン・プロジェクト』

ドパルデューとジョーイ・スタールが共演する、
『クリムゾン・プロジェクト』(La marque des anges)を見たのですが……

印象的だったのは2点だけ。
まず、引退した刑事であるドパルデューが、
オランピアド広場に面した高層ビルに住んでいること。
(ただ、彼はベルヴィルの教会に所属していることになっています。
Possible ?)
2点目は、
Tellement proches で、
ベビーシッターの女子大学生を演じていた、
金髪でロン毛のLizzie Brocheré が、
ショートカットの弁護士役で出ていたこと。

映画は、ゴシックホラー的な仕掛けなんですが、
ちゃっちい感じで、残念でした。

『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』

昨日、
卒業式と学位授与式の間が、
ビミョーに2.5時間ほど空いてしまったので、
倉石先生に連れられて、
近代美術館で
「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」
を見てみました。

http://www.momat.go.jp/am/exhibition/raku/

茶碗なんて、ほんとに何もわからず、知らず、
はるか昔に吉左衛門展を見たかすかな記憶があるだけ。
で、
見始めても、
なにをどう見ていいかわからなかったのですが、
見ていると、
やっぱり好きな茶碗というものが出てくるから不思議です。


道入の茶碗です。
でも今調べてみると、
どうも有名なものらしく、
好きとか言うのが恐れ多いのですが。
とにかく、
やっぱり見てみるものですね。

ちなみに、
同僚の中には、
こういった方向(なんて言うと雑すぎるんですが)にも詳しい、
鞍田先生もいます。


そして近美のあと、
駿河台下でちょっとお茶。(というか寒かったのでココア)


壁から、
好きなカップを選ぶと、
それに入れて出してくれます。
この店も、
倉石さんの行きつけなのでした。

2017年3月26日日曜日

卒業式


というわけで、
武道館卒業式、
無事に終わりました。
卒業生のみなさんは、
おめでとうございました。
でもやっぱり冷たい雨だったので、
外に立って誘導する係の学生たちが大変そうでした。
お疲れ様でした。
(わたしは、スーツを一日来ているのが、
ちょっと疲れました。
スーツを着るのは、年に数回なので。)

夕方からは、
お茶の水で、
大学院生の学位授与式に。
こちらは10人ほどなので、
ふつうの教室で。

例年そうなのですが、
ここでは、先生たちが「贈る言葉」を一言しゃべります。
これがなかなかおもしろくて、
わたしも学生に帰った気持ちで聞いていました。
その1つのポイントは、
学び続けること。
修了しても、それはゼンゼン終わりじゃなくて、
これからも学び続けてください、ということです。
先生たちは、
最近読んだ本なども紹介したのですが、
それは、つまり、
学び続けているから。
卒業式しても学位を授与されても、
学ぶということに、終わりはないのですね。
(Kさん、上の画像、借りました!)

2017年3月25日土曜日

明日

明日は、卒業式です。
で、天気予報は、
一日中雨!
しかも寒い!
わたしも武道館まで行く予定なので、
ちょっとイヤなんですけど、
なんといっても、
袴や着物の卒業生たちがかわいそう!
なんとか、
曇りくらいで手を打ってもらえないでしょうか……?

2017年3月24日金曜日

『ラスト・ボディガード』

言ってしまえば、
ちょっとダサいだけでなく、
意味もずれているタイトルの映画、

『ラスト・ボディガード』(2015) ←フランス映画

を見てみました。
原題の Maryland は、
主人公であるボディーガードを雇う、
レバノン系フランス人の武器商人の、
広大な庭とプールのついた大邸宅のことです。

https://www.youtube.com/watch?v=wmDCzOcONlI

ヴァンサンは、
アフガニスタン紛争に参戦し、
精神的な傷を負っています。
その幻聴や眩暈の中で、
軍に復帰したいと思うものの、
それは難しそう。
で、食いつなぐため、
かつての軍人仲間とボディーガードの仕事をしています。
そして今回、
富豪の妻と子供を守ることになるのですが、
この奥さんを演じるが、ダイアン・クルーガー。
で彼は、一目ぼれしてしまうわけです。
そして幻聴と戦いながら、
彼女を守ろうとするのですが……

ちょっと変わった映画で、
なんというか、
たしかに彼女は狙われたりするのですが、
全般的には、
実際におきる事柄は多くありまえせん。
でも、緊迫感は持続し、
それはダイアンの美しさを際立たせもします。

主人公の、
もっと細かな情報が描かれていれば、
より陰影のある作品になったと思います。

『カミーユ、恋はふたたび』

昨日、『奇跡の教室』のことを復習しましたが、
蔦屋で見かけたもう一本は、
『カミーユ、恋はふたたび』
です。
これについても、
以前ここで書きました。
(日本版が出たのは、去年の夏ですね。)

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/04/camille-redouble.html

そして ↑ では触れませんでしたが、
実はこれも、「クレテイユ映画」です。
とはいっても、
舞台は駅周辺の再開発地区ではなく、
その外側の、
pavillon(低価格の一軒家)が立ち並ぶ地域です。
移民であるとかないとかいう話題はまったく出ませんが、
主人公の夫はアラブ系なのです。
それが、
何でもないふつうのこととして、話は進みます。

タイムスリップ物として、
十分楽しめる映画だと思いますが、




2017年3月23日木曜日

『奇跡の教室 受け継ぐものたちへ』(追記あり)

蔦屋でぶらぶらしていて、
この映画を見つけました。

『奇跡の教室 受け継ぐものたちへ』

去年、結構話題になった作品です。

http://kisekinokyoshitsu.jp/

原題は
Les Héritiers
で、今過去ログを見たら、
一昨年の7月に、簡単に触れていました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/07/blog-post_88.html

で、あまりに簡単にしか触れていなかったことに気づいたので、
ここでもう一度書いておくため、
また見直しました。

かなりアレテイル、パリ郊外の高校。
全校で見れば、
生徒たちの所属するコミュニティーは29にもなると校長は言いますが、
中心的に描かれるクラスもまた、
そう言う感じです。
で、
このアレテイル生徒たちをまとめ、
なにかある方向に向かって進むことを教えるためなのでしょう、
女性教師は彼らに、
ホロコーストに関わるコンテストに出場することを提案します。
それをきっかけに、
生徒たちは変わってゆく……

HPのコメント欄で、
バラカンさんが指摘している通り、
ストーリーそのものと同じくらい、
生徒たちのクローズアップの表情が印象的な作品です。
で、
わたしにとってはやはり、
これはまぎれもなく「クレテイユ映画」だなあという気が、
どうしてもします。
というのもクレテイユは、
移民の多い「郊外」であると同時に、
パリ有数のユダヤ人コミュニティーが存在する街だからです。
この映画で、ホロコーストが大きく扱われるわけですが、
それはクレテイユという街と切り離すことはできないのです。
実際クラスには、
ヨーロッパ系とアフリカ系、
二人のユダヤ人少女がいます。
また、主人公とも言えるマリック(=当然ムスリム)は、
イスラエルに出かけるという、
近所のマダムの飼っているエルヴィス(インコです)の
世話をすることを引き受けます。
ここにはもちろん、
共生という現実があるわけですね。

また途中、きれいなモスクが出てきますが、
これはクレテイユ湖の西側にある、
Mosquée Sahaba de Créteil
です。
このモスクは、
この映画でもメルクマールとして使われていました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/12/le-noir-te-vous-va-si-bien.html

そしてクレテイユ映画の代表格、
『セリ・ノワール』については、
ここで書きました。

http://www.jiji.com/jc/v4?id=hssfranse-007-16100001

◆追記:
主人公は、
マリックというムスリムの男子生徒。
彼は、ある場面で、
「カメリアっていい子だよね」
と言うのですが、
彼女はユダヤ人なのです。
で、
物語の最後、
二人は手を繋いだりもします。
(カメリアの父親は、
挨拶してくるマリックを無視しますが。)
つまりこの映画は、
「アラブ―ユダヤ映画」でもあるわけです。
これは、
とても重要な点だと思います。

◆追記2
生徒委員でアフリカ系のマックスが、
ルワンダ虐殺の話が出たところで、
「コルネイユだ!」
と叫んで歌い出すのは、
わたしも好きな、この歌です。

https://www.youtube.com/watch?v=BjIUDSK375Q

コルネイユが、両親をこの虐殺で失くしたことは、
やはり広く知られているようですね。


WBC

日本 vs アメリカ、
全部見ました。
おもしろかったです。が、
ちょっと不完全燃焼な試合でもありました。

日本は守備のミスが2つ、3つ出て、
一見それで負けたようにも見えますが、
得点がソロ・ホームランの1点だけでは、勝てません。
引いて見れば、やはり、
打てなかったのが敗因だと思います。
ピッチャーは、とてもよかったわけですから。

一番印象に残ったのは、
スタントンのサード・ゴロの場面。
恐るべき打球の速さ、
そしてそれをダブル・プレーにする
(実際は足が離れて不成立でしたが)
守備の華麗さ。
ああ、プロだなあ、
と思ったのでした。

2017年3月22日水曜日

人口

唐突ですが、
今後日本の人口が減っていくのは、
確実なようです。

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/kaisetsu.pdf

これって、
みんななんとなく知っている気がしているものの、
ほんとうにじっくりとは味わっていないんじゃないでしょうか。
将来のことは、
この、ほぼ確定のことがら抜きでは、
語り得ないのでしょう。


「ふらんす」4月号、発売!

ついに出ました、
1年分の音声を詰め込んだCD付きの、
「ふらんす」4月号です。
特集は、
「もっともっとフランス語! 」

4月号には、
今のフランスをヴィヴィッドに伝える情報や、
さまざま角度からの含蓄あるエッセイ、
そしてフランス語を勉強するための、
さまざまな情報が網羅されています。
とてもお得!
じゃんぽ~るさんとの対談も、
たっぷり6ページもとっていただいて、
これはちょっと申し訳ないようですが、
でも、それなりに楽しんでいただけると思います!
ぜひ!


以前も貼りましたが、
じゃんぽ~るさんのマンガの立ち読みです。

https://twitter.com/JP_NISHI?lang=ja

AFP発の、フランス大統領選に絡んだ、
おもしろい表にも触れられています。

2017年3月20日月曜日

フランコフォニーのお祭り2017

この告知を見ると、
ああ、春だなあ、
と思うここ数年です。

http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/franco2017/

チュニジア系ユダヤ人の母と、
コートジボワール系ムスリムの父を持ち、
フランス語と英語で歌うLaetitia Dana、
見てみたいですね。

https://www.youtube.com/watch?v=AjAfoAvhzFE (←29秒あたりから)

https://www.youtube.com/watch?v=zWim-EyHJZM


Sing

大ヒット上映中、
とHPでは言っている、

Sing

を見てきました。
映画館内には、子供たちがおおぜい。

http://sing-movie.jp/

↑ 予告編、何種類もあります。

父親が、洗車をしながら貯めたお金で買った劇場、
それを受け継ぎながら、
一本もヒット作を作れないまま、
その劇場を差し押さえられそうになっている(ねずみの)ムーン。
彼は、起死回生を狙い、
賞金1000ドルのかかった歌のコンテストを企画します。が、
200歳になる(イグアナの)秘書がタイプミス、
賞金は10000ドルと公表され、
とんでもない数の出場希望者が押し寄せます。
で、オーディションを行い、
(賞金を支払える可能性なんかないまま)
何人かに、
本選の出場権を与えますが、
ちょっと凝った演出を仕掛けたことから、
古い劇場はなんと崩壊。
銀行もやってきて、
ムーンにはもう何もできなくなります……
(でももちろん、その後コンテストは行われ、
そのステージが一つの見せ場になってゆきます。)

ムーンか抱えているのは、
借金だけでなく、
父と子の問題です。
そして出場者の中の一人(一匹?)が抱えているのもまた、
それとパラレルな問題。
さらに出場者の中には、
主婦業に疲れ、
自分の歌の才能を試しに来るブタ、
自分を押さえつけていたカレシと別れ、
やっと思いのまま生きられるようになったハリネズミ、
などもいます。
いろんな人が、
思い入れを込めて見られるようになっていて、
それがわりとうまくいっていると思います。
(多少ナイーブすぎる気もしますが。)
そして曲目も、
テイラー・スイフト、ガガ、ビヨンセから、
ボウイ、ジプシー・キングス、シナトラ、パミュパミュまで、
いろんな年代、いろんな民族が、
ああ、これね、
と言いやすいように、仕掛けられています。
明らかに、
マーケットは世界、
なんですね。

ちなみに、
わたしにとって1番耳に残ったのは、
ほんのちょっとしか出てこない、
これでした。

https://www.youtube.com/watch?v=JptwkEhdNfY

ただ好きなだけか!?

2017年3月18日土曜日

『犯人は21番に住む』

アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督のデビュー作、

『犯人は21番に住む』(1942)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=nUIOhu0j3Yw

コメディー・タッチの推理物で、
わたしとしては、
いったいどこの21番地?
という一点で見たのですが、
それは、
Avenue Junot の21番地でした。
モンマルトルの、
サクレ・クールの西側、
ラマルク・コーランクール駅の近くです。
また、映画内で最初に殺される酔っ払いは、
ジョレスに住んでいる設定です。
(セット内で撮られていますが。戦争中だし。)

戦争中ということで言えば、
「植民地」に関わる事柄が2つ。
まずは、売れない歌手が興行主に自分を売り込む際、
「わたしは未開の植民地と同じ、
支えてくれる人が必要なの」
と宣います。
また、「犯人」が住む21番地のミモザ館の間借り人の中には、
自慢げに、
オレは植民地で25年過ごしたと言う医者も出てきます。
(ウソなんですけど。)

この辺に注目して、
この辺りの時代の映画を見てゆくのも、
おもしろいかもしれないですね。

4刷

この頃、いい知らせが続きます。
去年出した教科書 LE FRANÇAIS CLAIR が、
めでたく4刷になりました。
こちらもまた、
授業が充実したものになる一助になれば、
とても嬉しく思います。

この教科書は、自分としては、
今までにこなした多くの文法の授業から学んだことを、
すべて踏まえて作ったものです。
ほんとに、役に立っているといいのですが。

2017年3月17日金曜日

Jusqu'à toi


メラニー・ロランは、
好きな女優の一人です。
アイドル的な扱いを受けることもあるようで、
まあその辺はよくわかりませんが、
画面に現れると、ちょっと見てしまいます。

で、そのメラニーと、
ジェラルディン・ナカシュが出演している
(そしてチョイ役ですが、ジェゼフィンヌ・ドゥ・モーも出ている)

Jusqu'à toi (2009)

という 映画を見てみました。

(で、また見終わってから調べて気づいたのですが、
『恋は3,000マイルを越えて 』というタイトルで、
日本版のDVDも出ていました。)

https://www.youtube.com/watch?v=3gXseYZwZRE

まあ、ラブコメです。
他愛無いです。
監督(とカメラ)は、
メラニーを可愛く可愛く撮っています。
それは成功していて、そもそも画面はよく構成されている感じ。
(上の画像のように。)

わたしにとって印象的だったのは、
ジェラルディン・ナカシュが、
おそらく肌の色を濃く見せる化粧をして、
明かな移民役で出ていたこと。
もちろん彼女は移民役を何度もやってますが、
今回は、中東系? という印象をあえて与えている感じ。
その意図ははっきりしませんが……。
とにかく、この演出、覚えておくことにしましょう。

2017年3月16日木曜日

完結編

「仁義なき」、
完結編を見て、
一応シリーズ5作を見終わりました。

https://www.youtube.com/watch?v=c7D-zKqaStU

評判通り、
なかなかいいシリーズでした。
ただ、この完結編だけは、
少しトーンが違っていて、
それは、主役級のふたり、
武田組組長(小林旭)と、
広能(菅原文太)の二人の中に、
死を見すぎたゆえの虚無感が、
色濃く立ち上がってしまったからなんでしょう。
観客、というか少なくともわたしは、
この虚無感にシンクロしてしまいました。
そこが、この完結編を、
他の4作と分けていると感じました。

「空襲被災者と戦後日本」

去年亡くなった伯母、
清岡美知子の遺品も出品されています。

http://www.tokyo-sensai.net/info/info2017/info2017-01.html

https://twitter.com/rantyo3141/status/841945366379524098/photo/1

2017年3月13日月曜日

日本的家族

今日は大学で、
4つの会議に参加してきましたが、
今年度については、
こういう連続会議の日は今日が最後。
いよいよ年度の終わりという感じです。
(あ、でもまだ卒業式があるんだった。)

「仁義なき戦い」シリーズは、
第3作の「代理戦争」と、
第4作の「頂上作戦」を見ました。
どちらも、緊張感が途切れず、
なかなかの出来栄え。
しかも、無理に引っ張っている感じはまったく感じられません。
そうした点では、
とてもよくできていると思いました。

トッドは、
各地域の家族形態の分析から始めて、
たとえば、
社会主義国家とのあまりに明確な関係を指摘しました。
(キューバ、ロシア、中国など、
外婚制共同体家族 (la famille communautaire exogame) の地域と、
はっきりした相関が認められる、というわけです。)

ヤクザの世界は、いわゆる擬制的な家族でできています。
そしてそのヤクザ的家族とは、とうぜん日本的な家族、
つまり、トッド流にいうなら、
直系家族 (la famille souche) (=親は子に対し権威的であり、兄弟は不平等)
なわけですが、
この映画の家族は、まさにそれ。
親は子に対し権威的であり、兄弟は不平等、そのものです。

当時この映画、どんな受け入れられ方をしたのかは知らないのですが、
(調べてみる価値はあると思います。)
ここで描かれた擬制的家族を通して、
日本の「会社」というものの在りように思いを馳せたということは、
あったに違いないと思います。

日本研究の教材として、
このシリーズは有効ですね。
(どこか海外の大学で、使っている先生がいるのでしょうか?)

2017年3月11日土曜日

モリエール条項(clause Molière)

フランスの言語覇権主義は、
いわば帝国主義的なわけですが、
この「モリエール条項」というは、
もっと「内向き」な印象があります。

http://www.afpbb.com/articles/-/3121039?cx_part=txt_topics

http://www.lefigaro.fr/conjoncture/2017/03/10/20002-20170310ARTFIG00256-imposer-le-francais-sur-les-chantiers-devient-un-enjeu-politique.php

ここで引用されているモリエールの一節、

... c'est n'estimer rien, qu'estimer tout le monde

(全員を尊重することは、何も尊重しないのと同じだ)

だから、
全員ではない人たちを尊重しよう、
ということなんでしょうが、
それはどうでしょうか?

6年目

一昨日の Le Point の記事。

http://www.lepoint.fr/monde/fukushima-l-invasion-de-sangliers-radioactifs-10-03-2017-2111009_24.php#xtor=CS3-190

これは、NYタイムズのこの記事に基づいているわけですね。

https://www.nytimes.com/2017/03/09/world/asia/radioactive-boars-in-fukushima-thwart-residents-plans-to-return-home.html?_r=0

そして放射能に汚染されたイノシシのことについては、
日本でもこんな記事が、
約1年前に出ています。

http://newsphere.jp/national/20160417-1/

人間の帰還を妨げる、というのは問題であるにしても、
イノシシたち自身もまた、
被害者であるわけですね。




2017年3月10日金曜日

『仁義なき戦い』

まあ、日本でそのタイトルを知らない人はほとんどいない、
有名なシリーズ、

仁義なき戦い』(5部作)

は、1973年1月から始まり、
翌74年の6月には「完結編」が公開されています。
これは、わたしにとっては、
中3から高1にかけて、ということになるのですが、
当時はたいして映画を見ていなかったし、
見ているたものの中で好きだったのは、
リバイバルで見た『歴史は夜作られる』や『暗黒街の弾痕』、
新作だと、『スティング』や『パピヨン』、そして『暗黒街のふたり』などでした。
(今挙げた5作、そういえば、すべて新宿で見ました。
ちなみに『ゴッドファーザー』は72年に、これは銀座で見ました。
映画の記憶って、見た映画館とけっこう結びついていることに、
今気づきました。
まあ、それはともかく。)
だから邦画を、それもヤクザ映画を見ることはありませんでした。

その後、レンタル・ヴィデオが広まったころに、
借りて見た記憶はおぼろげにあるんですが、
あまり印象に残っていません。
で、
おそろしく遅ればせながら、
まずは最初の2作を見てみました。
『仁義なき戦い』と、『仁義なき戦い 広島死闘篇』です。

https://www.youtube.com/watch?v=wfe4JCFKFTg

https://www.youtube.com/watch?v=F3_7wpLZ_dc

結論から言うなら、
これはおもしろい。
ネット上ですでにそういう指摘がありましたが、
まさに群像劇で、
冒頭の原爆の映像は、
そのドラマの背景を一挙に提示しているようです。
場所と、時代と。
ただし『広島死闘篇』のほうは、
群像劇の要素はやや薄まり、
ある青年の破滅的な行状を、
荒々しく追ってゆくものです。
この映像、


いいですね!
ザラザラした、という形容がぴったりだと感じました。

あと3本、見る予定です!

5刷

2年前にレナさんと作ったテキスト、
Dis-moi tout !
が、めでたく5刷りになりました。
来年度には、
統一教科書として使ってくださる大学もあり、
お役に立てばいいなあと願っています。
(でもこのテキスト、
自分で言うとバカみたいですが、
内容はかなりいいと思っています。
大半はレナさんのアイディアですけど!)

で昨日、
そのお祝い(?)&新しい企画の相談で、
レナさん、わたし、
そしてDis-moi tout ! を担当してくれたチョー優秀な編集者ミドリさんと、
新宿でランチをしました。
久しぶりに集合して、
とても楽しい時間を過ごせました。

でもやっぱり、
会っていろいろ話している中でこそ、
新しい何かは生まれるんだと感じました。
まだ卵でさえありませんが、
いつかは形にしたいと思います。

2017年3月8日水曜日

2017年3月7日火曜日

「ふらんす」4月号、予告

今年度も終わるなあ……
と思っていたら、
もう新年度号の発売予告が!

http://www.hakusuisha.co.jp/news/n18374.html

毎年のことですが、
1年分の音源(CD)がついた4月号は、
とにかく買っておかないと!

そして、じゃんぽ~る西さんとわたしの対談もあります。
じゃんぽ~るさんのお話、
おもしろいですよ!

発売は、22日頃です!

2017年3月5日日曜日

「最愛の子ども」

寡作で知られる松浦理英子の、4年ぶりの新作、

「最愛の子ども」 (「文学界」2月号)

を読んでみました。

17歳の、女子高校生たち。
男女共学なんだけれども、
男女別クラスという学校での、
<妻>である今里真汐、
<夫>である舞原日夏、
<子>である薬井空穂、
の3人を中心とした物語です。
語り手である「わたし(たち)」は、
なんというか、未分化な状態にあるナニカであり、
特定の「個」ではありません。

と書いても、わかりにくいですね。
女子高校生3人が、家族だなんて。
でも、そうなんです。
3人それぞれにとって、
そして「わたしたち」にとっても。

冒頭、この「わたしたち」の内実を形成するらしい人物が次々に登場するところでは、
人物が多くてちょっと不安になりましたが、
そこを過ぎれば、
もう、めくるめく物語の世界に引き込まれます。
多様なセクシャリティー、と言えばそうなんですが、
この小説は、
そうした「枠」からまったく自由。
デリケートで、
同時にそうした自分への視線は厳しくもあり、
エロティックで、
同時に冴えた覚醒もあり、
情愛にあふれ、
それははかなくもあるという、
これは、傑作と呼べると思います。

わたしは雑誌で読んだのですが、
当然やがて本になるでしょう。
そして、
大いに話題になるでしょう。

書評がありました。

http://www.nishinippon.co.jp/feature/literary_trend_story/article/305119

2017年3月4日土曜日

『海燕ジョーの奇跡』

かつて一世を風靡したドラマ、
『ふぞろいの林檎たち』。
そのパート1が始まったのは、1983年、
わたしが修士課程にいる頃でした。
そしてその「林檎」の一人に、
(わたしと同じ歳の)時任三郎がいました。
彼は翌84年、ある映画にも主演しました。
『海燕ジョーの奇跡』
です。
ただその頃わたしは、
日本映画を見る習慣がなかったのでスルーしてしまったのですが、
それを今日、見ることができました。

https://www.youtube.com/watch?v=NXrbcFrutMY

実は、
先日の『沖縄やくざ戦争』に続き、
「なにか離島ものを!」
というわがままな希望に対し、
倉石先生がDVDを貸しくれたのでした。

主人公ジョーは、日比の「ミックス」で、
沖縄でチンピラ稼業。
弟分を殺されて逆上し、
相手側の親分を射殺、
さらには大金も盗んで、
逃避行します。
その旅は、
宮古島~与那国島(=恋人の出身地)~台湾~フィリピン
と続くのですが、
この南へ向かう旅程は、
海のロードムーヴィーという感じで、
ちょっとうっとりします。
(闇の小舟の船頭が三船敏郎だったり。)

やがて、マニラに到着。
そこには、
ジョーを可愛がっていた「組長」の昔馴染み(=原田芳雄)がいて、
彼を頼って行ったわけです。
ただしそもそもそこは、
ジョーにとって(少なくとも半ばは)「おれの国」でもあるわけです。
実際、ずいぶん前に分かれた実父は、
今もマニラにいるはずです。
この父親からのエアメールを、
ジョーは手放すことはありません。
やがてそこに、
恋人の陽子も合流し、
彼の子を妊娠していることを告げます……

マニラの街は、
かなり克明に記録されています。が、
おそらくそれは、
細部が拡大されているのであって、
マニラ全体を映しているわけではないでしょう。
それでもやっぱり、
街中の風景はおもしろいです。

一般的に言って、
ヤクザ映画やギャング映画には、
命を捨てることを「美しい」とする倫理、
家父長的な家族主義の肯定、
新興勢力(≒グローバリスト)への抵抗、
などが見いだされるようです。
ただこうして書いてみると、
これらの要素は、
ヤクザ映画の専売ではないことにすぐ気づきます。
そしてこれらの要素の中には、
なかなかの危険なものも含まれていて、
たとえば、命に対する態度などは、
そのまま戦争へと突っ走る「勇気」に転換されることもあり得るわけです。
ただそれでも、こうした倫理がウケルのは、
わたしたちの中に、
そうしたオリエンテーションが残っているからなのでしょう。
いやそんなものはまったくない、
と言い切れる人は、
むしろ少数派なんじゃないでしょうしょうか。
だって、『ゴッドファーザー』は「おもしろい」と感じてしまいますからね。

……と話しが逸れてしまいましたが、
30数年遅れで見た『海燕ジョーの奇跡』、
なかなかおもしろかったです!

2017年3月3日金曜日

Made in France

以前ここで触れたこの映画、

http://tomo-524.blogspot.jp/2016/07/made-in-france.html

気づかなかったんですが、
日本版が出てたんですね。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9-%E3%83%91%E3%83%AA%E7%88%86%E7%A0%B4%E3%83%86%E3%83%AD%E8%A8%88%E7%94%BB-DVD-%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%87%E3%82%A3/dp/B01HHQJDZW/ref=sr_1_37?s=dvd&ie=UTF8&qid=1488507874&sr=1-37&keywords=%E3%83%91%E3%83%AA

Islam requires it.

こんな記事が。

「ユダヤ人の墓は私たちが守る」
イスラム教徒の退役軍人たちが、シナゴーグの警備を申し出る

http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/01/anti-semitic-threats_n_15102268.html

多くの人が、

Islam requires it.  「イスラムの教えに従わねばなりません」

と言っているのが、とても印象的です。

2017年3月2日木曜日

『あたらしい名前』

ジンバブエ人で、
今はアメリカに住んでいる、
1981年生まれの女性作家、ノヴァイオレット・ブラワヨ。
彼女の

『あたらしい名前』(早川書房)

は、去年の秋ごろ話題になっていましたが、
やっと読むことができました。
これは、おもしろい。

舞台は、前半はジンバブエ、後半はアメリカ。
時代は、2008年から、2011年まで。
これはつまり、
ジンバブエで選挙が行われ、
あのムガベが反対者を弾圧し、
そしてアメリカではオバマが選ばれた年から、
ビン・ラディンが殺害され、
東日本大震災が起こった年まで、
ということになります。
主人公のダーリンは、この間に、
10歳の少女から、思春期に向かいます。

というわけなので、冒頭は、
10歳の少女の一人称なので、
これは子供視点の小説?
と思うのですが、
ヒロインの成長にしたがって、
視点もまた深みを帯びてきます。
ただ、微妙なのは、
この「深み」が大人風のそれではないこと。
つまり、イデオロギー的でも、
政治的でも、達観のようでもない。
そして日常の、リアーナや、マックや、
男の子とのデートの背景に、
大きな現代史が溶岩のように流れているのです。

ちょっと探しただけで、
いい書評が2つもありました。

http://style.nikkei.com/article/DGXKZO06843800T00C16A9MY6001

http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2016092500006.html

2017年3月1日水曜日

天声人語

昨日の天声人語に、
管さんの
『本は読めないものだから心配するな』(左右社)
から、
一節が引用されていました。
それは、以下の文章中の、
ボールドの部分です。

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読書とは、一種の時間の循環装置だともいえるだろう。
それは過去のために現在を投資し、
未来へと関連づけるための行為だ。
過去の痕跡をたどりその秘密をあばき、
見出された謎により変容を強いられた世界の密林に、
新たな未来の道を切り拓いてゆくための行為。
(……)
読書の戦略とはさまざまな異質な過去を、
自分だけでなく無数の人々が体験しその痕跡によってなぞってきた過去を、
どのようにこの加速の機構をつうじてひとつに合流させてゆくかということにほかならない。
そしてこの流れだけが想念に力を与え、
自分だけでなく、「われわれ」の集合体の未来を、
実際にデザインしてゆく。

***************************************

今、管さんはUCLAに滞在中です。

6時間20分

今日は会議の日でした。
朝から 5 コの会議に出て、
その合計時間が6時間20分。
人間、生きているといろいろ起こるわけですが、
大学もまた、いろいろ起きます。

新年度まで、あと1か月!