2008年10月31日金曜日

バッキアーナス・ブラジレイラス


昨日、わたしにとって「世界一美しい歌曲」
( la plus belle oeuvre de chant au monde )は? 
と書きました。
で、つらつらつらつら考えました。
そして、後悔し始めました!

やっぱり、たとえ自分ひとりで決めていいと言っても、
「世界一」となると簡単じゃありませんね。
それでも、今日思い出せる中で選んだのは、
この曲、ヴィラ・ロボスの『ブラジル風バッハ』第5番です。
調べてみたら、you tube にいくつもありました。
(わたしが馴染んでいる人の歌はなかったけれど。)
でもこれで、十分に「美し」さは伝わると思います。
歌は3部構成です。
よろしければ、聞いてみてください。


う~ん、やっぱり素晴らしい曲ですね。
「美しい」です…… 
 
               ◇

そういえば今日はハロウィンでした。
昼休み、ドアを開けたままにして研究室にいると、
フランス映画ゼミの男子学生が2人、
Trick or treat ! と叫びながら入ってきました。
手にはレポートを持って。

仕方ないので、
愛用(?)の柿の種&ピーナッツの小袋を渡すと、
おお、まさかほんとにもらえるとは! 
しかもミョーにジャパニーズ! 
と叫びながら帰ってゆきました。
可愛いですねえ。 

2008年10月30日木曜日

Remember me...


『優雅なハリネズミ』の主役の一人、アパルトマンの管理人ルネが、「世界一美しい歌曲」というのが、パーセルの「ディドの死」です。

これは、『ディドとエネアス』という短いオペラのアリアです。この作品は、ヴェルギリウスの『アエーネアス(=エネアス)』をもとに作られたもので、カルタゴの女王ディドと、トロイアの王子エネアスの悲しい恋の物語です。

イタリア遠征の途上、エネアスはカルタゴに寄港。女王ディドと恋に落ち、結婚します。が、ディドに悪意を抱く魔女たちにだまされ、エネアスは再びイタリアに向かうはめに。2人は別れ、絶望したエネアスは自ら死んでゆきます。


というわけで、「ディドの死」は、2人が別れた後の場面です。歌詞はこうです。

Thy(=your) hand, Belinda(召使の名前), darkness shades me,
On thy bosom let me rest.
More I would, but Death invades me,
Death is now a welcome guest.


When I am laid in earth      わたしが土に横たえられるとき
May my wrongs create      どうかわたしの罪が
No trouble in thy breast.     あなたの心を苦しめませんように。
Remember me, remember me, 憶えていて、わたしを、
But ah ! forget my fate.      けれど、ああ! 
                     わたしの(不幸な)運命は忘れてください。

白黒ですけど、これはどうでしょう。美しきアルト、ジャネット・ベイカーです。(アルト、好きです。)


これは知らない人です。1箇所画像が乱れますけど、声はいいし、聞き取りやすいです。
                                         http://jp.youtube.com/watch?v=HRbFrOP8rgs&feature=related
                                              ……どちらも、切ないですねえ……

さて、あなたにとって「世界一美しい歌曲」はなんでしょう? わたしは…… じゃあそれは、明日までに考えましょう。(みなさんもね!)

@吉野家


今日は授業はなかったのですが、夕方6時から会議があって、それだけ行ってきました。

この会議はいつもわりと長いので、当然オナカがすきます。で今日は、大学近くの吉野家に寄りました。

5月にここで紹介した歌、

牛丼の並と玉子を注文し出てきたからには食わねばなるまい

を思い出さないではなかったのですが、今日は「牛すき鍋定食」(530円・画像)です。実はわたし、これけっこう好きです。

吉野家といっても、駅前ではなく、太い街道沿いの店。広い駐車場にはクルマは1台もありません。5時過ぎなので、あたりはもう真っ暗。

お客さんは、中学生くらいの男の子がひとりだけ。これから塾でも行くんでしょうか。静かに牛丼を食べています。

店員さんは、高校生のバイトらしい、色白の女の子がひとり、そして店長と思われる小柄な中年男性。そして店に流れる音楽は…… ジェニファー・ロペス。(けっこう好きです!)

でもすぐに、お客さんがやってきました。インパルスの堤下に似た若いサラリーマン(牛丼大盛り)、仕事が終わった感じのジャンパーのおじさん(牛丼、トン汁、ポテトサラダ)、ジャージ姿のおじいさん(牛丼並)。わたし以外みんな牛丼です!

これは書いたことがあるかもしれませんが、実はわたし、料理がそこそこできます。料理本は、何冊も使ったし、ネットで調べた料理を作ることもあります。

料理本は、わたしの経験から言うと、完全に書いてある通りに作っても、おいしくない本もあります。でもまあこれは(相対的には)当然で、たとえば親子丼1つにしても、本によって作り方はけっこう違います。肉じゃがも、餃子も、チリソースも。

で、わたしの1押しの料理本は、『ぜひ覚えたいおかず』(NHK出版)です。この本のレシピ、かなり色々やってみましたが、ホントにハズレがありません! 書いてある通りにやれば、おいしいんです。しかも1500円。カラー写真満載。安い!

(『フラ語シリーズ』の値段を決めるとき、実は個人的に意識しました。『ぜひ覚えたいおかず』より、高い値段を付けていいのか……? まあ、だれも比較しないでしょうけれど。)

堤下に似たサラリーマンは、忙しいのか、わたしが半分も食べていないのに、もう席を立ちました。そして中学生も、リュックを背負って出て行きました。

外は真っ暗。そしてわたしも、会議に向かいました。

2008年10月28日火曜日

『神々の山嶺』賛


『神々の山嶺(いただき)』は、夢枕獏作、谷口ジロー画の、なんというか、山岳マンガです。

全5巻で、しかもそれぞれの巻がそこそこ厚いので、読み応えがあります。1巻1000円なので、全巻揃えると安くはないです。が、ここには大事なもの、つまり感動があります。

舞台のほとんどはネパール、つまりエヴェレストのふもとです。そしてたまに、東京も出てきます。でも…… 

わたしは「東京派」なのですが、そんなわたしが見ても、エヴェレストの風景に比べると、どうも東京がせせこましく感じられます。冷たく厳しい山の様子は、もう「気高い」と言ってもいいくらいで、わたしは生まれて初めて、エヴェレストのような高い山に登ってみたいと思いました。(300%無理ですけど。)こんな想いが生まれるには、谷口ジローの絵が、どうしても必要だったと思います。

それにしてもこの作品は、表紙から受けた印象と、ずいぶん違っていました。こんなに緻密に、丁寧に積み上げてあるとは思っていなかったからです。

主人公は山岳カメラマン・深町。そしてもう一人、今は誰も行方を知らない伝説の登山家、羽生丈二。二人がカトマンドゥですれちがってしまったことが、この物語を引き寄せるのです。

重要な小物は、1924年製のカメラ、コダック・スペシャル。「そこに山があるから」で知られるマロニーが、エヴェレスト山頂付近で消息を絶ったとき、彼が持っていたはずのカメラです。

(マロニーの言葉に対して、羽生丈二はこう言います、「ここに俺がいるから」と。)

なんだかうまく紹介できなくてすみません。とにかく、印象に残るセリフも多いし、もちろんそういう絵も多いです。そして特に5巻には、清冽で激しいものが流れています。

素晴らしい作品だと思います。これがフランスで、manga として(Le sommet des dieux)評価が高いのも、嬉しいことです。さあ次は同じ谷口の、「『坊っちゃん』の時代」に突入します!

2008年10月27日月曜日

『優雅なハリネズミ』賛


気が向いたので、もう1つ。<ミュリエル・バルベリ&谷口ジロー>の対談、いよいよ来週の水曜日に迫ってきました。ところでバルベリさんの『優雅なハリネズミ』、これ、感動しました!

これ実は、350ページ以上あり、部分的にかなり抽象的な論議もあったりするのですが、はっきり言って、そこは斜め読みでも大丈夫。とにかく途中でやめないで最後までいけば、イイ場面がたくさん出てきます。陳腐で申し訳ないですが、心が暖かくなるのです。

主な登場人物は3人。まず、本当は教養ある女性なのですが、それをひた隠して生きる家政婦のルネ。でもなぜ隠すのか? 隠し続けることがほんとにいいことなのか……?

2人目はパロマ。この12歳半の天才少女は、今度の誕生日に自殺することにしています。だって、生きてたって、どうせ「金魚鉢」に入るだけだから! と彼女はいいます。彼女にはお金持ちのブルジュア両親と、「最悪の」姉がいます。

3人目が、日本人のオズさん。2人がいる高級アパルトマンに越してきます。そして……

正直言って、このまま難しくなったらまいるなあ、と思う箇所もあるんです。が、信じてください、読み続ければ、イイ場面が待っています。そして、それ以上です……

(あんまり言いたくないのですが…… 抽象的な話の部分は、やや訳が荒い箇所があるようです。原文を見たほうが分かりやすいのですが、原書は高いし……。だからちょっと分かりにくくても、ご自分を責めないように!)

では来週の水曜日、日仏学院で会いしましょう!

そんな恋愛映画


株価が下がってますね。画像を追加

株は、か~なり前、ちょっとやったことがあります。(今はやってません。)というわけで、カラ売り規制が入るのが遅いなあ、とか、もうアナウンス効果期待だけじゃだめじゃないかなあ、なんて、素人なりに思っていたのでした。

株が乱高下すると、必ず「経済評論家」が新聞などで「今後の見通し」を語ります。でもこれ、なかなか当たりません。もうずいぶん前ですが、「新春株価予想」みたいなアンケートに、ある評論家は「10万円」と答えてました。もちろん、東証平均が、です。今日7200円くらいなことを考えると、何の話? と思っちゃいますね。

『ロミュアルドとジュリエット』(画像)というフランス映画があります。なかなかいい映画で、「フランス映画ゼミ」でも見ました。ただこの映画、ある程度株のことが分からないと、ストーリーが見えません。

まずは「インサイダー取引」。これは単純ですね? で大事なのが、TOBです。これは、株の公開買い付けのことですね。映画を見る前に、いつも学生に説明するのですが、学生たちは、お金の流れも、株式そのものもリアルじゃないので、ちょっと時間がかかります。

この『ロミュアルドとジュリエット』では、乳製品会社が舞台になります。そして仕掛けられた食中毒事件が、株価の変動にかかわり、社長交代へと発展する、そんな恋愛映画(!)です。

そうそう、数年前にはドラマ「ハゲタカ」がNHKで放送されました。評判がよかったらしく、何度も再放送してますね。わたしも見ました。面白かったです。(「ハゲタカ」とは、外資系の乗っ取り屋のことです。)

というわけで(?)今日は一日、ロンサール(詩人です)の薔薇の詩ってなんだっけ、とか、そういえばリルケにも薔薇の長い詩があったはず、とか、そんなことを調べているうちに過ぎてしまいました。そしてこれからは、manga タイムです。今は「『坊っちゃん』の時代」を読んでいます。そういえば、同じ谷口ジローの『神々の山嶺(いただき)』、感動しました! 明日は、そのことを書きますね。

2008年10月24日金曜日

スライド・ショー


1時間目の授業は、朝8:50からなのですが、今日だけは8:30から始めました。というのも、『ニキータ』を見せたからです。そしてこの映画は117分なので、早く始めないと終わらないんです! でもまあ一応無事終了しました。

そして夜、今度は明大前の和泉校舎へ。ここに来るのは、この前図書館に来たとき以来2回目。今回は、トヨダヒトシさんのスライド・ショー。楽しみ!

トヨダさんは、「起きていることは、一瞬一瞬すぎてゆくわけだから、プリントして定着させるのは違和感かあるんです」と言うのです。で、作品をスライドで見せることにしたんだそうです。

「スライドは、そこにあるのだけれど、手を伸ばしても触れない。そこが、いい。」

たしかに。で、彼の2作品(それぞれ約90分)を見たのですが……

1枚約5秒で90分。見終わると、なんだか旅から帰ってきた時のような、心地よい疲れが残ります。トヨダさん自身、「映像日記」のようなもの、と言ってらした通り、そこにはゆるやかな物語がいくつか、絡むように寄り添うように映し出されます。見ているわたしたちは、彼の視線の動き、時には凝視する集中力と交感しながら、ある時間を追体験するようです。時間と空間の旅、というと平凡ですが、やはりそういえると思います。

4年間世界を放浪して出家した住職、その山深い禅寺、7年間世界を放浪して、今は警備員の松葉さん、彼のもう1つの顔はキックボクサー(ランキング8位)、ホームレスの人たちの営む養鶏場、そしてトヨダさんの世田谷の実家、ご両親、その朝食、家の前のサクラ、あるいはニューヨーク、9.11、窓辺の子猫、曲がりくねる河……

夜の東京は輝く海のよう。吹き上がる火の粉は祈りのよう。光を孕む湖面は記憶の容れ物……

というわけで、スライド・ショー初体験のわたしには、あっというまの3時間でした!

               ◇

雑誌「ふらんす」11月号に、レナさんの書いた「ふだん着のフランス語」が出てます。読んでみてください!

2008年10月23日木曜日

出会い


昨日のンディアイさんの帰り道のことです。

新宿駅で、ちょうど来ていた電車に乗り、鞄を網棚に載せてふと見ると、なんとほんとに目の前に、ンディアイさんの『みんな友だち』を読んでいる男性が。しかもそのコットンのマフラーは、さっき会場で見かけた気がします。で、ちょっと会の話がしたくなって声をかけてみると……

やはり彼も、会場からの帰り道でした。で話を聞くと、仏文専攻の大学院生で、7月まではリヨンで日本語を教えていたんだそうです。(こんな人なのに、なぜか「まいにちフランス語」を聞いてくれていました。「あの女性講師、オモロイですね~」。)

というわけで話は弾み、フランスでのマンガ人気の話、谷口ジローやメビウス(漫画家)のこと、小津安二郎のこと、彼の専門のクロソウスキーのこと、彼が日本語を教えるときに使っていた『みんなの日本語』(PSじゃないですよ。)のこと、など、色々話せて、楽しかったです。もちろん、彼が話しやすい人だったってことも大きいです。

そうそう、言い忘れてましたが、この前の土曜の朝日新聞の夕刊に、バルベリさんのことが大きく出ていました。「フランス語への愛、日本への恋」というタイトルで。まだ捨ててなかったら、どうぞご確認くださいませ。

で明日は、明治大学の和泉校舎(明大前)で、トヨダヒトシさんのスライドショーです。(詳しくは「3連発」の日を見てください。)わたしも授業は午前だけなので、ぜひ行こうと思ってます!

2008年10月22日水曜日

「特にありません」~マリ・ンディアイ


行ってきました、日仏学院の「マリ・ンディアイ」。とっても魅力的な人でした!

開始は19h.の予定だったので、少し前に到着して、とりあえず日仏の中にある本屋で立ち読み。するとふと隣りに人影がさし、あら、ンディアイさん本人です! チャンス! とりあえず持っていた本にサインしてもらいました。(ミーハーですけどなにか?)

で彼女、話す時じっとこちらの眼を見ます。うなづいたりはしません。でも、自分が話し終えたとき、とてもいい感じで微笑むのです。「惚れてまうやろ~!(wエンジン)」とまでは言わないけれど、とてもチャーミングでした。

で、肝心の話のほうはと言うと…… これは全部は書けないので、思い切って箇条書きにしましょう。

・川端の『雪国』は大好き。それを読んだときは、小説の中で1番(!)好きだった。
・谷崎の『細雪』も何度も読んだ。
・年に1度は必ず読み返す小説、それはフォークナーの『8月の光』。
・いわゆる「クレオール」の問題は、わたしとは関係ない。(グリッサンは尊敬してるけど。)ただ、「フランスの黒人」という問題は、わたしの問題の一つ。
・これは批判じゃないけど、フランスの小説は「知的」。
・「ヌーヴォー・ロマンがフランスの小説をダメにした」みたいな言い方は、まちがってると思う。
・ノーベル賞のル・クレジオ。『調書』は大好き。でもそれ以降のものは、ちょっとピンと来ない。
・プルーストは好き。réalité pragmatique (なんでもない現実)、たとえば眠ること、思い出すこと、田舎の家……みたいなことから、美を引き出すから。
・『源氏物語』大好き。あんな昔に、あそこまで繊細でありえたことが。
・悲しい終わりの話は嫌い、と娘が言うので、子供向けの小説は、ハッピー・エンドにしている。

とまあ、さすが「書くより読むほうが好き」というンディアイさんだけあります! たしかに彼女の短編「少年たち」の終わりなどは、言われてみれば川端的だと思います。つまり、「言わないでおく」感じの書き方です。そうそう、「あなたの作品全体を貫くメッセージは?」という質問に対して、彼女はこう答えました。

「特にありません」
                                               これは気取ってるのでも、謎めかせようというのでもありません。「わたしはわたしの分かるものを書きます、感じ取ってくれるのは読者です」ということのようです。いやあ、国語の試験問題の、「下線部について、筆者は何が言いたいのか」的な次元とは違いますね。

というわけで、なかなか充実した2時間でした!(しかも無料で……)

2008年10月20日月曜日

甘酢タイプ?


知り合いの女性(30歳)の一人に、何を思ったか、急にwebデザインに興味を持ち始めた人がいます。あわよくば、それで少しは稼げたらいいな、家でできるし! ということのようです。まあ確かに、オオ! というデザインも中にはありますね。

彼女の1番のごヒイキは、かの中村勇吾です。忘れもしない今年のエイプリル・フールに、NHKの「プロフェッショナル」に登場していました。

彼の作った数ある作品の中で、これは面白いなあ、と思うのは、amaztype です。


遊び方は簡単。searchword と書かれたところに、なんでも好きな言葉を入れます。例えば、「麻里」 とか、「LENA」とか。そしてあとは start search をクリックするだけです。とりあえず、トライしてみてください、ここで待ってますから。


……ね、面白いでしょ? もちろん最初の画面の MEDIA で music を選ぶと、CD が材料として使われるんですね。アマゾン+タイプ。面白いこと思いつくたし、それを実現しちゃうところがすごいですね。(かの女性は、これをある瞬間キャプチャーして、壁紙にしたりするそうです。)

                 ◇

レイズ、強かったですね。恐れ知らずの若い選手たちが、躍動していました。明々後日からのワールド・シリーズも、目が離せません!(わたしだけ?)

2008年10月19日日曜日

点描


日曜日。今日はほとんど家の中で過ごしましたが、午後3時ごろ、いつのもパン屋におやつを買いに行きました。

動物園帰りの親子連れなどで、小さい店はいっぱい。でも、お目当ての林檎のデニッシュはまだありました。帰ってコーヒー淹れて食べよう!

で店の外に出ると、モノレールと駐車場の向こう、長く伸びる駅のホームを警護するように立つ3本の桜の樹が、まばらに紅葉しているのに気づきました。よく見てみると……

これがほんとうに、うまい具合に「まばら」です。ちょうど点描画のように、紅い葉が点々と葉群れ全体に広がっています。春に、満開の花をつけていた時の姿と重ね合わせると、フシギな気がします。

点描と言えば、まずGeorges Seurat ジョルジュ・スーラを思い出しますが、わたしは岡鹿之助の絵(画像)も好きです。岡の絵は、部屋に飾るのもいいですね。(こんな言い方、画家は喜ばないかもしれませんが。)

みなさん、フランシス・ベーコンという画家、ご存知でしょうか? 岡の絵が端整で静謐なら、ベーコンの絵は歪んで苦しげです。なんだか物凄くゆがんでるなあ、と思うと、タイトルが「自画像」だったりします。若い頃は、ガツンときました。で、こんなベーコンの絵を、トイレに飾っている人がいました。

それはバルベリさんの『優雅なハリネズミ』に出てくる、あるブルジュア家庭です。こういう絵を飾れる神経って…… と読者が思えば、小説技法上の「小物の扱い」として、成功していると言えるのでしょう。

さて今週は、先日書いた3連発が控えています。あしたは、レイズvsレッドソックスの決戦もあるし。また忙しい週になりそうです。みなさん、はりきってまいりましょうね!

2008年10月18日土曜日

Vous êtes du soir ?


まあまあのお天気だった土曜日、いかがお過ごしでしたでしょうか?

土曜日曜は、朝はゆっくりしたいですよね。でもゆっくりしすぎると、あっという間に昼になり、ぼやぼやしてるともう夕方…… というのを避けるためには、やっぱり土日もそこそこの時間には起きないとですね。

ちなみに「ぼくは夜型なんです」は、Je suis du soir. と簡単に言えます。この du は de+le です。でここでの de は、「~に属している」という意味だと考えればいいと思います。(ドラマなんかで、「どなた?」「警察のものです」と言う時も、同じ意味の de を使って、Je suis de la police. (警察に属している。)と言っているようです。)

さて、上の画像、これなんでしょう? そう、目覚まし時計です。フランスの「女子向け」の雑誌のHPで見つけました。(仕事をしていただけなのに、PCがこのページを開いていたんです、勝手に!)商品説明はこんな感じ。

Personnellement, si je ne me lève pas dans les 24 secondes qui suivent le moment où j'éteins mon réveil, c'est foutu, je me rendors. Et je crois que je ne suis pas la seule (si ton seuil est à 38 secondes, je t'inclue dans le groupe quand même).

自分のことでなんだけど、目覚ましを止めてから24秒以内に起きなかったら、ハイおしまい、2度寝に突入しちゃいます。でもこれって、わたしだけじゃないでしょ。(言っとくけど、24秒が38秒になったからって、アタシはちがうなんて言わせませんからね。)

で、この目覚ましは、お分かりですね、パズルをきちんと嵌めないと、鳴り止みません! う~ん、これなら起きる、かな。説明の締めくくりはこうです。

Heureusement que ça reste simple, parce que si c'était un Rumik's cube, le réveil finirait vite explosé contre le mur.

でもまだラッキーだったのは、このパズルが簡単なこと。だってもしこれがルービック・キューブだったら、あっという間に目覚ましは、壁に激突してコナゴナになるのがオチです!

同感です。Et vous ?

2008年10月17日金曜日

照屋勇賢


21世紀も早8年目を迎えました。まあそれ自体にはたいして意味はないかもしれませんが、たしかに区切りはいいですね。

今日のランチは、仕出し弁当(680円)を、総合文化教室の仲間の先生たちと食べました。話題は『ゲド戦記』と、「惑星文学」と「赤ちゃんならまだしも高校生になった娘の写真を年賀状で送るってどうよ」などについて、でした。(むろん最後の話題には、みなしかめっ面で応じました!)

で、さらに話題は例の「共同研究」の話に。そのなかで、「21世紀に入って登場した新世代」のことが問題になり、じゃあ例えば、と言ったところで、写真が専門の倉石先生が、「照屋勇賢知ってる?」と言い出しました。

さて、この照屋の代表作の1つが、今日の画像です。これ、なんだと思いますか?

実はこれ、マックの紙袋、それを部分的に切り絵のように切り抜いて、樹にしてしまったものです。袋を、覗き込んでるんですね。いやあ、これはすごい!

もっと作品が見たいでしょ? それならこちら。


しかも、沖縄出身の彼は、ただキレイなものを作っているわけじゃなく、そこにはさまざまなメッセージも込められています。たとえば、一見沖縄の伝統的な柄に見える着物も、よく見るとそこにはヘリコプターが飛んでいたり、兵士らしき人がいたりするんです。

メッセージを、なんというか、ゴリゴリ押し付けてくるのはうざいけれど、こんな風にさりげなく、「しなやかに」(倉石さん)、作品化できるのは、いいですね。

でみんなで、PCで一通り照屋の作品を見たところで、倉石さんが立ち上がりました。

「じゃあ、ちょっとお先に」
「どっかいくんですか?」
「そう、ニューヨークに、ちょっと」

あら、購買部でも行くのかと思ったら! じゃ、Bon voyage !

2008年10月16日木曜日

Now on sale !


というわけで、先日予告いたしました『ハートにビビッとフランス語』、めでたく発売の日を迎えることができました。大きな本屋さんには並んでいると思います。CDと赤シートがもれなく付いています。よろしければ、活用してくださいませ。

CDというのは、ご存知の通り、素材としては100円程度ですね。ただこういう風に本に付けるとなると、もちろんスタジオ使用、編集、効果音作成、CDデザイン、それに声の出演者のギャラなどもあり、定価で言うと200~300円程高くなるのがフツーです。

ただ今回は、(というか割といつもそうなのですが、)やっぱりなるべくたくさんの人に使って頂きたいので、定価はなるべく安くするようにお願いしました。(レナさんも同じ意見でした。)本体も256ページ(ということは16折りですね。これ、16台という数え方です。)あるので、やや厚いです。でもね、編集長とA子さんが、ちょっと軽い紙を探してきてくれたので、重くはないと思います。もちろん、シャープペンでも書き込みやすい紙です。

また紙の色は真っ白ではなく、少~し黄色が勝ったものにしました。まぶしくないように。

ただページ数の都合で、普段のテキストの見開きのイラストが入れられませんでした。でもなんとか生かしたかったので、思い切って表紙の背景にもってきました。タイトルのフォントなどは、デザイナーさんのオリジナルです。

なんだか、色々書いちゃいましたが、これは宣伝のためじゃなく、こういう話が好きだからなんです。その点では明らかに古い人間で、モノとしての本が好きです。だから当然、本ができる過程も好きです。

ちなみにさっきレナさんからメールがきました。いつも通り元気そうでした。みなさんによろしく! とのことでした。(たしかに伝えましたよ!)

フウルス


今日はいい天気でしたね。久しぶりに洗車もし、すっきりして学校に行きました。

といっても今日は授業はないので、やらなきゃいけないことを粛々と進める予定、だったんですが……

研究室に着くと、なぜか眼に飛び込んできた『辻征夫詩集成』。いつも置いてあるのに、なぜか今日に限って呼んでいるような気がします。しょうがない、ちょっとだけ読んじゃいましょう。(もちろん、逃避ですね!)

でもやっぱり辻征夫はおもしろい。詩を読んでいて、声に出して笑うことがあるっていう詩人は、多くありません。(まあ、泣くほうが多いですね。)だって、春の海に「ヒネモス」が泳いでいたり、カラスの七つの子たちは、どうやら山の「フウルス」というところにいたりするんです!(フウルス? 古巣!)

それから、明治大学の講堂で行われた自作の朗読会のことを書いた詩では、前座として登場したダンサーが全員裸だった! という話が語られます。そしていつの間にか会場も全員全裸になり、自分だけが服を着ていて変だった、というんです!

そんなことあるんでしょうか!? と思ってよく見たら、小さな「*」が付いています。で注を見ると、「この会に関わったすべての人間が、この事実を否認している」(!)

おもしろいです。辻征夫、好きです!

                ◇

このごろ夜は、風呂で manga を読んでいます。そう、谷口ジローさんの manga です。今日は『神々の山嶺(いただき)』の第1巻を読みました。いや~、引き込まれました! 5巻まであるので、1日1冊の予定です。楽しみです!

2008年10月14日火曜日

3連発!!!


東京飯田橋の日仏学院、といえば、レナさんが教えている語学学校ですが、ここでは色んなイベントが開かれます。で来週の水曜・木曜、なかなかお目にかかれないお2人が連続登場という、めったにない事態に!

まず10月22日の水曜日には、マリ・ンディアイという女性作家(画像)。セネガル人の父親を持つ彼女は、フランスではすでに幅広く活躍しています。


今秋、彼女の作品が3点邦訳されるのですが、その内の1点、『ねがいごと』は、知り合いの編集者が担当していて、これが売れないと後が続かないんです! と唾を飛ばしています。まあ、編集者も力の入るいい作品だ、ということなんですね。

それから翌木曜日が、ナンシー・ヒューストン。彼女はカナダ出身で、英語でも書く人です。


こちらの進行係りの1人は、去年までの同僚の国分さんです。

(ほんとにどうでもいいことで恐縮ですが、彼の家が、わたしの仲良しの編集者のアパートと背中合わせだったことが判明したことがありました。今は編集者氏のほうが、deep Tokyo、町屋に越してしまいましたが。)

あと1週間あります。あわてて読んで、急いで参加! というのはいかがでしょう? 記憶に残る夜になるでしょう。(11月5日の、「ミュルエル・バルベリ&谷口ジロー」もお忘れなく!)
                ◇
                                               で終わりかと思いきや、実はその翌日の24日(金曜日)にも、今度は映像関係の面白そうなイベントがあります。
                                               ニューヨークを生活と活動の拠点に、何も跡を残さない"スライドショー"というスタイルにこだわって、映像日記を発表している写真家、トヨダヒトシ。今回は歴史を重ねた急勾配の階段教室が会場となります。場の記憶が濃密に漂うこの空間に、大きなスクリーンを設置し、つながりのある2作品を上映します。
■2008年10月24日 (金)■開場17時30分
■上映18時00分 - 19時30分 /『NAZUNA』 20時00分 - 21時20分 /『spoonfulriver』
入場無料(入れ替え制)(各回とも席に限りがありますので、お早めのご来場をおすすめします)
■会場 明治大学和泉キャンパス第2校舎3番教室(京王線・井の頭線 明大前駅下車 徒歩3分
■上映作品『NAZUNA』(2005 version/90min./silent)9.11.01/うろたえたNY/11年振りの秋の東京を訪れた/日本のアーミッシュの村へ/アフガニスタンへの空爆は続く/ただ、/やがて来た春/長くなる滞在/写真に撮ったこと、撮れなかったこと、撮らなかったこと/東京/秋/雨/見続けることー ある夏の、雨のブルックリンから始まる1年数ヶ月の日々を綴った  長編スライドショー
『spoonfulriver』(2008 version/80min./silent)2005年春先の、ニューヨークの平凡な道から始まる/このありふれた日/いくつかの旅をした/出雲崎/コペンハーゲン/グラーツ/残された言葉/今も/東京/水のように/思いを遂げることと幸せになることは同じではないのかもしれない/集めた光/去ってゆく音/ニューヨーク/ひと匙の河ー 500枚の写真からなる近作映像日記
                                               こうなったら、3連発、ぶちかましましょうか!

2008年10月13日月曜日

フランス語教育学会


Il y a longtemps !(久しぶり!) でもないか。

みなさんはどんな連休だったでしょう。こちらは予定通り、土日は京都の学会に参加してまいりました。(もしもプログラムに興味がおありでしたら、http://wwwsoc.nii.ac.jp/sjdf/Taikai/2008aki_programme.pdf  

です。)

色々参考になる話もありましたが、なんといっても一番印象に残るのは、この学会の情熱というか、熱気というか、そういう雰囲気です。

一般に、大学でフランス語を教えていらっしゃる先生たちの専門は、文学、言語学が大半で、あとは経済とか、歴史とか、なんです。(わたしもまた、一応文学が専門ということになります。)ただそうした中、言語教育学、という分野を専門にしている先生方も、わずかにいらっしゃいます。

言語教育学。読んで字のごとく。言語を教えてるときの方法について、さまざまな角度から研究し、より効果的で、体系的な方法を追求していこうとするわけです。話は、ごく細かな、たとえばこの項目の教え方はどうするか、から始まり、「ヨーロッパ言語共通参照枠」の理念とは、まで広がってゆきます。

彼ら、言語教育学を専門にする先生たちからすると、例えば文学を専門にしている先生たちの「フランス語」の授業は、方法に対する自覚が低いと感じられる場合もあるようです。わたしの周りには、授業に心を砕いてらっしゃる文学専門の先生もたくさんいますが、まあ全員そうかどうかは分かりません。ただ少なくとも、言語教育学の先生たちの意識が高いのは事実だし、大学生にとっては、ありがたい授業になっているだろうなあ、と思います。

会場で、今は北海道大学にいる先生と、10年ぶりくらいに会いました。彼女は、バリバリの言語教育学者です。その昔、彼女との雑談に出てきた、先生のための授業心得第1番、それは、

教室のドアを開けてから教卓に着くまでの間、教員は必ず微笑んでいること。

そうなんです、教育学は、こんなところからスタートしているんです! だから、授業の組み立てや、緩急や、小テストまで、本来はかなり緻密に計算されているものなんでしょう。もちろん、相手(=学生)のあることですから、それをその場で調節しながら。

わたしが参考書などを書くときも、こうした授業での経験を常にフィードバックさせるようには心がけています。ヒントを出したり、横に逸れたり、先回りしたり、意外性を狙ったり…… そう、一応考えてはいるんです、あんなものでも!

               ◇

というわけで、せっかく京都まで行ったのに、なんだか教室にいる時間が長くて、京都らしいことはほとんどしませんでした。唯一、京都の娘・シゲピョンに教わった、創業540年(銀閣寺が500年)という蕎麦屋、尾張屋に寄ってきました。混んでいるのに、あんまり急いでなくて、席もゆったりしてて、好感の持てるお店でした。

それから一つラッキーだったのは、とまったところが西武系だったので、ライオンズ優勝記念メニューというお安いディナーを出していたことです。(え? 小さい? たしかに……)

それにしても、原広司デザインの京都駅、もう10年になるんですね。今回は夜通ったのですが、あんなに暗くしているとは知りませんでした。東京には、あんな暗い駅はないでしょう。(暗い、って、比喩じゃないですよ。ほんとに暗いんです、夜みたいに!)ついつい、あのエレベーターを乗り継いで、11階まで上っていっちゃいました。おかげで、帰りの新幹線がギリになりました!

この京都駅、好きです。だけどやっぱり、安藤忠雄デザインの京都駅も、見たかったなあ……

2008年10月11日土曜日

ノーベル文学賞


みなさんご存知のように、ル・クレジオ(画像)というフランス語で書く作家がノーベル賞をとりましたね。このニュースについては、わたしよりも、mon éminent collègue である管さんのコメントを紹介しましょう。管さんはル・クレジオの翻訳もしています。


さて今日は、1時間目から授業があり、午後はまた波戸岡さんたちと「共同研究」の相談をしたり、という1日でした。

この前波戸岡さんとわたしで作った「導入部分」をメンバーに振ったところ、みなさんそれ以上のものを返してきました。仲間をほめるのもなんですが、やはりさすがです! でもそうなると、今度はもとの路線でわたしが書いた部分が、イマイチ全体との整合性がないものになってしまったのです。で、またもや相談相談、というわけです。

でもまあ、優秀な仲間に恵まれるのは嬉しい&ありがたいものです!

さて、実はこのブログ、始めてから今日まで皆勤なのですが、明日・明後日、初めてお休みを頂かねばなりません。京都外語大学での学会に参加するためです。なんだか天気予報はイマイチなんですが……

というわけで、よろしければ、また月曜に(文字上で)お目にかかりましょう。では、BON WEEKEND !

2008年10月9日木曜日

クラゲと牛乳


ここ数日、ノーベル賞の話題で盛り上がってますね。日本の先生方が獲得されたのは、

le prix Nobel de phisique (物理学賞)
          de chimie (化学賞)

でした。素晴らしいですね。ちなみに「クラゲ」は la méduse 。これ、あの見る人を石に変えてしまうというメデューサです。彼女の髪(は蛇なんですけど)が、クラゲの脚(?)のい似てるから、なんでしょう。

メデゥューサはついには首を刎ねられてしまいますが、その吹き上がった血から、あのペガサスが生まれます。(ペガサスの父親はポセイドンで、その奥さんがアテナで、アテナがメデューサを殺させたわけです。)また、メデューサを殺したペルセウスは、その帰り道、岩につながれたアンドロメダを見つけ、助け出して嫁にすることになります。

フランスでも、le prix Nobel de médecine (医学賞)をとったペアがいます。エイズウイルスを発見した、ということでした。

このエイズウイルス発見の功績については、ずいぶん長いこと、フランスが先か、アメリカが先かで、もめてきました。これでやっと、一応の結論が出た、ということのようです。

フランスの2人は、パストゥール(Pasteur)研究所につながる人たちです。Pasteur といえば……

みんさん牛乳は低音殺菌ですか? もしそうなら、おそらく牛乳パックのどこかに、pasteurized(パスチャライズド)と書かれているはずです。「低音殺菌された」というこの形容詞(過去分詞)は、ご覧の通り、Pasteur(画像) の名前からきています。

じゃあ今日の風呂上りは、パツトゥール研究所に敬意を表して、低音殺菌牛乳で一杯やるとしましょう!

2008年10月8日水曜日

蟹とわたしとコノワタ


わたしの住んでいるところは、かなり急な斜面に建つ2棟で構成されています。で……

やっぱり斜面、というかほとんど山なので、これが雨の後は、一番低いエンロランスあたりは、2、3日水が流れています。で……

今日が初めてというわけではないのですが、その流れの中に、小さな蟹を発見しました!

3年ほど前に引っ越してきて、最初に蟹を見たときは、「飼い蟹」が逃げたのかと思いましたが、どうもそうじゃないみたいなんです。蟹ですよ!

蟹とわたしの出会い(?)は、小学校の頃に遡ります。狭苦しい台所に、母親が立っていました。そしてその手には、蟹が。蟹はこれから起こることを知ってか知らずか、逞しい鋏で虚空を切り裂き続けています。

そして、ザブン。蟹は熱湯の中へ。彼の鋏が、寸胴鍋の内側を引っ掻きます。カリカリ、ゴリゴリ。でもそれも、ほんの短い間だけ。あとに残るのは、炎と、わずかに揺らめる熱湯の音だけ。

いや、小学生には、お湯の表面は見えなかったはずですね。でも覚えているということは、抱っこでもされて覗き込んだか、単に記憶をでっちあげたか。

その時、蟹が可哀想だとか、残酷だとか、思ったかどうか…… よく覚えてません。でも何度となく繰り返されたこの場面は、わたしにとってはやはり原風景の1つといえるのでしょう。

ああ、余計なことを思い出しました。近所にあった仲良しの魚屋さん、小学校から帰る途中のわたしを 呼び止めて、コノワタを啜らせてくれることがありました、まんまのナマコから、チュルチュルっと! 今思うと、ヘンな図ですが、これはうまかった記憶がはっきりあります。ああ、昭和は遠くなりにけり!

2008年10月7日火曜日

共同で


今日は午後の2時間ほどを使って、英語の波戸岡先生とミニ会議をしました。ま、出席者2人、ってことですね。

わたしの属しているのは、理工学部の中の文系の集団、「総合文化教室」というところです。総勢14人で、英語、ドイツ語、中国語、フランス語、写真、そして体育の先生たち、で構成されています。波戸岡先生は、実はその中で最年少ですが、周りからとても頼られています。(わたしも頼っています。)

波戸岡先生は、授業もずいぶん工夫して準備してるし、かと思うと今週末は学会発表だし、11月には中国で開かれる環境文学学会にも出る、いわゆる業務もちゃんとこなす、というわけで、ハチメンロッピの活躍中なんですが、どうもそれでもまだあきたらないらしく、新たな企画を主導しています。

それは、共同研究です。

文系の場合、研究と言うと個人単位が基本ですが、総合文化教室の場合、1つの大きなテーマを決めて、各自の専門分野に関連することを勉強し、それを持ち寄ってぶつければ、うまくいけばあるスパークが起こるんじゃないか、という期待ができます。それをやろうというわけです。

で今日、その大きなテーマ設定などについて、ああでもないこうでもないと、話したのでした。その内容は、まだ発表できるものではないんですが…… でもまあ、(わたし以外は)みんな優秀なので、なにか面白いことができればいいなあと思います。

                ◇

夕食のときに、スーパーで284円で買ったスパークリングワインの小瓶を飲みました。で昔、ある女性が、シャンパンのコルク押さえを使ってイスを作っていたのを思い出し、ちょっと作ってみました。意外にてこずりました。(って、その女性のことじゃないですよ!)

2008年10月6日月曜日

80歳?


今日は午後からちょっと陽も差して、気持ちがいい風が吹いてましたね。わたしも午後2時過ぎから出かけたのですが、ちょっと迷って、でも半袖にしました。

もちろんクルマだってこともありますけど、わたしは基本暑がりなので、かなり遅い時期まで半袖です。特に教室は、若者たちの熱でまだまだ暑いです。ま、そんなことはともかく。

今日は、古本で買った『耕治人全詩集』を読みました。昭和5年から55年までという、ちょうど半世紀をカバーする詩集です。

たとえばこんな詩はどうでしょう?

 
あいびき

省線の駅の出口は
陸橋になっていた
陸橋のふちにコンクリートの手すりがあり
その下を電車が走っていた
手すりにもたれて
丈の低い洋服を着た女が
立っていた
女は手すりの上に本をおき
すぐ目の下の
薄暗い線路を
のぞくようにして
うつむいていた
女は水色の上着をき
茶色のぼてぼてした靴下をはき
その脚はつつましく
不安そうに内側を向いていた

これは昭和22年の発表なので、水色の上着を着た彼女は、今80歳くらいでしょうか。お元気なんでしょうか? あの日の自分が、ある詩集の中でこうして生きていることを、ご存知なんでしょうか?

絵や写真もそうですが、こうして捉えられた時間は、作品の中で結晶してしまうのですね。もしかしたらみなさんも、みなさん自身が気づかないうちに、捉えられているのかもしれません、もしかしたら今日も!

そしてみなさんも、きっとある瞬間を捉えたのでしょう、今日も! さあそれは、どんな一瞬だったのでしょうか? わたしは…… 

まだ新鮮な記憶なので、思い出そうとするとけっこうたくさんの場面を思い出せるものですねえ。しいていえば、今日は…… いや、やめときましょう。(なにそれ?)

2008年10月5日日曜日

お会式


以前もちょっと書きましたが、わたしは大田区池上というところで生まれ、そこで中二まで過ごしました。この池上には、池上本門寺という、由緒正しいお寺があります。どれくらい正しいかというと……

実は本門寺は、療養のために常陸の国に向かう途上の日蓮が立ち寄り、そこでそのまま没した寺です。(なくなる直前に、日蓮本人が、開堂供養をしたらしいです。)それが1282年、10月13日。そう、来週ですね。

で、この日蓮の命日には、「お会式(おえしき)」という法要、というかかなり大規模なお祭りがあります。その人出、約30万人! 

わたしは特に祭り好きというんじゃないのですが、子供の頃は、たしかにお会式は楽しみでした。なんといっても、池上駅から本門寺まで、その参道は屋台で埋め尽くされます。その頃は、これが東京を代表するお祭りの一つだなんて知りませんから、お祭りとはこういうものだ、と思っていました。花咲く木に見立てたような万灯や、纏なども登場していましたが、子供の関心はもっぱら金魚すくいと綿あめでした。

中原中也には、「お会式の夜」という詩があります。出だしはこうです。

十月十二日、池上本門寺、
東京はその夜、電車の終夜運転、
来る年も、来る年も、私はその夜を歩きとほす、
太鼓の音の、絶えないその夜を。

これを書いた頃、中也は洗足池(池上から10分ほど)に住んでいました。まだ『山羊の歌』も出版されていなかった25歳の中也は、どうやら何度目かのお会式のようですね。そうそう、じゃあついでに芭蕉も。

御命講(おめいこう)油のような酒五升

御命講というのは、お会式のことです。酒、飲んでますね!(画像は広重の「お会式」)

こんなお祭りが、一週間後にあります。残念ながらわたしは、フランス語教育学会(@京都外国語大学)に出る予定なので、行かれないんです。みなさん、これはお金もそんなにかからないし、お勧めです。(詳しくは「池上本門寺」HPを。)

ああ、大事なことを忘れてました。池上駅徒歩30秒の浅野屋。ここの葛餅、かなりいけます! 

ああさらに、「池上線」という曲が昔はやりましたが、あの舞台はこの駅です。ただし駅前の果物屋(さんざん買いました)は、もうありませんが。

さ、また一週間、はりきっていきましょう!

2008年10月4日土曜日

Excuse me, he said.


一週間ほど前だったか、ポール・ニューマンの訃報がありました。新聞で紹介された出演作を眺めてみると、やっぱりほとんど見てるんですね。彼を追って見てた訳じゃないのに。それだけ作品に恵まれたってことなんでしょう。

ポール・ニューマン、一度だけ本物とすれちがったことがあります。あれはちょうど『ハスラー2』が公開されたいたころでしたから、今調べたら1986年だそうです。

そのときは旅行中でニューヨークにいて、そこからトロントへ向かうために国内便に乗ったのですが、その搭乗手続きの列の前の方に、なんだかいやにポール・ニューマンに似てる人がいました。一緒にいた学生仲間と、あれポールじゃねえ? などと冗談で言っていたら……

機内に乗り込むと、まずファースト・クラスの席を通り抜けるたのですが、なんと、本物だったんです! しかも、何を思ったかポールは席から立ち、通路を歩いてきます。そしてすれちがいざま、あの緑がかった瞳に微笑をたたえ、ポールは言いました。

Excuse me.

! ポールと話した!(と言えるか?)

わたしたちは舞い上がって、この奇跡をことほぎました……

というまあ、たわいもない話なのですが、もう書いちゃったので消しません!

                ◇

練馬のチカコさんから、渋谷川に関する情報を送っていただきました。わたしの全然知らないことでした。世の中には、アンテナの感度のいい人がいるんですねえ。Merci encore !

そういえばNHK出版のA子さんからも、エデュケーショナルのユキちゃん(アヤちゃんの後輩です。)からも、番組が終わってハガキがたくさん届いている、とのお知らせをいただきました。今度会うときに渡してくださるそうです。送ってくださったかた、je vous remercie d'avance ! (先に merci を言っておきます!)

2008年10月3日金曜日

落書きみたいな


今日は出席者の多い会議があったのですが、見るともなく見ていると、やっぱりネクタイ姿の先生も半数くらいいらっしゃいます。が、残りの半数はノー・ネクタイだし、中には襟がない服、つまりTシャツ系の方もちらほらまじっています。

ただしそれは、機械工学科とか応用化学科とか、いわゆる理系の先生のお話。理系に浮かぶ文系小島、わが総合文化教室の場合、ネクタイ着用は14名中2名。(最年長と最年少の先生。)中には緑のジャージの先生もいます。 Qui ça ? C'est monsieur Suga, bien sûr !

管さんと言えば思い出すのが、もう数年前のこと、ある春の打ち合わせのとき管さんが履いていた黄色いスニーカーが妙に気に入り、似たような(といってもパイソン柄でしたが)スニーカーを買ったことがあります。それはアディダスのロッドレイバーでした。(ちなみにそれが履きやすかったので、色違いのモノトーンのも買っちゃいました。(←喜びすぎ) 今ではその2足は、雨の日には水が漏れ入ってくるまでと、なり果てました。

いったいなんでこんなことを書いてるの? と自分の胸に聞いてみると、それはこの前街で見かけた、new balance の、黄色い地に落書きみたいな模様のあるスニーカーが気になってるからです! 今も売っているのかどうか、それさえ分からないんですけど。こうなったら、明日探しにいこうかなあ。(でもなあ、机を取り囲んで、読むべき本が要塞みたいに積みあがってるしなあ……)
Bon weekend !

2008年10月2日木曜日

バタフライガーデン


先日若き友人大洞君と話していて、東京の西郊にある多摩動物園の話になりました。彼が小学生だった頃、毎週水曜日に「タマドウ」に行ったというのです。(ちなみに今は水曜はお休みです。)

彼のお目当ては昆虫館。それはいわばガラスの半球で、中は1年中暖かく、木々の間を蝶が飛び、草むらをバッタが跳ねている、そういう空間です。

それならわたしも知ってます。人工的に集約された自然が、楽しげな音楽を奏でている感じ。

でひとつ思い出したのは、ずいぶん昔に読んだ日高敏隆の短いエッセイ「バタフライガーデン」です。今タマドウにある昆虫館の前身、まだ開園(ちょうど50年前)して間もなかった頃、彼もその完成に努力したというバタフライガーデン。その苦労が具体的に書いてありあます。

天井が高すぎては、蝶は舞い上がりすぎてガラスにぶつかり、やがては力尽きてしまう。温室が暑過ぎてもだめ。また卵も、自然に任せておいては寄生バチにやられてしまう。うまいタイミングで休眠サナギの目を覚まさないと、いつでもいる状態が作れない……

なんと、こうした問題すべてがクリアーされて、今の昆虫館に行き着くんですね。素晴らしい!

秋の1日、タマドウにお越しの節は、どうぞ昆虫館にも寄ってください。(入場料は大人600円。)ライオンバスもあります。オランウータンも、コアラも、美しいユキヒョウもいます。

2008年10月1日水曜日

『優雅なハリネズミ』


ああ、1日ってほんとにすぐ終わっちゃうなあ、と思う日って、ありますよね。今日はなんだかそんな日でした。

ほんとに、ちょっと読んで、ちょっと書いて、ちょっとメールの返信したら、もう10時半!(いや、今日はメールだけはちょっとじゃなかったかも。)

さて、今日は楽しみなお知らせがあります。来る11月5日(水)の夜、飯田橋の日仏会館で、フランスの若きベストセラー女性作家、ミュリエル・バルベリさん(画像)と、漫画家の谷口ジローさんによるトーク・イベントがあります。(日仏のHPには、まだアップされていないようです。)

これは、バルベリさんの新作、『優雅なハリネズミ』の出版を記念したイベントです。実はこの本、フランスでは爆発的なベストセラーで、いくつもの言語に翻訳されてもいます。日本では早川書房から、たしか来週発売されます。その内容は……

アートに造詣の深いアパルトマンの管理人、自殺志願の少女、そして紳士な日本人オヅさんを軸に、人生、恋、生と死の有り様に哲学的、感動的に迫る、京都在住女性著者の世界的ベストセラー小説。

だそうです。お勧めなのは、この『優雅なハリネズミ』と、前作の『至福の味』を読み、するときっとなにか著者に訊いてみたくなりますから、その質問をしに日仏に出かける、というパターンです。そしてもちろん谷口さんの mangas も読んでおけば、1粒で2度おいしいです! いいですねえ、いろんなお楽しみがあって!(当日、わたしも進行役として、ちょっとだけお手伝いする予定です。)

なんとまあ、「藝術の秋」にふさわしいんでしょう!