2022年6月28日火曜日

父性の不在

今日のランチ、
同僚たちと近所の(おいしい)そば屋に行ったのですが、
なんと臨時休業。
ショックを堪えつつ、
斜め向かいのチェーンのラーメン店に向かい、
そこで冷やし中華を食べました。
まあ、同僚と一緒だと、
無駄話がとてもおもしろいので、
ランチのレベルが下がってしまったことも、
すぐに忘れてしまいます。

で、
食事を終えて店を出ると、
暑い……
この肌に直接来る感触は、
まぎれもなく「8月」のものです、
6月なんですが!

今日の映画のゼミでは、
先週見た『奇跡の教室』の解説をしました。
この映画、
まあ宣伝文句的には、
「落ちこぼれクラスがコンクールで優勝!?」
くらいでしょうが、
学生たちのレポートの多くは、
多民族的な生徒たちが、
最初は対立していたけれど、
コンクールのための作業を通して、
自然に共生していくようになる、
というもので、
もちろんそれはそうなんです。
が……

この10年、たった一度だけ、
この映画の特徴は「父性の不在」だ、
と書かれたレポートがありました。
これは、今M2の、
わたしの研究室にいる学生が、
去年書いてきたものです。
これは、別のでゼミで教えていた文脈から導かれたことなんですが、
このレポートを見たときには、
学生が成長している手応えがあって、
嬉しかったです。
まあそれはともかく、
『奇跡の教室』のヒロインであるゲゲン先生は、
その母親の死は語られるんですが、
父親にはまったく触れられません。
また彼女をサポートするのも中年女性で、
その女性にも「男の影」がありません。
生徒たちも、母と子、が2組描写されますが、
やはり父親はまったくの不在なのです。
これはなにか。
ゲゲン先生が「マリアンヌ」(「自由、平等、友愛」の擬人化)
だとしたら、
彼女は、もう恋人を持つ気がないようなのです。
そして恋人が「政治的選択」を表わすとすれば、
現状、選ぶべき選択肢はないことになります。
つまりこのマリアンヌはシングルで、
多くの子どもたち(生徒たち)を育てる母親なのです。
なんとマリアンヌは、シングル・マザーで、
現状を諦め、未来に託す決心をしているように見えるのです。
一見「父親」に見える校長は、
未来=多民族的な生徒たち、を育てる気はなく、
ゲゲン先生や生徒たちにしてみれば、
彼はいわば見捨てられた父親であり、
実質、不在も同然なのです……

『奇跡の教室』は、
一見「文科省推薦」的ですが、
実は、恐ろしいメッセージを含んでいると思います。

2022年6月25日土曜日

『クライ・マッチョ』

というわけで、
今年の春に公開されたイーストウッドの新作、

『クライ・マッチョ』

を見てみました。
この映画、時間をかけて考えれば、
いろいろ言うことが出てきそうですが……


舞台は1980年、
老齢の男マイクが、仕事も妻子も失い、
一人で暮らしています。
そこに、以前マイクを助け、
(自暴自棄になっていたマイクに仕事を振り、
人生を取り戻させた)
彼から見れば恩のあるハワードが訪れてきます。
ハワードには頼み事がありました。
もう5年以上会っていない息子がメキシコにいて、
母親に虐待されている、
行って連れてきてくれ……。
マイクには断ることができません。
旅費を受け取り、メキシコに向かいます。
で、
行ってみると、
ハワードの元妻は豪邸に住んでいて、
一方息子は、ストリートでその日暮らし。
不思議な状況ですが、とにかく、
この息子を連れ帰ることにします。が……

まずタイトルの「クライ・マッチョ」ですが、
「マッチョ」が主格補語なら、
「マッチョとして泣け」
くらいでしょうか。
で、劇中にはたしかに「マッチョ」が出てくるのですが、
それは、ハワードの息子ラフォが飼っている闘鶏の名前です。
もちろんラフォ自身も、マッチョでありたいと願っています。
ただ、老人であるマイクは言うのです、
マッチョの時代は終わった、
嫌がられるだけだ、と。

<以下、ネタバレします>

ラフォの母親が送った遣いの者たちとマイクの間で、
さまざまな小競り合いがあるのですが、
最後、マイクはラフォを国境まで連れて行くことに成功します。
そして別れ際、
ラフォは闘鶏マッチョをマイクに託すのです。
マイクは、可愛がるよ、と言うと、
その闘鶏を連れて、
メキシコの寂れた街の、
やさしくしてくれた女性の元を目指します。
つまり、アメリカには戻らないのです……
これが意味するのは何か。
もちろん、
もうアメリカにはマッチョの居場所はない、
ということでしょう。
そしてまた、
マッチョは嫌われると言いながらも、
マイク自身、マッチョであることを捨てきることはできていないのです。
おれはもうすぐこの世から退場する、
だから、おまえたちの言うことは分かったし、
迷惑はかけないから、
おれのことはおれの勝手にさせてくれ……
と言っているように見えるのです。

1つのヒネリは、
マッチョと名付けられているのが、
いくら闘鶏であるとはいっても、
やはりチキン(弱虫)だということです。
これは、マッチョの仮面を付けているけどチキンなのか、
チキンだけどマッチョなのか、
あるいはその両方なのか、
微妙なところです。
(まあ本質的には、マッチョはチキンなのだと思いますが。
少なくとも、
そういう仮面を被らなければならない程度には。
そう言えば、白井聡さんは、
性的不能者が、その不能性を補うために、政治的マッチョになる、
と指摘していました。
関係ありそうですねえ。)

そしてストーリーについて言うと、
これは大きな無理が1つあります。
例のメキシコ人女性が、
なぜかマイクに惚れてしまうようなのです。
あり得ない展開です。
冷たいようですが、
イーストウッドの自己憐憫にしか見えません。
ファンは大目に見るのでしょうが、
作品にとっては、傷になっていると感じました。
またラストについても、
メキシコを遅れた空間にしてしまっているようでもあります。
いろいろ問題はあるようですが、
院生たちと討論するにはいい素材かもしれません。

2022年6月24日金曜日

『駅馬車』から『クライ・マッチョ』へ

今週の大学院ゼミでは、

『駅馬車』(1939)

を見ました。


たしか、わたしの記憶では、
淀川長治さんが、「一番好きな映画」と言っていたはずで、
一台の駅馬車に乗り合わせた人たちの人生模様、
を描くロード・ムーヴィーだと言えそうなんですが、
アクションあり、
人情あり、
社会の階層性あり、
生と死あり、で、
よくできた映画なのは間違いないと思います。
ただし、
主役のジョン・ウエインが背負っているのは、
これはまちがいなくマチズモであり、
それがなんの疑いもなく肯定されているのは、
時代と言うべきなのでしょう。
女性は、
彼の恋人にして元娼婦であるダラスと、
アメリカ兵を夫に持つ臨月のルーシーが登場するんですが、
いずれも「銃後」の立場で、
マチズモを心配しながら見守るばかり、という感じです。
これも時代でしょう。
1つ興味深いのは、
このルーシーが生み、
しばらくはダラスが面倒見る赤ちゃんです。
この女の子は、なんの象徴になっているのでしょう?
未来のアメリカ?
それとも、
今後も続くぶ厚い「銃後」?
一方、
このルーシーと感情的なやりとりを行なうワルモノは、
同じ駅馬車に乗り込んできたものの、
アパッチの襲撃を受けたときに、
ただ彼一人、殺されるのです。
悪は処罰される、
あるいは、米兵の妻に横恋慕するヤツは処罰される、
でしょうか?

そして……

もう今ではマイナスの価値でしかないこのマチズモが、
タイトルの中に入りこんでいる映画が今年公開された、
と院生が言うので、それも見てみることにしました。
『クライ・マッチョ』です。

(続く)

Adieu 小田嶋隆さん

このところ、
入退院を繰り返されていて、
twitter も途切れがちだったので、
ずっと気に掛かっていましたが、
ついさっきの報道で、
亡くなられたことを知りました。
残念です。

彼の本も何冊かは読みましたが、
なんといっても、
ラジオデイズにおける平川克美さんとの毎月の対談、
ず~~っと楽しみに聴いてきました。
口の悪さは天下一品で、
敵を作ることなどなんとも思っていない、
「エライ人たち」が隠したがる魂胆をこれでもかと開いて見せ、
とめどない冷笑を浴びせる。
マッチョが嫌いで、
ヤクザが嫌いで、
集団主義が嫌いで、
サムライが「大っ嫌いですよ、あんなもん」。
あんなに嫌いなモノが多くて、口が悪いのに、
ファンが多かったのは、
やはり誠実さがあったからでしょう。
もともとはアウトサイダーだったのに、
中心がどんどん右に行ってしまったために、
いつのまにか自分たちが「まっとう」な立場になってしまって、
とまどっている……
そう、彼は言っていました。

かれの毒舌が聞けないのは、
やっぱり、残念です。
ご冥福をお祈りします。

2022年6月20日月曜日

「砂漠の英雄と百年の悲劇」

たった今、NHKの「映像の世紀」を見終わりました。
今回は、

「砂漠の英雄と百年の悲劇」

つまり、あの「アラビアのロレンス」の裏切りから、
『オマールの壁』で「主役」を演じた分離壁までの100年です。
知識としては知っていることでも、
当時の映像を見せられると、
まるで初めて出会うような、
ちょっと大げさに言えば「戦慄」がありました。

これ、いつか授業でも使いたいです。
(1週間、NHK+ で見られるようです。)


ジョバンニ・ザンボーニ

ジョバンニ・ザンボーニ、
1670頃~1720頃 といいますから、
バッハより一回りくらい年上の、
ローマ生まれの作曲家です。


仕事中にかけている音楽は、
70%くらいバッハですが、
リュートは(わたしにとっては)とても仕事向きなので、
バロックのリュートはいろいろ聞きます。
その中で出会ったのが、上に上げたものです。
これ、好きです。


2022年6月19日日曜日

『ベイビー・フィーバー』

ネトフリの新作ドラマ、

『ベイビー・フィーバー』(2022)

を見てみました。


主人公ナナは、不妊治療が専門の医師。
37歳で独身。
付き合い始めた年下の技師はいますが、
彼のことが好き、とまではいきません。
そんな折り、新しい機械が導入され、
試しに彼女が被験者になって使ってみると、
妊娠できるのはあと半年だと判明。
焦ったナナは、
酔った勢いで、
となりの精子バンクから元彼の精子を盗み、
それを使って自分を妊娠させようと試みます。
が、ここからが大変。
泥棒が入ったと大騒ぎになり、
戸締まりの責任者だった親友(移民系のシングル・マザー)は
解雇の縁に立たされ、
それでもナナは口を噤んだままで……

見始めてすぐ思ったのは、
いい題材を見つけたな、
ということです。
この設定なら、
おもしろく(interesting)なるのはほぼ確実だと思えました。
つまり、どうやっても、
そこに現代社会の縮図があらわれそうだからです。

ただし、ナナはかなりジコチューな人間です。
悪人ではないので、見続けられますが。

素晴らしい、とまでは言えませんが、
わたしはおもしろかったです!

2022年6月17日金曜日

『モロッコ、彼女たちの朝』

モロッコ映画、

『モロッコ、彼女たちの朝』(2019)

を見てみました。
原題は Adam。人の名前です。
静かな、いい映画でした。


舞台はカサブランカ。
(と言っても、ボギーやバーグマンのそれとはまったく違います。
当たり前ですが。)
小さなパンやを営むアブラ。
彼女には小さな娘と二人で暮らしています。
(漁師だった夫は、
「30分したら戻る」
と言って出ていったきり、
海の犠牲となってしまったのでした。)
そこに、身重の若い女性が、
大きな荷物を背負い、
「何か仕事を」
と言ってきたのです。
最初は断ったアブラでしたが、
子を持つ女性として、
その若い女性を放っておくことができません。
(吉野弘の「夕焼け」を思い出します。
やさしい人こそ、苦労を背負い込むのです。)
そして、数日という約束で居候することになったその女性は、サミア。
ただ、この映画のおもしろさはここからです。
あまり詳しく言うのも憚られますが、
このアブラサミアは、
それぞれに、
自分に禁じているものがあることが分かってきます。
明敏なサミアは、
そんなアブラに気づき、
彼女の心にかかっていた鍵を壊そうとします。
アブラが自らに禁じていたのは、
まさに、生きる喜びそのものでした。
そしてサミアは、何を禁じていたのかというと……

アブラを演じるのは、ルブナ・アザバル。
彼女は有名女優ですから、
出演作はとても多いですが、
たとえば;




でも今回の作品は、彼女の代表作になる気がします。

また、マリアム・トゥザニ監督ですが、
彼女は、この映画のシナリオを担当していました;


これもいい映画でした。

2022年6月15日水曜日

内定お祝い

今日は、大学院のゼミを終えてから、
そのまま院生たちと、
内定を取ったTくんのお祝いの会をしました。
就職って、やっぱり人生の一大事だから、
そのへんの居酒屋で、
というわけにはいきません。
ちょっと足を伸ばして、
なじみのビストロまで行きました。

そこで約3時間。
おいしいフレンチを食べながら、
もうず~~っと映画の話。
過去の、現在の、そして未来の作品について、
いくらでも話は出てきます。
話題になってなくても、
去年から一緒に見たたくさんの映画があり、
それがあることが、
話している間の安心感のようなものを生んでいる気がします。

Tくんが就職するのは、映画会社です。
これだけ情熱と分析力のある彼をとらなくてどうする!
と思ってはいましたが、
ほんとに採用になって、よかった……
今後は、
公開された映画の最後のクレジットに、
とっても小さい字で、
彼の名前が登場するのを、
楽しみに待ちたいと思います。
(いや、でもその前に、
修士論文も書いてもらわないとですが!)

2022年6月13日月曜日

Interview07: 北島敬三(兼任講師、写真家)

総合芸術系、新しいヴィデオを投入しました!
日本を代表する写真家の一人、
北島敬三先生も、
総合芸術系の授業を担当してくださっています!



2022年6月11日土曜日

『完璧な母親』

ネトフリのミニ・シリーズ、

『完璧な母親』(Une mère parfaite・2021)

が配信されので、見てみました。
舞台はパリとベルリン、
言語のほとんどはフランス語です。


主人公はエレーヌ。
彼女は、母親の支配から逃れるため、
若い頃にベルリンに移り、
今はそこで、医師の夫と、高校生の息子と暮らしています。
そしてこの夫婦には、20歳になる娘アニヤもいるのですが、
彼女は今、パリの大学に通っています。
いや、そういう風に、両親は思っていたのです。
そして、そのアニヤが、パリで殺人事件に巻き込まれたという連絡を受け、
エレーヌは急遽パリに向かいます。
実はアニヤにも、ベルリンを離れる理由があったのですが、
エレーヌはその事情を知りませんでした……

4話だけのミニ・シリーズで、
緊迫感はずっと持続します。
重い話ながら、エレーヌはキレイだし、
パリにいる彼女の EX. 
(トメル・シスレー。アラブ系ユダヤ人だそうです。)
も、なかなかカッコイイおじさんで、
二人の関係の変化が、
映画の雰囲気のバランスをうまく取っている感じ。
ただ、
この作品をドライブしているのは、
明らかにアニヤです。
彼女は、いわゆる
「信用できない語り手」で、
他の人物たちも、観客も、
彼女に振り回されます。
「信用できない語り手」が物語の中心にいると、
こんな感じでものがたりは歪むのねえ、という印象。
これは決してダメ出しをしてるんじゃなくて、
素直な感想です。

また、物語の構成としても、
通常ならあるはずの結末が省略されていて、
これも、そこまでの流れと見合っていると感じました。
なかなか考えられてドラマでした。

2022年6月10日金曜日

いい日

今日は、いい日でした。
1ヶ月ぶりにテニスできたし、
大谷は投げて打って大活躍だし、
(わたしが推薦文を書いた)同僚の一人が教育貢献賞を授与されるし、
研究室の院生は第一希望の内定を取ってくるし、
友人から手紙は来るし、
夜は(誕生日会があって)ビストロでおいしかったし、
もう、ほとんどサイコーでした!
(あとは、2アウト満塁で、
牧が1本打ってくれていたら……)

そういえば、
アイナメのポワレ、白ワインとウニのソース
の上に、
細くて長い、
穂先だけがぷっくり膨らんだ野菜がのっていました。


「フランス産の、アスペルジュ・ソヴァージュと言いまして……」
アスペルジュ・ソヴァージュ!
たしかにすこし野生を感じさせる味、と思いましたが、
それは、ソヴァージュ、と聞いてから食べたせいでしょう!

(ただ、今簡単に検索したところ、
今日食べたのは asperge sauvage ではなく、
asperge des bois のようだと判明しました。
勉強になります!)

それ以外はこんな感じ。
まあ、はっきり言って、かなりおいしかったです!






2022年6月9日木曜日

『脱出』

大学院のゼミでは、
先週、『カサブランカ』を見ました。
で、今週は、
この『カサブランカ』を思いっきり意識した作品、

『脱出』(1944)

を見てみました。
ハワード・ホークス監督で、
原作はヘミングウェイ。


時代は1940年、フランスがナチに占領されたばかりの頃です。
場所はマルチニック。
そこで、小型船の船長を務めるハリー(ボガード)が暮らしています。
そして彼の行きつけの酒場兼宿屋に、
訳ありの女性(ローレン・バコール)、
レジスタンスの闘士(フランス人)、
ヴィシー政権の手先、
等が入り乱れ、
ハリーはあやうい選択を次々に迫られて……

ざっと見ても、
『カサブランカ』の換骨奪胎は明らかで、
これはもちろん、わざとやっているわけです。
でも!
なんというか、タッチというか、テクスチャーというか、
それは2作で随分違います。
かたやロマンチックな「物語」、
かたやつむじ風も走る都会的な洒脱/緊張、
とでも言えばいいんでしょうか。
その差がはっきり出ているのが、二人のヒロイン、
バーグマンとローレン・バコールの雰囲気の違いでしょう。
これがデビュー作であるローレン・バコールは、
とても魅力的に描かれています、
これは院生たちとも話したんですが、
ローレン・バコールは、
「守ってほしがる女性」
とはほど遠いのです。
スクリューボール・コメディが得意なホークスにとって、
女性は、
いわば対等な、キャッチボールの相手なのでしょう。

新企画

わたしにとっては、
かなりやりがいのある新企画が、
ある出版社から寄せられました。
ありがたいことです。
もちろん、ぜひやらせてください! とお願いしました。
ただ、まだまさに企画段階で、
これを実現するためには、
いくつか会議を通過させる必要があるようです。

会議を通過した暁には、
この夏を、この企画に捧げる覚悟です!

テニスへ!

目の出血、
各方面から温かい言葉を頂き、
ありがとうございました!
おかげさまで、本日眼科を再診し、
無事、テニス解禁となりました。
(ただ、やっぱり原因は不明なので、
今後の生活に気をつけると言っても、
「特にない」(the doctor said) のでした。
まあ、大丈夫でしょう!
原因不明のことなんてたくさんあるし!)

というわけで、明日は1ヶ月ぶりのテニスです。
ちゃんと振れるか心配。

2022年6月7日火曜日

『アフリカへ行こう』

先日の「特別授業@上智大学」に参加してくださった方から、
大学へ、感想のお葉書を頂きました。
ありがとうございました!

で、
四ッ谷でお話ししたときに名前を出した本、
確認のためにもう一度書いておきます。

『世界中のアフリカへ行こう ー「旅する文化」のガイドブック』

です。
これ、2009年の刊行なので、
もう10年以上経ったんですね。
もちろん、アフリカに関する本はその後も出ていますし、
重要なものも当然あるわけですが、
この本が示している「世界中のアフリカ」という視点は、
今も新鮮に感じます。
アマゾンで見ると、もう絶版のようですが、
古本は安く買えるようです。
よろしければ!

No No !!

今永投手、
素晴らしいNo No 達成!!
おめでとうございます!



2022年6月5日日曜日

「サントリーがある」

 ウケル!

https://twitter.com/NTUY_uncle_bot/status/1532560953476542467

France

007 での印象が、
正直なところそんなによくなかったレア・セドゥ。
(『アデル、熱い色』や、『ダブル・サスペクツ』はよかったけれど。)
彼女が、007 の直前に主演した映画、

France (2021)

を見てみました。
レア・セドゥ演じるヒロインの名前が France de Meurs で、
この映画は彼女の肖像なのでしょうが、
当然、「フランス」の肖像でもあるはず、
と思って見始めました。


フランスは、超人気ジャーナリストで、
作家の夫と小学生の息子がいます。
彼女が一歩外に出れば、
スマホを片手に
Je peux ?
と写真をせがむ人が後を絶ちません。
フランスには、フランスを知らない人はいないようなのです。
ただ彼女のジャーナリストとしての姿勢は、
褒められたものではありません。
真摯さがなく、演出過剰で、
なにより彼女の自己愛が満たされることが重要なのです。
そして、それに気づいた政治家などからは、
オレたちは同じ穴の狢だ、と指摘されたりもします。
であるとき彼女は、よそ見運転をしていて、
配達のバイクをはねてしまいます。
(渋滞中で、スピードは多分10kmも出てませんでしたが。)
轢かれたバイクの青年は、
移民系の貧しい両親とパリ郊外で暮らしており、
それを見たフランスは心を動かされます。
そして、テレビを辞めると言い出すのです……

2時間以上ある映画で、
見ていて「長い」と感じました。
話の展開はどこか気まぐれで、
深まりません。
審美的な映像を多用し、
それはたしかに「美しい」んですが、
この映画に必要なのかどうかは分かりません。
そしてもし、これが「フランス」の肖像でもあるなら、
それは、感情的で、自己中心的で、華やかさが好きで、
偽善的なのに傷つきやすく、甘ったれた何ものか、
ということになるでしょうか。

現実のメディアの評を眺めると、
毀誉褒貶なのが興味深いです。
カイエ・デュ・シネマやル・モンドは5/5なのに、
オプセルバトゥールも、
(右寄りの)ル・フィガロも1/5です。
わたしは、カイエ
(監督はカイエと近い立場のようです。)
とはたいてい違う意見になりますが、
ル・モンドとは近いことが多いので、
ちょっと意外でした。
(もちろんル・モンドと言っても、
複数の担当者がいるのでしょうが。)

日本で公開されても、
それなりに興行成績は上がる気もします。
レア・セドゥだし、
彼女が次々に着る服はとってもおしゃれだし、
日本ではその辺をウリにするのでしょうから。

メディア関係の女性の物語、ということなら、
こちらのほうがずっとおもしろかったです。

2022年6月3日金曜日

Téma !

先週の「特別授業@上智大学」、
短いですけど動画を送ってもらったので、
ご紹介しておきますね。

Téma la ficelle ! (「紐(=Tバック)を見ろよ!」)

の説明のところです。


たった1週間前なのに、
もう懐かしい感じがするのはなぜ?

『トップガン マーヴェリック』

トム・クルーズの出世作と言えば、『トップガン』。
その新作が、
トム・クルーズ自身のプロデュースで帰ってきました。

『トップガン マーヴェリック』

実はこの映画、
見に行くつもりはなかったんです。が、
シネフィルである院生の一人が、
「今年見た中で一番おもしろい、
2日続けて見た。
意味とかメッセージとかいっさいない!」
というので、
まあ、彼が「一番」というなら、
というわけで、見に行ってきました。


130分、時間も物語もスムーズに流れ、
構成も時間配分も計算されていて、
職人技を感じさせられました。
で、実際、見ている間、おもしろいのです。
映像体験というか、視覚体験というか、
そういう、いわば原初的な「体験」として、
映画館で見るのにふさわしいと言えるのでしょう。

ただ、「意味」については、
「いっさいない」わけではなくて、
(彼がそう言ったのは、
この映画の命は視覚体験にある、
と言いたかったのでしょう。)
まあ、それなりの形はあります。
ただまあ、たしかにそれは「重要」じゃないかも。
この映画は「ヒーローもの」的作りなので、
そもそも「意味(の深化/発見)」は、
メインではないのでしょう。

キャスティングも、
いい意味でベタで、
ルックスの印象とキャラの一致具合がすごいです。
(エド・ハリスだけは、さすがに歳取ったなあ、
と思ってしまいましたが。)

スッキリした熟達のヒーローものを見るという意味では、
なかなかの作品だと思います。
やっぱり、見るなら映画館、かな。

2022年6月1日水曜日

『007 No time to die』

を見てみたんですが、
Mmm...
あまりおもしろくありませんでした。
リズムがユルイし、
ダニエル・クレイグがおじいさんで、
とてもレア・セドゥが彼に惚れるなんて思えないし、
ましてや、
彼の子どもを産んで知らせもせず育てているなんて、
ありえない。
古めかしくも「男性」的な幻想ですね。

007の時代は、
やはり終わっていると感じました。

『カサブランカ』

大学院ゼミ、
今日は「名作」の誉れ高い

『カサブランカ』(1942)

です。
監督は、前回の
『汚れた顔の天使』と同じく、
マイケル・カーチスです。
わたしは数十年振り。
院生たちも久々だったり初めてだったり。


舞台はモロッコのカサブランカ。
WWⅡの真っ最中で、
フランスは、ドイツの傀儡ヴィシー政権の下にあります。
いきなりラストの話で恐縮ですが、
地元の警察署長が、
Vichy Water 
と書かれた瓶をゴミ箱に投げ入れ、
さらにそのゴミ箱を蹴っ飛ばす、
というシーンがあります。
むしろ実利主義者に見えるこの公務員でさえ、
周りに人がいなければ、
ヴィシー政権に対してこんな態度だよ、
ということなんでしょう。
とても分かりやすいです。
が、
その分、「ロマン」チックでもありますが。

バーグマンはとてもキレイです。
彼女の役どころは、
オスロから出てきて、
知識人で見かけもいいラズロと出会い、
彼を尊敬し、
それを「愛」と取り違えて結婚する女性であり、
また、
ボガードからは、
Here's looking at you, kid.
(「君の瞳に乾杯」←意訳ですね)
と、幼く見られていると考えられる女性です。
(kid と呼びかけているわけなので。)
たしかにバーグマンは適役にも見えます。
ただ、
院生たちと、
もし今この作品をリメイクするなら、
という話をする中で、
この役にふさわしい女優を検討してみたんですが、
いないんですね、これが。
というのも、
シャーリーズ・セロンやサブリナ・ウアザニは言うに及ばず、
現代女優はみな、
「従順」ではなく、
個人の意思で行動できるペルソナを持っているからです。
マリオン・コティアールなんか合う気もするんですが、
いつか、
隠し持っていた銃を撃ちまくりそうでもあるし。
ノオミ・ラパスだったら、
実は彼女こそレジスタンスのリーダーだった(!)
てなことになりそうです。
現代においてはもう、
バーグマンのような、原節子のような、
「美しく従順な女性」はいない、
というか、いらないのでしょう。
(もちろん、現実の生活においては、
バーグマンだって「従順」ばかりではなかったわけでしょうが。)